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海外の話が多め。近頃は中国が多め(中国海警局・中国海監、深海潜水艇、感染症など)。

【新型コロナウイルス】 中国、吉林省と黒竜江省で“第2波” 武漢のウィルスや症状との違い

20200521055804<新聞1+1> CCTV より)

中国の東北部、黒竜江省と吉林省で、国外から入国や帰国してきた人によって新型コロナウィルス(SARS-Cov-2) の感染拡大があり、流行の“第2波”が起こっています。

特に吉林省では、ホットスポットとなった舒蘭市・吉林市で、封城(ロックダウン)が行われ、外出制限や移動制限など厳しい封鎖措置がとられています。

 

折りしも、延期して開催予定の全国人民代表大会(全人代)を前にして、第2波が起こってしまった。そのせいかどうかは分かりませんが、地方政府などの防疫対策が不十分であり、初期の対応がずさんで遅かったとして、吉林省舒蘭市の党委書記の解任をはじめとして、吉林市の衛生当局の幹部や、黒竜江省ハルビン市の副市長や院内感染が発生した病院の幹部らが解任されました。

 

吉林省の舒蘭市での感染拡大では、警察署の洗濯の仕事をしていた女性の感染が確認され、続いて家族や家族からの二次感染へと拡がったそう。この集団感染の発端は、警察官の制服にウィルスが付着していて、洗濯をする時に感染した可能性があると言われています。

吉林舒兰公安局洗衣工等12人相继确诊,254名密接者隔离 - 澎湃新闻

中国 吉林省 地元政府幹部6人解任 感染拡大の責任問われたか | NHKニュース 

 

中国東北部で起きている新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の第2波は、湖北省の武漢市から感染拡大した第1波と比べて、ウィルスや感染後の症状に違いが有るのか?それとも無いのか?、とても気になるところです。

5月19日の中央電視台(CCTV)の番組「新聞1+1」で、国家衛生健康委員会(国家衛健委)の治療専門家グループの邱海波医師が解説をしていました。 

 

ざっくりと書くと、黒竜江省と吉林省の症例は武漢のそれを比べると、発熱など症状は少なく、感染しやすくて、その一方で、肺の障害が主であり、腎臓や腸は少なく、重症例は10%未満と少ないそうです。
(引用含めて長いので、詳しくは後に後述)

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20200423054619 

まず、新型コロナウィルスとその感染症には、「中国型」や「欧州型」「米国型」、あるいは「S型・L型」、「A型・B型・C型」、「広東、日米豪」「武漢」「欧州」などに分けることができるというはなしを、見聞きした人は多いのではないでしょうか。(研究者や報道によって「〜型」の表現は違う)
その一方で、ウィルスに変異はよくあることで、今のところわずかな違いなので、病毒性や感染性に違いは無いだろうという研究報告もあります。

新型コロナ:新型コロナ「欧州型」世界で猛威 半月で遺伝子変異 - 日本経済新聞(2020/5/16)

国内のコロナ、武漢ではなく欧州から伝播? 感染研調べ [新型コロナウイルス]:朝日新聞デジタル (2020年4月28日)

新型コロナの変異パターンは三つ「広東、日米豪」「武漢」「欧州」 ゲノム解析進む - 毎日新聞 (2020年4月14日)

 

世界中の医師や研究者、さまざまな専門家たちによる調査研究で、多くのことが分かってきました。それらの仮説は、まさに百花繚乱。

ひとつはっきりと言えることは、新たなウィルスでヒト感染症であり、分かっていない事はまだまだ多く、現段階では、中国や欧州・米国で感染拡大したウィルスで「感染性や病毒性に、違いがある/違いが無い」と断言する事は出来ません。

 

【新型コロナウイルス】 感染しやすいL型と、そうでもないS型? | フェロー諸島はミニ実験室 - pelicanmemo (2020-04-03)

当ブログ管理人は、いわゆる「中国型」と「欧州型」では感染性に違いがあって、もしかしたら病毒性にも違いが生じているのかもしれない、と感じています。また、地域集団によって感染後の症状に違いがあるように感じます。

 

ここで興味深いのは、中国は早い段階で外国からの移動制限を行って入国者や帰国者には厳しい検疫と14日の隔離を科しているので、中国国内はいわゆる「中国型」だけであること。「欧州型」等々の外国で感染拡大しているものは、まったくと言っていいほど国内流入していなかったこと。

中国東北部で起きている第2波は、「欧州型」または「米国型」のウィルスによるあらたな流行であり、地域集団の文化や習慣に大きな違いはないので、ウィルスと症状の違いが分かりやすいでしょう。

