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海外の話が多め。近頃は中国が多め(中国海警局・中国海監、深海潜水艇、感染症など)。|メモノメモ新館

【中国海警局】 海でも崩れた日中均衡 経済に続き警備力も「逆転」 - 日本経済新聞2016年5月29日

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(日本経済新聞 5月29日版 12面より)

日本経済新聞が、先週日曜の5月29日の「日曜に考える」面(12面)で、日本と中国との海洋での警備力の「逆転」、具体的には、海上保安庁と中国海警局の警備力についてかなり詳しく解説している。

日本経済新聞の販売店で、バックナンバーの本紙が手に入ったのでこれについて少し。

 

中国海警局と、日中の海上の警備力についてよくまとまっているので、ぜひ御一読をお奨めします。(個人的にはツッコミどころがいろいろあって楽しい(苦笑)

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日本経済新聞5月29日版は、普通の図書館(民間提携してしまったところは知らない)なら、ある程度の期間のバックナンバーを持っているだろう。

日経電子版の有料会員ならすぐ読めるでしょう。また、日本経済新聞の販売店では通常1週間分の本紙バックナンバーが置いてあって購入できるそうだ(1ヶ月分を残している店もあると聞いた。)。(詳しくはサポート情報を。)
新聞バックナンバーの販売について | よくある質問|日本経済新聞 ご購読サポート

 

一部記事は日経WEB版で公開されている(登録必要(無料))。 

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本文に当たる「 政策ズームイン」欄の「尖閣支配へ じわり侵食」の記事。

海でも崩れた日中均衡 経済に続き警備力も「逆転」 :日本経済新聞 

日本の"海上保安庁"と中国の"中国海警局"、両国の"沿岸警備隊(Coast Guard)"の海上警備力について、米国の有力シンクタンク、米戦略国際問題研究所(CSIS)の資料を元に比較し、すでに両国の海洋警備力は逆転しており、2016年以降もさらに差が開く見通しと伝えている

Anatomy of a Strategy | Asia Maritime Transparency Initiative (AMTI (Asia Maritime Transparency Initiative) - CSIS)

 

懸念されるのは、尖閣諸島への影響だ。

CSISによると、尖閣諸島に接近してきた中国海警局の公船の平均総トン数は、2014年は2200トンだが、15年には3200トンになったと推計した。

2015年からは新しく建造された3000トン級複数隻が主力となり、4000トン級や5000トン級も何度も確認されている。大型化と近代化が進められている。これは海外のシンクタンクのレポートを読むまでもなく、事情通にはよく知られている話だし、拙ブログでも折りにふれて取り上げてきたことだ。

中国海警局 カテゴリーの記事一覧 - pelicanmemo
時事|中国海警局、海監 カテゴリーの記事一覧 - メモノメモ(旧ブログ|末尾の記事リストを参照) 

世界最大の沿岸警備隊の公船、満載排水量12000トンと言われる「海警2901」は、まだ尖閣諸島の周辺海域に来ていないが・・・、時間の問題だろう。

 

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CSISの分析記事は、米国の国防省が2015年8月に公開したレポート「Asia-Pacific Maritime Security Strategy」も参考にしている。

その図に、簡単に日本語の説明を追記してみた。一目瞭然。

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Asia-Pacific Maritime Security Strategy (The Department of Defense) (PDF)

(フィリピンのあまりにも貧弱なこと・・・)

2015年に、日中でこれだけの差が開いている。
これら中国海警局の公船の多くは、ここ数年のうちに大型化・近代化して、建造され配備されたものだ。例えば2013年に、次のような記事を書いた。当時は漁政や辺防海警の船を合わせても、1000㌧級以上の公船は40隻以下だった。

中国海監、1000トン級以上の海洋監視船は現在32隻。一覧にまとめてみた。: メモノメモ(2013年3月26日)

中国は「海洋強国」の掛け声の元で、造船バブルの波に乗って警備力を増強してきたし、これからも(ペースは落ちるだろうが)増強は続くだろう。

 

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しかも、この日本経済新聞の記事も、米国シンクタンクの米戦略国際問題研究所(CSIS)の記事も、国防省のレポートでも、見落としている部分がある。状況はさらに悪い。

 

中国海警局が説明される時、よく「日本の海上保安庁に相当する」という表現が使われる。間違ってはいないが、適切ではない。

日本の海上保安庁の任務は、海上での"治安の確保"や"領海警備"、"海難救助"、"災害対策"、"海上環境"、"海洋調査"、"海上交通の安全"、"国際関係"と、他国に類をみないくらい多岐にわたっている。(海上保安庁) 

