アフリカ豚コレラが流行している韓国で、殺処分された大量の豚から出た血が北朝鮮との軍事境界線近くを流れる臨津江に流出し、川の水が赤く染まった。… https://t.co/LvVnxoMQrW
— AFPBB News (@afpbbcom) November 13, 2019
韓国の北西部、京畿道の北部と仁川市江華郡の養豚場で発生したアフリカ豚コレラ(ASF)。11月15日までに14ヶ所の養豚場で発生しました。
さらに、京畿道と江原道鉄原郡の、北朝鮮との国境・DMZに近い民統線(民間人統制地域)などで、野生のイノシシでのASFウイルス陽性が25例確認されています。
そんな中、殺処分された豚の血が、埋却処理した場所近くの川を赤く染めている写真が現地のNGOから公表され、世界中のメディアとネット・SNSを賑わせています。
日本語の記事でも伝えられているけど、はっきり書きますと、中途半端な情報が多い。間違いが多い。それらからデマ・流言へと繋がっています。
たとえば、AFP日本語版の次の記事。ひとつひとつの数字や情報は必ずしも間違ってはいません。しかし大事な補足説明が無いまま、まとめてしまっているので、全体として間違いであり、あまり詳しくない読者には誤解を与えてしまいかねない記事になっています。
たとえば、その赤く染まった川は臨津江ではなく、幅が1メートルほどの川です。(そう言われて見てみると、岸辺の落ち葉や木の大きさが気になりませんか?)
「38万頭近くの豚が殺処分」という部分も、「38万頭近くの豚がASF感染した」という意味ではありません。
【11月13日 AFP】アフリカ豚コレラ(ASF)が流行している韓国で、殺処分された大量の豚から出た血が北朝鮮との軍事境界線近くを流れる臨津江(Imjin River)に流出し、川の水が赤く染まった。
韓国ではASFの感染が9月に確認されて以降、38万頭近くの豚が殺処分された。ASFは人間には害がないが、豚やイノシシの間での感染力が非常に強い。豚の場合はほぼ全ての症例が致命的で、解毒剤やワクチンも存在しない。感染拡大を防ぐ唯一の方法として知られているのは、豚の大量殺処分だ。
さらに、いわゆる「嫌韓」イメージと結びついて、ひどいデマやフェイクが生まれてしまいかねない。(ネット・SNSでその方向の偏ったコメントをたくさん見かけます。)
図表と地図とで、簡単に解説してみたいと思います。
【アフリカ豚コレラ】 韓国ではじめて発生 京畿道坡州市 北朝鮮との軍事境界線近く (追記 10/12) - pelicanmemo
アフリカ豚コレラ カテゴリーの記事一覧 - pelicanmemo
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報道の間違いと、より確からしい情報。
・間違い:写真の、豚の血が流れている川は「臨津江」。
・正解 :臨津江の支流の「瑪格川(마거천)」です。水路の幅は1m(川幅は4m)の小さな川で、豚の血の流入個所から約13km下流で臨津江と合流します。
・間違い:豚の血は、アフリカ豚コレラ(ASF)のウイルスに感染した豚のものだ!
・正解 :殺処分された豚は、ASF発生していない養豚場の豚です。
韓国では、養豚場での追加のASF発生を起こさせないために、養豚場の豚を、予防的に殺処分しています。ASF発生していない付近の町村でも飼育禁止とし、市場価格で買い上げて屠殺(殺処分)しています。
(後で詳しく説明しています)
・間違い:韓国ではアフリカ豚コレラ(ASF)が発生して、38万頭が感染し殺処分された。
・正解 :韓国では、養豚場14ヶ所(11/15現在)の養豚場でアフリカ豚コレラ(ASF)が発生しました。飼育頭数(総数)は約2万7000頭です。
その他の約35万頭は、ASFの発生が確認されていない養豚場の豚で、予防的に屠殺(殺処分)されたものです。
【アフリカ豚コレラ】 韓国ではじめて発生 京畿道坡州市 北朝鮮との軍事境界線近く (追記あり) - pelicanmemo
・なぜ、「豚の血が川に流れ出す」という事態が発生したのか?
