米国で、ミネソタ州ミネアポリス市で起こった、白人警官が黒人男性を拘束した時に首を長時間圧迫して殺害した事件をきっかけとして抗議活動が拡がっています。
昼間は平和的な抗議デモ行進が比較的に多いでしょうが、夜になると、抗議とは無関係の暴動や略奪などが起こっている。
大手メディアの記者による現地取材の報道だけでなく、ネット・SNSでさまざまな情報が流れています(さらに、それだけをソースに報道してたり…)。ただ、米国政府や、州や市の当局者の発表やツイートやfacebook投稿の中に、首をかしげるものがあるのも確かです。
脊髄反射的に「これが真実だ!」や「これはフェイク(FAKE)だ!」の両極端で断定をしたり、脊髄反射的にRTして拡散する習慣も、ちょっとどうかと感じています。
トランプ大統領が、アンティファ(ANTIFA)をテロ組織として認定するだろうとツイートしてから、ANTIFAをからめたネットSNSの情報が増えたし、怪しい情報も増えました。
(“米国でのANTIFA”については、メディア報道やwikipediaやネット情報、その他を調べてみてください。この記事では余談)
The United States of America will be designating ANTIFA as a Terrorist Organization.
— Donald J. Trump (@realDonaldTrump) 2020年5月31日
さらにトランプ大統領は、今回の暴動に関わっているという指摘がある、反ファシズム主義者、「アンティファ」について「アメリカ政府はテロ組織として認定する」と投稿し、今後、暴動に対して強硬な手段を講じる可能性を示唆しました。
さっそく「米国がANTIFAをテロ組織として認定した!」と早合点したようなコメントを多々見かけますが・・・、" will be ~ing" で書いていますよ、状況次第では?選挙の年ですよ?
トランプ大統領のツイートですよ?(王手!)
確定した未来のように断定しちゃってていいの?🙄
閑話休題、
ニューヨーク市で、6月1日や2日の夜にマンハッタンなどで、高級品を扱う店を中心に破壊と略奪があり、NY市の当局や市警察などが警備を強化しています。(3日から沈静化してきたよう)
そんななか、NY市警察のシェイ警察委員長(Dermot F. Shea)が6月3日朝(現地時間)の公式ツイートで、NY市のブロンクスの交差点の歩道に置かれていた、砕石がたくさん入った複数の青い箱を警察官が撤去している動画を公開しました。
これについて、アンティファ(ANTIFA)による「暴動の(投石と破壊行為の)準備の証拠だ」というような脊髄反射的なコメントを見かけますが・・・、実はコレ、あちこちからツッコミが入っています。
コレを含む複数の動画を編集した動画を、ホワイトハウスがツイッターやfacebookで、アンティファ(ANTIFA)が事前に準備したものとして公開しました → すぐに削除されました。
ここんとこ、The Intercept誌がファクトチェックをしています。お粗末な出来で、面白いので(紹介すると長くなる)そちらをごらんください。😊
White House Forced to Delete Claim Video Proves Antifa Plot
米国、抗議デモ | 暴動でワシントンDC炎上? 動画はフェイク? → 本物です。 セント・ジョンズ教会の火災 - pelicanmemo
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ニューヨーク市警察のシェイ警察委員長(Dermot F. Shea)の動画ツイートはこちら。日本語SNSでも拡散していたので、目にされた方も多いと思います。
This is what our cops are up against: Organized looters, strategically placing caches of bricks & rocks at locations throughout NYC. pic.twitter.com/HT317TjoqH
— Commissioner Shea (@NYPDShea) 2020年6月3日
その場所は、ブルックリン区のサウス・ブルックリン地区、グレイブセンド(Gravesend)のXアベニューとW.3rdストリートとの交差点。
ブルックリンでの主な抗議デモの場所から6.5マイル(約10.5km)離れていて、マンハッタンでの最も近い略奪された場所から9.5マイル(約15.3km)も離れています。
東京駅の前で抗議デモと暴動が起きた時に、西川口や多摩川近くの住宅地の歩道で、砕石の入った箱が見つかったから「これは東京駅での、暴動と略奪のために用意されたものだ!」と言うようなものですね。😊
This video has been geolocated to the corner of Avenue X and W. 3rd Street in Gravesend - 6.5 miles from the main Brooklyn protests and 9.5 miles from the nearest serious looting in Manhattan. https://t.co/BiuUM47rHq https://t.co/SlXl5H6kH7
— Evan Hill (@evanchill) 2020年6月3日
(このEvan Hill (@evanchill)さんだけでなく、抗議デモの場所から遠過ぎるというツッコミたくさん)
ニューヨーク市議会のこの地区選出のMark Treyger市議は、現地に行って確認をし、これは近くの建築現場のもので、業者が違法に放置したものかもしれない、というツイートをしています。
This is in my district. I went to the site. This construction debris was left near a construction site on Ave X in Gravesend. Could be evidence of a developer breaking law since phase 1 hasn’t begun, but there was no evidence of organized looting on X last night that I’m aware of https://t.co/oTEn0wMzAR
— Mark Treyger (@MarkTreyger718) 2020年6月3日
ブルックリン在住のJon Endean (@JonEndean)さんは、事実をもとにして、次のように分析し、NY市警のシェイ警察委員長のツイートに指摘をしています(連続ツイートですので、スレッドを御覧下さい)。
- その交差点がある地区は、ブルックリンの南の端です。(地図付き)(下に載せたツイート)
- 略奪があった地区から非常に遠い所です(ニューヨーク市は広いです)。
- その地区は、トランプ支持層が多いです。(地図付き)
- 暴動のための準備ではない、他の説明が必要でしょう。
たとえば、近くの建物が工事中で、建設作業員が砕石の箱を放置していた可能性があります。(写真付き) - NY市警のシェイ警察委員長のツイートは、ちょっといきすぎだと思います。市議の皆さん、どう考えられますか?