活動範囲も広く領海、世界で9番目に広い排他的経済水域(EEZ)だけでなく、日米SAR協定(*)に基づいて太平洋の北西海域(東経165度から北緯17度)の羽田から1200海里(約2200km)の広大な海域に及んでいる(地図参照(pdf)
(*)「日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の海上における捜索及び救助に関する協定」。国際海事機関(IMO)の海難捜索救助条約(SAR条約)を補完する。

 

もし中国の中国海警局を、日本の海上保安庁と比較をするのなら、その職責・任務と比較をするべきだろう。

 

中国海警局の主な任務は、海洋総合管理と海洋の権利保全と法執行活動であり、"海難救助"や"海上交通の安全"は、主任務に入っていない。
時々、中国海警局の船による、台風など自然災害や航空機事故の海難救助・捜索活動が報道されているが、主な任務ではない。
中国の「五竜」や「九竜」と呼ばれていた海事組織のうち、中国海警局に統合されなかった、交通運輸部の海事局(海巡)や、救捞局(救捞、救助サルベージ局)が担っている。また地方政府の海事組織も含まれていない。

 

海事局は、沿岸や河川での中型・小型船や作業船が大部分で、大型船は旗船「海巡01」など多くはない。一方、中国救捞は、構成員1万人弱(うち船員や潜水員などが8割)、船舶206隻(専用の海洋救助船81隻)、航空機20機(ヘリ12機)(2013年)と日本の海保の海難救助能力と比較しても、非常に充実した装備を持っている。

 

海上保安庁と中国海警局 ほかの中国の海事組織も: メモノメモ(2014年5月15日)

海警局は海洋権益の保護と法執行活動に集中できる。
この意味で、海洋上では、中国の海事組織はすでに海上保安庁を凌駕していると言っても過言ではないだろう。

航空警備力では、まだ海上保安庁が優勢だ・・・まだ・・・

 

日本経済新聞の5月29日版の中国海警局の記事でも、600字足らずの短い囲み記事だが、そこの解説もちゃんとしている。

中国海警局とは :日本経済新聞

日本の海保とは異なり、海難救助などは主要任務としていない。」としっかりと書かれている。このコラムを書いた記者さんは「尖閣近辺を航行するのは海監の非武装の大型船が多かった。」など、適切な情報を取り上げてツボを突いたところを書いておられる。👍
(長く引用したいが、すぐに全文の数割になってしまう。残念だ。ぜひ、元記事をご参照ください。)

 

ここで「さすが日本経済新聞だ」、・・・と書いて、拙稿を閉じたかったのだが(苦笑) 

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日本経済新聞の5月29日版の中国海警局の記事では、写真やグラフも使って、海上保安庁と中国海警局の警備力の差を表現している。  

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 (日本経済新聞 5月29日版 12面より)

 

・・・ちょっと待て!! 💥💢

 

なぜ、中国海警局に統合再編される前の古い、国家海洋局・中国海監総隊の古い1500㌧級「海監51」の、古い写真を使ったんだ?

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偶然にも、現在(6月2日現在)、尖閣諸島周辺の接続水域で確認されている1500㌧級「海警2151」はこの「海監51」が改名したものだ。
すでに、海警局のマークと舷号に変わっている。

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(via. 参考消息 

海警2151 : 中国海警局|尖閣周辺で確認された海警船。(再編前後の新旧対照まとめ)(2016/01/04更新) - NAVER まとめ

 

新たに建造された複数の3000㌧級が確認され、4000㌧級や5000㌧級も確認されている

日経新聞の本文でも、尖閣諸島に接近してきた中国海警局の公船の総トン数が増えていると、大きく警鐘を鳴らしている。・・・にも関わらず、なぜ古い1500㌧級の古い写真を持ち出してきたのだろう?

海上保安庁の尖閣警備専従部隊、1500㌧級くにがみ型「あぐに」と対比するなら、中国海警局の、尖閣諸島の接続水域や日本の領海で何度も確認されている、海監型3000㌧級(「海警2305」「海警2306」「海警2307」「海警2308」)を使う方が適切だ。

 

それなのに・・・、
何故、古い1500㌧級である「海監51(現・海警2151)」の、さらに古い写真を使ったのだろう?複数の記者さんが、それぞれの文章を担当されて仕上げたのだろう。そこで相互チェックは無かったのだろうか。

日本メディアの記事でこれまで、中国海警局とその脅威について、まとまっていて、比較的に冷静な論調の紙面は見かけた事はなかった。
この写真は・・・とても残念だ。

 

5月29日の12面では、他に

「両国の武力衝突、リスク大 持久戦、警備力が重要に」(署名記事)
「記者の目 続く「グレーゾーン」の緊張」(署名記事)
「ガス田開発・海洋調査ヶ国 中国、強気の姿勢」

の記事・コラムが載っている。

海上保安レポート〈2016〉

海上保安レポート〈2016〉