
韓国で、今年(2026年)に入ってから養豚場でのアフリカ豚熱(ASF)の発生が相次いでいる。2月13日までに累計14例発生した。これは昨年(2025年)1年間の件数(6例)の2倍以上で、例年を大幅に上回るペースで感染拡大が続いている。(*1)
日本の農林水産省も、肉製品や衣服、靴などを介して国内にASFウイルスが侵入する恐れがあるとして、感染確認国から帰国や入国した後、養豚場などに近づかないよう注意を呼びかけている。
(*1)2019年:14例、2020年:2例、2021年:5例、2022年:7例、2023年:10例、2024年:11例、2025年:6例。
(獣医学専門新聞DailyVet(데일리벳)より)
今年(2026年)に入って韓国の養豚場で同時多発的に発生しているアフリカ豚熱(ASF(African Swine Fever)、아프리카돼지열병)では、これまでに見られなかった特徴がある。
- 韓国南部の養豚場をふくめて、短期間に同時多発的にASF発生が起きている。
- 国内有数の養豚地域である忠清南道の養豚場で初めて発生した。
忠清南道では、養豚場はおろか野生のイノシシでのASF発生も確認されていなかった。 - 今年(2026年)、養豚場で確認されたASFウイルスは遺伝子型Ⅱ型のうち、韓国国内で主流の IGR-Ⅱ変異体よりも IGR-Ⅰ変異体が多い。
これは昨年までの感染拡大とは違い、ウイルスが外国から韓国国内へ入ってきて、何らかの経路で養豚場の内部へと侵入し拡散した可能性が高い。
昨年まで韓国で拡大していたアフリカ豚熱(ASF)ウイルスは、遺伝子型Ⅱ型の IGR-II が主で、IGR-I やIGR-IIIが確認されても限定的だった。
今回、養豚場で感染拡大しているアフリカ豚熱(ASF)ウイルス遺伝子型Ⅱ型(IGR-I)は、遺伝子間領域での塩基配列の繰り返し(タンデムリピート)が無いあるいは少なく、ジョージア(2007)のウイルスに近い。これまで、東欧やロシアの一部の地域で確認され、中国北部の吉林省やネパールでも確認された。2020年頃からベトナム北部でも確認され、 IGR-Iと IGR-IIの混在も起こっており不安視されている。
そういえば、スペインのバルセロナ近郊で昨年11月に、野生イノシシで発生したアフリカ豚熱(ASF)ウイルスもジョージア(2007)のウイルスに近いとされている。
そのため、近くにある研究所からASFウイルスが流出した可能性が指摘されていた。しかし、その後のスペインの国立獣医学研究所によるDNA解析の結果、研究所にあったウイルスとは違うことが確定してウイルス流出説は否定された。
韓国のASFウイルス遺伝子型Ⅱ型(IGR-I)と、スペインのASFウイルスは、同じ時期に同じように発生をして拡大をしている。
直接の関係は無いだろうけど、単なる偶然かそれとも共時性に理由があるのか…、すこし不気味に感じている。
アフリカ豚熱(アフリカ豚コレラ)カテゴリーの記事一覧 - pelicanmemo
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(Pig&Pork 한돈뉴스より)
韓国のアフリカ豚熱中央事故収拾本部(아프리카돼지열병 중앙사고수습본부)は2月13日、今年(2026年)のアフリカ豚熱(ASF)の発生状況と疫学調査に関する中間結果と、ウイルス拡散を防止する防疫対策を発表した。
아프리카돼지열병 역학조사 중간결과와 확산 방지를 위한 방역 조치 시행 (アフリカ豚熱病疫学調査中間結果と拡散防止のための防疫措置施行)(2026-02-13)
2026年に養豚場で発生した14例(*2)のうち、検査までに確定していた10例のASFウイルスのDNA解析が行われた。京畿道抱川市の2例は従来の遺伝子型Ⅱ型(IGR-II)だったが、8例は遺伝子型Ⅱ型(IGR-I)だった。
(*2) 京畿道4例、江原道1例、忠清南道3例、全羅北道2例、全羅南道2例、慶尚北道1例、慶尚南道1例。
遺伝子型Ⅱ型(IGR-I)8例のうち3例は疫学関係があり、車両や家畜の移動によりウイルスが伝播して発生したと推測される。しかし、5例は個別に発生したもので、養豚場の労働者に付着したASFウイルスや、不法輸入されたASF汚染された豚肉加工品等が原因で発生した可能性があると追加調査が行われている。
