(八重山日報より)
沖縄県の石垣市は4月25日から3日間、尖閣諸島の魚釣島の沖で、海洋調査とドローンによる空撮や島の植生とヤギやアホウドリなど生息状態の調査を行った。市による現地調査は昨年(2023年)1月末以来で3回目。
石垣市がチャーターした作業船「新世丸」は、25日〜26日と26日〜27日の2回にわけて、石垣港から魚釣島沖へ向かった。石垣市の中山義隆市長や東海大学の山田吉彦教授らが乗船した。26日〜27日の2回目の出航には国会議員5人(*1)が乗船し、洋上から尖閣諸島の視察を行った。
(*1)自民党から議連「尖閣諸島の調査・開発を進める会」の会長を務める稲田朋美元防衛相、山田宏幹事長、櫻田義孝氏(衆院)、青山繁晴氏(参院)。日本維新の会から和田有一朗氏(衆院)
(当ブログ管理人注:このブログ記事は、今回の石垣市による尖閣諸島の現地調査・3回目に対して、中国海警局からの公式発表が無かったことと中国側の対応についての考察が主です。😅 いつもみたいな尖閣諸島の現地調査・3回目での船舶の航行に関する情報と分析は、記事がさらに長くなりすぎるためあまり書いていません。機会があれば別記事にするでしょう🙂)
当ブログでは昨年(2023年)から、尖閣諸島の海域で起きている中国海警局に所属する艦船による領海侵入の事案について、中国側の公式発表の有無とその内容について調べてきた。
というのも、2023年から、中国海警局による公式発表の内容と表現がエスカレートして、表現が強くなり、日本漁船の船名を名指しし、さらには海上保安庁の巡視船(公船)に対して法執行活動を行ったとも発表していた。このベクトルで、さらにエスカレートしていくことを危惧している。
石垣市による尖閣諸島の現地調査では、昨年(2023年)1月末に行われた第2回目のときには、中国海警局は公式発表で「新生丸」の船名を掲載した上で法執行活動を行ったなど負け惜しみ一方的な主張を繰り返していた。
ところが今年(2024年)3月後半から公式発表が変わってきている。日本漁船を追尾して領海侵入して航行した場合では連続3回、公式発表が行われなかった。
今回の第3回目の石垣市による現地調査に対しても、中国海警局は公式サイトやSNSで発表をしていない。いまのところ、4月28日(日)に駐日本・中国大使館の大使館報道官がしたコメントと、週明けの29日(月)に外交部報道官による定例記者会見での回答だけのようだ。(4月30日夜時点)
(追記5月6日:中国海警局の公式サイトと公式SNSで発表はされていない)
【中国海警局】 尖閣諸島の領海で日本漁船2隻が操業(3月28日~30日)、中国側の公式発表なし。 - pelicanmemo (2024-04-02)
【中国海警局】 尖閣諸島の領海で日本漁船1隻が操業(4月5日~6日)、今回も中国側の公式発表なし。 - pelicanmemo (2024-04-07)
【中国海警局】 尖閣諸島の領海に中国海警局の船4隻が侵入(4月12日)、中国側の公式発表あり。日本漁船の操業なし。 - pelicanmemo (2024-04-13)
【中国海警局】 尖閣諸島の領海で日本漁船1隻が操業(4月25日)、今回も中国側の公式発表なし(3月末以来3回目)。 - pelicanmemo (2024-04-28)
中国海警局 カテゴリーの記事一覧 - pelicanmemo
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(産経ニュースより)
まず、昨年(2023年)1月末に行われた石垣市による現地調査・2回目のときの、中国海警局による公式発表を見てみよう。この時、調査船「新世丸」(今回(第3回)と同じ船)と同じ日に日本漁船5隻が魚釣島の領海で操業をしていた。
中国海警局は法に基づいて(注:中国の国内法に基づいて)必要な対応をとり、日本の尖閣諸島の領海にいる日本船に対して警告をし駆逐したと発表している。実際には、東海大の山田吉彦教授によると、中国海警局の船は「新世丸」から3.7kmの距離までしか近づけなかったそうだ。
