pelicanmemo

海外の話が多め。近頃は中国が多め(中国海警局・中国海監、深海潜水艇、感染症など)。

【中国海警局】 尖閣諸島の領海で日本漁船1隻が操業(4月5日~6日)、今回も中国側の公式発表なし。

20240407082614 (NHKより)

海上保安庁 第十一管区海上保安本部によると、4月5日午後0時20分ごろ、中国海警局の船2隻「海警2502」と海警2302」が、尖閣諸島の魚釣島と南小島の沖合で相次いで日本の領海に侵入した。

尖閣諸島の沖合で中国海警局の船が日本の領海に侵入するのが確認されたのは先月30日以来で、今年(2024年)に入って8件目。前回(3月28日〜30日)の領海侵入の事案のときには、中国海警局は公式サイトでも公式SNSでも、”パトロール”や”法執行活動”といった一方的な主張どころか公式発表自体を行っていなかった

今回(4月5日〜6日)も公式発表は行わなかった。

もしかしたら石垣市のふるさと納税の返礼品「尖閣アカマチ」が関係しているかもしれない。これについて少し。

【中国海警局】 尖閣諸島の領海で日本漁船2隻が操業(3月28日~30日)、中国側の公式発表なし。 - pelicanmemo (2024-04-02)

 

八重山日報によると4月5日午後3時時点、領海内で日本漁船1隻(9・1㌧、2人乗込み)が操業していた。海保の巡視船が中国船に対して進路規制を実施、領海からの退去を要求して、日本漁船に近づかせないよう警戒した。中国海警局の船2隻は、いずれも6日午後7時20分ごろに領海を出た。

(追記

日本漁船は仲間均石垣市議の「鶴丸」が9・1㌧かと思ったけれども、残念ながらエンジンが故障している。クラウドファンディングで資金獲得は達成され、年内にエンジンの載せ換えをしたいとYouTubeちゃんねるで発表していた。

(追記修正4/8:「鶴丸」でした。4月7日に仲間均氏のブログ「尖閣諸島の歴史と現状:アホウドリが歓迎」で、「鶴丸」は5日午前5時に登野城漁港を出港し、正午過ぎに尖閣諸島周辺海域に到着と発表されていました。”鶴丸のエンジン載せ替えは今年10月以降となりますが、それまでは現状のエンジンで何とか乗り切らなければなりません。”とのことです。)

 

沖縄 尖閣沖 中国海警局の船2隻が領海侵入 海保が警告 | NHK | 尖閣 (2024年4月5日)

中国船2隻が領海侵入 尖閣周辺、今年8日目 | 八重山日報 (2024年4月6日)

 

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中国海警局は海警船が尖閣諸島の領海を航行した時には、一方的な主張である”パトロール”を行ったことを公式ウェブサイトや公式SNSで発表をしてきた。昨年(2023年)からは、尖閣諸島の日本の領海で日本の漁船や海洋調査の作業船、さらには海保の巡視船に対して”法執行活動”を行ったという公式発表もはじめていた。(これについて前回(4月2日付け)のブログ記事「【中国海警局】 尖閣諸島の領海で日本漁船2隻が操業(3月28日~30日)、中国側の公式発表なし。」で書いている。さらに詳しくはこれまでのブログ記事でその都度、記録して公表してきた(このブログ記事の後ろにリンク一覧)。)

 

ところが前回(3月28日~30日)、中国海警局は公式サイトでも公式SNSでも、”パトロール”や”法執行活動”といった一方的な主張どころか公式発表自体を行っていなかった。今回(4月5日~6日)も公式発表はない。公式発表がないので、大手の中国メディアも転載記事で報じていない。当ブログでは、4月7日午前8時(日本時間)に再度の確認を行った。

 

20240407082627(中国海警局の公式サイト 海警要闻 ページより)

中国海警局の公式サイトの海警要闻 (海警ニュース)ページを確認したところ、4月7日時点の最新の更新記事は3月15日に実施した台湾の金門島周辺の海域での活動に関するものだった。前回(3月28日~30日)の時と同じだった。

维权执法(法執行活動)ページの方の最新の更新記事は4月6日(タイムスタンプ:2024-04-06 17:35:00)付けの、南シナ海のフィリピンEEZにあるイロコイ礁(Iroquois Reef)(フィリピン名:Rozul Reef、中国語名:鲎藤礁)の海域でフィリピン沿岸警備隊(PCG)と水産水産資源局(BFAR)とフィリピン漁船2隻によって行われた集魚漁具"payao"の設置などの行動を非難する中国海警局報道官の声明だった。

20240407082623(中国海警局の公式サイト 维权执法ページより)

中国海警局の公式微博(SNS)では、公式サイトよりも頻繁に”パトロール”など公式発表を行ってきている。こちらも4月4日の清明節に殉職者の墓参を行ったという動画の次は、维权执法(法執行活動)ページと同じ4月6日(タイムスタンプ:2024-4-6 18:34)の中国海警局報道官の声明だった。

