(韓国経済新聞より)
6月4日の午後11時ごろ、韓国の釜山市の高速道路の料金所で現代自動車の電気自動車(EV)「アイオニック5」がトールゲートに衝突し、直後に火災が発生した。運転手と助手席の同乗者の人が死亡した。
朝鮮日報(日本語版)が「衝突から3秒で黒煙…現代自EVアイオニック5、火災で「熱暴走」」のタイトルで日本語の記事を公開したことで、「衝突から3秒で炎上」「逃げる暇も無く焼け死んだ」「低速での衝突でもバッテリーが発火」といったおかしなコメントを見かける。「電気自動車のバッテリー、怖い」というコメントは、気持ちはよく分かる。
朝鮮日報などの初期の記事の誤りについてと、衝突事故での死亡原因、衝突時の速度の推測、なぜEV「アイオニック5」のバッテリー・ユニットが損傷して発火し、なぜ炎上したのかについて少し調べてみた。
--(追記:2023/11/25)------------------
韓国の現代自動車のEV「アイオニック5」に関するブログ記事を、韓国での公式発表と現地報道を1年以上追いかけて書いてきました。
近ごろ、古いブログ記事だけがSNSで拡散され勘違いされているようなので、その後の事故等を検証した記事の一覧を載せておきます。特に直近の「事故車を解体【動画】 | 正面衝突で、バッテリーが炎上した場合と炎上しなかった場合」を読んでいただきたく思います。
現代自動車のEV「アイオニック5」、事故車を解体【動画】 | 正面衝突で、バッテリーが炎上した場合と炎上しなかった場合。 - pelicanmemo (2023-09-27)
現代自動車のEV「アイオニック5」、縁石にぶつかりバッテリーが損傷して全焼 - 韓国 済州島 - pelicanmemo (2023-03-31)
現代自動車のEV「アイオニック5」が衝突炎上、再び| 車幅より細い障害物への正面衝突で発火〜炎上リスク (追記あり) - pelicanmemo (2022-12-08)
現代自動車のEV「アイオニック5」、高速道路の料金所で衝突、炎上。搭乗者の死亡原因と、発火の原因と、車両火災の原因と。 - pelicanmemo (2022-06-21)
バッテリー・モジュール冷却用の絶縁不凍液(可燃性)のタンクがボンネット内右側に設置されています。衝突事故の直後に、ボンネットで起きた発火の原因である可能性は高いですがそれは外的要因でしょう。一部コメントで見かけた、その発火によってさらに消火困難なEV火災へと拡大したとは考えていません。
消火困難なEV火災は、車体の低い位置に設置されているバッテリー・ユニットが直接に受けた強い衝撃と変形と内部発火が原因だと考えられます。
--(追記ここまで)--------------------
(追記2022/12/08:ふたたび衝突炎上しました。ブログ記事にまとめました。
現代自動車のEV「アイオニック5」が衝突炎上、再び| 車幅より細い障害物への正面衝突で発火〜炎上リスク - pelicanmemo
)
その朝鮮日報(日本語版)とそれを転載したYahooの記事はすでに削除されている(ネット・アーカイブ・サイトで読む事ができる)。
内容に問題があったのか・・・、あるいは現代自動車(ヒョンデ)は今年(2022年)日本へ再進出をしていて主力の一台が電気自動車(EV)「アイオニック5(아이오닉5)」だからだとみるのは勘ぐりすぎだろうか?
韓国の、事件事故調査を行っている国立科学捜査研究院(国科捜)からの公式発表はまだ出ていないが、大徳大学自動車学科のイ・ホグン教授が取材を受けて国科捜の初期の調査結果と見解を紹介していた。韓国の自動車関係のネット掲示板では、おおむねその見解が確からしいとして引用をされているようだ(もちろん全部を見たわけではありません)。
이호근 대덕대 교수 "아이오닉5 부산 화재사고, 운전자 과실" - 디지털타임스
(追記:11月に韓国国立科学捜査研究院から衝突・炎上した「アイオニック5」の鑑定と捜査結果が発表された。ブログ記事の中ほどにまとめて追記しました。次の箇条書きとほぼ同じでした。)
(1)衝突時の速度は、時速90~100km。
朝鮮日報の記事では、警察関係者の見解として「車の破損度合いからすると高速で激突したとは考えられない」と書かれていたので、それをそのまま信じたコメントを多く見かけた。
時速60kmや時速30kmでは無い。
(2)運転手と助手席の同乗者の死亡原因は、車両火災ではなく、スピード・オーバーとシートベルト未装着によるもの。
シートベルト未着用の警告音を出さないようにする「シートベルト警告音キャンセラー」を使っていた上、助手席のシートは後ろにすっかり倒されて横になっていた。また、剖検の結果、死者2人の呼吸器からすすや煤煙は確認されなかった。火災発生時にはすでに死亡していた可能性が高い。
(3)事故調査官によると、衝突から1〜2秒で爆音とともにボンネット付近から火の手が上がった。約15分後に消防車が到着した時には、車内にまで燃え広がっていた。
しかし、現代自動車の電気自動車(EV)「アイオニック5」のリチウムイオン電池はキャビン床下に薄く広く設置されている。ボンネットには無い。
(現代自動車より)
最初に爆発的に発火した原因はリチウムイオン電池への衝撃で、長時間鎮火しなかったのはバッテリーの熱暴走でも、車両炎上はバッテリーだけが原因とは限らない。
現代自動車の公式発表では、衝突時に室内とバッテリーへの衝撃が緩和されるよう安全性を考慮した構造が採用されている。
続いて、(1)と(3)に関連してもう少し詳しく検証してみよう。
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