pelicanmemo

海外の話が多め。近頃は中国が多め(中国海警局・中国海監、深海潜水艇、感染症など)。

日中高級事務レベル海洋協議、第8回会議、上海で開催 両政府の関係改善を反映か?

日中高級事務レベル海洋協議、第8回会議が、12月5日〜6日に中国の上海市で開催された。

「海空連絡メカニズム」の構築と早期運用に向けて「前向きな進展」があったと双方が発表した。

東シナ海での偶発的な衝突を防ぐ防衛当局間の「海空連絡メカニズム」の構築と早期運用に向けて「前向きな進展」があったと双方が発表した。
日本政府関係者は「日中間の相違点をめぐり合意可能な内容がみえてきた」と言及。その上で「運用開始には引き続きプロセスが必要」との見通しを示した。

日中が「海空連絡メカニズム」設置へ 「前向きな進展」 - 産経ニュース

広く報道されたように、「海空連絡メカニズム(海空联络机制)」の構築と早期運用に向けて「前向きな進展」があったそうだ。やらないよりはマシだとは思うが、それよりも、他に気になる部分がある。

例えば「本枠組みを含む二国間での海洋政策と海洋法」という表現がはじめて出てきた。そして「海洋地質学の分野において協力研究の可能性」が検討されている。これについて少し。

第9回会議は来年前半に日本で開催される予定。

第8回日中高級事務レベル海洋協議(結果) | 外務省

中日举行第八轮海洋事务高级别磋商 — 中华人民共和国外交部

日中高級事務レベル海洋協議第7回会議、福岡で開催 あまり進展なし - pelicanmemo (2017-07-01)

 

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前回の第7回から、内閣府(総合海洋政策推進事務局)が担当している。
前回参加しなかった国土交通省がふたたび参加した。
文部科学省が2回あけてふたたび参加した。

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中国からの参加は、微妙に変わった。
前回参加しなかった環境保護部がふたたび参加した。
地質調査局が2回あけてふたたび参加した。中国科学院は参加していない。
農業部が参加しなかった。

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第8回で「二国間での海洋政策と海洋法」についての項目が発表された。
(注:日本外務省の発表と中国外交部の発表で項目番号が違うのは、日本の外務省の発表が最初の段落2つにも番号をふっているため、2つずつずれてしまっている。以下の項目も同じ。)

3 双方は,本枠組みを含む,二国間での海洋政策と海洋法についての意思疎通を継続することの重要性について確認しました。 

一、双方确认通过包括本机制在内的双边渠道就海洋政策及法律保持沟通的重要性。

日本語で「海洋法」というと国際海洋法や国連海洋法条約もイメージされるが、中国は、国内法と国際海洋法の恣意的な解釈を使い分けているので、食い違いが生じるかもしれない。(第5回会議でも発表項目はあり、その時の中国側の発表は「海洋政策及海洋法」という表現だった。)

 

海洋地質学の分野での、日本と中国との研究協力の実行の可能性が俎上にのった。日本の文部科学省と中国の地質調査局がともに、前回と前々回は参加せず、今回ふたたび参加している。

10 双方は,海洋地質学の分野において,協力研究の可能性を検討することで一致しました。
11 双方は,東シナ海資源開発に関する「2008年合意」に関連する問題について,意思疎通を強化していくことで一致しました。

八、双方同意探讨在海洋地质科学领域开展合作研究的可行性。 
九、双方同意就东海问题原则共识相关问题加强沟通交流。

東シナ海ガス田に関するものだろうか?
それとも、中国の海洋調査船による、日本の排他的経済水域(EEZ)での、無許可の調査活動に関連するのだろうか?(第6回会議で「海洋の科学的調査に関する日中間の相互事前通報の枠組みに関する問題について意見交換」が行われた。第7回会議では発表項目にのらなかった)

字面だけを見ると共同研究は良い事のように感じられるが、海洋地質学の、海底の資源開発も関わる重要なものだ。東シナ海ガス田の2008年6月の合意と、その後の中国による一方的な開発という前例もある。注意が必要だ。

(変わる安全保障)東シナ海、海洋調査の攻防 中韓、ドローン・船続々/日本、測量船新造へ:朝日新聞デジタル (2017年5月23日)

中国は2012年、大陸棚拡張案を国連大陸棚限界委員会に提出しており、大陸棚拡張の主張を強めるため自国の陸地から流れ込んだ堆積物を根拠にする狙いがあるとみられる。

中国、尖閣EEZで泥採取 無許可調査、大陸棚拡張の根拠に利用か(1/2ページ) - 産経ニュース (2017.7.23)

尖閣諸島をとられたら、東シナ海の大部分を占める大陸棚が中国の管轄だと主張する上での、非常に強い根拠となるだろう。

 

