(广船国际より)
4月20日、広東省広州市の造船会社で、”深海・遠海での多機能科学調査および海洋考古学調査船”「探索三号」が進水した。
この新しい多機能科学調査船は砕氷船で、深海での科学調査や文物考古調査を行うほか、氷海域での深海科学研究や有人深海潜水などの機能を備えている。文化財の保護を所管する国家文物局も出資している船なので目的に海洋考古学調査(文物考古)が加わった。
”深海・遠海での多機能科学調査および海洋考古学調査船”と訳したのは、原文は”深远海多功能科学考察及文物考古船”。
中国語の”文物”は日本語では文化財や文化遺産、遺物と訳されるが、微妙にニュアンスが違っているそうだ。より詳しく書いたら”海洋考古学での埋蔵文化財調査船”となるだろう。冗長になるので、ここではざっくりと”海洋考古学調査船”としてみた。
じきに中国メディア日本語版などで適当な日本語訳が出てくるだろう(”適切な”日本語訳ではない。多分、ネット翻訳そのままで”文化財考古船”と書かれると思う)。
我国首艘深远海多功能科学考察及文物考古船在中国船舶广船国际出坞----中国科学院深海科学与工程研究所
我国首艘深远海多功能科学考察及文物考古船出坞 - 新华社 / 中国政府网
「探索三号」は、海南省人民政府、三亜市の崖州湾科学技術都市開発会社(三亚崖州湾科技城开发建设有限公司)と、中国科学院深海科学・工程研究所と国家文物局が出資して、中国船舶集団(CSSC)傘下の広船国際有限公司で2023年6月に建造が開始された。艤装工事や海試などの後、2025年に引き渡される予定。
広船国際有限公司は、この船ははじめての、中国のエンジニアが独自に設計した氷海区での有人深海潜水艇の支援能力を持つ総合科学調査船と特にアピールしている。
中国科学院の深海科学・工程研究所は海南省三亜市に設置され、水深1万メートル級・フルデプス有人深海潜水艇「奮闘者」号と4500メートル級有人深海潜水艇「深海勇士」号、それらの科学調査・支援母船である「探索一号」「探索二号」などを運用している。
(ここからは漢数字でなく、見分けやすく「探索1号、探索2号、探索3号」と書きます)
深海科考船「探索」ファミリーの三女「探索3号」は、全長約104メートル、排水量約10,000トン(建造開始時の発表では、全長103メートル、設計喫水排水量約9200トン)。最大航行速度16ノット。航続距離15000海里、乗員80人。
船首と船尾の双方向でのラミング航行が可能で、アイスクラスPC4の砕氷能力を持つ。例えば、長女の「探索1号」(青色)の船首設計はアックス・バウもどきで、次女の「探索2号」(緑色)はバルバス・バウだが、三女「探索3号」(紫色)はつるっとして丸みをおびているのがわかりやすい。
(「探索1号」(青色)と「探索2号」(緑色))
(「探索3号」(紫色))
建造内容に有人深海潜水艇の支援システムが含まれており、船尾には「探索1号」「探索2号」と同規模と思われる巨大なAクレーンがある。北極圏や南極圏の極域で「深海勇士」の潜水調査が行われうるだろうし、もしかしたら「奮闘者」の運用も検討されているのかもしれない。
(广船国际より)
(央視网より)
極地の氷海域での深海科学調査のため、国内最大級のムーンプールを装備し、氷海域での深海音響探査、通信や定位システム、自動船位保持装置(DPS)など海洋技術の国産化に取り組み装備したそうだ。
(央視网より)
中国の砕氷船というと極地観測砕氷船「雪龍2号」が新しく、2019年7月に自然資源部の中国極地研究センターに引き渡された。「雪龍2号」はアイスクラスPC3なので、PC4の「探索3号」の方がグレードアップしている。ムーンプールも「雪龍2号」のものより大型のものを装備しているのだろう。
(参考:「雪龍2号」のムーンプール)
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