韓国の農林畜産検疫本部と食品医薬品安全処(KFDA)は、今年1月26日から2月6日の期間、全国の外国食品販売業者(53カ所)の検査を行った。1カ所で、申告されていない豚肉加工品4品目を摘発、そのうち3品目からアフリカ豚熱(ASF)ウイルスの遺伝子が検出されている。
日本語メディアの報道では、韓国国内で今年に入ってからの養豚場におけるアフリカ豚熱(ASF)の発生と感染拡大が伝えられている。
しかし、その前に、昨年(2025年)11月に忠清南道タンジン市(당진 (唐津)市)にある養豚場で発生したASFが、その後の同時多発発生となる「起点」だったのかもしれない。この例は忠清南道で初めてのアフリカ豚熱(ASF)発生例(養豚場と野生イノシシも含む)であり、ASFウイルスはIGR-I型だった。
韓国の畜産業情報サイト「PIGPEOPLE(돼지와 사람)」は2月10日付け記事で、この忠清南道タンジン市の養豚場の例は11月末に公式にASFウイルスだと確定されたが、実は10月初めに民間の獣医学鑑定機関に対して分析依頼されていた検体ですでにASFウイルスが検出されていたと伝えている。
この養豚場が行政機関によるASF確定判定をされるまで約2ヶ月間、ASFウイルスに汚染された状態で通常の営業を続けていた。この間に、養豚場に立ち入った人だけでなく車両、飼料、糞尿や薬品車両などによって、ASFウイルスが全国へ運ばれた可能性は排除できないと指摘している。
韓国政府もこういう経路でASFウイルスが拡散したという可能性を排除せず、近いうちにタンジン市(唐津市)を含む今年にASF発生した養豚場のサンプルの全ゲノム解析結果を発表する予定だそうだ。
ASF 확산세 ‘비상’... ‘외국발’ 아닌 ‘당진발 조용한 전파’가 원인이었나? (ASF拡散の勢い「非常事態」… “海外発”ではなく“唐津(タンジン)発の静かな伝播”が原因だったか?)(2026-02-10)
農林畜産検疫本部はDNA解析を行い、タンジン市(唐津市)のASFウイルスがネパールで報告されたASFウイルス遺伝子型II型(IGR-I)と酷似するという結果をまとめた。
このタンジン市(唐津市)の養豚場では昨年11月当時、ネパール国籍の労働者5人を雇用していた。そのうち2人は昨年6月に入国して勤務を始めたそうだ。検疫本部は、7月から飼育豚の死亡例が増えたという農場主の供述に基づき、ウイルスの流入時期が7月である可能性も排除していない。
また、ASFウイルス汚染された豚肉加工品が、外国人労働者に対して本国から送られた国際郵便・宅配便にまぎれて養豚場に運び込まれた可能性と、外国人食料品店などを通じた不法に持ち込まれた可能性も調査されている。
당진 ASF 바이러스, 국내 유행형과 달랐다…검역본부 “해외 유입 가능성" (唐津のASF、国内流行株とは異なる「ネパール型」と判明) (2025-12-17)
農林畜産検疫本部はASFウイルス拡大への対策として、次の提案を行った。
- 外国人労働者:入国段階での消毒・検査および持ち込み品の管理
- 教育強化:就業教育における防疫カリキュラムの強化
- 現場管理:養豚場に入る前のチェックと、異常時の報告ルールの徹底
- 物流統制:宅配便および国際郵便の持ち込み規制
- 取り締まり:不法な畜産物に対する監視を高度化
--(追記:2/18)--------------------
「なぜ、ネパール?」と思われるかもしれないので補足です。
簡単に書くと、ネパールやカンボジアから合法的に入国して雇用された外国人労働者が多い。
韓国では外国人労働者の受入れ制度である雇用許可制(고용허가제)(EPS(Employment Permit System))を採用している。日本の特定技能制度や技能実習制度に近い(制度設計でいろいろ違いがある)。
韓国の雇用許可制(EPS)を受け入れた国は17カ国(フィリピン、モンゴル、スリランカ、ベトナム、タイ、インドネシア、ウズベキスタン、パキスタン、カンボジア、 中国、バングラデシュ、キルギスタン、ネパール、ミャンマー、東ティモール、ラオス、タジキスタン)。
新たな受け入れ人数は、2024年に78,025人、2025年に61,184人だった。
