pelicanmemo

海外の話が多め。近頃は中国が多め(中国海警局・中国海監、深海潜水艇、感染症など)。

【新型コロナウイルス】 ドイツ、陽性患者の4割が国外で感染 国内で感染拡大

20200214065503

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)。ドイツの感染者(陽性を確認)が3万人を越えました。それでも致死率が低いのが話題です。

大きな理由の1つとして、検査で陽性とわかった患者の年齢が若く、重症化しやすい60才以上の患者が少ないことが上げられます。
人口あたりの病床数が比較的に多いドイツでは、陽性患者の増加に対して、余裕をもって患者の収容と治療をすることが出来てきたようです

 

しかしそれは、若い年代に軽症や症状が無い(気付かない)感染者が非常に多く、自分も社会も気付かないうちに、身近なところへも拡がっている事を意味しています。非常にタチが悪い。 


3月20日に公開した記事を、たくさんの方が読まれたり紹介をしてくださいました。☺️

実は、その公開翌日からロベルト・コッホ研究所の発表(3月20日分から)で、ドイツ国外で感染した地域の公表をはじめていました(タッチの差😔)。

陽性確認2万7000人(~03/24)のうち、約1万人が国外での感染例です。

20200320204038
【新型コロナウイルス】 ドイツの致死率はなぜ低いのか | ドイツの地獄はこれからか? - pelicanmemo
 (2020-03-20)

  

陽性患者の実に4割近くが国外での感染であり、オーストリアが約20%、イタリアが5〜8%(3月24日までの集計結果)。特に、アルプス山脈の東部のチロル地方(広義)、チロル州(オーストリア)や南チロル自治州(トレンティーノ=アルト・アディジェ自治州)(イタリア)が多いと発表されています。(*1)
(西隣のフランスからは、まだ100人台) 

20200326052749

20200326052850(2020/03/24)(引き続き調査中)

Aktueller Situationsbericht des Robert Koch-Instituts zu COVID-19 (ロベルト・コッホ研究所(RKI))

 

ドイツでは、国外への旅行は若い世代が多く、今年1月〜3月に、チロル地方(広義)のスキー・リゾートを訪れたりイベントに参加した人たちが感染をし、軽症や症状が無い(気付かずに)まま入国をして、移動していった事が、ドイツ国内での感染拡大の大きな原因のひとつになったと考えられています。(*2)

その一方で、ドイツでは両親と同居している30−49才は10%超であり、20%超のイタリアと比べると、世代間の感染拡大が少なく、60才以上の高齢世代の感染者が少ないと指摘されています。

 

日本では、エジプトのナイル川ツアー参加者や、ヨーロッパや東南アジアからの帰国や、休校を機会に海外旅行へ行ってた人たち、外国からの入国者からの感染者の確認が増えてきています。もっと増えます。これからは、米国からの渡航者からの感染者の確認が相当に増えていきます。

帰国した後に、同居している高齢の家族へと感染させてしまった例を多く見かけるようになりました。

家族で空港での検査をバックレて沖縄旅行とか論外です。(追記修正:沖縄在住の家族で帰宅だそうです)(確認不足でした)

 

検疫の強化と、帰国後の健康状態のチェック、自己隔離の徹底、などが必要です。そして、何らかの症状がある場合は感染している確率が高いとみなして、すぐ検査を行えるようにし、自分も周囲も“社会的行動”を避けるなど、より強い意識で臨むことが求められるでしょう。

 

Ads by Google

 


 

新型コロナウイルスの検査は、ドイツでは、ハイリスク地域(*3)への滞在歴や訪問歴がある人や、感染者の濃厚接触者や接触者に対して行われています。(訪問歴は自己申告?)

国外のハイリスク地域への訪問者(若い世代が多い)に対して、多くの検査が行われてきたのでしょう。若い世代で感染者が増えれば、その濃厚接触者も同世代や職場の同僚など労働世代に偏りそう。

人口10万人あたりの陽性確定者数の年齢分布(3月21日版から変更された)を見ると、その傾向が顕著です。

20200326053011

 

ドイツ国内で感染者が多いのは、西部のノルトライン=ヴェストファーレン州(NRW州)、南部のオーストラリアと接するバイエルン州と、バーデン=ヴュルテンベルク州(BW州)。

いずれも人口が多い州なので一概には言えませんが・・・、
第1波は、中国の春節が終わっての再入国や、イランやイタリアからの旅行者から、広く薄く感染拡大していたのではないでしょうか。

次に、国内の感染者が1000人くらいであまり増えていなかったところへ、イタリア北部での感染爆発が起こり、オーストリアやイタリア(特にチロル地方(広義))から逃げてドイツへと帰国(入国)してきた。さらに、ミュンヘン(バイエルン州)から鉄道網によって広まっていったのかもしれません。

20200326052853

20200326052825(ドイツの鉄道網(2018))
(wikimedia commons)

