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海外の話が多め。近頃は中国が多め(中国海警局・中国海監、深海潜水艇、感染症など)。

【アフリカ豚コレラ】 中部国際空港で、感染性のあるウイルスを確認 中国の上海や青島から | ASFウイルスはすでに国内に

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農林水産省は4月2日、中国からの旅客が持ち込んだ豚肉ソーセージ2例から、アフリカ豚コレラ(African Swine Fever(ASF))の感染性のあるウイルスを確認したと発表した。

これまでに、ソーセージや餃子など豚肉製品・加工品から、17例の、アフリカ豚コレラ(ASF)のウイルスの遺伝子の検出が発表されている。

感染力のあるウイルスの検査結果が発表されたのははじめて。

 

新たに発見されたのではなく、今年1月25日に発表されていた4例のうち2例。

中部空港で1月12日に、上海市からのフライトで到着した旅客が持ち込んだソーセージ(0.6kg)(4例目)と、山東省青島市からの 自家製ソーセージ(1.3kg)(5例目)が該当する。所持者はいずれも「土産」と説明して放棄したそうだ。

ウイルス遺伝子検査が行われ、1月25日に陽性が確認された。
その後、ウイルス分離検査が行われ、4月2日に感染性があるウイルス2例の発表となった。(報道の中には、"生きた「アフリカ豚コレラ」"という表現も見かける。ウイルスなので、それはちょっとどうかと思う。🙄)

この2例は水際で食い止めた。
では、はたして、すべての感染性のあるASFウイルスが、水際で食い止められているのだろうか? 計算してみた。

 

計算結果:今年1月〜3月の3ヶ月間に50件。楽観的に考えても30〜15件。そしてこれらは、氷山の一角。

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農林水産省 動物検疫所 の4月2日付の発表によると、アフリカ豚コレラ(ASF)のウイルス分離検査の結果が公表されたのは、遺伝子検査で陽性だった17例のうち9例。7例が陰性で、2例が陽性だった。

遺伝子検査で陽性だった残りの8例の、ウイルス分離検査の結果は(検査中なのか検査待ちなのか分からないが)今回は発表されていない。続報を待ちたい。

中国及びベトナムからの旅客携帯品の豚肉等におけるアフリカ豚コレラウイルス遺伝子検査陽性例について |農林水産省動物検疫所 2019年4月3日  

http://www.maff.go.jp/aqs/topix/attach/pdf/asf2018-22.pdf (注1)

昨年 8 月に中国、本年 2 月にベトナムにおいてアフリカ豚コレラ(ASF)の発生が確認されました。動物検疫所では、これらの国からの旅客が所有し、日本の到着空港における動物検疫所の検査で輸入が認められなかった豚肉製品の一部について ASF ウイルスのモニタリング検査を行っており、以下の陽性事例が確認されました。 

動物検疫所がASFウイルスのモニタリング検査を行ったのは、発見された豚肉製品の一部であり、全数検査ではない(全数検査が出来る体制では無く、人員も設備も予算も足りていないのだろう)

(注1)農林水産省動物検疫所から発表される、アフリカ豚コレラ(ASF)の発見例のpdfファイルは、ファイル名を変えて更新される。古い版は削除されるので閲覧出来なくなる。ここには、4月2日付pdfではなく、記事公開時点の最新版を載せた。

(追記:この記事の公開直前に、4月3日付けpdfファイルが発表されたことに気付いた。ASF陽性は1例増えたが、再計算はせず、17例で計算している)

 

農林水産省は、検査を行ったサンプル総数は公表していないようだ。(統計的に有意であるサンプル数だと思う)

台湾やオーストラリア、韓国は、税関・検疫で発見され、押収や放棄された豚肉・豚加工品から、アフリカ豚コレラ(ASF)のウイルスの遺伝子検査を行ったサンプル数と、検出された数を公表している。台湾は検出率も発表している。

台湾の発表によると、2019年1月は6.2%2月は8.0%
オーストラリアの発表では、1月20日〜2月3日の集中検査で 14.1% だった。
(韓国の例(7.7%)は期間が不明で検査総数も少ないようだったので、ここでは参考にしない。詳しくは、記事を) 

