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海外の話が多め。近頃は中国が多め(中国海警局・中国海監、深海潜水艇、感染症など)。|メモノメモ新館

「国家海洋局と中国海警局 - 防衛駐在官の見た中国」 ちょっと難しいからお薦め

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海上自衛隊幹部学校のコラム「防衛駐在官の見た中国」2月25日付け。  

防衛駐在官の見た中国(その15)-国家海洋局と中国海警局- |コラム059 | 海上自衛隊幹部学校 

このコラムでは毎回、安全保障に関わる時事問題について詳しく書かれている。

トピックス・コラム | 海上自衛隊幹部学校 

 

今回のコラム「防衛駐在官の見た中国(その15) -国家海洋局と中国海警局-」は、「中国海警局」という組織について、日本語の考察としては情報が最新であり、信頼性も高い。(少なくとも、うちみたいな素人(笑)のブログ記事よりは、ずっと  (ノ∀`) テヘ)


ただ、詳しいだけにちょっと難しく、ある程度の基礎知識が無いと分かりにくい。これについて少し。(例によって長くなります。)

 

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中国海警局について色々な人のコメントを眺めていると、よくある勘違いに気付く。
「海監」や「漁政」など中国の海洋法執行組織4つ(主要5つ(五龍)のうちの4つ)が解体されて無くなり、「中国海警局」として統合再編されたとイメージされているようだ。(中国海軍のような軍隊ではないのは、当たり前すぎる話なのでいまさら触れない。)

マスメディアの記事で、「中国海警局は、日本の海上保安庁に相当・・・」という単純化した解説文が多いため、勘違いされるのではないだろうか。


(以下、リンクが付いていない引用部分は、コラムからの引用です。(赤字強調は管理人によるものです。))

大雑把に言えば、新たなこの組織は我が国の海上保安庁に例えられ、グローバルコモンズである海洋において日常的に外国の船舶や市民と接する中国の公権力である。しかしながら、再編前後から中国国内外で議論されてきた国家海洋局の不透明性は、現在に至ってもなお明らかにされていない。 

 

今でも沿岸省・直轄市の、公安部「辺防海警」や「海監」「漁政」などは、それとして活動していて、「中国海警局」のペイントに塗り変わった船で、「辺防海警」の訓練を行ったり、「渔政」による漁業取締活動を行っている。「漁政」の漁業監視船が、「中国海警局」の命令で法執行活動を行ったという報道もある。

国家海洋局は現在も、海洋天気予報、南極への観測隊派遣や「蛟竜号」による深海探査の支援など科学調査も行っている。

「国家海洋局/中国海警局」の、二重の組織構造はイメージしにくい。


誤解されそうな表現だが"喩え"で書いてみると、
グループ組織4つの、重複する、成長分野の事業統合のため「中国海警局"ホールディング"」として再編、基本業務の母体は「国家海洋局」に置く。「中国海警局」という海外向けナショナルブランドを発表しつつ、既存のブランド「海監」「辺防海警」「漁政」「海関」と営業販売網はそのまま残っている感じ。オーナーは表向きは国務院だけど実は中国共産党(予想)で、指揮命令系統を公安部が掌握しようとしている。

 

それと、中国海警局を日本の海上保安庁と比較するなら、その任務・職責を考慮すべきで、海上交通安全や国際交流、海難救助も含めて比較しなければならない。

中国の海事行政では、海上交通安全や国際交流は交通運輸部・海事局「海巡」、海難救助は同・救助サルベージ局「救捞」が主に担っており、中国海警局の船艇は参加や支援はしても主任務ではない。

海上保安庁と中国海警局 ほかの中国の海事組織も: メモノメモ
(救助サルベージ局(救捞)について。)

 

【海警局】中国安全保障レポート2013 国家海洋局と中国海警局、国家海洋委員会: メモノメモ(2014年2月 1日)
「国家海洋局」と「中国海警局」の組織。中国共産党との関係?: メモノメモ(2013年9月10日)

 

日本人が知らない安全保障学 (中公新書ラクレ)

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このコラムでは、特に人事について丁寧に解説している。

不透明性の第一は、国家海洋局のリーダーシップの捻じれである。  前述の「規定」では、国家海洋局のトップである局長は次官級とされている。その一方で、局長の部下であるはずの副局長のうちの一人は、次官級である局長よりも職位の高い閣僚級が就いている。

国家行政組織におけるこのようなリーダーシップの捻じれは、これまで我々が理解してきた一般的な法治国家の組織や制度では考えられない。組織を代表する真のリーダーは誰なのか。国際社会に無用な懸念を生む一因となっていると言える。

中国海警局は正式発足する時に、次のような人事が行われた。

公安部の孟宏偉(孟宏伟)副部長(閣僚級)が、中国海警局の局長となり、国家海洋局の副局長(新設)・党組副書記を兼任した。
国家海洋局の劉賜貴(刘赐贵)局長・党組書記(留任)(次官級)が、中国海警局の政治委員を兼任した。

 