20240407082619中国海警 微博より)

 

フィリピン側のイロコイ礁での活動は4月4日から実施され、中国側は4月6日に報道官声明を発表した。その間、尖閣諸島の海域では中国海警局の船が日本の領海に侵入していたわけだけど、公式発表は行われていない。

 

前回のブログ記事では、南シナ海でのフィリピンへの対応が忙しくて尖閣沖での公式発表を”忘れてた”可能性を冗談まじりで書いてみた。😅
また今年(2024年)は、日本で第24回北太平洋海上保安フォーラム(NPCGF)が開催され、9月には長官級会合(サミット)の開催が予定されているので、そちらに配慮した可能性も考えてみた。
東シナ海と南シナ海での二正面作戦を避ける意図も中国側にあるのかもしれない。

 

あるいは、もしかしたら、石垣市による「ふるさと納税」の返礼品「尖閣アカマチ」のため出漁している漁船に対しては、中国側は一方的に主張してきた”パトロール”や日本漁船などに対する”法執行活動”の発表を見直さなければならなくなった、という可能性はどうだろうか?

中国海警局は2023年から、尖閣沖での緊張を高め続けるような発表をとにかく一方的に行ってきていた。その間、海上保安庁の側から舌戦で対抗したり緊張を高めるようなことは行っていない。

実のところ2023年の中国側の対応が異常で、2023年2月より前は、日本漁船を追尾して領海侵入をしたことを中国海警局の微博や公式サイトで発表することはなかった。公式発表されていたのは、事前に日程が予定されたものだろう領海”パトロール”ばかりだった。(ブログ管理人はその都度、旧Twitter(現X)で公式発表の有無をツイートしていた。アカウントが凍結されたため当時のツイートを見ることが出来ないのは残念だ)

 

中国側は以前から、尖閣諸島の沖で「日本の右翼漁船が領海に不法侵入を繰り返している」と主張して日本の外務省の抗議への反論とし(人民日報 日本語版)、海上保安庁に対して取り締まりの強化を求めていた。

しかし石垣市による「ふるさと納税」のため操業する漁船は「日本の右翼漁船」の範疇に入れにくいだろう。実際問題、海上保安庁はこれまでも、尖閣沖での漁業操業を主目的としない活動家・一部メディア関係者が乗る船の航行を制限している。

 

日中漁業協定により尖閣諸島周辺の暫定措置水域内では、日本漁船は中国の許可を得ることなく操業することができ、中国は日本漁船に対する取締権限は有していない。

石垣市がふるさと納税の返礼品として「尖閣アカマチ」の提供を始め、尖閣沖での「日本漁船の操業」はその返礼品のアカマチをとるためという実質的な目的をはっきりさせたことで、日本側は中国側に対して日中漁業協定をしっかりと守るよう、国際的な取り決めや国際法をもとにさらに強く主張できるだろう。

毎年2回開催されている「日中高級事務レベル海洋協議」でも、中国側(注:日本側ではない)は毎回のように「日中漁業委員会(中日渔委会)をできるだけ早く再開し、日中漁業協定(中日渔业协定)を完全に履行することに合意した」と公式発表をしている(近頃は、中国側は合意や一致したところよりも、一方的な主張ばかり発表しているのが残念だが)。もし中国側が引き続き、尖閣諸島の領海で操業している日本漁船に対する取締りをし法執行活動の実績として公式発表をするようなら、自ら日中漁業協定(中日渔业协定)を危うくしていると見られるだろう。
(追記:当ブログでは、日中高級事務レベル海洋協議の第1回目から、日中双方の外交当局からの発表をもとにチェックしている。その都度、ブログ記事にしている。たとえば直近の第16回(2023年10月))

 

石垣市がふるさと納税の返礼品として「尖閣アカマチ」の提供を始めたことは、尖閣沖での緊張を和らげ、2022年以前の状態に押し戻す助けとなっているのかもしれない。

 

八重山日報(4月6日付)によると、前回(3月28日~30日)尖閣沖の領海で操業した八重山漁協所属の日本漁船2隻(「第八泰生丸」と「ZENKOUMARU Ⅱ」だろう)は、「ふるさと納税」の返礼品の「尖閣アカマチ」をとるために出漁していた。約100㌔の水揚げがあり、出荷に向けて準備中だという。楽しみだ。

「ふるさと納税」の返礼品として尖閣周辺で獲れた「尖閣アカマチ」を出荷する取り組みは、3月28~31日に八重山漁協所属の漁業者が2回目の出漁を行った。約100㌔の水揚げがあり、出荷に向けて準備中だという。

(中略)

尖閣諸島資料館の建設も持ち越されたままの重要な課題。尖閣諸島問題の取り組みに要する費用の多くは、ふるさと納税を財源に充てており、市は対策室を中心に、引き続き全国に協力を呼び掛ける。

尖閣諸島対策室が始動 今月下旬に現地調査へ 表示板設置、130年記念行事も 石垣市 | 八重山日報 (2024年4月6日)