 

20200521055755<新聞1+1> CCTV より)

5月19日の中央電視台(CCTV)の番組「新聞1+1」司会者の白岩松氏による、国家衛生健康委員会(国家衛健委)の治療専門家グループの邱海波医師へのインタビューで、次のように解説されました。ざっくりと補足も入れつつ抄訳。

 

(1)吉林省と黒竜江省で感染拡大している新型コロナウィルス感染症は“輸入病例”である。入国者・帰国者で発見される“輸入病例”のウィルスと完全に一致し、湖北省など“本土病例”のウィルスと同じではない。

(2)臨床的には、黒竜江省と吉林省での陽性と確定された病例は、潜伏期間が比較的に長い。感染者に症状が無かったので、家庭内での集団感染(家庭聚集性伝播)を起こしていた。

(3)黒竜江省と吉林省での陽性患者の臨床症状は典型的なものではない。多くの感染者は発熱の症状が無く、疲労感と喉の痛みの症状を示していた。
武漢の症例(本土病例)の特徴は、肺だけでなく心臓や腎臓、腸など多臓器での障害だったが、“輸入病例”は肺の障害が主であり腎臓や腸の障害はあまり見られない。

(4)黒竜江省と吉林省で確認された感染者は、ウィルスの保有期間が長い。
武漢の患者の例では、発症後に1週間から長くても2週間経つと陰性になるが、黒竜江省と吉林省の患者では、陰性になるまで長くかかっている。

良い点として、重症例の割合は10%未満で武漢の患者よりも低い。治療により良好な結果がでている。

《新闻1+1》 20200519 今日疫情分析:救治,从武汉到东北 - 央视网(cctv.com)(動画)

 

すこし気になるのが、(1)の “輸入病例”のウィルスは「湖北省など“本土病例”のウィルスと同じではない(跟湖北本土病例的病毒不太一样)」という部分。そのウィルスの違いが(2)〜(4)の臨床症状の違いの原因とも感じられます。

ここは慎重に、新型コロナウィルス(SARS-CoV-2)の遺伝子情報の国際データベース「GISAID」からの研究など、他の研究結果とも合わせて考えてみたいところです。

 

第一,从基因的测序来讲,吉林和黑龙江的病例多数是输入相关病例,跟输入病例的病毒完全一致,跟湖北本土病例的病毒不太一样。

第二,从临床上看,黑龙江、吉林两省确诊病例的病程潜伏期较长,病人没有症状,造成一些家庭聚集性传播。

第三,黑龙江、吉林两省确诊病例的临床症状不太典型,发烧的病人不是太多,有不少病例都没有发烧,就是乏力或者有点咽痛的表现。而武汉病例的临床特点是病人多器官受累,不仅仅是肺受累,还往往有心肌、肾脏、肠道的损害,而输入关联病例往往以肺的损害为主,很少心脏损耗、很少有肌酐蛋白损伤的标志,而且很少看到有肾脏损害或者肠道损害。所以临床的损害以肺部为主,单器官为主,不是多器官的模式。

第四,黑龙江、吉林两省确诊病例病毒携带时间较长。在武汉,患者一般有症状以后,一周或者顶多两周他的核酸就转阴了,而黑龙江、吉林两省输入关联病例核酸转阴速度也比较慢。比较好的一点是,黑龙江、吉林重症病例的比例比武汉低,发展成重症的比例不超过10%,另外治疗反应相对也比较好,这样病人对抗病毒,包括中医治疗更有信心。

黑龙江、吉林与湖北病例有何不同?国家卫健委救治专家组成员邱海波回应 - 央视网(cctv.com)

黑龙江吉林与湖北病例有何不同?卫健委救治专家组成员回应

黑龙江吉林与湖北病例有何不同?卫健委救治专家组成员回应 - 澎湃新闻

4个不同!跟湖北比,黑龙江吉林病例有新情况 

【财闻联播】美国制裁中国物流公司?外交部强势回应!专家谈吉林疫情:病毒和湖北不太一样 - 新浪财经

新型コロナ、武漢流行時から変異か-中国東北部で治療に当たる医師 - Bloomberg

 

新型コロナウイルス関連情報 | 在瀋陽日本国総領事館 

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黒竜江省長、ハルビン市を批判 新型コロナ集団感染発生で 中国 :AFPBB News

 

新型ウイルスに数百の変異、影響はいまだ不明=英米研究 WEDGE Infinity(ウェッジ)

CNN.co.jp : 「人への感染」始まりは昨年末、遺伝子解析で確認 新研究

 

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