pelicanmemo

海外の話が多め。近頃は中国が多め(中国海警局・中国海監、深海潜水艇、感染症など)。

【中国海警局】 公船4隻、尖閣沖で確認、11月29日以来。3週間以上の空白。

20160809194748
(海上保安庁第11管区海上保安本部(資料写真))

中国海警局の海警2306、海警2502、海警2101、海警2106の4隻が、12月22日午前9時半頃、尖閣諸島の接続水域で確認された。23日の八重山日報が伝えた。
11月29日に、海警2166、海警2401、海警2102、海警35115の4隻が領海侵入をした後に接続水域を出てから23日ぶりの確認だ。

 

理由のひとつは、12月5日・6日に上海で行われた第8回・日中高級事務レベル海洋協議の様子見だろう。日中両政府の関係改善、特に経済分野が影響しているのかもしれない。それでも、もし中国人民解放軍が、「海空連絡メカニズム」の構築と早期運用の進展によって、事前連絡しさえすればどこまで前方展開が出来るのか考えているようなら、少し違う方向での注意が必要となるだろう。中国のサラミ戦術は続いている。

 

正しい答えは海警司令部の中の人しか知らないと思うが、少なくとも、次の、尖閣諸島の周辺海域へ送るための船隊らしい4隻は用意されていた。しかし動かなかった。
いま来ている4隻は、さらにその次の4隻だろう。

 

Ads by Google

 


11月29日、4隻のうち海警2102だけがひと足先に接続水域を出た。次いで海警2166、海警2401、海警35115も接続水域を出て、29日の夜には大陸沿岸に戻っていた。

パターンに気付いて、チェックされている人も多いと思う。

尖閣諸島の接続水域で確認される中国海警局の船は、その前日には、浙江省温州市近くの沿岸海域で1隻から4隻が待機していることが多い。台風が接近して海が荒れた時には、そのあたりに戻る。その他、なぜか時々戻っている。

12月4日には海警2308、海警2115、海警31239の3隻が居て、数日後、海警2305が加わった。次の4隻だったのだろう。

12月5日・6日の日中高級事務レベル海洋協議が終わったら動くかもしれないと思い、毎朝チェックしていたが動かない。

12月14日には、さらに海警2306、海警2502、海警2101、海警2106が加わって8隻となっていた。そこから少しずつ減り、12月19日には尖閣沖で昨日確認された4隻となった。

ルーチンワーク化した "ぬるま湯"のような状況が続いているが、それはサラミ戦術(サラミ・スライス戦略)で、ゆっくりと、状況は進められている。3年前には3隻の船隊だったが、新造の3000トン級以上の海警船が本格運用されるようになると4隻となり、2015年の年末から機関砲を装備した艦船1隻が含まれるようになった。

怖いのは、2016年8月のように、ぬるま湯のような状況が続いて気を抜いているところに、いきなり大きな状況が起こることだ。

 

中国海警局 カテゴリーの記事一覧 - pelicanmemo

中国の海洋侵出を抑え込む──日本の対中防衛戦略

中国の海洋侵出を抑え込む──日本の対中防衛戦略

 

 

尖閣諸島沖に派遣される海警船は、海警司令部・中国海警指揮センターが決めるのだろう。船隊の構成はほぼ、機関砲装備の武装船が1隻(まれに0隻)、3000トン級以上が2隻以上、漁政が1隻(たまに2隻)というパターンとなっている(2017年)

ところが日本メディアの記事や日本語ネットのコメントには、そういうパターンを知らないのか無視しているのか、時々、変なものがあらわれる。

例えば、週刊SAPIO2017年11月12日号の「米研究者が日本に警告「中国は間もなく尖閣の施政権を主張する」」という記事。ネットでは、NEWSポストセブンで2回に分けて転載されているので引用してみたい。

昨年までは尖閣周辺の日本領海やそのすぐ外側で日本の主権の及ぶ接続水域に侵入してくる中国海警の武装艦艇はいつも2隻だっただがいまでは必ず4隻の行動をともにする艦隊となった。倍増なのだ。しかも各艦は1000t級から5000t 以上の、巡視艇としては大型ばかりの組み合わせだ。この艦隊が毎月3回ほど、定期的に日本領海に侵入してくるのだ。
(中略)
日本側ではこれらの艦艇を中国公船と呼ぶ。公式には国家海洋局の傘下の中国海警局所属の船だが、海警局は事実上は人民解放軍の指揮下にあり、軍事色が強い。実際に尖閣領海に侵入してくる艦艇はみな大型機関砲などで武装している目的は究極的には尖閣諸島の日本からの奪取である。
(赤字強調は管理人による) 

中国尖閣攻勢は米にとって「日本の国難」との深刻な懸念│NEWSポストセブン (2017.12.04)

尖閣 自衛隊が動けば中国は即座に人民解放軍を投入する準備│NEWSポストセブン (2017.12.06)

警鐘をならすつもりの表現だと思うが、もうちょっと、こう、正しい内容で伝えてほしいものだ。
Japan In-depth の12月22日付けの記事(著者同じ)でも、この記事ほどではないが、似た表現になっている。

その当面の証拠として中国海警の大型武装艦艇が4隻の艦隊を組み、毎月平均2,3回、日本側の領海や接続水域に一方的に侵入してくる事実をあげていた。

「尖閣を奪え!」中国、軍事作戦立案 | NEXT MEDIA "Japan In-depth"[ジャパン・インデプス] (2017/12/22)

"鳴らない鈴"は良くないが、"鳴りすぎて五月蝿い鈴"は読者・視聴者をマヒさせ、「また〜の記事か」という風にかえって興味を削いでしまいかねない。

このSAPIOの記事も、後半部分の、もと米海軍大学教授のトシ・ヨシハラ氏の分析などは読む価値があるのに、こういうつまらない間違いで煽った感じになっていて、残念に感じられた。

 

尖閣沖、中国海警局の公船3隻が領海進入 産経ニュースは報道を縮小か? - pelicanmemo (2017-03-24)

中国海警局 カテゴリーの記事一覧 - pelicanmemo

海の地政学 海軍提督が語る歴史と戦略 (早川書房)

海の地政学 海軍提督が語る歴史と戦略 (早川書房)