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海外の話が多め。近頃は中国が多め(中国海警局・中国海監、深海潜水艇、感染症など)。

【ヒアリ】 台湾での、ヒアリの発生地域[地図] | ヒアリ撲滅に成功した自治体も

南米原産のヒアリは、2017年5月に神戸港で中国から陸揚げされたコンテナの中で見つかって以来、港湾地区を中心に数匹〜数10匹・100匹が各地で見つかっています。女王アリもわずかですが確認されたようです。

一方、台湾では2003年(民国歴92年)にはじめてヒアリが確認され、定着・繁殖している地域もあります。撲滅に成功した自治体もあります。教訓としたり、経験や成功例から学べることも多いでしょう。
ただ、日本語のネットのコメントの中には、台湾全土で定着していてあちこちにヒアリの大きなアリ塚があるような間違ったイメージを持っているのか、勘違いしたコメントも見かけます。 

心配しすぎは、観光にも健康にも美容にもよくありません。夏休み前だというのに、日本語の情報もあまり見当たりません。これについて少し。

 

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台湾でヒアリ(紅火蟻(入侵紅火蟻) (Solenopsis invicta) )は、2003年9月~10月(民国歴92年)に桃園市(当時は桃園県)と嘉義県の農地ではじめて確認されました。アジアでのはじめての公式の確認例です。台湾桃園国際空港へ、米国からの航空貨物に紛れて大量に侵入した疑いがもたれています。
一時は、空港の敷地の8割でヒアリが確認され、滑走路灯で見つかったこともありました(ヒアリは電線をかじるなどして電気系統にダメージを与えるので、航空機の安全にも悪影響が及んでいた)。しかし発見と駆除を徹底することで、2008年以降は空港の重要区域では確認されていないそうです。

 

このため、ヒアリの被害が深刻なのは、台湾桃園国際空港のある桃園市を中心にした3つの県・市の18地区(鄉・鎮・市・區)(日本の自治体の区・町・村に相当)です。
その他、全国の39地区(鄉・鎮・市・區)(大陸近くの金門県の5鄉を含む)で、散発的な発生が確認されています。(2017年4月)。
2003年にはじめて確認された嘉義県の方は、散発的にヒアリが発生している地区はありますが、こちらは抑止に成功しています。

 

ヒアリのモニタリングが詳しく行われて、発見したヒアリの巣のGPSマッピングもされています。

台湾の北部の西側に集中していることが分かります。

 20170712122205

(via. 其餘地區紅火蟻通報案件分布情形 - 臺灣入侵紅火蟻發生現況(106年3月) - 行政院農委會動植物防疫檢疫局

国家ヒアリ防除センター(國家紅火蟻防治中心 (National Red Imported Fire Ant Control Center:NRIFACC))のウェブサイトで、直近のヒアリの発生地域が確認できます。

發生現況 - 國家紅火蟻防治中心

 

普遍発生区は、桃園市を中心に18地区(鄉・鎮・市・區)(桃園市12地区、新北市4地区、新竹県2地区)。(2017年4月)
この普遍発生区(普遍發生區)(上の地図の青く塗った範囲)とは、ヒアリ(紅火蟻)の発生状況が特に深刻な地域を指します。

註:普遍發生區為入侵紅火蟻發生情形較為嚴重之區域,其餘區域則為零星發生。

その他、台北市、基隆市、桃園市、新竹県、新竹市、苗栗県、嘉義県、台南市、金門県に属する一部の地区(鄉・鎮・市・區)、全部で39地区で散発的な発生が起きています。(2017年4月)

地区(鄉・鎮・市・區)の数で計算すると15.4%ほど(大陸近くにある金門県を除くと14%ほど)。

 

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もちろん、他地域へのヒアリの侵入(数匹〜数十匹程度)はあるでしょう。

しかし、ヒアリ軍団が、凶悪に、一方的に支配地域の拡大を続けているわけではありません。

本島北部の東岸沿いの宜蘭県で、2015年3月にヒアリのアリ塚が確認(30箇所)されましたが、行政とコミュニティによる徹底した調査と駆除作戦によって1年後には3箇所まで激減し、撲滅に成功しました。(再発しないわけではないが、行政府の経験値は高い)。 