「日中海運政策フォーラム(中日海运政策论坛)」が、はじめて日中高級事務レベル海洋協議の発表に現れ、再開されることになった。
日中海運政策フォーラムは、日本と中国の外航海運や海事政策全般について議論や意見交換を行ってきたもので、2012年(平成24年)の第4回まで開催されていた。2012年9月の尖閣諸島の3島国有化への対応として、中国側から中断されていたようだ。

8 双方は,日中海運政策フォーラムを再開し,双方が共に関心を有する海運政策に関する協力について議論することで一致しました。双方は,日中バイの安全・汚染防止メカニズムの下での協力を引き続き強化し,共に関心を有する海事分野の問題について議論することで一致しました。

六、双方同意重启“中日海运政策论坛”,讨论双方共同关心的海运政策合作。双方同意继续加强双边安全和防污染机制下的合作,讨论共同关心的海事领域事务。  

報道発表資料:第4回日中海運政策フォーラムの開催結果について - 国土交通省 (平成24年3月29日)

 

海上保安庁と中国海警局との間は、わずかに進展した?

第8回
6 海上保安庁と中国海警局は,既存の対話窓口が双方の情報交換の面で発揮している役割及び実務者間の交流を評価するとともに,両国の海上法執行機関の協力の強化について,更なる意見交換を実施しました。

第7回
3 海上保安庁と中国海警局は,既存の対話の窓口の役割を評価し,更なる信頼醸成のため,情報交換の強化及び実務者間交流の推進について一致し,両国の海上法執行機関の協力の強化について,更なる意見交換を実施しました。

海上保安庁と公安部辺防管理局との間での「密輸・密航及び麻薬取引等の越境犯罪対策」は、適切な時期に専門家の相互訪問が実施される。

 

海洋ごみに対する協力が一番進展している。

漁業分野と水産資源の保護・管理については、第8回では発表されなかった。太平洋クロマグロの資源管理など、他の会議と連携させているのだろうか?

 

防衛当局間の「海空連絡メカニズム」は、「進展があった」という報道の後に、いろいろ言われているけど、やらないよりはずっとマシかな。
安倍晋三首相の訪中(2018年の実施を検討中)の時か、日中韓首脳会談(年内開催は見送り)の李克強首相の訪日の時の正式合意に向けて調整が進められている。

4 双方は,防衛当局間の海空連絡メカニズムの構築及び運用開始について前向きな進展を得ました。また,防衛当局間の交流を強化し,相互信頼を増進していくことで一致しました。

二、双方就建立并启动防务部门海空联络机制取得积极进展。此外,双方同意继续加强防务部门间的交流,增进互信。

日中両政府の関係改善が、少し伝えられている。関係改善しつつあるから「海空連絡メカニズム」の進展があったのか、関係改善を印象づけるため双方がわざわざ発表したのか・・・

 

少なくとも、尖閣諸島の接続水域や日本の領海で頻繁に確認されている中国海警局の公船は、11月29日に領海侵入し、同日に接続水域を出てから2週間以上、確認されていない。

12月5日〜6日の第8回日中高級事務レベルが終わっても、次の4隻は待機させたまま、少しは両政府の関係改善の雰囲気に気をつかっているのかもしれない。

そろそろ、その次の4隻に交代する時期になる。

 

日中高級事務レベル海洋協議第1回会議(概要) | 外務省

日中高級事務レベル海洋協議第2回会議(概要) | 外務省
日中高級事務レベル海洋協議第3回全体会議及びワーキンググループ会議の開催 | 外務省
日中高級事務レベル海洋協議第4回会議(結果) | 外務省
日中高級事務レベル海洋協議第5回会議(結果) | 外務省
日中高級事務レベル海洋協議第6回会議(結果) | 外務省 
第7回日中高級事務レベル海洋協議(結果) | 外務省
第8回日中高級事務レベル海洋協議(結果) | 外務省

 

中日举行第一轮海洋事务高级别磋商 — 中华人民共和国外交部
中日重启海洋事务高级别磋商 — 中华人民共和国外交部
中日举行第三轮海洋事务高级别磋商 — 中华人民共和国外交部
中日举行第四轮海洋事务高级别磋商 — 中华人民共和国外交部
中日举行第五轮海洋事务高级别磋商|中国政府网(来源:新华社)
中日举行第六轮海洋事务高级别磋商|中国政府网(来源:新华社)
(外交部プレスリリースに、第五回、第六回は見当たらない(報道官談話や報道発表はある))
中日举行第七轮海洋事务高级别磋商 — 中华人民共和国外交部
中日举行第八轮海洋事务高级别磋商 — 中华人民共和国外交部

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