にも関わらず、日本側には「とやかく言う権利はない(日方无权说三道四)」、当該海域での一切の違法行為を停止して類似事件が発生しないよう求める、と書いている。日本側からみると「負け惜しみ」と感じられるが、中共中央へ向けて「法執行活動を行い、駆逐しました!」とアピールしなければならないのだろう。
中国海警依法驱离日非法进入我钓鱼岛领海船只
2023-01-30 19:03:00
中国海警局新闻发言人甘羽表示,1月30日,日“新世丸”号等5艘船只非法进入我钓鱼岛领海,中国海警舰艇依法对其采取必要管控措施并警告驱离。钓鱼岛及其附属岛屿是中国固有领土,中国海警舰艇依法在本国管辖海域开展海上维权执法活动,日方无权说三道四。我们敦促日方立即停止在该海域的一切违法活动,确保不再发生类似事件。
【中国海警局】 石垣市、尖閣諸島で海洋調査 | 中国海警局は日本船に対する領海での法執行をはじめて公式発表 - pelicanmemo (2023-02-02)
今回の現地調査・3回目(2024年4月25日~27日)に対して、中国海警局は公式発表を行っていない。冗長になるので解説は省くが、公式サイトや公式SNSの更新はない。(4月30日にスクリーンショット画像を取得)
(中国海警局、维权执法(法執行活動)ページ)
(中国海警局、海警要闻 (海警ニュース)ページ)
外交部の4月29日定例記者会見の質疑応答と、駐日本・中国大使館が28日に出した報道官コメントの方を見てみよう。
どちらも、石垣市による”調査団”に日本の国会議員5人が参加し、尖閣諸島の領海で”視察”を行ったことについてコメントを求められた形にしている。外交部は「外交ルートを通じて日本側に厳しい申し入れをしている」とし、日中間の4つの基本文書(中日四点原则共识)(*2)の諸原則と共通認識を堅持し、一切の挑発と一方的なエスカレーションを直ちに停止して中国の主権と領土保全を真摯に尊重云々、というよくある表現で締めくくっている。
(*2)1972年の日中共同声明、1978年の日中平和友好条約、1998年の日中共同宣言、2008年の日中共同声明をさす。
「外交ルートを通じて日本側に厳しい申し入れを送っている」と発言しているが、対応が中国海警局から外交部にうつったわけではない。南シナ海のフィリピン沖EEZの島嶼でのフィリピン側への対応では中国側は外交部だけでなく中国海警局も公式発表を繰り返している。
今回、日本の国会議員5人が尖閣諸島の領海での現地調査に同行し、”視察”を行ったと発言をした上、さらに上陸して調査が必要と言った調査団の発言も報道されているので、中国として外交的な対応が必要になっただけだろう。
あるいは、尖閣諸島に関しては、中国海警局と海上保安庁がやり合っている(実際には、海保が中国海警を封じ込めている)ところを公開してアピールするよりも、日本政府や党・議員に対しては外交ルートの方が与しやすいと考えているのかもしれない。
4月29日の定例記者会見の質疑応答のなかで、外交部の公式サイトでテキスト化されて公開されている13項目のうち、これは後ろから3番目、質問した記者は大手メディアや外国メディアではない広東省深圳市の地方メディア深圳衛視なのでプライオリティはかなり低い。
深圳卫视记者:据媒体报道,日本自民党代理干事长稻田朋美等5名国会议员参加石垣市政府组织的“调查团”,进入钓鱼岛领海进行“视察”。请问中方对此有何评论?
林剑:钓鱼岛及其附属岛屿是中国固有领土。针对日方有关侵权挑衅行径,中方已经通过外交渠道向日方提出严正交涉。中方将继续采取一切必要措施,坚决维护国家领土主权。我们敦促日方恪守中日四点原则共识,立即停止一切挑衅和单方面升级事态的做法,切实尊重中国主权和领土完整。
驻日本使馆发言人就日方涉钓鱼岛消极动向答记者问
2024-04-28 13:17
问:据媒体报道,日本自民党代理干事长等5名国会议员参加石垣市政府组织的“调查团”,进入钓鱼岛附近海域进行“视察”,并声称应登岛调查。请问你对此有何评论?
