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海外の話が多め。近頃は中国が多め(中国海警局・中国海監、深海潜水艇、感染症など)。

【H7N9鳥インフル】シャープ、プラズマクラスター技術がウイルスの感染力を抑制と発表 プレスリリースを読んでみた

https://www.flickr.com/photos/7443304@N07/3913708425

photo by Patrick J. Lynch

シャープ株式会社は17日、プラズマクラスター技術が、浮遊する「鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルス」の感染力を抑制することを実証したと発表しました。

 

シャープのプラズマクラスター、新型鳥インフルに効果 ベトナム研究所と共同実験で証明(11/17|産経WEST)

 

うちのブログでは、H7N9鳥インフルエンザ(以下、鳥フルまたは鳥インフル)について、いろいろ記事を書いているのでこれについても少し。

【H7N9鳥インフル】中国、浙江省で感染者 この秋はじめて(2015年10月) - pelicanmemo

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世界初※1 プラズマクラスター※2技術が
浮遊する「鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルス」を抑制することを実証

シャープは、ベトナム ホーチミン市パスツール研究所と共同で、容積1m3ボックスの試験において、プラズマクラスター技術※3が浮遊する「鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルス」の感染力を約47分で99%抑制することを、世界で初めて実証しました。

※1 イオン放出式およびフィルターろ過方式の空気浄化技術において。2015年11月17日現在、シャープ調べ。
※2 プラズマクラスターはシャープ株式会社の登録商標です。
※3 容積1m3の密閉空間において平均イオン濃度を約100,000個/cm3とした。

世界初 プラズマクラスター技術が浮遊する「鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルス」を抑制することを実証|ニュースリリース:シャープ

 

・容積が1立法メートルの密閉した空間で、
・「プラズマクラスター技術」を使ったイオン放出装置で、
・平均イオン濃度を約100,000個/cm3

とした実験で、実証したそうです。イオンが、ウイルスのエンベロープ表面に水酸基ラジカルを発生させ、スパイク状タンパク質を分解することで感染力を抑制します

これまでにも、季節性インフルエンザやH5N1鳥インフルエンザで同じ実験を行っているので、「今回、H7N9鳥インフルでも実証されました。」という発表ですね。

 

ただ、プレスリリースを見比べてみて、少し気になったところ。
同程度の効果が出たのは、H5N1鳥インフルの実験の時は平均イオン濃度は約50,000個/cm3、新型H1N1インフルの時は約25,000個/cm3。インフルエンザ・ウイルスの中でも、型によって反応が異なるようです。

今回のH7N9鳥インフルの実験では、70分強かかっていますが、平均イオン濃度約50,000個/cm3でも抑制効果があります。低濃度でも、時間をかければ効果が出るとも言えそうですが・・・(25,000個/cm3のデータも出してほしかった。)

プラズマクラスターイオン® の高濃度化により浮遊する『H5N1型トリインフルエンザウイルス』を99.9%分解・除去 | ニュースリリース:シャープ(2008年8月27日) 

プラズマクラスター技術により、世界初付着および浮遊両状態の「新型H1N1インフルエンザウイルス」の感染力を抑える効果を実証 | ニュースリリース:シャープ(2009年11月2日)

 

高濃度プラズマクラスターイオンにより世界初 臨床試験において、ヒトへのインフルエンザウイルス感染率低減の傾向を確認 | ニュースリリース:シャープ(2010年11月9日)

シャープの「プラズマクラスター」製品の多くは、平均イオン濃度は約25,000個/cm3なので、このプレスリリースの結果をそのまま反映することは出来ません。病院の透析室のようなコントロールされた環境でない、普通の家庭での実際に使用する場合、どこまでの効果が期待できるのか?

次の段階の検証が待たれます。

 

そこのところシャープも、試験空間での実験結果であることと、イオン濃度が同等であれば同様の効果が得られると考えられる、と書いています。

プラズマクラスター技術の「鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルス」への有効性を実証 - シャープとホーチミン市パスツール研究所 | マイナビニュース

 

寒くなってきたこの時期に、インフルエンザ対策をイメージさせるプレスリリースを出すのはよくあること。最も広告効果が出る時期を選び発表するのは、企業の広報として当然の対応です。

ただ、H7N9鳥インフルについては、前々回や前回のシーズンの事例から、中国当局は他の感染症と同じような扱いにして、発表の機会を減らしています。大きなニュースにならないように制限も加えられているようです。

H5N1やH1N1での実験の蓄積がありながら、なぜ、H7N9鳥インフルエンザが大きく騒がれていた昨冬までに実験を行ってプレスリリースを出せなかったのか・・・、フットワークの鈍さがちょっと残念に感じられました。