pelicanmemo

海外の話が多め。近頃は中国が多め(中国海警局・中国海監、深海潜水艇、感染症など)。

中国で生産されている昆布の起源は北海道 1927年に函館から大連へ

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铁血社区より(2013年4月2日閲覧))

中国科学院海洋研究所と北海道大学との共同研究により、中国で養殖され販売されている昆布(海带)の起源は北海道だということが分かった。

これに対し、中国のネットユーザーから、「昆布は日本からのものだからボイコットしないと」と、お決まりのコメントが寄せられた。

中国の昆布の起源は北海道だった!?驚きの研究結果に「ボイコットしないと」―中国ネット - Record China

(レコード・チャイナの記事では、"北海道大学の四ツ倉教授"とあるが、正しくは北海道大学の理学部生物科学科、北方生物圏フィールド科学センターの四ッ倉典滋准教授(記事公開時点)。)

 

中国で生産されている海藻のうち、昆布(マコンブ(学名:Saccharina japonica))は海藻の年間生産量の約半分を占めている。主に山東省で生産され、2016年の総生産量は140万トン(乾燥重量)にもなる。

これについて少し。 

(追記 3/9 :中国科学院から公式の解説があったので、後半に追記しました。)

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北海道 つながる海と川の生き物

北海道 つながる海と川の生き物

 

中国科学院海洋研の発表と論文によると、昆布(海带)は中国土着の種ではなく、起源は北海道にある。

日本(北海道)、韓国、中国、ロシアの昆布の個体群の、ゲノム上のマイクロサテライト配列(ゲノム上に散在する短い反復配列)の解析により、中国の昆布の個体群は、対立遺伝子やヘテロ結合型などの数が日本の昆布の個体群と比べ有意に少なく、遺伝的距離が他の個体群よりも日本の個体群と近く、創始者効果が見られる。

分かりやすく書くと、遺伝的多様性が高い日本の北海道の昆布の一部が中国へ伝播し、現地で増やされて生産されてきたと考えられる。 

中国では、遺伝的多様性が低いため、昆布の品種改良の時に近親交配の問題が現れているそうだ。品種間の遺伝子関係を明らかにし、遺伝的な悪影響を考慮した対応が求められている。

 

昆布(海带)は、1927年(昭和2年)に北海道の函館市から、中国北部の大連市(遼寧省大連市、当時は日本の関東州大連市)(遼東半島の西端に位置する)に持ち込まれ、山東省煙台市(渤海を挟んだ対岸の山東半島東端)や青島市などに拡まっていったそうだ。

关于我国海带的来源,现在被普遍接受的观点是:“海带不是我国的土著种,是1927年从日本北海道的函馆引入到中国大连,并逐渐扩散到烟台、青岛等地。”

“海带品种分析和物种溯源研究”取得进展 - 中国科学院海洋研究所

 

黄海エコリージョン 生態的重要地域【藻類】
紫色に塗られた海域が、藻類にとって特に重要な生息域。

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WWFジャパン(2013年4月2日閲覧))

 

今回の発表や論文(要約)には、函館から大連に持ち込まれた経緯までは載っていなかった。 

Novel implications on the genetic structure of representative populations of Saccharina japonica (Phaeophyceae) in the Northwest Pacific as revealed by highly polymorphic microsatellite markers; Shan, T., Yotsukura, N. & Pang, S. J Appl Phycol (2016). | SpringerLink (Journal of Applied Phycology)

Genetic diversity and population structure among cultivars of Saccharina japonica currently farmed in northern China - Wiley Online Library (Phycological Research)

 

ーー(追記:2017/3/9)ーーーーーー

中国科学院が、中国ネットの反響に答えて、微信(WeChat)の公式アカウント "中科院之声" で解説文を公開した。観察者網が伝えた。以下、抄訳。

研究の目標は、中国で生産されている昆布の品質向上のための科学的根拠を提供するところにある。

中国での海藻学の基礎を確立した第一人者である曾呈奎 氏によると、昆布(海带)は、1920年代に中国北部に移入したそうだ。最初は北海道や本州北部から、(移植の)意図なく運ばれて自然繁殖したのだろう。1930年に大槻洋四郎氏が、大連で昆布が自生していることを知り、北海道から昆布種苗を輸入して正式に養殖を始めている。養殖方法を改良(投石法から筏式養殖に改良)することでコスト削減と生産量を増やすことに成功し、現在では、中国の生産量は日本を凌駕し昆布養殖大国となった。

中国海带起源于日本还是一个从未有人否认过的事实。

(注)中国で現在、大規模に養殖されている昆布の種類(マコンブ(学名:Saccharina japonica))の、遺伝的な起源を解明したもの。中国で古くから利用され本草書にも載っている海藻類もまた中国の土着ではなく、朝鮮半島から輸入されたものだそうです。

一项造福吃货的研究,怎么宣传成了这样? - 中科院之声(3月6日)

中科院海洋所首次证实我国海带来源于日本北海道 - 观察者网(3月8日)

わが国の水産業 - 日本水産資源保護協会(pdf)(平成8年3月)

大槻洋四郎氏と中国 - 海の森から(個人ブログ)(2007/09/26)

がごめ大辞典 - 1.中国の昆布 その1
がごめ大辞典 - 2.中国の昆布 その2

ーー(追記ここまで)ーーーーーーー

 

四ッ倉典滋 准教授 / YOTSUKURA, Norishige | 北海道大学 理学部 生物科学科(生物学)ホームページ

忍路臨海実験所札幌研究室のホームページ | Find Your Kelp !   

 

328回「世界遺産 知床の海 コンブの森は保育園!」│ダーウィンが来た!生きもの新伝説 

日本の海藻-美しく多様な海藻の世界 - 国立科学博物館

訳あり 尾道の昆布問屋 利尻根昆布 300g

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磯焼けの海を救う―海の医者のエコロジー (人間選書 (203))

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