pelicanmemo

海外の話が多め。近頃は中国が多め(中国海警局・中国海監、深海潜水艇、感染症など)。

日本はレアアースを数百年分も備蓄? -中国メディア 元ネタを調べてみた

Rare Earth Elements
(photo by Terence Wright) 

2017年に入ってから希少金属の価格が上がっている。それに合わせてレアメタル(レアアースなど)がふたたび注目されている。

そんな中、中国などの海外ニュースサイトのレコード・チャイナの9月27日付けの記事で「日本のレアアースの備蓄量が数百年分にも上る」という変な内容があった。これについて少し。 

そして、「日米欧は中国のレアアースをむしり始めている」と主張する。記事は日本について、「レアアースを生産しないが、レアアースの世界的な保有、消費、輸出大国になっている。備蓄量は数百年分にも上る」と指摘。米国についても、「レアアース資源の保護に病的で、90年代半ばから採掘をやめ、中国から毎年、大量かつ廉価な輸入へと切り替えた」と論じた。
(赤字強調は管理人による)

中国のレアアースをむしり始めた日米欧―中国メディア - Record China

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このブログの前身「メモノメモ」(現在も更新中)で7年前に、同じように中国メディアの記事の、日本が20年分のレアアースを備蓄(海底に備蓄)という変な内容について調べた。 
(2010年の、尖閣諸島の周辺海域で発生した海上保安庁の巡視船への中国漁船による衝突事件と、その後の中国による日本へのレアアース輸出禁止の時)

 

今度は、数百年分だ(笑)

 

「レアアースため込む日本、中国に輸出制限緩和を要求」 変な記事の背景: メモノメモ(2010年9月8日)
「レアアースため込む日本、中国に輸出制限緩和を要求」補足、海底に20年分とはどこから出てきたか?: メモノメモ(2010年9月24日)

中国、レアアースの対日輸出を禁止、尖閣問題で=報道 | ロイター (2010年9月23日)

 

この時は、中国で"レアアースの父"とも呼ばれる中国科学院の徐光憲(徐光宪)氏による「1995年から2005年までの10年間で、利用量(当時)の20年分を購入して貯蔵」という発言から変化していったことが分かった。その表現の一部だけが切り取られて「20年分を貯蔵」となり、それが「20年分を備蓄」となり「40〜50年分を備蓄」と大げさな表現に置き換わっていった。
 

そしてさらに「レアアースの備蓄量が数百年分」に増えたのだそうだ。

すごいぞ!ラピュタは本当に... 日本はわずか7年間で、レアアースの備蓄量を数十年分から数百年分へと増やしたのだそうだ!!!
これが日本の底力だ!!!😝ドドーン

 

・・・んなワケないだろ。😕

数百年分ものレアアースを備蓄してどうすんの?😕 
まさか中国は、日本が100年戦争の準備してるとでもイメージしてる?

 

実は、この7年の間にレアアースに関する大きなニュースがありました。

東京大学の加藤泰浩教授らの研究チームが、南鳥島沖の、日本の排他的経済水域(EEZ)の海底の泥が高濃度のレアアースを含むことを発見した。その資源量は数百年分(ジスプロシウムで約230年分)(当時の報道での概算値)と言われる。

中国メディアはまた同じように、この「数百年分」という表現だけ切り取って「備蓄量は数百年分(其稀土储存量够用数百年)」と言っているのだろう。

東大の加藤泰浩教授らの研究チームは昨年6月、日本の排他的経済水域(EEZ)の南鳥島沖の海底の泥に、レアアースの中でも特に希少でハイブリッド車(HV)のモーターなどに使われる「ジスプロシウム」が国内消費量の約230年分あると推定されると発表した。今回の調査で加藤教授は「230年分以上、数百年分埋蔵している可能性がある」と話した。
(赤字強調は管理人による)

南鳥島沖に高濃度レアアース、中国鉱山の30倍超す :日本経済新聞(2013/3/21)