(1)韓国の北西部でASF発生し、政府当局はその発生地域と周辺の、ASFが発生していない養豚場でも豚の飼育をさせない対策をとりました。このため、狭い地域で、短期間に、15万頭〜38万頭もの大量の豚の死体を処理しなければならず、人員も設備も足りなくなってしまった。しかも、殺処分と無害化処理の作業の実施を、政府当局から急かされていた。
(追記11/16:韓国では埋却場所が足りない。この10年に口蹄疫や鳥インフルエンザが発生したため、その数は全国で6000個所以上、京畿道で約2500個所におよぶ。ほとんどは埋葬地管理指針に基づき再使用はできるが、死体・骨が埋まっているので、事実上、埋却には使えない。今回も民間の土地は見つからず、民統線の軍管理地を使っている。)
(2)韓国では、家畜の伝染病が発生したときの、家畜の殺処分や無害化処理(埋却やレンダリング(高温処理))は、養豚農場の職員や、管轄する農林畜産食品部や自治体の公務員だけでは行われず、民間業者へ発注されます。
この外部業者による、防疫の標準マニュアルが遵守されていないケースが、殺処分の現場、死体の運搬、埋却処理の現場など、いくつも報道されています。今回もその一例です。
(作業従事者は日雇い労働者、外国人労働者も含まれるため、防疫マニュアルの内容が充分に伝わっていないない例や、影響と問題が報道されています。この記事では余談)
(3)豚の死体を埋める時は、韓国では、まずFRP製の大きな容器に入れることで体液の侵出を防ぎ、容器ごと地面の下に埋めるのですが、その容器が足りなかった。この漣川郡の民統線の埋却現場では、豚の死体を野積みで放置したり、当局から無害化処理を急かされていたので掘った穴に防水シートを敷いて埋めて済ませようとしたよう。
ところが、その地域に大雨が降ったことで、豚の死体から侵出した血が溢れて、臨津江の支流である瑪格川に繋がる溝へ流れていってしまった。
(4)この埋却場所の問題は、NGOや一部メディア(記者)によって把握され取材されていた。しかし農林畜産食品部や漣川郡は対応していなかった。
殺処分の現場は、マニュアルに沿った標準的作業なら、次の写真のような感じ(初期の坡州市の例)。
建物近くに見える青いボンベは二酸化炭素ボンベ。数十頭の豚を囲って上にもカバーをかけて密閉して二酸化炭素を入れて窒息死。
(これで、全ての現場でちゃんと密閉できて窒息させられる?蘇生した豚がいたが"生き埋め"という一部の証言の報道があります🙄)
左下に見える大きな容器に、豚の死体を消石灰と一緒に入れて、容器ごと地面の下に埋められます。(容器が全体が埋められていない、地面の上に一部出ている例が報道されています🙄)
豚の血が川に流れ出したことが報道された後、後付けの対策として、侵出個所に吸着材を配置し、豚の血が流れ出した川に堤防2ヶ所やオイルフェンスを設置、血が流れた先の川の水を汲み出して対応。その後の豚の血の侵出は無いと発表されました。
農林畜産食品部は、101ヶ所の埋却設備の緊急点検をすると発表しています。
これまでにも、周辺住民から匂いの問題などが報道されているので、今後さらに、ずさんな埋却の対応が改めて浮き彫りになることでしょう。
・韓国、京畿道漣川郡の埋却処分地での、豚の血の流出現場と対策。
연천군 매몰지 침출수 관련 조치 상황 - 대한민국 정책브리핑 | 뉴스 | 브리핑룸 | 보도자료
さらに詳しい解説
韓国で、京畿道の北部と仁川市江華郡の養豚場で発生したアフリカ豚コレラ(ASF)。11月15日までに14ヶ所の養豚場で発生しました。イノシシで25例の陽性が確認されています。
(25例までの地図(11/13更新))
【アフリカ豚コレラ】 韓国で、野生のイノシシでASF陽性 | 江原道鉄原郡、京畿道漣川郡と坡州市【地図】(追記あり) - pelicanmemo
アフリカ豚コレラ(ASF)が発生した養豚農場14ヶ所で飼育されていた豚は、約2万7000頭。(行政安全部災害対策本部による公式発表では2万7310頭。(畜産専門サイトの集計では2万7043頭))
たとえば、日本で発生している豚コレラ(CSF、古典的豚コレラ)の場合は基本的には、発生した養豚場の豚が殺処分されています。
韓国のASFで殺処分された約2万7000頭は、これに相当します。
韓国ではさらに、ASF発生した養豚農場から半径3km以内にある養豚場で、ASF発生が確認されていなくても、予防的に殺処分が行われました。この数も含めると約15万4000頭です。(公式発表では15万4548頭。(畜産専門サイトの集計では15万3666頭))