2025年には、最多がネパールで11,240人、2位がカンボジアで9,095人だった。雇用期間は基本3年。
国内のネパール国籍労働者は約50,000人に達する。不法残留率(離脱率)が低く、雇用側にも好まれる傾向があるそうだ。
一方、韓国政府は、ASF発生危険国と違法畜産物の持ち込みが多かったベトナム、中国、モンゴル、タイ、カンボジア、ネパールなどを危険路線国に指定して管理を強化している。
国別一般雇用許可制外国人労働者(E-9)導入現況 - 国家統計ポータル(KOSIS)
--(追記ここまで)------------------
韓国のアフリカ豚熱(ASF)の発生状況は、これまでに何度か状況が変化してきた。
最初は、国境を越えて北朝鮮から、河川の増水で流されてきた豚の死骸・残渣や野生動物の糞によってアフリカ豚熱(ASF)ウイルスが韓国国内へ流入した。国内の野生イノシシでASFが発生し、その近隣の養豚場へウイルスが侵入してASF発生するパターンだった。
次は、韓国国内での野生イノシシの移動抑制策の失敗による、ASF感染域の拡大だった。
野生イノシシでASF発生が確認された地方の中には、その近隣の養豚場でのASF発生も起きていた。北朝鮮との国境と接する地方から、徐々に南下してきている。時に、ASFウイルスは”ジャンプ”する、釜山市内でも野生イノシシでの発生が確認がされている。
その一方で、2023年頃から、野生イノシシでASF発生が起きていない地域にも関わらず、養豚場でASF発生する例が出はじめていた。
疫学関係があり車両や家畜の移動によってASFウイルスが伝播したと推測されるものもあったが、中にはそうでないものもあった。
そして2026年。
韓国の養豚業界にとって悪夢のような年になるかもしれない。
春節の観光客はじめ人の移動、食品流通も盛んなので、日本国内も他人事ではない。

아프리카돼지열병 역학조사 중간결과와 확산 방지를 위한 방역 조치 시행 (アフリカ豚熱病疫学調査中間結果と拡散防止のための防疫措置施行)(2026-02-13)
전남 영광군 아프리카돼지열병 추가 발생, 전국 돼지농장에 대한 강화된 방역대책 추진 (全南栄光郡アフリカ豚熱病追加発生、全国豚農場に対する強化された防疫対策の推進)(2026.01.27)
現場の養豚場は、忠南道 唐津市 松山面(충남도 당진시 송산면)? 台湾の台中市の養豚場で発生したASF事例に匹敵どころか、それ以上にヤバすぎる事例になるぞ。
— ぺりかんめも (@pelicanmemo.bsky.social) 2025-11-25T12:13:16.773Z
韓国でアフリカ豚熱が猛威 例年を大幅に上回るペースで感染確認 農水省も持ち込み注意呼びかけ(西日本新聞) - Yahoo!ニュース
韓国でアフリカ豚熱拡大 今年14例、はや昨年越え / 日本農業新聞
「致死率ほぼ100%」韓国でアフリカ豚熱が急拡大 畜産王国の九州で警戒強化|【西日本新聞me】
경기도, 사료 제조업체 14곳 긴급 점검…아프리카돼지열병 확산 예방 - 중부일보 (2026.02.16)
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김천·정읍·홍성 ASF 동시다발 발생… 전국 곳곳 이동중지 (金泉・井邑・洪性の3か所でASFが同時発生、全国各地に移動中止命令を発令) (2026-02-13)
당진 ASF 바이러스, 국내 유행형과 달랐다…검역본부 “해외 유입 가능성" (唐津のASF、国内流行株とは異なる「ネパール型」と判明) (2025-12-17)
충남 당진 양돈서 ASF 추가 발생…올 들어 11번째 (2026.02.12)
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창녕서 경남 첫 아프리카돼지열병…3천900마리 살처분·긴급방역(종합) | 연합뉴스 (2026-02-04)
충남 보령, 경남 창녕 아프리카돼지열병..전국 발생 현실화 – 데일리벳
Multiple variants of African swine fever virus circulating in Vietnam
