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海外の話が多め。近頃は中国が多め(中国海警局・中国海監、深海潜水艇、感染症など)。

マレーシア航空370便を捜索の中国船がスパイ活動? 中国救捞「東海救101」

2014年3月に消息を絶ったマレーシア航空370便、今年もインド洋南部で、オーストラリア、マレーシア、中国の船や航空機による合同捜索活動が続けられていた。8月に捜索活動の終了予告が発表された。

今年、中国が派遣した捜索救助船「東海救101」が、ほとんど捜索を行っておらず、専ら、オーストラリア西岸の軍事施設のスパイ活動を行っていた可能性があると、9月23日付けのオーストラリアン紙が報じた。

中国、スパイ活動優先か=不明マレーシア機の捜索:時事ドットコム

 

違和感を感じたので、これについて少し。 

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まず、中国の海難救助を専門とする救助打捞局(救助・サルベージ局(中国救捞))の捜索救助船「東海救101」に、軍事施設をスパイ活動する充分な能力があるだろうか? ここに違和感を感じた。

20160923214624(via. The Australian) 

「東海救101(东海救101)」は、 救助打捞局の東シナ海を管轄する東海救助局に所属する、海難捜索救助の専用船。全長116.95m、全幅16.2m、型深7.8m。満載排水量6513.13トン。主機出力7200kw(約9700PS)x2。2012年配備。

外観からも分かる通り、曳航や捜索救助に特化した船で、レーダーやアンテナ等の設備は少ない。 

 

9月23日付けのオーストラリアン紙の記事はこちら。

The Chinese government ship tasked with hunting for Malaysia Airlines flight MH370 has done little searching but has probably used the opportunity to spy on Australian military activity, ­according to security experts.

Chinese MH370 search vessel ‘not looking but spying’ - The Australian

 

オーストラリアン紙が独自に、オーストラリア政府JOCC(Joint Agency Co-ordinating Centre)の週報を分析したところ、中国の捜索救助船「東海救101(Dong Hai Jiu 101)」は今年2月にインド洋南部に派遣されてから8月までの約7ヶ月間に、ほとんど捜索活動を行っていないことを確認したそうだ。

JOCCの週報ページはこちら。
Operational Search Update - Joint Agency Coordination Centre

 

「捜索活動を行っていない」という根拠は、捜索救助船「東海救101(Dong Hai Jiu 101)」の動向(悪天候でフリーマントルに停泊など)と、MH-370機の捜索のために特別に装備してきた水深6000m曳航式ソナーの運用実績がもとになっている。
8ヶ月間に、わずか17日から30日しか捜索に使用されていないという。

But an analysis by The Australian of weekly operational bulletins on the search put out by the JACC has determined that the vessel’s sonar imaging “towfish” has in fact been in the water looking for the downed aircraft between only 17 to 30 days.
(赤字強調は管理人による)

この曳航式ソナーは、米国のSL-HYDROSPHERIC社の「SLH-60 towfish(SLH-ProSAS-60  )」で、中国製ではない。「東海救101」が中国を出発した後、シンガポールでこのシステムを載せているので、MH-370機捜索活動のために、特別にリースしたものだと考えられる。

 

そして、「東海救101」が2月25日に捜索活動を始めてから1ヶ月、3月21日夜にロストしてしまった。

Dong Hai Jiu 101 is en route to Fremantle after an incident on the evening of 21 March in which the failure of a tow cable connector resulted in the loss of the SLH-ProSAS-60 towfish. Recovery options are currently being assessed.
(赤字強調は管理人による)

MH370 Operational Search Update—23 March 2016 

原因は牽引ケーブルのコネクターの故障か接続ミスと言われている。 怪我人1人が出たようだ。

4月18日に回収に成功したが、その後はJACCの週報には出てこない。曳航式ソナーを使ったのは、最初の1ヶ月がほぼ全てとなるだろう。

MH370 Operational Search Update—20 April 2016

故障したか、運用システム(ケーブル、コネクタ、操作員等)に問題が起きたのかもしれない。

インド洋南部、MH-370機の捜索海域は水深3000m以上なので、「東海救101」の通常の装備ではまったくと言っていいほど捜索の役に立たない。新しく深海用の曳航式ソナーを用意は出来ないだろうし、かといって、帰国したくても派遣期間中の帰国はできないだろう。
そこで、欧米の先進水中探査の技術と設備について、オーストラリアや他国の専門家との交流活動を行っていたのではないだろうか。

Its captain and crew are also likely to have used interaction with Australian and international experts to acquire knowledge of advanced Western underwater search techniques and equipment, and tested out submarine tracking technology.

Chinese MH370 search vessel ‘not looking but spying’ - The Australian

 

この記事を書いたEan Higgins記者は、曳航式ソナーがロストした事件について当然知っており、9月6日付けの記事「中国の捜索船、不運と悪天候で退場」(意訳)で触れている。

Chinese ship sidelined by bad luck, foul weather in MH370 search - The Australian

今回の記事は、その"退場"している間に何をしていたのか、別方向から考察したという位置づけなのだろう。(曳航体がロストしていた事には触れていない。)

 

「東海救101」がフリーマントルに停泊している間、入港する船舶の記録などをとっていても不思議ではないが、豪州西岸の関係ない地域の軍事施設も絡めて「スパイ活動」と、特に取り上げるのはどうだろう?

豪州メディアの中の、中国の軍事的な拡大戦略に対する危機感を感じさせる、ための論調の記事と感じられる。

 

Towfish ‘lost’ again in search for MH370 | News.com.au

Chinese vessel Dong Hai Jiu 101 prepares to resume search

交通部派专业救助船"东海救101"抵南印度洋 搜寻马航MH370 - 央广网

马航失踪客机落入南印度洋 - 新华网(特設サイト) 

Joint Agency Coordination Centre

东海救101 - 交通运输部救助打捞局

SLH PS-60 General

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