(via. ABC.au) (クイーンズランドのヒアリ探知犬)
日本国内で、5月にはじめて確認されたヒアリ。神戸港、大阪港、名古屋港、東京都品川区の大井埠頭、横浜港などで見つかりました。繁殖能力のある女王アリもごく少数ですが確認されました。
また、内陸部の愛知県春日井市(数匹(死亡含む))や、茨城県常陸太田市(ほぼ全て死亡)でも陸揚げされた後に運ばれたコンテナや貨物で確認されています。
定着させないための、緊張感のある、初期の対応がきわめて重要です。
ただ、見つかった地区周辺で毒餌をしかけて駆除を試みる事は大事ですが・・・、ヒアリが定着した台湾でもオーストラリアでも、港湾地区や空港では集中的に撲滅ができても、内陸で定着・繁殖されてしまい10年以上たっても撲滅できずにいます。
まだ見つかっていない地域も含めて各地にトラップをしかけて、他のアリや昆虫などと一緒にヒアリが発見されるかどうか、見落とさないためのモニタリングを厳重に行う事も重要です(研究者や、行政の中の方々にとっては今更のことと思いますが、必要なことと思いましたのでブログでも書かせていだたきました。)。
ある日ある時、日本の内陸の自治体の、あまり人が立ち入らない河川敷でヒアリの巣がたくさん発見される・・・なんてことが無ければ良いのですが。
台湾では、2003年10月にヒアリ(紅火蟻)がはじめて確認され、対応が遅れたため、桃園市を中心に急速に拡大しました。
【ヒアリ】 台湾での、ヒアリの発生地域[地図] | ヒアリ撲滅に成功した自治体も - pelicanmemo
台湾で、ヒアリ探知犬(ビーグル犬)の力を借りてヒアリの巣を探す様子が、日本のテレビ番組での紹介されて話題です。
実は、ヒアリ探知犬(Fire ant sniffer dogs)はオーストラリアが先駆者です。
台湾や中国よりも先に、2001年にニュージーランドやオーストラリアでヒアリが初めて確認されました。オーストラリアでは、ヒアリ探知犬の力を借りたり、ヘリコプターを使って赤外線探知器で上空からヒアリの巣を探しています。
オーストラリアでは、2001年2月22日に...
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オーストラリアでは、2001年2月22日にクイーンズランド州ブリスベン市(オーストラリア大陸の東海岸の真ん中あたり)で初めてヒアリが確認されました。
ブリスベン港では撲滅できましたが、市南部と周辺の内陸地域で、ヒアリが定着・繁殖してしまいました。
(via. National Red Imported Fire Ant Eradication Program: Fire ant biosecurity zones)(pdf)(日本語の書き込み他は管理人による)
最初にブリスベン港のあるフィッシャーマンズ島(Fisherman Islands)と郊外(30kmほど内陸。ブリスベン川の上流)のリッチランズ(Richlands)ではじめて確認されました。侵入ルートはあきらかになっていませんが、米国からのコンテナ・貨物だったのではないかと言われています。
7ヶ月後の2001年9月に、国家ヒアリ撲滅プログラム(National Red Imported Fire Ant Eradication Program)が正式に開始しました。
2001年のブリスベン港の港湾地区の発見例は撲滅に成功。内陸のリッチランズ(Richlands)と周辺では失敗。
その後も、海外から別ルート(遺伝子解析で確認)で4回、首都のシドニー市のボタニー港などで新たなヒアリの侵入が確認されましたが、いずれも撲滅に成功しています。侵入の初期なら、十分に撲滅ができるのです。
(2015年のブリスベン空港、2016年のブリスベン港の例は、駆除結果の確認中なのでしょう)
(via. Invasive Species Council)(pdf)(日本語の注釈は管理人による)
文字が多いのでちょっと一服。
シドニー市の港湾での、ヒアリ探知犬の出張のお仕事の様子のニュース動画をどうぞ。
Fire ant outbreak in Sydney, it's Qld sniffer dogs Willow, Marky & Olivia to the rescue - YouTube
オーストラリアのヒアリ探知犬は、30mくらい離れていても巣を見つけることが出来るそうです。 すげえ😃
内陸の牧場やアウトバックは広すぎて、ヒトの目が行き届かず、お犬様も足りないので、ヘリコプターに赤外線センサーを積んでヒアリの巣を探しています。
オーストラリアや台湾のヒアリ探知犬を日本に連れてくるのは、通関や検疫の手続きがかなり大変です。長期は無理です。日本国内での探知犬とハンドラーの育成はかなり難しいでしょう。ヘリやドローンからの赤外線センサーでの探知は、日本の地形向きではないですね。
ここはやはり、日本お得意のセンサー技術で、ヒアリの臭い探知センサーを開発するなどして何とかしましょうよ。製品が出来たら輸出できますし。
【ヒアリ】 台湾では「ヒアリ探索犬」の力を借りて、ヒアリの巣を早期発見 - pelicanmemo
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オーストラリアでは、このブリスベン市の内陸の地域(クイーンズランド州の南東部とニューサウスウェールズ州との州境の地域)でヒアリが定着・繁殖しています。
一旦定着してしまうと駆除は難しく、オーストラリア中東部の自然条件もヒアリにとって有利なため、16年たった今でも撲滅が出来ていません。
