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フィリピン、マラウィ市の、イスラム過激武装勢力とフィリピン軍との戦闘の状況(〜6月17日土曜)

20170616062343(via. The Strait Times)

5月23日、フィリピン南部、ミンダナオ島のマラウィ市を、イスラム国(Islamic State(IS, ISIS, ISIL))(以下、ダーイシュ(IS))と関係があるとされるイスラム過激派武装組織(集団)が襲った。

フィリピンのドゥテルテ大統領は3日で鎮圧すると豪語していたが、4週間近くになっても、イスラム過激派武装組織による市の一部地域の占拠と、フィリピン軍との戦闘は続いている。

 

日本語での情報は、外国メディア日本語版が多くて詳しい。日本の大手メディアの報道は在フィリピン邦人(約17,000人(2016年10月))や観光客が多いにも関わらず、関連報道や解説はかなり少ない。遠い中東情勢の方が多いくらいだ。
(正直、日本の"じゃーなりずむ"としてはどうかと思うんだが、中の人にとっては、社内での尺や紙面が重要で、なんとか学園のネタの方が、多分重要なのだろう、うん)

フィリピンの現地メディアや、シンガポールなど東南アジア、オーストラリア、あるいはロイター等の、外国メディアの関連記事を読んでいる人には今更だと思うけど、

管理人が見かけたところを、少しまとめてみた。(6月第二週までの情報)
(死者の数など、日本語の報道や関連記事で頻繁に見付かるものは、あえて書いていません。)

 

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 20170616062342(via. Inquirer, AP)

  • マラウィ市の96地区のうち4地区、約20%(面積?)をイスラム過激武装組織(集団)が占拠していた。イスラム過激武装組織の人数は150〜200人。
  • 5月23日のマラウィ市の襲撃は、フィリピン南部のマウテ(Maute)グループ約500人、アブ・サヤフ(Abu Sayyaf )の一部グループ100人とされていた。
    また戦闘死亡者に、インドネシアとマレーシアを中心に外国のイスラム過激組織の構成員が確認されている(チェチェンやイエメンも確認された)。数ヶ月前のイスラムの祭典に合わせて入国し、潜伏していたようだ。
  • アブ・サヤフ(Abu Sayyaf )の幹部で、ダーイシュ(IS)から「フィリピンのイスラム国組織の首長(Emir)」に任命されたイスニロン・ハピロン(Isnilon Hapilon)は、フィリピン軍による山岳拠点への強襲で負傷したが、マラウィ市内に逃げて健在のようだ(6月8日現在)。
  • 以前から、ミンダナオ島やマラウィ市の、ダーイシュ(IS)の東南アジアでの拠点化が画策されていたのだろうか?フィリピン軍による、ハピロンの強襲作戦によって前倒しされ、マラウィ市の襲撃と占拠につながったように感じている。

  • マラウィ市の住民20万人強の大部分は、周辺地域に逃げている。
    多くは親戚や親族の世話になり、数千人が避難所で健康に不安のある状態におかれている(公式発表。その他にも難民がいるだろう)。フィリピン赤十字をはじめとする人道支援組織が対応をしているが、足りていない。
    フィリピン国内だけでなく、国際社会からの支援も求められている。
  • マラウィ市の市民400〜500人が戦闘地域に取り残され、マラウィ警察署の署長をはじめ、キリスト教徒や、脱出を試みた市民が処刑された(ダーイシュ(IS)の宣伝と同じように、処刑シーンを動画公開した(😕凸))
    フィリピン軍の攻撃に対する「人間の盾」として使われ、強制労働にも従事させられているようだ("奴隷"という表現を使った報道もあった)

  • フィリピン南部は歴史的にも、政府への反体制組織が活動していて、政府軍への抵抗や山岳ゲリラ戦が行われてきた。
    マラウィ市の建物でも地下室や地下道が作られていたことが、フィリピン軍による作戦を難しくさせる要因となっている。
  • フィリピン軍は山岳や森林での戦闘経験はあるが、都市部でのゲリラ戦の経験が浅く装備も足りない。「人間の盾」作戦も使われている。
    米軍の支援は必要だった。
  • 米軍の特殊部隊が、マラウィ市周辺の"地上"にも展開している。
    ただし、フィリピン政府やフィリピン軍の発表では、米軍の部隊は「戦闘には参加していない」「技術的な支援の任務に就いている」であり、繰り返し発表している。政治的配慮だろう。米軍部隊は、自衛のための武装をしていると発表されている。

