(農林水産省より)
スペインのバルセロナ市近郊で発見された野生イノシシの死骸からアフリカ豚熱(ASF)のウイルスが確認された。スペインでアフリカ豚熱(ASF)が確認されたのは、1994年に撲滅されて以来、30年ぶりとなる。
11月26日、スペイン農業漁業食料省(Ministerio de Agricultura, Pesca y Alimentación (MAPA))が発表した。
(”アフリカ豚熱”はスペイン語で"PPA (Peste Porcina Africana)"ですが、ここでは、分かりやすく英語の"ASF (African Swine Fever)" を使用します)
日本のニュースでは、イタリアに続いてスペイン産の生ハム(ハモン・セラーノ)が輸入停止となった、イベリコ豚が輸入停止となった、いつまで続くか分からない、品薄になって価格高騰か?といった報道がされている。
スペインからの豚肉等の輸入一時停止措置について:農林水産省 (2025年11月29日)
当ブログ管理人は、スペインでアフリカ豚熱(ASF)が発生した事は心配だが、イタリア北西部で発生したときと比べてみるといくつか有利な点があると考えている。
すべてがうまくいけば、スペイン産の生ハムや豚肉の輸入再開は早いかもしれない。それでも2〜3年くらいかかりそうだけど。😞
(追記12/9:スペインは、日本とも、ASF制限区域以外からの豚肉製品の輸入制限を解除することについて交渉中だそうだ。これまでに英国や韓国が、その輸入制限解除で合意している。(”制限区域”について、後の方で地図付きで解説しています))
【アフリカ豚熱】イタリア、北西部で野生イノシシから確認 本土でのASF発生は初めて【ASF, アフリカ豚コレラ】 - pelicanmemo (2022-02-03)
アフリカ豚熱(アフリカ豚コレラ)カテゴリーの記事一覧 - pelicanmemo
アフリカ豚熱(ASF)のウイルスは、ときどき「ジャンプ」をして遠い地域に出現することがある。地図にスペインのバルセロナの場所を青い矢印で示した。
バルセロナ市からもっとも近いASF発生地域はイタリア北部、直線距離で約650kmも離れている。クルーズ船ならマルセイユ経由で2泊3日のショート・ツアーだ。
(ドイツのFriedrich-Loeffler-Institutより。当ブログ管理人が青い矢印と文字を書き加えた)
GoogleEarth画像の、赤い①②マークが、アフリカ豚熱ASF陽性と確認されたイノシシの死骸の最初の発見地点。バルセロナの中心市街地から10数kmの郊外だった。

今回のASFウイルスの原因は、貨物トラックの運転手が投棄した豚肉加工品、いわゆる「サンドイッチ」が原因という発言や、近くの大学の研究所からASFウイルスが漏れた仮説が取り沙汰されている。
ASFウイルスをもった野生イノシシが、ピレネー山脈を超えてきたわけではない。
つぎに、ASF陽性のイノシシの死骸が発見されたのがバルセロナ市の郊外で、住宅地域に囲まれた森だったことだ。商業地域も近い。
例えるなら八王子市の多摩丘陵にある大学の、学生寮の裏にある森でASF1例目のイノシシの死骸が発見された。
【アフリカ豚熱】イタリア、北西部で野生イノシシから確認 本土でのASF発生は初めて【ASF, アフリカ豚コレラ】 - pelicanmemo (2022-02-03)
【アフリカ豚熱】イタリアでの流行、その後(〜2023年9月)|サイゼリヤで生ハムメニューが復活【ASF, アフリカ豚コレラ】 - pelicanmemo (2023-10-12)
この後、初期のような大きな拡大はないけれども防疫戦線は膠着状態。南部のナポリ近くへ”ジャンプ”もあった。
アフリカ豚熱(アフリカ豚コレラ)カテゴリーの記事一覧 - pelicanmemo
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関東地方で例えるなら、イタリア北西部でASF発生した地域は丹沢山地や伊豆、箱根近くの山地だった。その一方で、スペインのバルセロナ郊外でASF発生したのは多摩丘陵の森の中と言えるだろう。(あくまでも当ブログ管理人のイメージです😓)
例えるなら八王子市の多摩丘陵にある大学の、学生寮の裏にある森でASF1例目のイノシシの死骸が発見された。
イタリア北部の山間地と比べると、野生イノシシの移動を制限しやすそうだ。