ところがこの孟宏偉・中国海警局局長、全くと言っていいほどその職名での動静が伝えられる事がない。報道されるのは公安部副部長としての動静(テロ対策とか)ばかりで、「第14回・北太平洋海上保安フォーラムサミット」のような特別な時くらいだ。

わざと伏せられているのか、中国海警局局長として対外的に発表されるような仕事が少ないのか、は分からない。

「海保次長 海警局長とあいさつ」NHK報道 中国メディアの報道では: メモノメモ(2013年9月19日)

 

国家海洋局局長の動静は、よく報道される。

今年1月、劉賜貴(前)局長が、海南省の省庁に抜擢された。

後任人事が注目される中、王宏副局長が国家海洋局局長・党組書記、そして中国海警局政治委員に就任した。コラムでは触れられていないが、王宏は、副局長の序列では4番目であり、この人事にも不透明感がある。

国家海洋局の王宏局長・党組書記 中国海警局政委に - pelicanmemo(2015-02-17)

国家海洋局の新しい党組書記に王宏副局長 中国海警局政委は不明 - pelicanmemo(2015-02-03) 

国家海洋局の劉賜貴局長、海南省の省長に: メモノメモ(2015年1月 4日)

 

海洋へ膨張する中国 強硬化する共産党と人民解放軍 (角川SSC新書)

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海警司令部参謀長、海警後勤装備部部長及び海警政治部のナンバー2である政治部副主任等、枢要な配置に多くの武警将軍が充てられている。

指導部人事は、公安部と国家海洋局でそこそこバランスをとっているようで、やはり、司令部・指揮センターは公安部がしっかりと握っている。

【中国海警局】人事 複数の現役少将が海警局の要職に: メモノメモ(2014年12月23日)


国家海洋局/中国海警局の3つの部局(司)も二重化している。

海警司/海警司令部・中国海警指令センターには、権益保護パトロール処(维权巡航处)や、海域法執行処(海域执法处)、漁業法執行処(渔业执法处)などが設置され、それぞれの活動を指揮すると考えられる。
ただし、どこまで徹底して指揮しているかは分からない。指揮命令系統のラインを整えているだけかもしれない。

海警司(海警司令部、中国海警指挥中心)|国家海洋局
财务装备司(海警后勤装备部)|国家海洋局
人事司(海警政治部)|国家海洋局

机构设置|国家海洋局

 

武警と人民解放軍との相違は、武警が国務院(公安部)と中央軍事委員会の2重指導を受けるところにある。それは武装警察のリーダーシップは武警司令員(武装警察上将)と武警第1政治委員である公安部長であることにより具現されている。武警部隊の各組織も同様であり、海警を含む辺防部隊の場合は公安部辺防管理局の指導下におかれていた。再編後の中国海警局の主たるリーダーシップも公安と武警将軍が多くを占めており、この枠組みは維持されていると考えることが妥当である。

中国海警が武警の一部であるとすれば、彼らの法執行活動が、ある時機、何かを契機に軍事活動(防衛作戦)に変更しうることを我々は理解しておく必要があろう。 

 

中国海警局が、我が国の海上保安庁や米国沿岸警備隊と同様にグローバルコモンズである海洋を舞台に活動する公権力であるならば、もう少し国外のシーマンたちにとっても分かりやすい組織となることを期待したい。

 

昨年、南シナ海のパラセル(ベトナム語:Hoàng Sa、中国語:西沙)諸島沖での、中国の石油掘削施設を巡る、ベトナムと中国の公船や漁船群による衝突が起こった。

南シナ海の周辺各国と領有権を争っている環礁や島嶼で、中国が行っている埋め立てについて、王毅外相は全人代に合わせた記者会見で次のように述べている。

「自分の庭に施設を建設しているだけであって、他人からの批判は受け入れない。われわれには合法で正当なことをするあらゆる権利がある」(一部抜粋)

自分の庭に建設しているだけ-中国外相、南シナ海の人工島を弁護(3/10|WSJ)
王毅谈南海岛礁建设:只要合法合理,我们就有权做(3/8|中国外交部)

 

国連海洋法条約などの国際法を軽視あるいは無視しつつ、独自解釈に基づいて国内法をごり押しし、自己主張を繰り返す中国に、"グローバルコモンズ(国際公共財)である海洋"という認識をどこまで期待できるのだろう。 
排他的経済水域(EEZ)でのダブルスタンダードな運用しかり、虎視眈々と狙っている東シナ海での大陸棚延長規定しかり。 

関連報道をいろいろ見ていると、とても楽観的には考えられない。

時々「地上げ屋」「地上げヤ」「占有ヤ」に例えてみるが、まさにそんな感じ。ここ2〜3年で、対応がより独善的かつ攻撃的になっている。

 

日中「海上連絡メカニズム」には少しだけ期待している。その上でもちろん、海上保安庁や関連機関の体制強化や法整備などしっかりと備えつつ、台湾やフィリピン、ベトナム、その他、ASEAN諸国、もちろん米国やインドなど、多国間で連携して対応しなければならない。

 

侵(おか)される日本 われわれの領土・領海を守るために何をすべきか

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