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海外の話が多め。近頃は中国が多め(中国海警局・中国海監、深海潜水艇、感染症など)。

【さくら】韓国の王桜(왕벚나무)と日本のソメイヨシノ 2種の違いと、韓国起源説への対応 【ウリジナル】

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(日本・国立研究開発法人森林総合研究所・日本のソメイヨシノ)

東京でソメイヨシノが満開となり、桜や花見に関するニュースが増えてきた。

この時期になると、頭が痛くなるニュースも目にするようになる。韓国メディアのソメイヨシノ韓国起源説だ。韓国メディアが国内だけでやっているのなら、あまり気にしないが、海外ニュース翻訳・抄訳サイトやまとめサイトが日本語で紹介をする機会も増えた。掲示板で話題になって目にすることも多い。 

 

今年は、昨年や一昨年に比べると少し静かなようだ。

韓国の国内政治が大混乱している上、北朝鮮情勢が緊迫しているので韓国メディアの反日の雰囲気が薄いからだろう。

次期大統領と韓国メディアの対応によっては、来年春には、また同じことを繰り返すのではないだろうか。

「ソメイヨシノ」はどこからやって来たのか : 深読みチャンネル : 読売新聞(2017/3/19)

 

(*)この記事では、日本のソメイヨシノと、韓国の済州島に自生する王桜(왕벚나무)とを区別するため、「日本のソメイヨシノ」「韓国の王桜(왕벚나무)」と書いている。

この記事を書くにあたって、韓国の「韓国の王桜(왕벚나무)」とされる写真をたくさん見た。「日本のソメイヨシノ」と比べると、花は少し大ぶりで、赤みが強いように感じられる。個体差も大きいようだ。

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(韓国・文化財庁、済州島、シンリェリ(新礼里)の왕벚나무(王桜)(天然記念物第156号)より)

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今年1月、日本の国立研究開発法人 森林総合研究所 から、国際植物分類学連合が出版する分類学専門誌 TAXON誌に、日本のソメイヨシノと韓国の済州島に自生している王桜(왕벚나무)が別の種類であるとして学名を確立した論文が発表された。

20170403190942森林総合研究所 (pdf)より。赤字書き込みは管理人による)

http://www.ffpri.affrc.go.jp/press/2017/20170118/documents/20170118press.pdf(http://www.ffpri.affrc.go.jp/press/2017/20170118/documents/20170118press.pdf)

森林総合研究所/‘染井吉野’など、サクラ種間雑種の親種の組み合わせによる正しい学名を確立

Nomenclature of Tokyo cherry (Cerasus × yedoensis 'Somei-yoshino', Rosaceae) and allied interspecific hybrids based on recent advances in population genetics ; Katsuki, Toshio; Iketani, Hiroyuki; Taxon, Volume 65, Number 6, December 2016, pp. 1415-1419 

 

韓国(韓国人と考えられる姓名)の研究者の中でも、「韓国の王桜(왕벚나무)」の遺伝子解析の結果、「日本のソメイヨシノ」とは別の組み合わせの桜だと発表する論文もある。韓国科学技術情報研究院(KISTI)のデジタル学術情報ポータルサイト(NDSL)で検索してみると、日本の森林総合研究所の論文と同じような結果を示したものもあった。(記事リンクは記事末尾)

しかし、こういう研究結果は、韓国メディアでは取り上げられない。

韓国メディアのソメイヨシノ韓国起源説を持ち出す記事には、韓国済州島の山地に自生する王桜(왕벚나무)と日本のソメイヨシノを混同しているものが多い。一方で、「ソメイヨシノ韓国起源説」を大前提として、そこから持論を展開するものもある。

 

今年1月の日本の森林研究所の発表の肝は、きっちりと区別するために、サクラ属 "Cerasus"を、広義のスモモ属 "Prunus" から分けて、「日本のソメイヨシノ(学名:Cerasus × yedoensis ‘Somei-yoshino’)」や「韓国の王桜(왕벚나무)(学名:Cerasus × nudiflora)」は片親が違う種として整理をし、別々の学名を着けて分類したところにある。

