pelicanmemo

海外の話が多め。近頃は中国が多め(中国海警局・中国海監、深海潜水艇、感染症など)。

タンカー「SANCHI」号、沈没から2ヶ月 あのシミュレーション結果は正しかったのか?

中国、上海の東の海上で、貨物船(香港船籍)と衝突して炎上、漂流していたイラン国営タンカー会社のタンカー「Sanchi(サンチ)」(パナマ船籍)が沈没してから、2ヶ月が経った。

タンカーから流出した原油の拡散シミュレーションが報道され、海洋と沿岸への影響が心配されていたが、実際には、流出や燃焼したのは軽質原油で揮発性の高いコンデンセート油であり、現在も若干の漂流油が沈没した海域周辺で確認されているが分散して希釈されている。

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How the Sanchi’s oil could spread - REUTERS GRAPHICS

このシミュレーション画像から直感的にイメージされた(ネット・SNSでは「日本の海が死ぬ」といった煽るような表現もあった)ような被害は起きていない。

 

海水の水質分析の結果でも、環境基準値等を超える項目はなかった。

4.測定結果
○ 11地点において、2.の測定項目のすべて(24項目)について測定を行いました。調査地点毎の測定結果は、表のとおりです。
○ いずれの調査地点においても、環境基準項目の環境基準値及び要監視項目の指針値を超える測定項目はありませんでした。

SANCHI 号からの流出油に関する水質モニタリング結果について - 環境省 水・大気環境局 水環境課 (pdf(3月13日))

 

(追記3/21:薩南諸島の油類漂着問題に関する鹿児島大学調査ワーキンググループの発表について、後に追記しました。) 

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f:id:pelicanmemo:20180314065554j:plain(海上保安庁より)

 

一方で、奄美大島から、トカラ列島、沖縄本島など、北は屋久島から南は宮古島まで(3月14日現在)の南西諸島の島々の海岸で、油状のものが多く漂着している。
シミュレーション結果では、沖縄本島や宮古島など南西諸島の南の島々は入っていない。シミュレーション結果で影響があるとされた、韓国の済州島(Jeju island)で油状のものは確認されていないようだ。

ーー(追記:03/21)ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

"薩南諸島の油類漂着問題に関する鹿児島大学調査ワーキンググループ"が、3月20日に奄美大島で報告会を行った。26日に鹿児島市でも報告会を行う(事前登録が必要)

潮流と風の影響を元に計算した重油の漂流予測によると、タンカーから流出した重油は黒潮に乗って北上後、季節風によって南西諸島へ流れた。今後、季節風が弱まるにつれ奄美群島への新たな重油の漂着は少なくなる見込みという。

調査によると、奄美大島の海草や藻類は例年通りの育成状況で、海水温の影響でサンゴの白化が確認されたものの短期的な影響は見られなかった。今後も貝類のモニタリングなどを継続するという。

漂着油「大きな影響見られず」―鹿大研究者ら | 南海日日新聞  (03/21)

鹿大がタンカー流出油調査を報告|NHK 鹿児島県のニュース (03/21)

鹿大油漂着調査WG報告会 – 奄美新聞 (03/20)

https://www.kagoshima-u.ac.jp/information/180320annai.jpghttps://www.kagoshima-u.ac.jp/information/180320annai.jpg

薩南諸島の油類漂着問題に関する鹿児島大学調査ワーキンググループ報告会開催のお知らせ - 鹿児島大学 

ーー(追記ここまで)ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 

ーー(追記:04/10)ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

水産庁からの発表がありました。

東シナ海におけるタンカー沈没事故による水産資源への影響調査の結果について:水産庁

1.海水及び動物プランクトンにおける毒性物質検出調査
(中略)
以上の調査結果から、調査海域のPAHs濃度にはタンカー事故の影響があるとは認められず、また、調査海域のPAHs濃度では、海産生物への影響もほとんどないものと考えられます。
(以下略)
本記事をご参照ください。

ーー(追記ここまで)ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 

そのシミュレーションを行った英国海洋センター(NOC)では、ロイターほかが報道したシミュレーション結果とは別の、条件を変えた別のシミュレーションを2月9日に発表している。
油状のものが、最初に漂着した奄美大島の近海を起点として、海面を漂う油状のものが拡散したという想定では、沖縄本島から先島諸島の方にまで広がっている。

ペットボトルや海洋ゴミに付着して拡散し、漂着するのだろう。

Coral reefs may be at risk from Sanchi oil tanker contamination | National Oceanography Centre 英国海洋センター(NOC) (February 6, 2018)

Sanchi oil spill contamination could take three months to reach mainland | National Oceanography Centre 英国海洋センター(NOC) (January 12, 2018)  

 

海洋の生物や生態系、水産資源への影響については、環境省、海上保安庁や水産庁の発表が待たれる。

2 分析の結果、各島に漂着した油状の物は、C 重油相当の油または原油相当の油である ことが判明しました。

なお、SANCHI 号に積載されていたとされるコンデンセートは揮発性が高いため、一般的に島に漂着する可能性は極めて低いと考えられます。
奄美大島等漂着の油状の物の分析結果について - 海上保安庁 (pdf(2月9日更新)

また、一般的に季節風(北寄りの風)、黒潮の流れといった気象・海象の影響を受ける可能性を総合的に勘案すれば、鹿児島県及び沖縄県の島に漂流・漂着した油状の物は、 SANCHI号の沈没事故によるものと考えることが合理的であると認識しております。

奄美大島等漂着の油状の物の分析結果について(第3報) - 海上保安庁  (pdf(3月9日更新)

2 浮流油の状況

・3月14日、S 号沈没位置付近から、長さ約500メートル、幅約30メートルの範囲に浮流油を認めているものの、浮流油については末端から拡散消滅している状況。

東シナ海におけるタンカー衝突事故について - 海上保安庁 (pdf(3月14日更新))

f:id:pelicanmemo:20180314065556j:plain(海上保安庁より)

奄美大島等における油状物関連情報|海上保安庁

奄美大島等における油漂着事案に関する環境省の対応状況について - 環境省

奄美大島と周辺地域での油状漂着物についての情報源・リンク(海上保安庁、環境省、水産庁、ほか) - pelicanmemo(2月16日更新)

 

沈没したタンカー「Sanchi(サンチ)」の、船内に残っている燃料重油などの抜き取りや船体の引き揚げについて、具体的な発表や報道は見かけていない。

20180115192130

东海撞船事故最新进展:巴拿马油船爆燃 - 观察者网より) (日本語の赤字等は管理人による)

この地図はよく見ると「その中国の200海里線は何なんだ?」とか、いろいろとツッコミたいところがある、がこの記事の本筋ではないのでそれは兎も角・・・、沈没したのは、東シナ海ガス田の白樺(春暁)区から80〜90km(?)の海域。

中国当局が引き揚げるとすると、韓国でフェリー「セウォル」号を引き揚げた実績がある上海サルベージ(上海救捞局)が行う可能性が高いだろう。沈没したのは、日本の排他的経済水域(EEZ)だが、公海なので、船主であるイラン国営タンカー会社の判断次第となる。

 

【地図】 東シナ海を炎上して漂流していたタンカー「SANCHI」号、大爆発の後に沈没。 - pelicanmemo (2018-01-15)

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