例外の1つは、NRW州の西部、フランスと国境を接するハインスベルグ (Kreis Heinsberg)(1つだけ色が濃い藍色の地区)。2月15日に行われたカーニバルが原因で、集団感染と感染拡大(メガ・クラスターが発生)とみられています。3月はじめは、そこがドイツ国内で最も多くの感染者が確認されていた地域でした。(ZEIT)

 

(*1) 陽性確定が約27000人の時に、9000人弱が国内で感染、約10000人が国外のハイリスク地域の滞在や訪問歴がある。他は調査中。毎日の陽性結果の増加ペースに、発表が追いついていない。

(*2) 自己申告のようなので、ハイリスク地域への訪問の有無や、時期にズレがあるかもしれません。
オーストリアの陽性確定は5560人、死亡31人。検査件数32407件。(~3/25 15:00)。
チロル州が最多の1393人。
ドイツのバイエルン州と接するザルツブルグ州は516人でオーストリア国内でも多いほうではない。(Neuartiges Coronavirus (2019-nCov)

 

(*3) ドイツ国内と、国際的なハイリスク地域。
[国内]ハインスベルク(NRW州)
[国際]エジプトイランイタリアフランス(グラン・テスト地域(アルザス、ロレーヌ、シャンパーニュ、アルデンヌを含む))オーストリア(チロル州)スイス(ティチーノ州、ヴォー州、ジュネーブ州)、スペイン(マドリッド市、ナバラ州、ラ・リオハ州、バスク国(地域))、韓国(大邱市・慶尚北道)、米国(カリフォルニア州、ワシントン州、ニューヨーク州)。中国の湖北省は、もう危険地域として評価されてはいない(2020/03/25)。

 

 

ドイツは欧州の中では高齢者の割合が高いにも関わらず、致死率が低いことについて、あちこちから解説記事が出ています。

韓国の東亜日報(日本語版)の記事や、英国ガーディアンの記事が、死亡者に対して新型コロナウイルスの検査をしていないらしい話も含めて、比較的に広くまとまっているようです。

新型コロナ、ドイツの致死率が低いのはなぜ? : 東亜日報 (March. 24, 2020)

Germany's low coronavirus mortality rate intrigues experts | The Guardian (22 Mar 2020)

 

日本メディアの記事は、医療体制やベッド数と、検査の数の話が多いよう。 

ウイルス学者のマーティン・シュトゥーマー氏は独公共放送ドイチュラントフンクで「重症患者のみが検査されると(死亡など)ハイリスク患者数の割合が高くなる可能性はある。ドイツではかなり幅広く検査を実施している」と指摘。幅広く検査を実施したことで感染者に無症状者や軽症者が多く含まれ、死亡率が低く出ているとの見方を示した。

感染広がる欧州で…ドイツの死亡率0.3% 初期段階?高い医療?理由は… - 毎日新聞 (2020年3月20日)

明確な理由は分かっていませんが、ドイツでは新型コロナウイルスの感染を調べる検査が、週に16万件と、大規模に行われていることから、地元メディアなどは、感染者を早めに確認して、対応できているためではないかと指摘しています。

またドイツには、もともと集中治療に対応したベッドがイタリアのおよそ5倍にあたる2万8000床あり、医療体制が整っていたことも要因だと指摘されています。

研究所によりますと、感染者の年齢の中央値は45歳で、8割が60歳未満だということです。

ドイツ 感染者2万人超で死者86人 大規模検査で早めに対応か | NHKニュース (2020年3月24日)

ドイツ、ハンブルク大学医療センター感染学部のMarylyn Addo教授は、ドイツが他の国と比べて医学的に整っているかどうかを述べるのは時期尚早だと話し、警戒をゆるめていません。

“It’s too early to say whether Germany is better medically prepared for the Covid-19 pandemic than other countries,” said Marylyn Addo, who heads the infectiology department at Hamburg’s University Medical Centre. 

“One advantage Germany has is that we started doing professional contact tracing when the first cases were reported,” Addo said. “It bought us some time to prepare our clinics for the coming storm.”

Crucially, Germany started testing people even with milder symptoms relatively early on, meaning the total number of confirmed cases may give a more accurate picture of the virus’s spread than in other states.

Germany's low coronavirus mortality rate intrigues experts | The Guardian (22 Mar 2020)

La baja letalidad del coronavirus en Alemania: una excepción que podría dejar de serlo | EL PAÍS (2020-03-20)

Intergenerational ties and case fatality rates | VOX, CEPR Policy Portal 

Verdacht auf Coronavirus: Die Lehren aus Heinsberg | ZEIT ONLINE 

Neuartiges Coronavirus (2019-nCov)

 

バイエルン州 - Wikipedia

ノルトライン=ヴェストファーレン州 - Wikipedia

バーデン=ヴュルテンベルク州 - Wikipedia

ICE - Wikipedia

ザルツブルク州 - Wikipedia