「感染症パニック」を防げ! リスク・コミュニケーション入門 (光文社新書)
- 作者: 岩田健太郎
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2014/11/13
- メディア: 新書
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韓国で、3次感染者が増えている、中東呼吸器症候群(MERS=マーズ)。
韓国では、「韓国呼吸器症候群(KORS、코르스、コルス) という流行語も出てきているようだ。(ここでは"韓国MERS"と書く。)
韓国保健福祉部は、3次感染者を搬送した救急車の運転手に韓国MERS陽性が確認されたと発表した。保健福祉部がはじめて確定した"4次感染者"だ。
韓国MERS、初の4次感染か 死者14人に(6/13|日本経済新聞)
구급차 운전사 감염…보건당국 4차 감염 첫 인정(상보) (救急車の運転手の感染症・・・保健当局4次感染の最初の認定)(6/13|중앙일보、中央日報)
報道ベースでは、この他に2例の4次感染が取りざたされている。韓国メディアの報道を元に少し書いてみたい。
海外ニュースサイトの日本語でのニュースでは「確定」と書いているところもあるが、それら2例はまだ確定はしていない。
韓国メディアによるフライングや、誤報(すでに問題となった例がある)も起こっているので、海外ニュースサイトの速報の日本語情報だけを見て、飛びつかないように注意が必要だ。現地メディアを、ネット翻訳でも充分なので、丁寧にフォローすることを奨めたい。(管理人は韓国語読めないので、ネット翻訳という"武器"を整備して使ってます。)
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一応、当ブログ管理人のスタンスも書いておこう。
韓国当局の対応には失望しているし、失望し続けている。オーバーフローしているのだろう。擁護するつもりは全く無い。
日本語でニュースになっていない韓国メディアの記事の紹介をすることで、印象ではなく、こういう報道もあると知って判断していただければ良いと思うし、日本社会にも良い影響を与えると思う。(現在進行形で続報が出ているので、明日にはこの記事の内容もまた反駁されるのかもしれない。)(この記事は、6月13日午前中までの報道を元にして書いています。)
・救急車の運転手。保健福祉部による公式の、はじめての4次感染者。
韓国MERSの133番目の感染者となった救急車の運転手(70才男性)は、76番目の感染者である75才女性(死亡)を、6月5日と6日に、江東慶熙大病院や建国大病院へ搬送しており、その時に感染したと考えられる。
衛生当局は、この76番感染者が自己隔離中であるにも関わらず、自由に移動している事実を把握していなかったそうだ。
・最初のMERS感染者
→14番感染者(35才男性。5月中旬に平沢聖母病院で感染)
→76番感染者(75才女性(死亡)。5月27〜28日にサムスンソウル病院で感染)
→133番感染者(70才男性。6月5日と6日に、76番感染者を搬送した救急車の運転手。)
・京畿道平沢(ピョンテク)市の警察官が4次感染という報道
この例について日本語では、韓流ドラマ・韓国芸能に強い海外ニュースサイト、ワウコリア(Wow!Korea)の記事がよく引用されているようだ。
平沢(ピョンテク)市の、A巡査部長(警査)は、平沢博愛病院で52番感染者から感染した4次感染者だと報道された。119番目の感染者。
MERS4次感染者が初めて発生…平沢(ピョンテク)の警察官が4次感染=韓国(6/12|ワウコリア)
しかし、平沢博愛病院は監視カメラの映像から、119番感染者のA巡査部長(警査)が帰った17分後に52番感染者が到着しており、接点が無いと反論している。
病院の発表によると、A巡査部長が発熱の症状で、平沢博愛病院を訪れたのは5月31日23時24分。救急室に他に患者はいなかった。A巡査部長は勤務中であり急いでいたので10分ほどで病院を後にしている。
続いて、17分後の23時51分に、52番感染者が病院に到着しているので、院内感染ではなく、むしろ病院外の地域感染の可能性を指摘している。
この警官については、5月31日に発熱して6月3日に入院・隔離、検査で陰性判定となり4日に退院、5日に再入院して11日に陽性の結果が出るなど、検査結果と、感染経路がかなり混乱している。(発症前に、サウジから帰った友達との飲み会があったとか・・・)
より詳細な検査と、疫学調査が求められる。
메르스 4차 감염자 첫 발생…119번 평택 경찰관(MERS4次感染者の最初の発生...119番目、平沢市の警察官)(6/12|동아닷컴、東亜日報)
