(via. 超级大本营军事论坛)
中国海警局の万トン級「海警5901(もと海警3901)」が、南シナ海のインドネシア領ナツナ諸島(*1)北側の海域を昨年(2022年)末から航行している。インドネシアが排他的経済水域(EEZ)の内側の海域で進めている天然ガス田開発に対する監視とハラスメントや威嚇が目的だろう。
「CCG5901」はその後EEZ外に出たものの、2023年1月4日の時点でもEEZに接続する海域での航行を続けているという。同海域での南北を往復するような航跡から、海底資源の探査を行っている可能性があるとの指摘もある。
中国海警局「CCG5901」が海底資源探査か…!? インドネシアEEZ内への侵入も明らかに(大塚 智彦) | 現代ビジネス
(*1)英語では"Natuna Islands"。日本語では「ナツナ諸島」や「ナトゥナ諸島」と訳される。この記事では現代ビジネスの記事に合わせて「ナツナ諸島」と書く。
昨年(2022年)12月にインドネシアとベトナムは排他的経済水域(EEZ)の境界を画定した。今年(2023年)1月2日付けロイターの記事によると、インドネシア政府は、ナツナ諸島の北140海里のインドネシアEEZ内側に位置しベトナムEEZと接する海域のツナ・ガス田(Tuna offshore gas field )での最初の開発計画を承認している。2026年からベトナムへ輸出することを目指す。
中国はインドネシアに対して、南シナ海の中国が管轄する海域(いわゆる”九段線”の内側)での油ガス田の開発と掘削を停止するよう通知した、と報道されていた。それに対して、インドネシア側は正当な権利だとして中国側の通知をつっぱねた。
中国海警局の「海警5901(もと海警3901)」の派遣は、いわゆる”九段線”に基づく中国側の一方的な主権の主張をもとにしたインドネシアやベトナムに対する準軍事的示威活動であり、EEZの境界画定や天然ガス田開発への抗議を示して見せたと考えられる。
南シナ海EEZの境界線を画定 インドネシアとベトナム: 日本経済新聞 (2022年12月22日)
Indonesia approves $3 bln development plan for South China Sea gas block | Reuters (January 2, 2023)
EXCLUSIVE China protested Indonesian drilling, military exercises | Reuters (December 1, 2021)
現代ビジネスの記事とタイトルでは「CCG5901」(「海警5901(もと海警3901)」のこと)が海底資源の探査も行った可能性を指摘している。
しかし「海警5901(もと海警3901)」には海底資源の探査のための装備は無いし(装備しているという発表も報道もなく噂もない)、装置を吊り下げたりケーブル牽引できるクレーンなど設備も見えない(荷役用のクレーンくらい)。主要な任務でもない。記事が参照したソースが1年半前の海洋調査船「海洋地質10号」の航跡と混同したのかもしれない。
今回の「CCG5901」(「海警5901(もと海警3901)」のこと)の航跡(MarineTrafficより)はこちら。少し濃い青色がインドネシアのEEZ。
インドネシアのEEZを出た後に南北に航行しているけど海底資源の探査とは感じられない。そもそもその海域はマレーシアのEEZなので、マレーシアも話に入れてあげましょうよ。🙂
China’s coast guard patrols site of Indonesian gas field — Radio Free Asia (2023.01.05)
2019年に自然資源部中国地質調査局(広州海洋地質調査局)の新型の海洋調査船「海洋地質10号」がツナ・ガス田と隣接するインドネシアのEEZ内側の海域で長期間の探査を行っていた。そのときの航跡がこちら。
海底資源探査というならこのくらいやってるところを参照してみせてほしいものだ。
China Survey Ship Lingering in EEZ Poses Dilemma for Indonesia — Radio Free Asia (2021.09.21)
中国とインドネシアの間には島嶼の領有権問題は無いが、ナツナ諸島沖のインドネシアのEEZでは、中国の漁船団による操業や海洋調査船による海底資源の探査が行われ両国の軋轢となっている。それら民間の船舶には中国海警局に所属する船舶が警備と称して近くを航行し、インドネシアの海上保安機構(BAKAMLA)の巡視船や海軍の哨戒艦艇と対峙もしていた。違法操業で拿捕され牽引されていた中国漁船を、中国海警局の船艇が牽引ワイヤを切断して奪取したこともあった。
ロシアによるウクライナ侵略からの世界でのエネルギー需給の問題によって、南シナ海での海底油田・ガス田の探査や開発も進められやすいだろうし、それに伴う摩擦や緊張が高まるリスクもあるだろう。
--(追記:)--------------------