【アフリカ豚コレラ】 税関での、豚肉・豚製品からのウイルス検出率(台湾、オーストラリア、韓国)(追記あり) - pelicanmemo

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--(追記:9/23)--------------------

農林水産省、動物検疫所の「動検時報」52-3号 (2019-06)に、「中国から持ち込まれた畜産物からのアフリカ豚コレラウイルス分離報告 (精密検査部病理・理化学検査課)」が掲載された。

ASFV遺伝子陽性となった30検体のうち9検体についてウイルス分離検査を行い、2検体で感染性が確認された。

「ASFV遺伝子陽性となった30検体」と記載されているので、4月までのデータを元に執筆されているのだろう。

また、2018年8月3日以降に到着した中国由来の275検体について、28検体でASFVの遺伝子が確認された。つまり、この期間の日本での、アフリカ豚コレラ(ASF)のウイルスが検出された割合は10.2%。この値は、台湾や韓国の割合と比べても、比較的に高い割合だったことになる。

本調査でASFV遺伝子陽性となった30検体のうち9検体について、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構動物衛生研究部門にウイルス分離を依頼したところ、平成31年1月12日に中部国際空港に持ち込まれた2検体から、家畜への感染性があるASFVが分離されました(図1、図2)。これにより、実際に家畜に対して感染力を持つASFVが我が国の水際まで到達していたことが証明されました。

中国由来の検体は313検体で、ASFの初発例が報告された平成30年8月3日以前に日本に到着していた38検体については全て陰性でした。一方、8月3日以降に到着した275検体については28検体でASFVの遺伝子が確認されました。

動検時報52-3号(表紙・目次)(PDF : 17,449KB)
動検時報52-3号(本体)(PDF : 16,801KB) 

広報資料:動物検疫所

この後のもとの記事では台湾でのASF陽性の検出率(6.2%)をもとにして計算した。ここで、新たに分かった日本での検出率(10.2%)をもとにして、再計算すべきと思うがそこはやっていない。記事末の計算結果よりも多い結果になる。

--(追記ここまで)------------------

 

日本では、検査を行ったサンプル総数は発表されていないので、検出率は計算できない。そこで、台湾のアフリカ豚コレラ中央災害対策センターからの発表が詳しいので、参考にしてみよう。

台湾の税関などで発見された豚肉製品から、アフリカ豚コレラ(ASF)のウイルスが検出された割合を計算してみると、2018年10月〜2019年3月の6ヶ月間で約3.0%、2019年1月〜3月の直近3ヶ月間で約6.1% となった。今年1月と2月は特に多い。

台湾の行政院 農業委員会 動物植物防疫検疫局 では、ウイルス分離検査は行っていないので、感染性があるかどうかの発表は、今のところ行われていない。 

行政院 農委會 動植物防疫檢疫局

 

20190403062752(2例目)  

日本の農林水産省によると、2018年に、検疫を受けずに空港などに不法に持ち込まれた畜産物の発見件数は93,957件。そのうち45%の42,280件が中国から、14%の13,224件がベトナムからだった。
(発見されなかった畜産物もあるので、この数字は氷山の一角でしかない。)

畜産物違法持ち込み増加 水際対策の徹底を アフリカ豚コレラ発見 中国・ベトナム過半 - 日本農業新聞
(記事のグラフの説明は書き間違いで、「豚肉製品」でなく「畜産物」だろう(閲覧4月5日)

 

畜産物の中の豚肉製品の割合を、2017年(平成29年)のデータから考えてみよう。

2017年に、中国からの「輸入検疫の携帯品」総数は42,514件、2018年の42,280件とほぼ同じ。一昨年のデータを元にしても、大きな違いはないだろう。

携帯品の輸入検疫状況(国、品目別):動物検疫所

 

輸入検疫で不合格(不法な持ち込み)となった、中国からの携帯品の数は 41,702件で、その中の肉類は40,719件。肉類の内訳は、牛肉:5,702、豚肉:5,287、家きん:12,265、そして、ハム:953、ソーセージ:9588、ベーコン:126 、等々。

ソーセージやハムの多くに豚肉が含まれているだろうし、ASFウイルスが発見された豚加工品にはハム・ソーセージが多い。そこで、豚肉製品の件数を、豚肉とハム・ソーセージ、ベーコンをあわせて、ざっくりと15,000件としてみよう。