それでも、ソメイヨシノ韓国起源説を大前提として「起源は韓国だー」とか「日本がー」「日帝がー」「日帝残滓がー」と文句を言いたい層は、「日本は姑息にも、"Prunus yedoensis"という学名を"Cerasus yedoensis"と変えてきた」とか「また日本の捏造がー」とか言い出すのではないだろうか? ヤレヤレ

100年前の分類で頭の中が止まっていて、その後の分析技術の進歩や科学研究の結果は目に入らず、見たいものだけを見て、聞きたい事だけを聞いているのだろう。
(日本の社会やネットでも「〜がー」と叫んでる似たような人が視覚化されていて、近頃よく目立っている。)

 

今年3月、朝鮮日報系の週刊誌「週間朝鮮」にソメイヨシノ韓国起源説のコラムが出ていた。これもそのひとつだ。(日本ネットのまとめサイトも取り上げた)

[<설 특집Ⅲ>] 제주 밀감과 왕벚나무의 아버지 에밀 타케 신부 다시 오다([<旧正月特集Ⅲ>]済州のソメイヨシノの父エミール・タケ神父、おさらい)
[취재 뒷담화] “포트맥 강변의 왕벚나무도 제주도산”(【取材後談話】「ポトマック川沿いのソメイヨシノも済州島産」)
(管理人注:この記事タイトルの日本誤訳では "왕벚나무"は内容に合わせて"ソメイヨシノ"と訳した。)

楽韓Web : 韓国に春の訪れ「ソメイヨシノの自生地は済州島だ!」の記事が今年も → ただし、学術的な論争はすでに終結していた模様
【韓国の反応】みずきの女子知韓宣言(´∀`*) : 【韓国の反応】春です。また始まったよ→「ソメイヨシノ(王桜)は済州島が本当の起源!」韓国メディア
日韓で100年続く「桜の原産地」論争、韓国に軍配?=韓国ネット「世界では日本の桜として知られてる」「日本は他人のものでも大事にするのに…」 - Record China

 

韓国メディア・韓国社会が一旦作り出して喧伝してきた「日本の桜の原産地が韓国」という心地よいファンタジーを、その韓国メディア自身が簡単に手放すわけはない(きっぱり)。
今年はおとなしいからもしかしたら・・・、とか期待しない方がいい(きっぱり)。

 

日本の大手メディアの週刊誌のコラムにも"アレ"な記事はいろいろとあるわけだし、韓国の週刊誌のコラム程度で「また韓国がー」と感情的になるよりも(本当に目障りだけど)、その都度、冷静に反駁していけばいいだろう。

韓国でも日本と同じように、母国語のネット情報だけでなく外国語の情報を目にする機会が増え、ネット翻訳を使って"より確からしい情報"を求めて調べる人々は間違いなくいる。

 

ここで気になっているのが、ネット翻訳の誤訳の問題だ。

韓国語の記事をネット翻訳して読んでいて、気になった人も多いと思う。ノシ

 

「韓国の王桜(왕벚나무)」の韓国語表記の「왕벚나무(ワンボンナム)」(王桜の木)や「왕벚꽃(ワンボッコッ)」(王桜の花)」を、いくつかのネット翻訳サイトで翻訳すると「ソメイヨシノ」と誤訳される。

Google翻訳、Bing翻訳でそうなり、エキサイト翻訳でも似た結果となった。Yahoo翻訳では、「ワングボッナム」と発音で表示された。(記事公開時点)

20170406192717韓国語翻訳 - エキサイト翻訳

しかも安定していない。

「왕벚꽃 축제(王桜 祭)」を翻訳すると「ソメイヨシノ祭」ではなく「王桜祭」と訳される。 (記事公開時点)

 

個々人の皆さまや会社も、日本の「ソメイヨシノ」の韓国語表記は、発音をそのまま表した「소메이요시노」となるように働きかけていけば、少しでも力になれるのではないだろうか。
いつまでも引きずっていたら、日本でも、韓国でも、建設的な関係改善にはつながらない。 

 

20170406192719(Google翻訳より)

日本の「ソメイヨシノ」の韓国語の発音表記「소메이요시노」は、済州島自治政府の外国人向け冊子でも使われている。 

교육-생활외국어(229 教育-生活外国語)(2017-02-21公開)