평택 경찰 '지역사회 감염' 가능성 높다…병원내 감염 희박(종합) (平沢市の警察官「地域社会感染」の可能性高い・・・院内感染希薄)(6/12|연합뉴스、聯合ニュース)
・京畿道城南(ソンナム)市の小学生が4次感染という報道
10才未満の低年齢での初めての「陽性」発表なので、当初から広く報道されている。
城南市によると、この児童は父親が9日にMERSへの感染が確認されたため、自宅での隔離措置を受けていた。9日に実施した1次検査では陰性の判定を受けたが、この日行った2次検査で陽性の判定が出た。
小学生がMERS陽性判定 初の「4次感染」疑い=韓国(6/12|聯合ニュース日本語版)
父親は、韓国MERSの91番目の感染者。その子供(7才・男児)の2次検査の結果が陽性であり、父親からの4次感染の可能性があると、城南(ソンナム)市が発表した。
韓国国内で、韓国MERS感染者と自己隔離対象者が増えたことから、韓国MERSの陽性判定を、地方自治体が発表する権限が与えられたため、城南市の発表という報道になっている。政府と地方自治体との間での、情報の混乱が起こっているようだ。
保健福祉部は、この小学生は91番感染者の父親と一緒に、サムスンソウル病院(3次感染者を多数発生させてしまった病院)を訪れているため、3次感染である可能性もあると指摘している。
7才の子供がMERS陽性という、年齢的に極めてまれなケースであるため、MERS陽性か陰性か、国立衛生研究所で再検査が行われる。
[메르스 사태]7세 초등생 2차 '양성'…감염경로 '이견'(7才小学生、2次検査「陽性」・・・ 感染経路に「異論」)(아시아경제、アジア経済)
次に4次感染者ではないが、日本語でまったくと言っていいほど報道されていないので、書いておきたい。
・最大のミステリー。サムスンソウル病院の外来患者
サムスンソウル病院の整形外科を受診した女性(77)が、韓国MERSの陽性判定を受けた。115番目の感染者。
115番感染者は整形外科の外来患者であり、他の全ての3次感染者と違ってサムスンソウル病院の「緊急治療室」には入っていない。そのため、空気感染の可能性も含めて、14番感染者から、どこで、どのように、感染したのか・・・、最大のミステリーとなっている。
当初、緊急治療室の近くのトイレの前での感染機会が指摘されていた。しかし14番感染者は35才男性、115番感染者は77才女性でトイレ内の接点はあり得ない。監視カメラ映像を確認しても、トイレ前での接点は極めて希薄だった。
次に、レントゲン室の前で撮影を待っている時に感染した可能性が示唆されている。
その他にも、医療スタッフや医療機器を介して14番感染者の体液に接触した可能性(ありえない事態だと思うが)や、さらには空気感染(もっとありえない)の可能性まで指摘されている。
"삼성병원의 화장실 감염은 재앙…전면 재조사해야"(サムスンソウル病院でトイレ感染は災害 再調査の必要がある)(6/11|Pressian)
‘삼성 외래환자 미스터리’…의료진 전파? 공기 전염?(「サムスンソウル病院、外来患者ミステリー」・・・医師伝播?空気感染?)(6/11|한겨레、ハンギョレ)
‘감염 경로 불확실’ 환자 속출…메르스 사태 ‘안갯속으로’(「感染経路の不確実性」の患者続出・・・MERS事態「霧の中で」)(6/11|한겨레、ハンギョレ)
この例が「最大のミステリー」 と言われるのは、多くの3次感染者を出してしまったサムスンソウル病院の、全ての外来患者に感染機会があったところにある。
続報を待ちたい。
ーー(追記:06/14)ーーーーーーーーーーーーーーーー
サムスンソウル病院は、一部閉鎖を発表した。
韓国MERS、サムスンソウル病院は病院の一部閉鎖を発表。新規外来と入院、緊急治療室の患者を受け付けない。手術は緊急事態を除き停止。既存の入院患者に対する診療はこれまで通りだが面会は制限など。 朝鮮日報 조선닷컴 http://t.co/wuofuE6nGg
— メモノメモ (@pelicanmemo) 2015, 6月 13
ーー(追記ここまで)ーーーーーーーーーーーーーーーー
余談。
韓国MERSの日本語報道はソウル発のニュースばかりだが、釜山で確認された2人目の感染者も気になっている。
韓国MERS、釜山の2人目の陽性患者は、16番目感染者が在院中に、大田市の病院で勤務(釜山のコンピュータ会社社員(31・男)IT機器管理で出張?)。出入り業者の管理記録が無く、追跡管理の対象者ではなかったと。 中央日報 중앙일보 뉴스 http://t.co/OD2IKpm5ri
— メモノメモ (@pelicanmemo) 2015, 6月 13