(海上保安庁より)
5月24日、中国海警局の公船4隻が、尖閣諸島の日本の領海に侵入した。海上保安庁第11管区海上保安本部によると、4隻は、海警2307、海警2401、海警2101、海警33115。今月2回目。5月18日に同じ4隻が領海侵入している。
<尖閣情勢>24日、中国海警4隻が領海侵入 - FNNプライムオンライン
その5月24日にネット公開された、夕刊紙「日刊ゲンダイ」の連載記事の内容に、ちょっと気になる、変なところがあった。
中国海警局の東シナ海を担当する東海分局は3つの総隊を持ち、そのそれぞれが月に1回出ていく、だから尖閣の領海侵入は月3回になっていたのだそうだ。
本当だろうか?これについて少し。
私は3年ほど前に、中国公船の領海侵入が判で押したように月3回であることに疑問を持ち、海上保安庁に問い合わせたが返答がなく、中国人記者を通じて中国側から探ると、「東シナ海を担当する海警局東海分局は、上海、浙江、福建の3総隊を持ち、そのそれぞれが月に1回出ていくので月3回になる。しかも15年以降はその出動を日本海保に『事前通告』し、また領海内にとどまる時間も2時間以内と定め、余計なトラブルを避けるようにしている」とのことだった。
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まず結論。間違いです。😊
中国海警局の公船は、
・2015年(3年前)は2〜3隻、2016年から3〜4隻のグループで、尖閣諸島の日本の領海や接続水域で確認されている。領海侵入は1ヶ月あたり2〜3回だった。(ここは合っている)
・1ヶ月に2グループで、1グループあたり1回〜2回の領海侵入を行っている。
海上保安庁の公開資料で表・グラフ化されているのは、領海侵入した"のべ隻数"であり、実際には、領海侵入が月3回の場合そのうち2回は同じグループによるもの。
・1グループの3〜4隻の海警船は、東海分局の3支隊のどこかの所属だけにはなっていない。省(自治区・直轄市)地方総隊の船もいる。
偏りはあるので、それぞれの総隊(支隊)から融通して、調整して派遣しているのだろう。
・2017年後半から、パターンが少し変わってきた。
「世界の艦船」2018年7号 海上保安庁 創設70周年 - 目次
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国家海洋局/中国海警局の、東シナ海を管轄する東海分局には、浙江省(寧波市)の第四支隊、上海市の第五支隊、福建省(廈門市(アモイ))の第六支隊の3つの支隊がある。日刊ゲンダイの記事にある「上海、浙江、福建の3総隊」とはこの3支隊のことだろう。
尖閣沖で確認されるのは、東海分局の3支隊の船だけではない。
海警船の中の番号5ケタの船は、省(自治区・直轄市)の海警総隊に所属する。ちょうど今、尖閣沖で確認されている「海警33115」は浙江省の海警総隊の船だ。
2015年末から、中国海軍のもとミサイル・フリゲートの3隻「海警31239」「海警31240」「海警31241」が尖閣沖で確認されるようになった。この3隻は上海総隊機動支隊(上海市)。
【中国海警局】「海警31240」 3隻目のもと中国海軍フリゲート 機関砲を装備|上海総隊機動支隊所属 - pelicanmemo (2017-02-07)
(NHK)(海警33115)
海上保安庁と中国の国家海洋局による公式の資料によると、3年前の、2015年3月には3回の領海侵入(3月16日、22日、30日)があった。3回とも同じ3隻で、「海警2306(第六支隊(福建省))」、「海警2350(第五支隊(上海市)」、「海警2102(第五支隊(上海市)?)」だった。
2015年4月には3回の領海侵入(4月4日、17日、30日)があった。4月4日は3隻で「海警2401(第五支隊(上海市))」「海警2506(福建?)」「海警2113(江蘇海警総隊(江蘇省))」。17日と30日は同じ3隻で「海警2307(第五支隊(上海市))」「海警2337(第四支隊(浙江省)」「海警2101(第五支隊(上海市)?)」だった。
他の年の他の月でも、似た感じになっている(2016年8月のような特殊な場合を除く)。
それぞれの総隊(支隊)の船艇の運用状況を見て、毎回等しく振り分けられるわけではないが、調整して派遣しているのだろう。
日刊ゲンダイの記事の
「東シナ海を担当する海警局東海分局は、上海、浙江、福建の3総隊を持ち、そのそれぞれが月に1回出ていくので月3回になる。
という説明は、単純化された図式なので分かりやすく感じるかもしれない。しかし、実際に尖閣沖で確認された船隊とパターンとは矛盾していて、間違っている。
そうすると次の、そのカギ括弧付きの個所の後半の方も・・・、正しいのだろうか?間違っているのだろうか?
しかも15年以降はその出動を日本海保に『事前通告』し、また領海内にとどまる時間も2時間以内と定め、余計なトラブルを避けるようにしている」とのことだった。
著者の高野孟氏は「中国人記者を通じて中国側から探ると ...」と述べている。
日本側には「海上保安庁に問い合わせたが返答がなく」と組織名を書いているが、中国側ではどの組織の関係者、有識者に確認したのかは書いていない。
果たして、日本の海上保安庁に対して『事前通告』が行われていたのか?現在も行われているのか? 国会議員や政治家、ジャーナリストの方々には、それが正しいかどうか海保に確認をして、国民に知らせてほしいものです。😊
(腾讯视频より)
2017年後半から、パターンは少し変わってきている。
領海侵入は、月2回(たまに1回)に減っているので、日刊ゲンダイDIGITAL5月24日付け記事の内容がすべて間違っているというわけではない。
接続水域の航行日数は減り、大陸沿岸で待機している日数は増えている。
しかし、1ヶ月に2グループ、1グループの領海侵入は1〜2回という構図は変わってはいない。
日刊ゲンダイの記事は、「両国の海上保安当局のあうんの呼吸によるなれ合いで、事実上の「棚上げ」状態」と述べ、こう締めくくっている。
したがって、周辺海域が過去に例のないほど緊迫していて尖閣領海への侵犯も増えているかに言うのは、国民を欺くデマゴギーである。
間違ったデータ分析から、正しい結論を導き出すのは難しい。
2018年3月に中国共産党と国務院との大規模な機構改革深化が行われ、海警部隊は、党中央軍事委員会が指揮する武警部隊(中国人民武装警察部隊、武警)の傘下となった。
武警部隊の王寧(王宁)司令官は今月の会合で、「武装警察の力は、“陸に強く、海と空に弱い。国内に強く、国外に弱い”という顕かな問題がある」と指摘し、武警部隊の使命の拡大にともなって、新たな能力の建設を始めなければならないと語っている。
对新型力量建设的方向,王宁的讲话提供了线索:“武警力量体系‘陆上强、海空弱,境内强、境外弱’的问题凸显。”问题所在就是建设所在。
武警欲打造何种新型力量体系? - 北京青年报(5月20日)
もしかすると、ここ数ヶ月、中国海警局の対応が穏やかになっているように見えるのは、武警部隊への編入のための組織間の調整など準備であり、機構改革の後は、部隊の再編と体制の整備といった、過渡期にあるからかもしれない。
近視眼的/老眼的にならず、風雲は過ぎ去り晴れ空となったのか?嵐の前の静けさなのか?、どの可能性も無視しないよう気をつけたいものだ。
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