다운로드전용 - 제주특별자치도(ダウンロード - 済州自治政府)

 

関連リンク:

韓国の、天然記念物・記念樹になっている「王桜(왕벚나무)」。

1.済州島、ボンゲドン(奉蓋洞)の왕벚나무(王桜)自生地(1.제주봉개동왕벚나무자생지(濟州奉蓋洞왕벚나무自生地))
指定日:1964-01-31(天然記念物第159号)

2.済州島、シンリェリ(新礼里)の왕벚나무(王桜)自生地(2.제주신례리왕벚나무자생지(濟州新禮里왕벚나무自生地))
指定日:1964-01-31(天然記念物第156号)

3.全羅南道海南郡、大屯山の왕벚나무(王桜)自生地(3.해남대둔산왕벚나무자생지(海南大屯山왕벚나무自生地))
指定日:1966-01-13(天然記念物第173号)

4.済州島、済州市アラドン(我羅洞)の観音寺のソメイヨシノ自生地(4.관음사의왕벚나무자생지(觀音寺의왕벚나무自生地))
指定日:1999-10-06(済州特別自治道の記念碑第51号)

문화재청 홈페이지(韓国・文化財庁ホームページ) 

 

環境省 - 桜

環境省 - ソメイヨシノ

 

ソメイヨシノとTaquetの王桜「왕벚나무」は同じサクラではない

Taquetの王桜「왕벚나무」を守れ

日本の桜・そして韓国人の誤解 - このはなさくや図鑑~美しい日本の桜~

王桜の故郷は済州!なぜ、学名に日本人の名前が? =東亜日報・子供ニュース(東アジア速報)
어린이동아 :: 어린이들의 좋은 벗

 

推定樹齢265年の王桜 韓国・済州で発見(2016/05/03|聯合ニュース)

한겨레 환경생태 전문 웹진 - 물바람숲 - ‘265살 대왕’ 왕벚나무 발견(ハンギョレ)

265살, 자생 왕벚나무 중 최고령 나무 발견(韓国・国立山林科学院・プレスリリース)

 

ソメイヨシノ - Wikipedia(韓国語wikipediaに独立ページは無い。「桜」項目のページ(벚나무 - 위키백과)に"왕벚나무"の欄がある。(記事公開時点))

한국의 왕벚나무의 자생지는 제주도이나 일본의 소메이요시노는 접목하지 않으면 발아하지 않고, 자생하지 않으므로 학회에서는 다른 종류라고 여겨지고 있다.

韓国の왕벚나무(管理人注:王桜)の自生地は済州島でも、日本の왕벚나무(管理人注:ソメイヨシノ)は接ぎ木をしなければ発芽せず、自生はしていないため、学会では他の種類とされている。
(管理人注)"왕벚나무"は"王桜"と訳されるべきだが、ネット翻訳(韓国語→日本語)では"ソメイヨシノ"と誤訳される。

王桜 - Wikipedia(韓国語ページ:왕벚나무 - 위키백과)(記事公開時点)

サクラ属 (Cerasus) は、植物界バラ目バラ科の属である。
広義のサクラ属 Cerasus は、広義のスモモ属 Prunus と同じものである。

サクラ属 - Wikipedia

사쿠라 - 나무위키(wikitree)

 

論文 :

Characterization of wild Prunus yedoensis analyzed by inter-simple sequence repeat and chloroplast DNA - USDA ARS (United States Department of Agriculture - Agricultural Research Service)

DNA fingerprinting study on the intraspecific variation and the origin of Prunus yedoensis (Someiyoshino). - PubMed - NCBI

Molecular and morphological data reveal hybrid origin of wild Prunus yedoensis (Rosaceae) from Jeju Island, Korea: Implications for the origin of the flowering cherry

한겨레 환경생태 전문 웹진 - 물바람숲 - 때되면 한-일 원산지 논쟁, 벚꽃에게 물어봐!

제주도 자생 왕벚나무의 계통 및 유전구조 분석
Phylogenetic and Populaion Structure Analysis of wild Prunus yedoensis (Rosaceae) in Jeju Island, Korea

日本の桜 (フィールドベスト図鑑)

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