行政安全部の災害対策本部による公式発表(2019/11/15)から一部を引用して、簡単に日本語訳を入れてみました。
ASF 범정부 대책지원본부 일일상황 보고(11.15. 06시) | 행정안전부 (ASF汎政府対策支援本部 毎日の状況報告(11.15. 06時) - 行政安全部 災害対策本部)
図表の、第9例と第10例の間にある★印は、仁川広域市の江華郡での予防的殺処分の頭数。江華郡は江華島にあり、島内の全ての養豚場の豚が対象とされました。
また、ASF発生した養豚場の経営者や家族が経営している養豚場も、飼料運搬車など車の出入りによるウイルス拡大リスクがあるとして、他の自治体にあっても予防的殺処分の対象に入っています。
この、ASF発生した養豚農場から「半径3km以内」にある養豚場の豚を予防的に殺処分するという対応には、内外からの否定的意見を見かけています。
ASF発生した自治体の養豚業は、事実上、壊滅しました。
韓国らしいと書くと語弊があるかもしれませんが、韓国らしい、科学的ではない感情的な過剰反応と感じます。
(もしかしたらの話ですが、農林畜産食品部は、韓国の畜産現場の普段の防疫対策のずさんさを知っていて、ここまで厳しくしないとASFの発生を食い止められないと考えたのかもしれません。)
養豚場での14例目のASF発生が10月9日。それから1ヶ月以上が経っても養豚場での15例目の発生は確認されていません。
そりゃそうです。🙄
豚やイノシシに特有の伝染病にかかる豚が、発生リスクが最も高い地域にはいない(はず)ですから。🙄
報道では、韓国で豚の殺処分は38万頭と書かれています。
ここから、さらに20万頭以上の豚を殺しているわけです。
北朝鮮との国境・軍事境界線に近い京畿道の北部や江原道鉄原郡の中北部の、DMZや民統線(民間人統率地域)などで、野生のイノシシからASFウイルスが確認されています。(11月14日までに25例)。
京畿道ではこれらの地域、坡州市や漣川郡、金浦市の養豚場の豚を、市場価格で買い上げて、予防的に屠殺(殺処分)している。その数が20数万頭。
すべて、ASFは発生していない養豚場です。
もちろん、殺処分する前後にASFの全頭検査が行われたわけではありませんから、100%感染していないと断言は事は出来ませんが。
このニュースの赤い川の血の写真を見て、衝撃的に感じるのはよく分かります。当ブログ管理人もそうです。
ただ、中途半端な情報をもとにして、想像たくましくしたイメージをさらに拡散するのは、意識して避けた方が良いのではないかと思います。
科学的ではない感情的な過剰反応であっても、自分勝手なイメージと気分が絶対で尊重すべきだと言い出しかねない、そういう「韓国面」に落ち込んでしまうかもです。😞
フォースの加護があらんことを。
この、予防的に屠畜(殺処分)された豚の埋却施設の問題は、最初はハンギョレ紙の11月11日付けの記事だったのではないかと思う。
[르포] “돼지가 민통선에 산처럼 쌓여” 무차별 살처분 지옥도
この記事は、それほど大きく話題にはならなかった。(日本で知っていた人、どれだけいただろう?日本語で紹介したり言及した人は当ブログの中の人のほかに、いただろうけど多くは無かったのではないだろうか)
この後に、豚の血で赤くなった川の写真がNGOから公表されて、韓国国内のみならず、世界で広く話題になった。
ひと目で分かりやすく、衝撃的に感じるような写真の力は強い、そして怖い。🙄
수만마리 돼지사체 핏물에 임진강 비상(東亜日報 2019.11.12)
ASF 돼지 침출수 유출…정부 현지점검·매몰지 감독 강화 - KBS NEWS (KBS 2019.11.12)
살처분 돼지 침출수 유출에 정부 "매몰지 모두 점검하겠다"(종합) | 연합뉴스
韓国、ASF、
— ぺりかんめも (@pelicanmemo) November 13, 2019
予防的に屠殺された1~4万頭の豚の血が川に流れた話、続報。
「豚の血、悪臭に吐き気」川沿いの住民うめき声
- 東亜日報
“돼지핏물 악취에 헛구역질” 임진강변 주민들 신음https://t.co/p87AQCrYYP
“돼지핏물 악취에 헛구역질” 임진강변 주민들 신음(東亜日報 2019.11.13)
경인일보 : [사설]돼지열병 즉흥 방역으로 시뻘게진 임진강(京仁日報 2019.11.13)
구멍뚫린 돼지열병 살처분…연천, 농식품부 독촉에 허둥지둥 - MBN
'묻을 곳 없다'…경기도 10년간 조성 가축 매몰지 2천517곳 | 연합뉴스