 

石垣市は東海大学の協力を得て、今年も、尖閣諸島と周辺の現地調査を民間のチャーター船を使って行う。

現在、対策室で準備を進めているのが尖閣周辺の現地調査。過去2回と同様に東海大の協力を得て、民間のチャーター船で尖閣周辺海域へ向かう。関係者によると、日程は今月25日ごろを軸に調整している。
昨年は魚釣島の南側を調査したが、今回は北側をドローンで調査する予定で、ヤギによる植生の食害など、島で進んでいると言われる環境破壊の実態に迫れる可能性がある。

 

石垣市による尖閣諸島と周辺海域の現地調査では、2022年1月末に行われた1回目について中国海警局は公式発表を行っていない。2023年1月末に行われた2回目で、はじめて尖閣諸島の領海で日本の船に対して法執行活動を行ったことを公式発表した。

今年(2024年)の日程は4月末のようだ。中国側がこれに対してどのような反応をするか注目される。

【中国海警局】 石垣市、尖閣諸島で海洋調査 | 中国海警局は日本船に対する領海での法執行をはじめて公式発表 - pelicanmemo (2023-02-02)

 

 

沖縄 尖閣沖 中国海警局の船2隻が領海侵入 海保が警告 | NHK | 尖閣 (2024年4月5日)

尖閣諸島の沖合 中国海警局の船2隻が領海侵入|NHK 沖縄県のニュース (2024年4月5日)

中国船2隻が領海侵入 尖閣周辺、今年8日目 | 八重山日報 (2024年4月6日)

第十一管区海上保安本部によると、5日午後0時20分ごろ、石垣市の尖閣諸島周辺の領海に中国海警局の艦船2隻が相次ぎ侵入した。中国船の領海侵入は3月30日に続き、今年8日目。
 2隻は「海警2502」と「海警2302」。午後3時現在、領海内で漂泊している。領海内では日本漁船(9・1㌧、2人乗込み)が操業中で、海保の巡視船が中国船に対して進路規制を実施。領海からの退去を要求し、日本漁船に近づかせないよう警戒している。
 領海外側の接続水域では午後3時現在、「海警2102」と、機関砲らしきものを搭載した「海警2202」が航行している。尖閣周辺で中国船が航行するのは106日連続となった。

沖縄 尖閣沖 領海侵入の中国海警局の船2隻 いずれも領海出る | NHK | 尖閣 (2024年4月6日)

中国船2隻 領海出る 尖閣周辺、今年9日目 | 八重山日報 (2024年4月7日)

 

尖閣諸島対策室が始動 今月下旬に現地調査へ 表示板設置、130年記念行事も 石垣市 | 八重山日報 (2024年4月6日)

【チャンネル初登場】クラウドファンディング達成御礼【林会長と共に】 - YouTube (2024年03月10日)

 

 

【中国海警局】 尖閣諸島の領海侵入の公式発表に変化か? 日本の漁船に接近 - pelicanmemo (2022-11-26)

【中国海警局】 石垣市、尖閣諸島で海洋調査 | 中国海警局は日本船に対する領海での法執行をはじめて公式発表 - pelicanmemo (2023-02-02)

【中国海警局】 尖閣沖の日本の領海での法執行活動を公式発表 日本漁船を名指し - pelicanmemo (2023-07-17)

【中国海警局】 尖閣沖の日本の領海での、海上保安庁の巡視船に対する法執行活動をはじめて発表 - pelicanmemo (2023-10-18)

【中国海警局】 報道官発表の変化 海上保安庁による法執行活動の権利も否定 - pelicanmemo (2023-12-11)

 

今回の第16回協議では、日本の外務省発表では13項目に対して、中国の外交部発表ではわずか段落4つの簡潔な発表となった。日本側の発表では本文は2886文字(参考1,2は含まない)、中国側の発表では本文はわずか600文字だった。
日本側の発表で「〜で一致しました。」と書いてある項目でも、中国側は発表しないことが増えた。日中両国でコンセンサスが得られた事柄を発表するよりも、自らの主張を発表するばかりになっている。
へんなとこで対立が強まっていると、他の項目で「一致」「合意」していてもさらに進展をさせにくくなるだろう。

日中高級事務レベル海洋協議、第16回会議 福島第一原発 ALPS処理水の海洋放出の後、はじめて開催 - pelicanmemo (2023-10-14)

 

中国海警局 カテゴリーの記事一覧 - pelicanmemo

 

海上保安庁 - 尖閣諸島周辺海域における中国海警局に所属する船舶等の動向と我が国の対処

中国海警局 - 海警要闻维权执法

日本の右翼漁船に対する中国海警局の法執行は正当な措置--人民網日本語版 (2022年07月06日)

PCG: China Coast Guard harasses PH boats yet again - Inquirer (April 07, 2024)

PCG: China harassed Rozul Reef food security mission | GMA News Online (April 06, 2024)