上のGoogleEarth画像のなか、白枠で囲った地域を拡大した。赤字の①は最初のASF陽性例の発見地点。②は2例目。12月5日までに規制区域のなかの半径6kmのコアエリア内で13例のASF陽性のイノシシが確認された。ASF陰性も50例以上確認されている。

すぐ近くに2本の高速道路(AP-7号線、C-58号線)が走っており、ASF1例目の近くにはサービスエリア(SA)がある。このことから、農業漁業食料大臣は最初の頃に、貨物トラックの運転手が投棄したサンドイッチなどに使われた豚肉加工品がASFウイルスに汚染されていた可能性を指摘していた。
アフリカ豚熱(ASF)のウイルスは、ハムやジャーキーなど加熱処理が充分ではない豚肉加工品のなかで数年以上、感染性を残している可能性がある。ヒトの活動と移動によってASFウイルスは海も山も国境も超えて「ジャンプ」する。
国際空港や港では、入国者に対して厳しい検疫を行ってウイルスを国内に入れないようにしているし、国際郵便小包や宅配便も検知犬がチェックをして、見つかった場合は多額の罰金が科せられる場合がある。農林水産省はじめ、都道府県や自治体が、キャンプや登山、ピクニックのときに豚肉・豚肉加工品を捨てないよう強く求めている。
また、近くのバルセロナ自治大学(Universitat Autònoma de Barcelona (UAB))の研究所からASFウイルスが漏れた仮説も出てきている。
今回確認されたASFウイルスはロシアや東欧からドイツやイタリアで拡大しているASFV-II型で、その中でもアフリカからヨーロッパに始めて侵入したジョージア株(Georgia 2007)で研究用の参照株に非常に似ているという話からだ。当局が検証中なので、続報を待ちたい。
どちらにしても、今のところ、他の地域ではASF陽性が確認されてはいない。うまくいけばこの地域だけで抑え込める可能性は充分にある。
スペイン農業漁業食料省(MAPA)は、EUのアフリカ豚熱(ASF)対策プランに従ってASF陽性が確認された地点を中心にゾーニングを行った。

半径6km圏内の自治体をコアエリア(高リスク地域(Zona de alto riesgo) )(上図の青色の区域)、半径20km圏内の自治体を緩衝エリア(低リスク地域(Zona de menor niesgo))(上図の紫色の区域)に指定した。
汚染地域への立ち入りは、カタルーニャ警察(Mossos d’Esquadra)や民警(Guardia Civil)、軍警察などによって監視される。境界や地域内の養豚場の周囲(地図の緑色の●)には、イノシシが忌避する臭いのフェンスが設置される。
コアエリアでは、森など自然環境へのアクセスは完全に遮断され、狩猟や林業作業はすべて禁止される。物理的および化学的障壁が設置され、イノシシを捕獲するための罠も設置される。
緩衝エリアでは、狩猟やレジャー活動が禁止される。これにはコルセローラ森林公園も含まれる。その地域に詳しい職員によって、イノシシの捕獲と死骸の捜索活動が強化され個体数削減がはかられる。
ベルギーやスウェーデンでのASFV撲滅の成功例につながった、よく練られたプランだ。
イタリアでは、はじめて本土でASF発生した北西部のロンバルディア州等は山地が多いため、イノシシの移動をコントロールすることは難しかった。しかし、首都パリ近郊の自然公園で確認されたASF陽性例は、その後に感染拡大することは無く撲滅が確実視されている。南部ナポリ市近くのカラブリア州で発生したASF陽性例も拡大抑止に成功したらしい。
【アフリカ豚熱】スウェーデンで発生からわずか1年、清浄地域に復帰。 【ASF, アフリカ豚コレラ】 - pelicanmemo (2024-10-11)
アフリカ豚熱(ASF)ウイルスの抑止と撲滅に成功した例として、よく引きあいに出されるのはチェコ、次にベルギー、そして、スウェーデンだろう。(チェコは2022年12月に、5年ぶりに北部でドイツから流入して再発した)
スウェーデンでは、国内ではじめてASF発生が確認されたのは2023年9月6日。昨年(2024年)9月24日、欧州委員会はEU獣医委員会の申請に基づいて、スウェーデンをアフリカ豚熱(ASF)ウイルス発生による制限区域から除外することを決定した。わずか1年で撲滅に成功した。
次は、国際獣疫事務局(WOAH)による評価をうけて、ASF清浄化の認定が行われる
WOAHが定める監視期間(オルニソドロス属ダニの関与が無い場合は12ヶ月、ある場合は36ヶ月)が満たされなければならない