答:钓鱼岛及其附属岛屿是中国固有领土,中方维护领土主权和海洋权益的决心和意志坚定不移。针对日方侵权挑衅行径,中方已向日方提出严正交涉,中国海警船依法对其采取维权执法措施。中方强烈敦促日方恪守中日四点原则共识精神,停止一切政治挑衅、现场滋事和舆论炒作,回到通过对话协商妥善管控矛盾分歧的正确轨道上来,避免局势进一步升级。
もっとも、行政組織でしかない外交部が初手でこういうコメントをしたとしても、中国共産党の中央の方で厳しい意見が出てきたら、これからの対応が変わってくる可能性は否定できない。
中国の視点で見ると「中国国有の領土であり、外国の国会議員が乗った調査船が領海に侵入し、ドローンを飛ばして領空侵犯を行った上、魚釣島の島の上空も飛行している」にも関わらず、中国軍から「領空侵犯に対して中国軍機が対応した」という発表は無いし、日本のドローン(*3)による航空調査に対する非難の声明も無い。発表がないから中国メディアも報じない。
中国の国内に対して中共中央は、大きく騒ぐようなことは起きていないとして、日本を非難するよりも中国国内の社会不安が大きくなりそうな対応を避けていると思われる。
ちなみに日本は、中国海警局の船上から飛ばしたドローンに対して、航空自衛隊のF15戦闘機がスクランブル発進をし、公式に発表をしている(*4)。
(*3)今回使われたドローンはDJI製「DJI MAVIC 3」だった(産経ニュースより)。
(*4)2017年5月に、尖閣諸島の魚釣島の領海内を航行していた中国海警局の「海警2308」(船名・番号は当時)からドローン(クアッドコプター)が飛行したときに、領空を侵犯したとして航空自衛隊那覇基地(沖縄県)のF15戦闘機がスクランブル発進して対応をした。公式発表をした上で、防衛省・自衛隊から発表されるスクランブル事例のひとつとして集計されている。
【中国海警局】 尖閣諸島の日本の領海内で、中国海警局の公船がドローン(無人機)を運用 - pelicanmemo (2017-05-18)
(読売新聞より)
仮に、石垣市による今回の現地調査・3回目(2024年4月25日~27日)に国会議員が参加していなかったとしても、調査船「新世丸」とドローンによる尖閣諸島の現地調査に対して、中国海警局から公式発表はなかったと思う。
なぜ、中国海警局の公式発表が今年(2024年)3月ころから変わってきたのか?
昨年(2023年)1月に行われた石垣市による尖閣諸島の現地調査・第2回が中国側の腹に据えかねた、”レッドラインを越えてしまった”可能性も考えてみたが、今回の2024年4月の現地調査・第3回では何も発表していないのでその可能性は低いだろう。
そもそも、なぜ中国海警局は2023年から一方的にエスカレーションさせ緊張感を高めるような公式発表を繰り返してきたのか?
より正しくは、2022年11月25日付の中国海警局の船が”領海パトロールを行った”という公式発表から変化が始まった。文面は同じだったが、この時、漁船「鶴丸」が操業を行っていた。実はその発表までに、日本漁船を追尾して領海侵入した時に中国海警局は公式発表を行ったことは無かった。
【中国海警局】 尖閣諸島の領海侵入の公式発表に変化か? 日本の漁船に接近 - pelicanmemo (2022-11-26)
詳しい記録と分析は、当ブログが書いてきた記事をご笑覧ください。(中国海警局 カテゴリーの記事一覧 - pelicanmemo)
2022年というと、8月3日に米国のペロシ下院議長が台湾を訪問したことで、台湾と周辺の情勢で緊張感が高まった年だ。
中国側はエスカレーション・ラダーを登り、8月4日には中国の内陸部と福建省や浙江省の沿岸から9発の弾道ミサイルを発射した。うち5発が与那国島の南の日本のEEZ内に落下している(防衛省・自衛隊)。
中国海警局(人民武装警察部隊・海警総隊)としても、尖閣諸島での対応を強めることを海警司令部で検討していたとしても不思議はない。しかし2022年8月から12月までに尖閣沖での日本漁船の操業は何度もあったが、中国海警局の公式発表に変わりはなかった。すぐには方針変更が出来なかったと思われる。
2023年から中国海警局が公式発表のやり方を大きく変えたのは、2023年11月末に習近平国家主席が上海の人民武装警察部隊・海警総隊・東海海区指揮部(中国海警局・東海分局司令部)を視察することが決まったから、という仮説はどうだろうか?🤔
要するに「習近平にいいところを見せたかった」、「武警海警(中国海警局)東海海区司令部は、日本側が行っている挑発やエスカレーションに対し果敢に立ち向かい、日本船に対しては法執行活動を行って追い出しています!」という、今年の実績アピールの”ための”公式発表だったのかもしれない。