  • フィリピン軍による、マラウィ市の中心地域への空爆が、5月下旬に行われた。しかし、誤爆によるフィリピン軍兵士の犠牲があったため、その後の空爆は中止された(軍は、再度の空爆の可能性は否定していない)。
    モスクや病院など公共私設への空爆は行われていない(後に載せた地図を参照)
    マラウィ市の中心を通る川の、3つの橋はフィリピン軍が占拠している。

  • イスラム過激武装勢力は、モスクやビルの高層階(3階以上)からの狙撃や火炎瓶、グレネード、重機関銃を使ったゲリラ戦を展開している。
    (現地報道によると、特に"狙撃"に手を焼いているように感じられる。)
  • フィリピンでは、6月12日(金)が独立記念日だったが、それまでに鎮圧できなかった。ラマダン明けは6月26日(月)。
    ミンダナオ島に布告された戒厳令は60日間。(フィリピン国内政治から、延長や拡大はかなり大きな問題となる。)
  • ドゥテルテ大統領は、独立記念日の式典前から、4日間ほど発表や報道に姿を見せなかった。健康不安説が伝えられたが、マラカニアン宮殿は「健康に問題はない」「72才で休息は必要だ」と発表した。
    その後、16日に、ミンダナオ島のダバオ市近くのVillamor空軍基地に到着したことが報道されている。ダバオ市の支持者への対応か、それとも何かあるのだろうか?

注意:戦場の状況は「戦場の霧(fog of war)」と言われるように状況の変化が激しい。フィリピン軍も、わざわざそう付け加えて発表している。(中には(イラク戦争の時のように)、報道されることを前提とした情報操作・撹乱のための発表もあるのではないだろうか?)

  • 現地報道から、フィリピン軍は、6月第二週の週末頃から、米軍の支援をうけて、攻勢を行っているように感じられた。
    これもまた"fog of war"かもしれない。

 

赤色の強い地域は、5月23日に襲撃が行われた地区。
薄い赤色の地区(4箇所)は、5月31日現在、イスラム過激武装勢力が占拠している4地域。

20170616062344 (via. The Strait Time) (Reuters) 

米軍の特殊部隊の支援が報道されてから、フィリピン軍の発表やメディアの報道が活発化したように感じられる。16日(金)・17日(土)までに、発表と関連報道が増えて状況が変わってきているようだ。

ドゥテルテ大統領は、26日のラマダン明けまでに、勝利宣言をしたいのではないだろうか?

 

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マラウィ市は、フィリピン南部のミンダナオ島の南ラナオ州(Lanao del Sur)に位置する。マラウィ・イスラム市(The Islamic City of Marawi)。
住人は20万人強でイスラム教徒が多い。キリスト教徒(カソリック)もいる。

 

5月23日にマラウィ市を占拠した、イスラム国(Islamic State(IS, ISIS, ISIL))(以下、ダーイシュ(IS))と関係があるといわれる武装組織は、ミンダナオ島のマウテ(Maute)グループ500人と、アブ・サヤフ(Abu Sayyaf )の幹部で「フィリピンのイスラム国組織の首長」に任命とされるイスニロン・ハピロン(Isnilon Hapilon)が率いるグループ、そしてインドネシアやマレーシアを中心に外国から流入してきたシンパ。チェチェンやイエメンの出身者も確認されている。
また、マラウィ市の刑務所の脱走者100人強の中や、マラウィ市の市内や周辺からも、イスラム過激武装組織に共感して参加した可能性が指摘されている。

フィリピン軍および警察組織は、過激組織の構成員の逃亡と潜伏を防ぐため、マラウィ市の周辺地域での警戒を強めている。
(Mauteグループの首謀者の父親や祖母、爆弾犯とされる従姉妹が拘束された。刑務所からの脱走犯や、Mauteグループ等の指名手配犯人のを顔写真で特定しているが、どこまで効果があるのか分からない。) 

 

