【H7N9鳥インフル】高病原性へのウイルスの変異　タミフル等が効きにくく、ヒト感染例は増加傾向か

20171021231538 (via. twitter)

中国で、ヒトへの感染が続いているA/H7N9鳥インフルエンザ。

世界保健機関 (WHO) の10月26日の発表によると、2013年3月に低病原性H7N9鳥インフルエンザウイルスのヒトへの感染が確認されてから、ヒト感染患者は1564名（うち、少なくとも612名死亡）（中国（香港、マカオを含む）1556名。台湾5名(輸入症例)、マレーシア1名(輸入症例)、カナダ2名(輸入症例) ）。致死率は30〜40％と高い。

昨シーズン（2016-2017年）は、江蘇省や北京市・首都圏で増加するなど、過去最大の感染者数となった。そのほとんど全てが低病原性のH7N9鳥インフルエンザ・ウイルスによるものだ。

2016年後半に高病原性へのウイルスの変異が確認され、2017年2月には初のヒトでの感染例の発表があった。タミフルやリレンザなど抗インフルエンザ薬は効きにくく、ヒトの感染者数は増加傾向にある。
今シーズン（2017-2018年）の第６波の流行と、高病原性のウイルスによる感染者の増加とパンデミック、そして致死率が心配になる。

ヒトからヒトへの持続的な感染は、まだ確認されていないが警戒が必要だ。
（ヒトからヒトへの限定的な感染は、院内感染も含めて確認されている。）

・今年8月までの、H7N9鳥インフルエンザの確認された感染患者・死亡者のグラフ。

20171020060628
（厚生労働省（WHOの9月27日発表）より）

鳥インフルエンザA（Ｈ７Ｎ９）について｜厚生労働省

WHO | Human infection with avian influenza A(H7N9) virus – China

この高病原性H7N9鳥インフルエンザウイルスは、動物実験によって哺乳類の間で飛沫感染すること、哺乳類に対して致死的な感染を引き起こすことも分かった。東京大学などの研究チームが動物実験で確認し、10月19日付の米科学誌「セル・ホスト＆マイクローブ (Cell Host & Microbe)」に発表した。

中国の患者から分離された高病原性H7N9鳥インフルエンザウイルスの特性を解明 | お知らせ | 国立研究開発法人日本医療研究開発機構

A Highly Pathogenic Avian H7N9 Influenza Virus Isolated from A Human Is Lethal in Some Ferrets Infected via Respiratory Droplets - Cell Host & Microbe

H7N9鳥インフルカテゴリーの記事一覧 - pelicanmemo

Ads by Google

"高病原性H7N9鳥インフルエンザ・ウイルス"は、抗インフルエンザ薬であるノイラミニダーゼ阻害剤（タミフル、リレンザ、等）に対する感受性が低く、効きにくいことが分かってきた。今年2月に、中国の衛生関係者から感染患者にタミフルが効きにくいとの発表があり、今回の動物実験でも確認された。

H7N9病毒变异株出现耐药钟南山呼吁不要接触活禽 - 新华网 https://t.co/Qx97O9vNWo
>据中国疾病预防控制中心官网消息，我国从人感染病例中发现H7N9病毒的变异株，中国工程院院士钟南山认为被发现的H7N9病毒变异株是...
— ぺりかんめも (@pelicanmemo) 2017年2月27日

H7N9病毒变异株出现耐药钟南山呼吁不要接触活禽-新华网
（鐘南山（钟南山）氏は、2002年から2003年にかけて中国で大流行（アウトブレイク）した、SARS（重症急性呼吸器症候群）の対策で活躍した主な科学者の一人。）

国際連合食糧農業機関（FAO）の発表によると、H7N9鳥インフルエンザの、2017年1月10日から10月25日までのヒト感染患者から分離されたウイルスのうち、25例が高病原性と確認されている。

Highly pathogenic virus findings: Since 10 January 2017, highly pathogenic avian influenza (HPAI) type H7N9 virus was detected in a total of 54 poultry or environmental samples (42chickens, 2 duck and 10 environmental samples); H7N9 virus isolates from 25 human cases were found to be HPAI virus.

（赤字強調は管理人による）

FAO H7N9 situation update - Avian Influenza A(H7N9) virus - FAO Emergency Prevention System for Animal Health (EMPRES-AH)

FAOの発表より、高病原性のH7N9のウイルスが確認された地域を地図で見てみよう。

家禽や環境サンプルから発見された例は菱形マーク、ヒト感染例は丸形魔0区。ウイルスが高病原性と確認された例（High pathogenicity for poultry confirmed）は、菱形マークや丸形マークの中央に黄色マークが付いている。（他地域で感染して移動後に感染確認された例は黄色い星マークが付いている。）
高病原性H7N9鳥インフルエンザ・ウイルスが確認されたケースを赤丸で囲った。（見落としがあるかもしれない）