WOAHのASF発生国および隣国等で構成された常設専門家グループ(SGE ASF)では、2025年10月に開催された「SGE ASF 25」においてスウェーデンをメンバー(汚染国)から外してオブザーバーとすることが決定された。ベルギーも清浄化認定されてオブザーバーとして参加している。
その次は、日本政府による調査と評価、家畜衛生条件の協議が行われる。
発生国はASF再発が無いことを証明するための疫学調査やサーベイランスデータ、野生イノシシ対策や養豚場のバイオセキュリティ対策など技術情報を、日本側へ提供しなければならない。日本の専門家は提出された資料をもとに評価・検証し、ASF清浄性が確実で持続的であることを審査する。その上で、国際貿易再開のための協議が行われる。
WOAHでのASF清浄化認定から日本が輸入停止を解除するまで、チェコの場合は28ヶ月、ベルギーの場合は8ヶ月がかかった。チェコの時は最初の例だった為どの段階でも時間がかかっていただろう。ベルギーの場合はチェコと同時に進められていたので、8ヶ月という比較的に短い期間で輸入停止解除となった。
仮に日本での手続きに1年かかるとしてみる。スペインがうまくASF感染拡大を阻止したとしてEU制限解除まで最低1年必要であり、WOAH清浄化認定まで数ヶ月〜、日本が輸入停止を解除するまで早くても2〜3年はかかりそうだ。
(ブログ記事の後ろの方に、チェコとベルギーとスウェーデンの例での、それぞれの日付を書き残しておく。)
もう一つ、ASF発生国であるスペイン国全体からの輸入を停止とするのではなく、カタルーニャ州のASFが発生した地域の豚肉・豚肉加工品だけに限定して輸入停止とする方法がある。
たとえば英国は、最初はスペイン全土を輸入停止の対象としていたが、EUによる制限地域の設定にともなってカタルーニャ州バルセロナ県のASF制限地域に限定した(DAFRA)。中国は最初からスペイン全土ではなく、バルセロナ県に限定していた。
東アジアで唯一のアフリカ豚熱(ASF)清浄国である日本では、このような緩和は行われないと思うけれども、スペインやEUとの政治関係によってはどう転ぶか分からないだろう。
イベリコ豚のようなイベリア半島西部が主な産地の豚肉・豚肉加工品のうち、生産管理と生産者情報がはっきりしているものは、感染拡大の可能性はかなり低いはずだ。
イタリアからの豚肉・豚肉加工品は、以前は全面的に輸入停止とされていた。昨年から、ASF汚染されていない生産地と認定された飼育施設と生産工場で製造された充分に加熱された豚肉加工品に限って日本への輸入が認められている。
スペインに対しても同じような対応が模索されるだろう。
・チェコ
ASF最初の発生日 :2017年6月頃
EU制限解除 :2019年3月12日
WOAH清浄化認定:2019年4月19日
日本の輸入停止解除日:2021年8月30日
ASF再度発生:2022年12月1日
日本の輸入停止:2022年12月3日〜
・ベルギー
ASF最初の発生日 :2018年9月
EU制限解除 :2020年10月1日
WOAH清浄化認定:2020年12月22日
日本の輸入停止解除日:2021年8月30日
・スウェーデン
ASF最初の発生日 :2023年9月6日
EU制限解除 :2024年9月24日
WOAH清浄化認定: 2025年?
日本の輸入停止解除日:?
(生成AIにリスト作成を指示した。裏付けはとったけれども間違いが残っているかもしれません。😓)
MINISTERIO DE AGRICULTURA, PESCA Y ALIMENTACIÓN
España detecta dos casos de peste porcina africana en animales silvestres (pdf)
スペインからの豚肉等の輸入一時停止措置について:農林水産省 (2025年11月29日)
欧州・ロシア等におけるアフリカ豚熱の発生状況(2007年以降)2025年11月28日現在 (pdf)
鈴木農相 ASFでスペインから豚肉輸入停止“国内の供給に影響” | NHKニュース
スペイン産豚肉の輸入を全面停止 アフリカ豚熱の発生確認で 鈴木農水大臣「需給に一定程度の影響は当然ある」 | TBS NEWS DIG
スペイン産豚肉輸入停止 生ハム市場にも打撃か 伊に続き長期化懸念(食品新聞) - Yahoo!ニュース (2025-12-03)
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UK to hold pork from Spain amid African swine fever | New York Post