インドネシアは5901の監視のため軍艦と哨戒機、無人偵察機を北ナトゥナ海へ派遣した。(インドネシアでは海上警備活動は、BAKAMLAと海軍が行っている。海上法執行機関は同国の広大な管轄水域にたいして装備も能力も充分とはいえず、中国の1万トン級に対抗できる巡視船は無い(最大の巡視船は排水量2500トンクラス・全長110m))。
Indonesia sends warship to monitor Chinese coast guard vessel | Reuters
--(追記ここまで)------------------
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記事では「海警5901(もと海警3901)」について次のように書いている。
「CCG5901」は排水量1万2000トンで重機関銃などにより武装しており、ヘリコプター格納庫や離発着用プラットホームも備えていることから「モンスター」と呼ばれ、中国海警局船舶の中でも最大クラスの船舶とされている。
76ミリ砲(76mm速射砲)や30mm機関砲2基について触れていないし、重機関銃は600トン級の武装船も装備している定番の装備の一つ。3000トン以上の大型海警船ではヘリ甲板は普通に装備されていて、ヘリ格納庫をもつ船も多い。
もうちょっと、こう・・・「モンスター」ぽい描写はできなかったものかなぁ🙃
「海警5901」の活動に触れている記事なのに使っている写真は「海警3401(現・海警5402)」だし・・・
中国海警局「CCG5901」が海底資源探査か…!? インドネシアEEZ内への侵入も明らかに(大塚 智彦) | 現代ビジネス
フィリピンやインドネシアでの油田・ガス田など海洋資源開発と中国との対応については詳しいんだけど、ちょっとチグハグ感がある記事だった。
中国海警局 カテゴリーの記事一覧 - pelicanmemo
中国の海上保安機関である海警局の大型船舶が、南シナ海の南端にあるインドネシア領ナツナ諸島北側の海域を2022年末から繰り返し航行して、海底資源の探査と同時にインドネシアによるガス田開発を偵察している可能性があることがわかった。
中国海警局船舶は当該海域での航行中にインドネシアの排他的経済水域(EEZ)内にも侵入していたことが航跡から明らかになりインドネシア側は警戒を強めている。
報道によると中国海警局の船舶「CHINACOASTGUARD5901」は2022年12月16日、中国・海南島の三亜港を出航して南シナ海南部へ航行、12月30日からインドネシアのEEZ内に侵入したことが船舶航跡を追尾する民間企業のデータから判明したとしている。
同海域ではインドネシアが天然ガスの海洋資源開発を行っており、中国側はその進展具合をみるとともに中国の海洋権益が及ぶ海域であると牽制することが目的とみられている。
「CCG5901」はその後EEZ外に出たものの、2023年1月4日の時点でもEEZに接続する海域での航行を続けているという。同海域での南北を往復するような航跡から、海底資源の探査を行っている可能性があるとの指摘もある。
「CCG5901」は排水量1万2000トンで重機関銃などにより武装しており、ヘリコプター格納庫や離発着用プラットホームも備えていることから「モンスター」と呼ばれ、中国海警局船舶の中でも最大クラスの船舶とされている。
中国海警局「CCG5901」が海底資源探査か…!? インドネシアEEZ内への侵入も明らかに(大塚 智彦) | 現代ビジネス | 講談社(1/4)
Indonesia approves $3 bln development plan for South China Sea gas block | Reuters (January 2, 2023)
China’s coast guard patrols site of Indonesian gas field — Radio Free Asia (2023.01.05)
China Survey Ship Lingering in EEZ Poses Dilemma for Indonesia — Radio Free Asia (2021.09.21)
China’s coast guard patrols site of Indonesian gas field — BenarNews
Indonesia Approves First Phase of Key Offshore Gas Development – The Diplomat
EXCLUSIVE China protested Indonesian drilling, military exercises | Reuters
謎の中国船を追え! | 特集記事 | NHK政治マガジン (2019年11月14日)
総合地質調査船「海洋地質10号」、中国の海洋地質調査能力を強化 | SciencePortal China (2017年06月29日)