ヒアリは高温で乾燥した環境を好むため、ヒアリを放置した場合には、生息域が次の地図の地域へ広がる可能性があるとされています。
次の地図の赤色が濃い地域、数字が高いほど気候的にヒアリの生息に適しています。
(via. Red imported fire ants (Solenopsis invicta) - Fact Sheet - Invasive Species Council)
Fire ant potential occupation in Australia based on rainfall and temperature comparisons to known overseas occurrence. Higher numbers represent greater climatic suitability. Source: Climatch V1.0, Invasive Animals CRC, ABARES 2008
オーストラリアでは、ブリスベン市と周辺の地域に3段階のバイオセーフティ・ゾーンを作って、ヒアリの撲滅のための活動と、ヒアリを他地域に拡散させないための市民や経済の活動を制限、監督管理しています(ブリスベン空港と港を含む地域がゾーン3なのは、2015年と2016年に新たな侵入が確認されたからでしょう)。
台湾でヒアリが定着してしまった桃園市と周辺地域の「南北防衛線、南北防衛帯」は、これをモデルとして作成されました。
(via. National Red Imported Fire Ant Eradication Program: Fire ant biosecurity zones)(pdf)(日本語の書き込み他は管理人による)
【ヒアリ】 台湾での、ヒアリの発生地域[地図] | ヒアリ撲滅に成功した自治体も - pelicanmemo
バイオセキュリティ・ゾーンでは、ヒアリが拡散する原因となる、土壌の移動制限、腐葉土、肥料、干し草、藁、鉢植えの植物や芝の移動制限、ヒアリのキャリアとなりうる鉱石・採石物と副産物、堆肥の移動制限など、いろいろと制限や禁止がされています。
域内の農業・林業・牧畜業は、対策コストが大幅に増えるでしょうし、特に有機農業の農地では、ヒアリの巣が見つかったら駆虫剤の化学薬品を使うので、壊滅的なダメージを受けるのではないでしょうか。土木なども影響を受けるでしょうし、工場誘致や倉庫需要にも影響しそう。
自治体のヒアリ対策の予算と人員が必要な分、ほかの社会保障費が圧迫されるでしょうし、医療費も増えそうです。
日本だと、ただでさえ台所事情の苦しい地方自治体にとっては、これはジリ貧になる状況です。
日本の自治体でも、ヒアリが定着した場合のシミュレーションと、ハザード・マップみたいな被害想定を作るなりして予防と対策を考えるべきです。ヒアリなど外来生物のモニタリング体制を適切に作っていけば、初期段階で発見できて、ヒアリの場合だと状況が深刻になる前に安価に駆除出来るのではないでしょうか。
日本では、神戸港ではじめてヒアリが確認されてから同時多発的に各地でヒアリが確認されています。
これは「探してみたら、見つかった」ケースで、実はすでにヒアリは日本国内に侵入しているというネットの声をよく見かけます。もちろん、その可能性はあるでしょう。
では、日本国内でヒアリがすでに定着しているのか? というと、その可能性は高くないと思います。
日本は人口密度が高い地域が多いです。各地の自然博物館や昆虫館の学芸員の皆さんや自然観察ボランティア、学校の理科クラブ、昆虫マニアの方々など、近年は壮年〜老年、高齢者の健康増進での運動機会など、けっこうあちこちにヒトの目があると思うのです。
(ポケGOしていて河川敷の端っこで何かを見つける、なんてのはさすがに無いでしょうが(笑))
もしヒアリが定着して繁殖している場所があるのなら、これまでに何かしら「噂」があったのではないだろうか?とちょっと楽観的に考えています。(あまり楽観的に考えるのも間違いですが・・・)
そのうち、自治体やコミュニティが講習会を開いて、ボケ防止+健康増進のため歩こう会+ヒアリ探索ボランティアのように、有志を募ることもあるのかもしれません。
案外、この分野の知識と経験を持つ人材は成長株かも。😊
Fire ant impacts - why they are a problem (クイーンズランド州政府のヒアリ情報のウェブサイト「ヒアリの影響 - なぜ連中は問題なのか?」)
Frequently asked questions about fire ants (ヒアリFAQ/一問一答)
About the eradication program (ヒアリ撲滅プログラムについて)
Maps of fire ant biosecurity zones (バイオセーフティ・ゾーン)
Fire ant sniffer dogs on the hunt in Gladstone
https://invasives.org.au/wp-content/uploads/2015/01/fs-fire-ants-2016.pdf
Fire ants in Australia: Map shows how our way of life could be destroyed - News.com.au
Specialised Training - Odour Detection Dogs | Dog School Brisbane & Ipswich
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