不合格となった携帯品の約36%となった。

 

2018年の、中国からの旅客が違法持ち込みして発見された畜産物 42,280件 のうち、豚肉製品の件数は15,220件(36%)と推計できる。

ここから先の計算は、中国からの渡航者数の、季節要因による変化も考慮しなければいけないけど、大変なので、1ヶ月平均の1,268件を使おう。
(1月〜3月の期間には春節があるので、件数が多くなることはあっても少なくなることはないと思う)

2019年1月〜3月の3ヶ月間の、税関での豚肉製品の発見件数は3,804件となり、
台湾でのASFウイルスの検出率(約6.1%)を当てはめてみると、アフリカ豚コレラ(ASF)のウイルスの検出件数(可能性)は232件となった。

 

もし、豚肉製品の一部だけではなく、全てで ASFウイルスのモニタリング検査を行っていた場合、3ヶ月間で、200例以上のASFウイルスが発見されていたと思われる。

 

動物検疫所の4月2日付け発表によると、ウイルス遺伝子検査で陽性となった17例中、9例のウイルス分離検査によって、2例から感染性のあるASFウイルスが確認された。 

これらから、2018年1月〜3月の3ヶ月間に、中国からの、感染性のあるASFウイルスを含んだ豚肉製品は、50件以上となる。

もし、2019年1月〜3月にASFウイルス陽性が確認された14例(17例のうち第1例〜3例は2018年10月と11月に発見)のうち、感染性があるのは既出の2例だけだと、楽観的に考えてみると、33件となる。
(*)さらに楽観的に、日本での検出率は、台湾の半分の3%だとすると16件。
(**)台湾の検出率ではなく、オーストラリアの検出率(14.1%)を使って計算したら、2倍以上になる。
(***)逆に、今年1〜3月に、もしも、完全に水際で防いでいたとするなら、日本のASFウイルスの検出率は0.368%となってしまう(3ヶ月間の豚肉製品3,804件中、ウイルス陽性14例)。この数字は、楽観的をとおりこして非現実的。

 

そして、これらの数字は、氷山の一角でしかない。

日本国内に、すでに、感染性のあるアフリカ豚コレラ(African Swine Fever(ASF)) のウイルスが、入り込んでいる可能性は非常に高い。

 

 

これから暖かくなり、花見やBBQ、キャンプや登山など、屋外で食べたり料理をする機会は増える。
『ゆるキャン△』アウトドア実験料理をしてみたくなるかもしれない。😊ノシ

 

岐阜県や愛知県で、養豚場や野生のイノシシで発生している豚コレラ(古典的豚コレラ、CSF)は、外国人旅行者などが不法に持ち込んで捨てた外国の豚肉製品の食品が、最初の原因だとも言われている。

食材の中に豚肉製品、これからは、特に、中国やベトナムやモンゴルなどASF発生国で製造されたソーセージやハムなど豚肉を使った製品がある場合は、食べ残しは野生動物のエサになるだとか考えずに、捨てて帰ったりしないことが大切だ。

 

 

農林水産省 動物検疫所の発表では、中国の有名メーカー製の包装されたソーセージなどでも遺伝子検査で陽性が確認されている。ちかごろ増えてきたと感じている。

中国の豚肉製品の製造〜流通ラインに、とっくに、アフリカ豚コレラ(ASF)のウイルスは入り込んでいる。

20190403062751(6例目)

日本でも、台湾の空港での発見されたのと同じ、中国の大手食品メーカー「双匯」ブランドの製品から、アフリカ豚コレラ(ASF)のウイルスが検出されている。

偽ブランド製品の可能性もある(台湾の発見例に対する、双匯によるコメント)ので、充分な温度と時間で加熱されているかどうか分からない。

中国の有名食肉メーカーのパッケージであっても、安心することはできない。

20190403062747(12例目)

 

ところで・・・、😊

今回、感染性があるアフリカ豚コレラ(ASF)のウイルスが検出された豚肉ソーセージ2例は、自家製と製造元が分からないソーセージだった。

すこし意地悪なコメントなんだけど、もし確認されたのが、中国の食肉メーカーのパッケージのソーセージだったとしたら、日本メディアは、写真を公表していたのだろうか?😊

 

JA鹿児島県経済連 黒豚ハムセット B?5

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