急げ、南鳥島沖のレアアース開発――中国鉱山の30倍の高濃度、埋蔵量は日本の年間需要の300年分以上(前編) | Mugendai(無限大)(2013.11.05)
急げ、南鳥島沖のレアアース開発――中国鉱山の30倍の高濃度、 埋蔵量は日本の年間需要の300年分以上(後編) | Mugendai(無限大)(2013.11.12)

東大・三井海洋開発、国産化にらみ技術開発−南鳥島近海のレアアース | 日刊工業新聞 電子版

密着レアアース調査船 ~“脱中国”はできるか~ - NHK クローズアップ現代+

 

近頃、あまり話題に上らなくなっていたが、9月下旬に沖縄の沖で、海水熱水鉱床での掘削・集鉱し海上に引き上げることに、世界ではじめて成功した。

世界で初めて海底熱水鉱床の連続揚鉱に成功しました~沖縄近海で海底熱水鉱床の採鉱・揚鉱パイロット試験を実施~(METI/経済産業省)

熱水鉱床で成功 水深1600メートル銅・亜鉛など 沖縄近海で世界初 経産省など - 毎日新聞

 

日本メディアの解説でも「資源量」「埋蔵量」「可採埋蔵量」を勘違いして報道されることもある。けっこうある。
しかし、そこにあることが発見されたとしても、技術的に採掘できるかは別の話だし、技術的に可能でも経済的・コスト的に採掘されるかはまったく別の話。これからが楽しみだ。

一方、中国は、毛沢東が「中東に石油あり、中国に稀土あり(中东有石油,中国有稀土)」という言葉を残したからか、レアメタル・レアアース(稀土)のこととなると少し強い論調に陥りやすい。共産党大会がある今年は特にそう。

 

今回の記事では、レアアースを「むしりとる」という表現が新しく出てきた。原文は「薅羊毛」「“薅”中国羊毛」(羊の毛をむしりとる)」。 新華社系のシンクタンク "瞭望智庫(瞭望智库)"の微信アカウント (zhczyj) が、8月7日に発表した記事が最初のようだ。

記事では、中国がこの「レアアース大戦(稀土大战)」(非鉄金属・レアメタルを含む)を勝ち抜く方法として、業界の秩序整備、企業再編、海外での開発、戦略備蓄の4つを提案している。

まず国内の違法採掘対策と資源管理、採掘時・採掘後の環境保護・管理を、しっかり行ってほしいものだ。

 

美日欧开始对中国稀土资源“薅羊毛” 中国稀土资源被贱卖 - 中国粉末冶金商务网(2017-9-27|中企网) 

邓小平说“中东有石油,中国有稀土”,美日欧占够了便宜,中国行动了!(2017-08-07 瞭望智库(微信号 zhczyj)

他们的国,这样获取和保护稀土资源 - 产业前沿 (2017-02-23)

日本发现巨大宝藏,中国已不再是世界稀土的“大哥大”_财经头条(2016年10月09日) 

中国稀土涨价43%! 终于不让美日欧再占便宜了 - 中华网

全球稀土保卫战升级 中国稀土资源被日本疯狂采购 - 中国企业新闻网

 

めも

レアアース泥の資源量について、"無尽蔵"とも言えるという表現も耳にしたことがある。中国メディアさんには、ぜひ「日本はレアアースを無尽蔵に備蓄している」という記事を、うっかり書いてもらいたいものだ。😑 

「レアアースため込む日本、中国に輸出制限緩和を要求」 変な記事の背景: メモノメモ(2010年9月 8日)
「レアアースため込む日本、中国に輸出制限緩和を要求」補足、海底に20年分とはどこから出てきたか?: メモノメモ(2010年9月24日)
日本は20年分のレアアースを海底に「備蓄?」/「ためこむ?」 日本を狙い撃ちにした表現: メモノメモ(2010年9月25日)

「レアメタル」の太平洋戦争 なぜ日本は金属を戦力化できなかったのか

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太平洋のレアアース泥が日本を救う (PHP新書)

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