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海外の話が多め。近頃は中国が多め(中国海警局・中国海監、深海潜水艇、感染症など)。

2025年の日中高級事務レベル海洋協議(第18回)は行われない?

毎年行われてきた日中高級事務レベル海洋協議、昨年(2024年)や一昨年(2023年)は10月に行われた。年2回開催していた頃は遅くても12月に行われていた。

しかし、今年(2025年)11月に入ってから中国が、日本への強硬姿勢をエスカレートさせているなかで今年中の開催はきわめて不透明だ。

 

2020年は新型コロナウイルス感染症(COVID-19) パンデミックの影響で開催されなかった。これは政治・経済とは違った、きわめて大きな安全保障問題が原因の特殊な例だった。

2021年(第12回)および2022年(第13回・第14回)の3回はオンライン開催となった。

2022年11月(第14回)では、11月17日の日中首脳会談での合意をうけて、海空連絡メカニズムのホットラインの早期の運用開始について肯定的に発表されていた。翌年(2023年)3月31日に、日中防衛当局間ホットラインに関して、日中双方で機材の設置および回線の敷設が完了し、設置された。

 

20241024055535(2024年10月に開催された第17回会合まで。外務省発表をまとめた)

当ブログは、日中高級事務レベル海洋協議を追いかけ続けているが、2023年後半あたりから中国側の対応が強硬となってきたと感じている。

 

日中防衛当局間ホットラインは、2024年8月26日に発生した中国のY-9情報収集機による日本の長崎県男女群島沖の領空侵犯(防衛省・自衛隊からの発表)とその後の報道によると、日本と中国の防衛相による1回の儀礼的会談を除き一度も機能していないことが分かった。

日中の防衛ホットライン機能せず 開設から2年半、通話は一度だけ:朝日新聞 (2025年8月17日)

 

日中高級事務レベル海洋協議では、2023年10月(第16回)の協議では、日本と中国、双方の外交当局からの発表はあっても、日中間の様々な交渉が進展した例が無くなった。とくに中国側の発表は、党中央が好む主張をするばかりとなった。

日中双方が発表した文字数の違いからもわかりやすい。

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2023年10月(第16回)の、左側が日本の外務省の発表、右側が中国の外交部の発表(どちらも公式ウェブサイトの発表のスクリーンショットから(2023年10月14日に画像取得))

第16回日中高級事務レベル海洋協議(結果)|外務省

中日举行海洋事务高级别磋商机制第十六轮磋商_中华人民共和国外交部

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新型コロナ渦がおちついた後(*)、2023年に2回、対面形式で4月(第15回)と10月(第16回)に開催された。

 

2023年4月(第15回・東京)は中国軍による台湾周辺での軍事演習の最中に開催された。

共同通信は北京発の短信として「中国側は沖縄県・尖閣諸島や台湾を巡り、中国の領土や主権を侵害する言動を停止するよう日本に要求した。」と報じていた。

こういう要求は15回協議ではじめて出てきたのではなく、第14回や第13回でも似た発表がされている。しかし、2022年11月(第14回)や2021年12月(第13回)は「敦促(うながす)」表現が使われていたが2023年4月(第15回)では「不得插手台湾问题(台湾問題に介入するな)」という強い表現が使われている。

 

中国側の強硬姿勢は今年(2025年)11月になって突然降って湧いた話ではなく、日中高級事務レベル海洋協議だけを見ても2〜3年前から中国側の対応が次第に強硬になってきたことが分かる。
さらに中国の習近平(习近平)政権は、今年(2025年)を「抗日戦勝80周年」と位置付けて荒唐無稽な抗日映画を制作させるなど、反日宣伝を繰り広げている。

 

 

2023年10月(第16回・江蘇省揚州市)は、東京電力 福島第1原子力発電所のALPS処理水の海洋放出が始まってから初めての開催だったので、その関連の報道が多かった。

しかし第16回協議も、日本の外務省発表では13項目に対して、中国の外交部発表ではわずか段落4つの簡潔な発表となった。日本側の発表では本文は1428文字(参考1,2は含まない)、中国側の発表では本文はわずか305文字だった。

日本側の発表で「〜で一致しました。」と書いてある項目でも、中国側は発表しないことが増えた。

 

2024年(第17回)は10月に東京で開催された。

新型コロナ渦の前と2023年にはほぼ年2回、日本と中国の持ち回りで開催されていたが2024年前半の開催は無かった。

2023年10月(第16回)と同じように、2024年10月(第17回)も日中双方から発表されたテキストでの乖離が大きく、内容も薄くなった。

2024年10月(第17回)会議は、日本の外務省発表の11項目に対して、中国の外交部発表ではわずか段落4つ。文字数は、日本側の発表は1310文字(参考は含まない)、中国側の発表ではわずか304文字だった。

日中高級事務レベル海洋協議・第17回会議は10月23日の午後4時〜4時半に始まり、午後6時過ぎまでには終わったようだ。実質的な話し合いの時間は1時間ほどだったようだ。

 

第17回協議で、日中双方の発表から、福島第一原発のALPS処理水の海洋放出に関する部分が無くなった。
IAEAの枠組みのもとでの追加的なモニタリングの実施を踏まえ、中国が安全基準に合致した日本産水産物の輸入を段階的に再開させることで日中両国が合意したと発表された。

しかし、2025年11月に中国は日本産水産物の輸入を再開し、同じ11月にふたたび日本産水産物の輸入を禁止してきたので、仮に2025年(第18回)が開催されたとしてもここの合意はきわめて難しいだろう。

 

 

もしかしたら、日中間の対立が緩和に向かう”かもしれない”といったメッセージのために、日中高級事務レベル海洋協議を開催する可能性も考えられる。可能性ゼロとは言わないがきわめて低いと思う。

それなら映画『クレヨンしんちゃん』の中国国内での上映延期を撤回した方が、ずっと知名度があって、アナウンス効果も高いだろう。(苦笑)

 

(*)新型コロナ禍という社会問題(特に中国のゼロコロナ)がおちついただけで、新型コロナウイルスの流行が終わったわけではない。

 

日中高級事務レベル海洋協議、第12回会議 オンライン形式で開催 - pelicanmemo (2021-02-07)

日中高級事務レベル海洋協議、第13回会議 海上保安大学校と中国海警学院との交流? - pelicanmemo (2021-12-21)

日中高級事務レベル海洋協議、第14回会議 海空連絡メカニズムのホットライン早期運用へ - pelicanmemo (2022-11-23)

日中高級事務レベル海洋協議、第15回会議 中国軍による台湾周辺での軍事演習の最中に開催 - pelicanmemo (2023-04-11)

日中高級事務レベル海洋協議、第17回会議 中国の軍事活動に深刻な懸念を表明 - pelicanmemo (2024-10-24)

日中高級事務レベル海洋協議、第18回会議 ?