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海外の話が多め。近頃は中国が多め(中国海警局・中国海監、深海潜水艇、感染症など)。

【アフリカ豚熱】 韓国、野生イノシシで発生から6ヶ月。その後、どうなっているのか?🐷 【ASF, アフリカ豚コレラ】

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韓国の北部、北朝鮮に近い地域で発生しているアフリカ豚熱(ASF、アフリカ豚コレラ)。

昨年(2019年)の9月17日に始めて発生し、14か所の養豚場へ拡大した(その後、新たな報告例は無い)。しかし野生のイノシシでは、10月3日に京畿道の非武装中立地帯(DMZ(DeMilitarized Zone))で発見された死体でASFウイルスが検出されてから6ヶ月半で、確認例は550頭を数える(2020/04/22まで)

発見地域も当初は京畿道の、北朝鮮と接する民間人出入統制区域(民統線)の内側だけだったが徐々に拡大が続く。特に、東隣の江原道で拡大をしている。今年(2020年)4月は、日本海近くの高城郡や国境からかなり離れた華川郡の南の端や、京畿道の抱川市でも発見された。

イノシシの移動制限のために設置されたフェンスを越えたところでも、複数の感染イノシシが捕獲されている。

5ヶ月間で、これだけ拡大しました。

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【アフリカ豚コレラ】 韓国で、野生のイノシシでASF陽性 | 京畿道の漣川郡と坡州市、江原道の鉄原郡、華川郡、楊口郡、高城郡【地図】(更新 04/22・550頭) - pelicanmemo

 

アフリカ豚熱(ASF、アフリカ豚コレラ)は、飼育豚やイノシシが感染する伝染病で、適切な治療法やワクチンは未だ無い。感染した飼育豚やイノシシは殺処分して、焼却や埋設処理など無害化し、発生場所や関連施設・地域を消毒するしかない。
韓国国内で、さらに南下していくのを食い止めるには厳しい対応が求められるだろう。

 

簡単にまとめると、

  • アフリカ豚熱(ASF、アフリカ豚コレラ)のウイルスは、北朝鮮側から、軍事境界線を越えて韓国の領土へと入り込んでいる。
    どこか1か所からではなく、複数の地域で、ASFウイルスが侵入と考えられる発生例がある(この記事冒頭の地図参照)。
  • 非武装中立地帯(DMZ(DeMilitarized Zone))の中を、感染したイノシシが移動することで、ASFウイルスも広く移動している。
    DMZは、韓国側と北朝鮮側の南北方向は鉄条網やフェンスなど厳重に封鎖されているが、東西方向の移動を妨げるものはあまり無い。
  • DMZでは、感染イノシシの死骸はそのまま残っている。
    大雨などで死骸が越境する河川を流れ下ったり、死骸と接触した鳥や小動物、昆虫などが介在して韓国側へウイルスが侵入しているようだ。
  • DMZの北朝鮮側での、アフリカ豚熱(ASF、アフリカ豚コレラ)の発生状況は発表や報道はほとんど無い。
    しかし一旦、野生イノシシで蔓延すると撲滅は難しい(東欧各国やロシアの例から)
  • 韓国はこれからもずっと、北朝鮮に近い北部地域で、イノシシの移動を制限するためのフェンスや忌避剤を設置し、イノシシの積極的な捕獲個体と死骸調査、検査と死骸処理と無害化を続けていかなければならない。
    それでも、さらに南下していくのを食い止めるには厳しい対応が必要だろう。

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【アフリカ豚コレラ】 韓国、発生から2ヶ月。その後、どうなっているのか?🐷 - pelicanmemo (2019-11-26)

【アフリカ豚コレラ】 韓国、京畿道の非武装中立地帯(DMZ)で、野生イノシシからウイルス陽性 - pelicanmemo (2-19-10-06)

アフリカ豚熱(アフリカ豚コレラ) - pelicanmemo

 

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韓国での、野生のイノシシでのアフリカ豚熱(ASF、アフリカ豚コレラ)発生への対策は、封じ込めに成功したチェコ(2017年6月〜2018年)や、ほぼ封じ込めに成功しているベルギー(2018年9月〜)の対策を参考にして、発生地域を取り囲むようにゾーニングを行い、捕獲や死骸の無害化、調査と検査を徹底してきた。

発生地域の隔離をして、移動制限を徹底して、ウイルスの移動を抑え込む。その隔離地域の内側で感染イノシシが増えて死亡する個体が増えれば、その感染個体を無害化して発生地区を消毒して、地域のウイルスの濃度を下げ伝播を防ぐところにある。

しかし韓国では、イノシシの移動と感染地域の拡大を遅くする効果は出ているが、封じ込めは充分ではない。

 

韓国での野生イノシシのASF対策では、まず、ASF陽性が確認されたイノシシ(死体)を中心に、有刺鉄線と電気柵による1次フェンス(第一次遮断線)を設置、その外側に高さ1.5mのフェンスによる2次フェンス(第二次遮断線)を設置する。さらに、地域ごとに高さ広域フェンスを張って川や湖など河川水系と合わせて南下や他地域へのを防いでいる。

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広域フェンスは、昨年(2019年)は北朝鮮との境界に沿った地域だけだった(下図の白線・白点線)。しかし、その後の発生地域の拡大によって、広域フェンス2次拡張、3次拡張と拡げていって、対応せざるをえなくなっている。

既存の広域フェンスの外側の地区で、捕獲されたイノシシからASF陽性の確認例も起きた。

 

20191029055846(環境部の資料に日本語訳を補足した)