そもそも、フィリピン軍によるイスニロン・ハピロンの捕獲作戦の失敗から、そのままマラウィ市の襲撃と占拠へとつながっている。イスラム過激集団は、マラウィ市に「イスラム国」の拠点の構築をすすめてきていて、人員を潜伏させ、武器装備も集積していたのではないだろうか?
インドネシアのイスラム系過激組織で、Mauteグループと協力関係にあるJamaah Ansharut Daulah (JAD) は、事前に、イスラムの祭の時に最大40人の構成員をフィリピンに送っていたと報道されている。マレーシアから28人が参加したと報道された。

フィリピン軍によるイスニロン・ハピロンの捕獲作戦は、ドゥテルテ大統領および主要閣僚によるロシア訪問中の作戦だった。当時のフィリピン・メディアの報道は、主要閣僚のほとんどが訪露することや、ドゥテルテ大統領の息子のファッション情報だとか(笑)、うん、まあ、ちょっと能天気だったと感じていた。

もしかすると、フィリピン軍による作戦は、イスニロン・ハピロンの位置情報を確認したことによる、突発的な軍事行動だったのかもしれない。

そして、失敗した。 

Mauteグループなどイスラム過激武装勢力によるマラウィ市の襲撃と占拠によって、ドゥテルテ大統領は、急遽、ロシアのプーチン大統領との会談をキャンセルして帰国しなければならなくなった。
帰国後の記者会見で、「3日で鎮圧する」と豪語していることからも、マウテ・グループおよびハピロン率いるアブ・サヤフ残党グループの対応を、かなり甘く見ていていたと推測できる。

  

マラウィ市での、イスラム過激組織集団に対する攻撃に、米軍の特殊部隊が支援のために参加していると報道され、フィリピン国軍もそれを発表した。
これに対してドゥテルテ大統領は、最初、「そのような要請はしていない」とコメントした。フィリピン政府および軍は、米軍の戦闘への参加はなく「技術的な支援任務についている」と、繰り返し発表している。

ロレンザーナ国防長官の発表によると、フィリピン軍が持っていない2種の装備、"夜間飛行能力のある小型の航空機"と"ドローン3機"を特に運用しているようだ。(もちろん"fog of war"を気にしなければならない)

ドゥテルテ大統領・政権としては、フィリピンは、東南アジアや南シナ海での中国の影響力を無視できないため、政治・経済関係を中心に、米国から中国へのシフトを強めてきた。そこにきて、フィリピン軍だけでは南部のイスラム過激集団が鎮圧できず、米軍の支援を受けなければ対応できないとなると、大統領の立つ瀬がない。政治的に行き詰まってしまう。


大統領が公の場に姿を見せなくなったのは、米軍による支援の存在がフィリピン国軍によって確認と発表された頃からだ。
マラウィ市のイスラム過激組織を駆逐するために、米軍の支援は必要であるという事実に対して、ドゥテルテ大統領はコメントしない方が良いという政治的な判断が働いたのかもしれない。(だから雲隠れしていたか?)

なにかあったら余計なコメントをして、マラカニアン宮殿やフィリピン国内、国外をひっかき回してきたドゥテルテ大統領(DU30)ですし。コメントしない方が・・・(苦笑)

 

ちなみに、イスラム過激武装組織の掃討作戦について、中国からは、外交部報道官の談話で支援するとの発言があったが、いまのことろ、中国人民解放軍の特殊部隊によるフィリピンでの活動は・・・、多分、ない。

 

フィリピンのイスラム教徒政治組織、モロ民族解放戦線(MNLF)は、フィリピン軍(AFP)の支援と、イスラム過激武装集団を抑えるため5000人の戦闘員を派遣すると発表した。いまのところ、公式には確認されていない。

こういった情報もまた「戦場の霧」の先にあるのでしょう。

 

Gov’t forces close in on terrorists | Inquirer News 

New batch of US soldiers arrives in Mindanao | Inquirer News

Philippines says it learned of city siege plans in advance - Stripes

No more deadlines for AFP vs Maute | The Philippine Star

AFP urges media: Help bridge soldiers fighting in Marawi with their kin | Inquirer News

Philippine forces adopt strategy of destroying Marawi to save it - The Straits Times

Battle for Marawi: Is ISIS building a base in the Philippines? | The Straits Times 

Duterte’s health a ‘national security issue’ — opposition | Inquirer News

ほかいろいろ