pelicanmemo

海外の話が多め。近頃は中国が多め(中国海警局・中国海監、深海潜水艇、感染症など)。

【地図】 東シナ海を炎上して漂流していたタンカー「SANCHI」号、大爆発の後に沈没。

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(上海海事局官方微博|观察者网より)

中国・上海市の東の海上で6日夜、貨物船(香港船籍)とイラン国営タンカー会社のタンカー「Sanchi(サンチ)」(パナマ船籍)が衝突して火災が発生した。消火活動が続けられていたが、鎮火しないままタンカーは東シナ海を漂流し、14日午後、奄美大島の西方約315kmの海上で、突然の大きな爆発が起きた後、沈没した。爆発の火炎と煙は高度1000m〜3000mに達したそうだ。

10管(管理人注:海上保安庁第10管区海上保安本部)によると、タンカーは衝突後、火災を起こしながら、日本の排他的経済水域(EEZ)内の奄美大島の西方を漂流し、14日に横転した。中国当局から、日本時間の14日午後5時45分に沈没したと連絡があった。
奄美大島の西方約315キロでレーダーから消え、この付近で沈没したとみられるが、黒煙がひどくて確認ができないという。

炎上漂流タンカー、奄美沖で沈没…原油流出恐れ : 読売新聞

“桑吉”轮爆燃后沉没-新华网

 

ーー(追記:02/17)ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

奄美大島と周辺地域での油状漂着物についての情報源・リンク(海上保安庁、環境省、水産庁、ほか) - pelicanmemo

ーー(追記ここまで)ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 

 

タンカー「Sanchi(サンチ)」号は、黄海から東シナ海に吹いていた北西の強風によって、南東へ流され、日本の排他的経済水域(EEZ)に入ってきていた。しかし13日頃から風向きが変わったことで、西寄りの方角へ、南西諸島から離れる方へ漂流していた。

【地図】 上海沖で衝突し火災を起こしたタンカー「SANCHI」号、東シナ海を南東へ、日本の方へ漂流中。 - pelicanmemo (2018-01-12)

 

海上保安庁の水路通報・航行警報ウェブサイトによる、1月14日午後8時の、タンカー「Sanchi」号の位置。

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水路通報・航行警報 位置図(ビジュアルページ)より)

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中国の国家海洋局によると、沈没した海域は「北緯28°22′30", 東経125°56′30"」付近、水深は約115m。水深1000m以上ある沖縄トラフの海域ではなく、大陸棚の海域で沈没した。

“桑吉”轮沉没大量油污在海面燃烧 海洋生态环境受影响-中新网

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(via. Gridded bathymetry data (General Bathymetric Chart of the Oceans))

海面には、タンカーが運んでいたコンデンセート(軽質原油)か、燃料と思われる油が確認されている。中国当局の船・航空機(海警2901や海警2146など)と、日本の海上保安庁の巡視船が、行方不明者の捜索を続けるとともに、流出した油による海洋汚染の監視を行っている。

 

タンカー「Sanchi」の船員32人(イラン国籍30人、バングラデシュ国籍2人)のうち、3人の遺体が収容された。残り29人は絶望的だと言われている。
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交通运输部より)

中国のレスキュー・チーム4人が空気呼吸器(酸素ボンベやマスクなど)を装着して、炎上中のタンカーの船尾に、消火活動を行っていた「深潜」号のクレーンを使って移乗し、救命艇のあるデッキで2人の遺体を発見した。居住区やエンジン室へは、80℃を超える高温の為に向かえなかったそうだ。そして30分弱で、ブリッジから運び出したブラックボックス(航行情報記録装置)と発見した遺体とともに撤退した。

また、イラン陸軍の特殊レスキュー・チーム12人が中国に入国し、高速ボートを使ってタンカーへの接近を試みたが失敗したと報道されている。

東シナ海で衝突・炎上のタンカーが沈没、乗員の生存絶望的 - CNN
Iran Deploys Commandos to Rescue Its Missing Seafarers in China - IFP News

 

新華社通信の新華視点(微信)は、衝突事故から沈没までの漂流のルートと、周辺の東シナ海の地図を公開し、交通運輸部が衝突事故発生から沈没までの間の消火・救助活動の経緯を解説した。観察者網ほかが転載している。

イランの複数の政府関係者から、中国の消火・救助対応が遅いという発言があったことに対するものだろう。消火活動や船員の救助が非常に困難な状況だった事は分かるが、事故の初期に、もう一方の貨物船「CF CRYSTAL」(香港船籍)の船員21人(全員が中国国籍)の救助を大きく報道していたので、イランからすると余計に中国の対応が遅く感じられたのではないだろうか。

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东海撞船事故最新进展:巴拿马油船爆燃 - 观察者网より) (日本語の赤字等は管理人による)

地図をよく見ると「その中国の200海里線は何なんだ?」とか、いろいろとツッコミたいところがある、がこの記事の本筋ではないのでそれは兎も角・・・、沈没したのは、東シナ海ガス田の白樺(春暁)区から80〜90km(?)の海域のようだ。
もし炎上を続けるタンカーが、東シナ海ガス田の掘削施設に近づいていたら、中国はどう対応していたのだろう?中国当局に想定シナリオはあったのだろうか?いろいろな想像をかき立てられる。

 

最後になりましたが、亡くなられた方々のご冥福をお祈りします。

تسلیت#

多艘救助船抵近“桑吉”轮喷洒泡沫灭火 交通运输部继续组织不间断搜寻-图片新闻-中华人民共和国交通运输部
“桑吉”轮昨日再发爆燃后沉没 13日救助人员登轮搜寻到两名遇难者并带回“黑匣子”-交通要闻-中华人民共和国交通运输部

国家海洋局积极开展东海海域油轮碰撞事故应对工作 - 国家海洋局
国家海洋局积极开展东海海域油轮碰撞事故应对工作(二) - 国家海洋局
国家海洋局积极开展东海海域油轮碰撞事故应对工作(三) - 国家海洋局

事故がなくならない理由 安全対策の落とし穴 (PHP新書)

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