2023年11月29日に習近平国家主席は上海の武警海警総隊・東海海区指揮部を視察した。その後も、同じベクトルのまま中国海警局が公式発表を続けていったとすると、一方的にエスカレートさせていくだけで”戦狼外交”のようにメリットよりもデメリットの方が大きい。
3月中旬に全人代も終わった(2024年3月5日~11日)。ちょうど、南シナ海のフィリピン沖EEZの島嶼でのフィリピン側の対応が中国側の予想以上に厳しくて、さらに強硬に対応をしなければならなくなった。台湾の金門島の周辺海域でも緊張が高まってしまい、海警船を以前よりも多く長く派遣しなければならない。
”引き際”と書くと誤解を招くだろうが、中国海警局としてはこのまま”口撃”を強めていき、尖閣諸島沖で、かなり強い海上保安庁に対してさらにガチンコでの殴り合いとなっていくよりも、ここらで少し距離をとって”息を整え”て、次の方針や戦術を考えているのかもしれない。
ーー
当ブログ管理人めも:今回の第3回目の石垣市による現地調査について、作業船「新世丸」や海上保安庁の巡視船、中国海警局の船2隻とそれらの動きなどくわしく書きたかったんですけど、すでに記事は長くなってます。機会をみて別記事に書くかもしれません。(GWの期間中なので微妙なところ)
石垣市は令和6年度も行政区域である尖閣諸島と周辺海域の調査事業を実施します。先ほど石垣港を出港しました。では、行って参ります! pic.twitter.com/SLSEV0ngS5
— 中山よしたか(石垣市長) (@yoshitaka_ISG) 2024年4月25日
石垣市が尖閣・魚釣島北側を初調査へ 調査船出港、専門家「政府も本腰を」 - 産経ニュース (2024/4/25)
石垣市の尖閣調査開始 市長も乗船、3回目 | 共同通信 (2024/4/25)
尖閣諸島の海洋調査に出発 魚釣島空撮、ヤギ生息状況確認 石垣市 | 八重山日報
石垣市の尖閣調査、終了 中国海警、約1㌔まで接近 | 八重山日報
尖閣ヤギの撮影に成功 北側斜面に群れ、生態系危ぐ | 八重山日報
生態系懸念「上陸が必要」 尖閣の調査船、石垣帰港 | 八重山日報
動画には映っていませんが海警の内側に海保の巡視船がいることを確認しています。左手島側に小さく写っています。 pic.twitter.com/JCVZ56kYSy
— 中山よしたか(石垣市長) (@yoshitaka_ISG) 2024年4月28日
沖縄 尖閣諸島沖合 中国海警局2隻が領海侵入 2日連続 | NHK | 沖縄県
尖閣諸島沖 中国海警局の船2隻が日本の領海侵入 海保が警告 | NHK | 尖閣
尖閣周辺、中国海警船が石垣市の「海洋調査船」に接近か 2隻相次ぎ領海侵入 - 産経ニュース
尖閣諸島周辺で環境調査中、中国海警局の船が接近…調査員「危険」と判断しドローン撮影を中断:地域ニュース : 読売新聞
中国海警局の船、3日連続で尖閣諸島周辺の日本領海に侵入 今年に入り13件目|日テレNEWS NNN
領海内で「わが物顔で」中国海警船が接近 石垣市の尖閣調査終了、夕方帰港へ - 産経ニュース
稲田元防衛相ら尖閣諸島海域を視察 中国海警局の船が領海侵入し並走|FNNプライムオンライン
同行取材レポート
「領海に侵入するな!」 尖閣調査船に迫りくる中国海警船 記者が見た〝緊迫の海〟 - 産経ニュース
尖閣諸島・魚釣島沖の調査船に迫る中国海警局の船、海保の巡視船が阻んだが…緊迫の度合い増す領海:地域ニュース : 読売新聞
迫る海警、制する海保 「領海退去を」尖閣巡り応酬―海洋調査船に同行取材:時事ドットコム
国会議員のブログ(青山繁晴(参院))
【推敲し、書き加えました】 尖閣諸島の海洋調査に参加しました これは苛酷な日程の皮切りです 尖閣その1|青山繁晴の道すがらエッセイ/On the Road
最高責任者のモラルハザードに断が下った3補選です (尖閣諸島その2)|青山繁晴の道すがらエッセイ/On the Road
プライムニュース 4月29日(月)放送分 補選総括…岸田政権の命運は▽尖閣に迫る中国最新動向|報道/ドキュメンタリー|TVer
【尖閣に迫る中国】最新調査から読み取る中国の動向 稲田朋美×逢坂誠二×田﨑史郎×山田吉彦 2024/4/29放送<後編> - YouTube
驻日本使馆发言人就日方涉钓鱼岛消极动向答记者问 - 中华人民共和国驻日本大使馆
日本の国会議員による釣魚島周辺「視察」でコメント - 中華人民共和国駐日本国大使館
在日中国大使館、釣魚島巡る日本の消極的な動きに「厳正な申し入れ」 - 新華網日本語
我驻日使馆:已对日方在钓鱼岛附近海域的侵权挑衅行径提出严正交涉 - 央视网
中方就日本执政党议员进入钓鱼岛附近海域视察向日方提出严正交涉 - RTHK
2024年4月29日外交部发言人林剑主持例行记者会_中华人民共和国外交部
2024年4月29日外交部发言人林剑主持例行记者会_中华人民共和国外交部
日本国会议员进入钓鱼岛海域 中方已向日方提出严正交涉-中新网
