19年夏にPCR機器を中国が大量発注 米英豪チームが解析https://t.co/CVHPpQumid
— 日本経済新聞 電子版(日経電子版) (@nikkei) 2021年10月4日
中国の湖北省武漢市で最初のエピデミックが発生した新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)。最初の確認と公式に発表された2019年12月8日よりもずっと前に、同年9~10月や5月に公共セクターでPCR検査機器の調達額が増えていたとの調査結果が発表された。
新型コロナウイルス感染症が公式発表よりも何ヶ月も前に発生しており、大学や防疫当局が検査体制を拡充していた可能性を指摘している。
直感的に、2018年8月に中国で発生し2019年にかけて感染拡大をしたアフリカ豚熱(ASF(旧称:アフリカ豚コレラ)中国名:非洲猪瘟)への防疫と検査のためのものと感じた。オリジナルの報告書を元にして調べてみたところそれだけじゃないようだけど、日本経済新聞の記事ではASFに触れずに概略だけだったので、これについて少し。
報告書を発表したのは、オーストラリアが拠点のサイバー・セキュリティ会社「Internet 2.0」を主体とする米英豪などの元情報機関の職員らで構成する民間調査チーム。10月5日午前4時(日本時間)に公開された。
朝日新聞社系サイトの論座や日本経済新聞が10月5日付けで伝えた。
新型コロナ: 19年夏にPCR機器を中国が大量発注 米英豪チームが解析: 日本経済新聞(2021年10月5日)
2019年夏から武漢でPCR機器の調達が急増~新データが示唆することは - 井形彬|論座 - 朝日新聞社の言論サイト(2021年10月05日)
簡単に書くと、
・2019年に5月と9月~10月に公共セクターでのPCR機器の調達件数と総額が大きく拡大していた。2018年比で2倍近くに増加し、発注期間別では大学が2倍、疾病予防管理センターが5倍、動物疾病対策機関の発注が10倍となった。病院は1割減。特に武漢科技大学の調達額が最大だった。
・2019年は5月と、9月~10月に大きく増えている。
・この2019年の月ごとのPCR機器の調達件数・総額は、2018年以前のパターンと大きく違っている。中国の他の主要な省・市・自治区と比較しても、2019年に急増したのは湖北省と北京市だった。
・これらから、新型コロナは2019年9月~10月にPCR検査体制の拡充が必要なくらいに拡大していた可能性がある。もしかしたら5月に起こっていたのかもしれない。
というもの。
(日本経済新聞より)
これに対してあちこちから反論があった。違和感を覚えるところも多々あった。
・新型コロナの感染拡大が、2019年の5月や9~10月に、PCR検査体制の拡充が必要なほど始まっていたのなら、なぜ年末まで大規模な地域感染(エピデミック)が起こらなかったのか?
・よく見る反論は(当アカウントを含めて)、2018年8月に中国でアフリカ豚熱(ASF (旧称:アフリカ豚コレラ))がアジアで初めて発生し、数ヶ月で中国全土へ拡大していた。養豚場や屠殺場での防疫や検査体制の拡大が求められており、PCR検査機器の増加はその結果だろうというもの(2019年までに、飼育豚の病死や予防的殺処分、養豚場の感染リスク回避や飼育豚価格の暴落、廃業によって中国の飼育豚頭数が4割減少した)
・アフリカ豚熱(ASF)のウイルスは、出荷済みの枝肉や店頭の豚肉・豚肉加工食品(紅腸・ソーセージやジャーキーなど)からも検出された。豚、いのししの病気でありヒトに感染することは無いが、ウイルス汚染された食肉類は撤去され出荷前の検査が厳しくなっていた。
・2016年から第13次5カ年計画(十三・五)が始まった。湖北省では先端技術開発や医療改革・健康・予防といった”大健康”産業も拡大している。
・そして、特に取り上げられた「武漢科技大学」は、武漢市の主要地場産業の重工業系に強い大学なので、「そんな大学だったっけ?」といった違和感を感じた。
その一方で、アフリカ豚熱(ASF)への対応だけでは説明出来ないところもあった。
サイバー・セキュリティ会社「Internet 2.0」のオリジナルの報告書「PCR PURCHASING REPORT WUHAN CHINA」を元にして、分析と説明をしてみた。
Procuring for a Pandemic | Internet 2.0 (登録(無料)する事でpdfファイルをダウンロードできる)
Internet 2.0 | Relentless Security ™
日本経済新聞の記事は、2018年~2019年に流行していたアフリカ豚熱(ASF)について触れておらず、報告書の解説の一部をかいつまんだだけの中途半端な記事だった。
日本語での報告書の内容の解説と、サイバー・セキュリティ会社「Internet 2.0」の実績と信頼性については朝日新聞社系サイトの論座の記事が詳しい。
今回の報告書を執筆したInternet 2.0は、豪州のサイバーセキュリティ会社だ。2019年に起業したばかりで比較的小規模な民間会社だが、米国や豪州の政府・軍・諜報機関などでサイバーセキュリティに携わってきたメンバーが多く所属しており(参照)、アドバイザリーボードにはFBI、NSC(国家安全保障会議)、米国務省などでサイバー担当の政府高官を歴任してきたクリストファー・ペインターらが名を連ねている。
2019年夏から武漢でPCR機器の調達が急増~新データが示唆することは - 井形彬|論座 - 朝日新聞社の言論サイト(2021年10月05日)
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