Let's start with the location: the corner of Avenue X and West 3rd Street in Gravesend, Brooklyn. Where is that? Here. Way down in the most southern part of Brooklyn. 4/16 pic.twitter.com/1dYzSGusUV
— Jon Endean (@JonEndean) June 4, 2020
さらに、このニューヨーク市警察のシェイ警察委員長(Dermot F. Shea)の動画ツイートは、警察官が公式撮影したのではない、一般市民が撮影した動画を転載したものです。
シェイ警察委員長(あるいはアカウント担当者)が誰かから教えてもらったか、SNSで知った程度の信頼性ではないかと思います。🙄
オリジナルの動画は、Yaakov (Jack) Kaplan (@JackKaplanNY)さんが撮影(6月2日以前の昼に撮影?)したもの、ツイートにANTIFAによって戦略的に配置されたものと書いています。
NYPD removing bricks from Ave X in Brooklyn. Bricks have been places strategically around Brooklyn in anticipation of protests. ANTIFA is way more organized than politicians pretend. pic.twitter.com/FurLevo65w
— Yaakov (Jack) Kaplan (@JackKaplanNY) 2020年6月2日
このYaakov (Jack) Kaplan (@JackKaplanNY)さんはイスラエル系のようで、過去のツイートを見てみても、とくにANTIFA関係のツイートはしていません。煽って火をそそぐ目的でわざと捏造したようには感じられない。
たまたま、トランプ大統領のANTIFAをテロ認定云々の後に、それに煽られてツイートしたものが、SNSで拾われて拡散されたのかもしれません。
(その他の人のツイートやSNSのコメントの中には、煽る目的で作られただろうものもたくさん見かけます)
こういった、暴動を煽るためにANTIFAがやった/極右がやった、から、警察官が市民のふりをして商店の破壊をして暴動を煽っている、など、どこまで本当か分からないネタが沢山、いろいろとあってめんそくさいことこの上ない。
日本メディアでも報道された「美談」の後ろにも、そういう陰謀論の末端が感じられるものがあったりします。
ニューヨーク市のブルックリンで、抗議デモ参加してた黒人の男性たちが、小売り店 TARGET の店の前で破壊や略奪がされないように守っている動画を目にした方も多いことでしょう。
Some protestors in Brooklyn calling to loot the Target, but organizers are rushing in front of the store to stop them, keep things non-violent #nycprotest pic.twitter.com/6x70cpcjep
— Andrew Solender (@AndrewSolender) 2020年5月31日
このツイートをしたAndrew Solender (@AndrewSolender) さんは、次のツイートで、男性のひとりに直接、話を聞いています。(動画の半分あたりで、店の正面で両手を拡げている男性)
引用ツイート(日本語)を見てみると、彼が話している中の人種差別について触れている人は多くても、NY市警察の潜入捜査官がどうとかいうところは、スルーしたり言葉を濁しているものが多いようです。
虐げられてきた怒りが背景にあるということは理解できます。
でも、その店を破壊と略奪をしようとした人がいたのは事実だとしても、それは、本当にNYPDの工作員だったのか?彼は本当に警察の工作員を見分ける事が出来たのか?NYPDの工作員は本当にいたのか?彼が激しく言っていることのどこまでが真実か?
真実はどこにあるのか、分かりようがありませんね。
ネットSNSで流れている動画や画像、情報は、それがバズったのは、面白かったり、目にした人に何か感じるものがあったのでしょう。
ただ、脊髄反射的に「これが真実だ!」や「これはフェイク(FAKE)だ!」と、極端なところで断定しちゃってもいいものかどうか自問自答をする毎日です。
ジェットコースターや、派手なゲームやパチンコのように、めまぐるしく派手な外部情報を消費する高揚感を楽しんでいないだろうか?それを日常的に続けていると、依存症のようになってしまわないだろうか?、と少し心配に感じています(スマホ画面に反射している疲れた顔を見ながら)。
ネットSNSで見かけた全部について書けないので、ひとつのツイート動画に絞って書いてみました。(でも、やっぱり、前後で脱線しちゃった…😓)
トランプ大統領SNS投稿 暴動起こしている人たち「急進左派」 | NHKニュース
White House Forced to Delete Claim Video Proves Antifa Plot