政府民眾齊心努力 成功撲滅宜蘭紅火蟻 - 行政院農委會動植物防疫檢疫局 (2016-12-26)

この宜蘭県への、本島の太平洋側へも拡大した教訓でしょうか、
2016年4月に、行政院農業委員会と動植物防疫検疫局は、ヒアリの発生状況が特に深刻な桃園市など普遍発生区の周辺に「南北防衛線、南北防衛帯(*)」を設定、新たな巣の発見と駆除を徹底し、密度を減らし、拡大を防ぐべく戦いを続けています。

(*)北防衛線は新北市淡水河(川)、南防衛線は新北県頭前渓(川)。
南北防衛帯(下の地図の黄色い範囲)は、北は桃園市と新北市の県境から淡水河あたり、南は桃園市と新竹県の県境から頭前渓あたり。

20170711205224

 

(via. 入侵紅火蟻防治現況 - 發生現況 - 國家紅火蟻防治中心

 

ーー(追記:7/14)ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

面積がいまひとつ分かりにくいので、日本の都市で比較できないか少し調べてみました。

ヒアリが見つかり、アカカミアリが作業員を噛む被害があった名古屋港、

木曽川を西側〜北側の防衛線とし、東側は犬山市中心部から瀬戸市中心部をとおって名古屋港に居たる円弧を描く。すると、台湾の桃園市とだいたい同じくらいの面積(約1000平方km)になります。
西防衛帯は木曽川から揖斐川、東防衛帯は豊田市中心部から矢作川まで(ちょっと広いですが)という感じでしょうか。

関東だと、東京23区の面積が約620平方kmなので、そこからふた回り大きいくらい
(湾岸エリアから浦安、船橋から武蔵野線に沿って越谷、さいたま、そこから朝霞、武蔵野、調布ときて、多摩川が西南の防衛戦という感じ)

ーー(追記ここまで)ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ヒアリの巣の駆除や薬剤散布だけでなく、苗木等の移動管理、建築残土や土砂の移動管理など、ヒトやモノの移動によって他地域へと拡散しないようにしています。(どこまで徹底して監督管理され、守られているか心配ですが)

これまでにかなり駆除したと発表されているのに、未だに根絶できていない。一部の地区とはいえ、ここまで定着・繁殖しているとそれだけ難しくなるのでしょう。初期の対応がきわめて重要です。

ただ、駆除に使われる薬剤は年に4回しか使えない強いもので、散布後に雨が降るとその効果も薄れてしまいます。地下水や川や海の環境汚染にもつながってしまう。早期発見と早期駆除が重要ですが、生態系に悪影響がでるほど殺虫剤・殺アリ剤を使っていいわけではなく、逆効果になる場合もあるので対応が難しいところです。

 

殺虫成分のはいった餌の自動散布装置の開発や、UAV・ドローンを使ってヒトが立ち入りにくい、斜面の中腹や急勾配、河川敷や山間地、軍管制区域で低空から効率的に毒餌を撒く計画も進められています。

 

【ヒアリ】 台湾では「ヒアリ探索犬」の力を借りて、ヒアリの巣を早期発見 - pelicanmemo

 

我們的島 第795集 再見紅火蟻 (2015-02-09) - YouTube

 

緊急防疫 - 行政院農委會動植物防疫檢疫局

植物疫情民眾服務站

紅火蟻入侵12年難根除 桃園最紅 - 中時電子報

宜蘭冬山河驚現紅火蟻 農委會拉警報 - ETNEWS新聞雲

紅火蟻再現 縣府成立跨單位工作小組執行撲滅措施

多虧米格魯和洋芋片 桃園國際機場滅紅火蟻有成 - 風傳媒

嘉義地區入侵紅火蟻 (Solenopsis invicta) 蟻巢之空間分布型與防治效果評估 ; 植物保護學會會刊 55:57-78, 2013 (pdf)

バッタを倒しにアフリカへ (光文社新書)

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