환경부 - (공동-참고)야생멧돼지 아프리카돼지열병 강화된 긴급대책 추진((共同 - 参考)イノシシ、アフリカ豚熱病強化された緊急対策の推進 - 環境部 (2019-10-27)))

その原因のひとつは、フェンスで移動制限をする範囲が、チェコやベルギーと比べて非常に広いため、野生イノシシの個体数も多い。捕獲・狩猟と病死した個体を取り除いても、個体数が充分に減少するには時間がかかってしまう。

次に、北朝鮮側、非武装中立地域(DMZ)から、ASFウイルスが伝播してくるため、黄海から日本海までの200km弱、広い地域をゾーニングしてそれぞれの地域ごとに対応をしていかなければならない。

 

日本に当てはめてイメージするなら、たとえば「東京・千葉・埼玉から山梨・静岡市まで」、「名古屋・岐阜から大阪・神戸まで」といった、東西に長い広い範囲で、野生のイノシシの移動を制限するためのフェンスを張り巡らしている。

準戦時体制という社会体制と法制度、徴兵制で銃の扱いに慣れている人が多い等という強みがあるので維持ができているのだろう。

 

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環境部の国立環境科学院は、昨年(2019年)10月から今年4月12日までに、野生イノシシのサンプル9079件(死体2365頭、捕獲6714頭)を分析した。このうちアフリカ豚熱(ASF、アフリカ豚コレラ)ウイルスが検出されたのは、死体サンプルで510件(陽性率21.6%)、捕獲サンプルで15件(同0.2%)。

昨年(2019年)10月~12月の陽性率は5.3〜7.2%だったが、今年1月〜3月は21.9~33.5%と高い。これは江原道の華川郡での拡大が影響をしている。

 

今年(2020年)1月に、江原道の華川郡ではじめて確認されてから広い地域へ拡大した。
冬季の餌不足などで移動が増え、交尾行動など個体間の感染が活発となる季節要因に加えて、華川郡は山間地が多くフェンスの効果的な設置が難しい。
さらに軍管理地区が多い地域なので、環境部や自治体による捕獲や死骸の発見が遅れたのだろう。

 

その一方で、最初に発生が確認された京畿道の漣川郡や坡州市では、発生地域はあまり拡大せず、臨津江より北の地区がほとんどであり、いくつかの地区では発見数は減少傾向にある。
これは、北側はDMZの軍の有刺鉄線やフェンス、南側は臨津江の比較的に広い川幅に遮られ、2次フェンス内での感染と死亡が進んだためだと考えられる。

 

京畿道漣川郡と接する江原道鉄原郡でも、一部地域で集中発生したが、その後の発生例は少なく小康状態にある。(発生は、漣川郡からの移動ではなく、DMZから鳥や小動物、昆虫が媒介してASFウイルスが伝播して発生した)
昨年(2019年)10月から11月の発生初期に、環境部・国防部・自治体・民間の猟師による合同作戦で発生地域の周辺で野生イノシシの集中駆除を実行し、積極的に個体数を減らした効果と分析されている。

 

今年(2020年)4月には、江原道の楊口郡や華川郡の南の端ぎりぎりまで拡大した。日本海近くの高城郡でも、新たに北朝鮮側、DMZからウイルスが侵入して発生している。

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環境部や農林畜産食品部は、イノシシでの発生を安定化させ、養豚場への伝播リスクを最小限に抑えるため、移動制限など地域別に対応措置を強化して、さらなる拡大を防ごうとしている。養豚場での発生は、初期の14か所から増えていない。

 

春の出産シーズンとなり、ウリ坊たちも出てくる時期だ。

南への拡大を防げるかは、広域フェンスを越えた個体を、迅速に把握して、対応が出来るかどうかだろう。

最終的には、広域フェンスから北朝鮮との軍事境界線の軍のフェンスまでの広い地域で、野生イノシシの個体数をゼロにする必要がある。

半年や1年で終わる話では無い。

 

【アフリカ豚コレラ】 韓国、広域フェンスの外側ではじめて陽性確認(イノシシ(捕獲)) 江原道華川郡 - pelicanmemo (2020-02-11)

【アフリカ豚コレラ】 韓国で、野生のイノシシでASF陽性 | 京畿道の漣川郡と坡州市、江原道の鉄原郡、華川郡、楊口郡、高城郡【地図】(更新 04/22・550頭) - pelicanmemo

 

How ASF was eradicated in the Czech Republic - pigprogress

African swine fever in wild boar in the Czech Republic - SCoPAFF, Brussels, 25. 2. 2019 Petr Šatrán - EU

Peste porcine africaine : état des lieux - Le site officiel de la Wallonie

 

환경부 보도·설명 - (공동-참고)멧돼지 아프리카돼지열병(ASF) 지역별 발생현황 및 향후 추진방향

코로나 와중에 돼지열병 번지나, 강원 고성도 뚫렸다 - 조선닷컴

ASF검출 고성지역 양돈농가 대책 호소 – 강원도민일보

코로나19 와중에 아프리카돼지열병도 확산…양구서 첫 발생 - 중앙일보

 

환경부 보도·설명 - (공동-참고)봄철 대비 멧돼지 아프리카돼지열병 확산 차단 및 농장단위 차단방역 강화

환경부 보도·설명 - (공동-참고)민관군 합동 아프리카돼지열병 멧돼지 폐사체 일제수색

환경부 보도·설명 - 아프리카돼지열병 방역과 이해도 높이는 지침서 발간

환경부 보도·설명 - (참고)환경부 장관, 강원 양구, 고성 야생멧돼지 아프리카돼지열병 대응 현장점검