20171020062327 (via. FAO H7N9 situation update)(9/20発表分）

高病原性H7N9鳥インフルエンザ・ウイルスは、中国南部の広東省を中心に確認されている。

その一方で、河南省や安徽省、北京市近く、黒竜江省のロシア国境近くでも、単独例での環境サンプルで確認されているようだ。内モンゴル自治区の西部から陝西省にかけて、ヒト感染例を含む複数のウイルスが確認されている。

さらに、台湾の南部、高雄市でも、高病原性のH7N9鳥フル感染者が出ている。
FAOのアーカイブと台湾での発表・報道から、2017年2月4日に感染が確認された高雄市在住の69才男性で、広東省陽江市で感染し帰国後に発症・死亡した感染患者だろう。台湾で確認された、５例目のH7N9鳥フル感染者（いずれも輸入例）で２例目の死亡者だ。

禽流感疫情來勢洶洶，高雄市召開跨局處整備會議嚴陣以待 - 高雄市政府衛生局

台商染H7N9搶救27天病逝台籍首例[影] | 中央社即時新聞 CNA NEWS

ーー（追記：10/30）ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

台湾の高雄市の感染例が分かりにくかったので追記。
FAOのアーカイブで、2017年2月8日発表分で初めて記されている。高病原性のウイルスを示す黄色マークは、3月8日発表分から表示される。

20171030050158 （via. FAO/EMPRES-AH）

凡例のマークが「星(☆)マーク」（感染確認した地域とは別地域で感染した輸入例）と黄色い丸マークなので分かりにくいが、3月8日発表分で次のように記載されている。

Highly pathogenic virus findings: Out of the 1292 confirmed human cases, H7N9 virus isolates from three cases (two from Guangdong and one from Taiwan Provinces) were found to be highly pathogenic for chickens.
（赤字強調は管理人による）

FAO H7N9 situation update (8 March 2017) - FAO Emergency Prevention System for Animal Health (EMPRES-AH)

ーー（追記ここまで）ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ーー（追記：11/12）ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

国立感染署（NIID）の11月2日付けの発表によると、広東省の２例と台湾の１例で、ノイラミニダーゼ阻害剤（タミフル、リレンザ、等）に対する感受性が低いウイルスの遺伝子変異が検出されている

鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルスによる感染事例に関するリスクアセスメントと対応（2017年11月2日現在）

ーー（追記ここまで）ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

高病原性のH7N9鳥インフルエンザ・ウイルスの、感染経路はどうなっているのだろうか。

台湾の高雄のケースは輸入性であり、広東省の陽江市で感染した可能性が非常に高い。それでは、黒竜江省の西部、中国のもっとも東北の端の地域で確認された高病原性のウイルス（環境サンプル）はどこからきたのだろう？渡り鳥がキャリアだとするとロシアの沿海州や朝鮮半島、日本にも飛来する可能性がある。
他の地域での単独の確認例はどこから？　まだまだ分からないことが多い。

中国の農業部は今年6月下旬から、南部の広東省や広西チワン族自治区等で、家禽に対してH5とH7亜型に対する不活化ワクチンの試験投与を行うとともに、ワクチンの生産体勢の強化をはじめている。

农业部：我国H7N9亚型禽流感疫苗投产-新华网

H7N9亚型禽流感疫苗将投入生产使用 - 中华人民共和国农业部

H7N9鳥インフルカテゴリーの記事一覧 - pelicanmemo

感染症カテゴリーの記事一覧 - pelicanmemo

日本国大使館・総領事館から注意喚起情報が出されています。感染リスクの高い地域へ旅行や渡航される場合には、最新情報を確認のうえ、予防には十二分にお気をつけください。

鳥インフルエンザ関連 : 在広州日本国総領事館

（３）予防
鳥インフルエンザＡ（Ｈ７Ｎ９）に対する一般的な予防策は以下のとおりです。
●休息，栄養を十分に取り，体に抵抗力をつける。
●手指等の衛生保持に心掛ける。
●咳やくしゃみの症状がある患者とは，可能な限り濃厚接触を避ける。
●温度の変化と乾燥しすぎに注意する。
●高熱，咳，呼吸困難等の症状が見られた時は，適切なタイミングで専門医の診断を受ける。
また，鳥インフルエンザＡ（Ｈ７Ｎ９）の特徴及び上記に追加する具体的予防策は以下のとおりです。
●生きた鳥を扱う市場や家禽飼育場への立入を避ける。
●死んだ鳥や放し飼いの家禽との接触を避ける。
●鳥の排泄物に汚染された物との接触を避ける。
●手洗い，うがいにつとめ，衛生管理を心がける。
●外出する場合には，人混みは出来るだけ避け，人混みではマスクをする等の対策を心がける。
（４）発生地域からの帰国時・帰国後の対応
帰国時に発熱，咳，のどの痛みなどの症状がある場合には，検疫所の健康相談室に申し出てください。また，帰国後１０日以内にこれらの症状が出た場合には，速やかに最寄りの医療機関を受診し，発生地域に渡航・滞在していたことを伝えてください。