(国家卫健委)
中国の国家衛生健康委員会(国家衛健委)は6月1日、H10N3鳥インフルエンザ・ウイルスのはじめてのヒト感染が確認されたと発表した。
感染したのは江蘇省鎮江市在住の41才男性。4月23日に発熱等の症状があり、4月28日に悪化したので現地の病院に入院して治療を行った。発表時に退院できる状態まで快復しているそうだ。中国疾病予防管理センター(中国疾控预防控制中心、中国CDC)が5月28日に遺伝子検査を行った結果、H10N3鳥インフルエンザ・ウイルス陽性と判明した。
このニュースに対して、「なぜ発表が1ヶ月も遅れたのか?🤨」、「怪しい😕」、「(感染者が1人だけとは)信じられない😎」、といったコメントを見かける。新型コロナ禍でいろいろと不安で過敏になっているのだろう。
当ブログと中の人はH7N9鳥インフルエンザの発生から、感染拡大と流行と影響について追いかけてきた。今回のH10N3のヒト感染例でも、なぜ発症から1ヶ月も経った発表となったのか?、思い当たるところがあるので、これについて少し。
”四早”原則(早く発見、早く報告、早く隔離、早く治療)の予防工作からすると残念な対応だったけど、率直な感想は「仕方ないかも…😔」。
省衛生当局から中国CDC(中国疾控预防控制中心)へと検体を送るのは、重大な感染症でなかった場合は”省の検査から1ヶ月以内”とされていた(H7N9のときに調べたもの)。
江蘇省での検査でH7N9や高病原性の鳥インフルエンザ(乙種感染症)では無いと分かったので、5月下旬までの1ヶ月分の検体をまとめて送ったのではないだろうか?
4月28日入院で、その2~3日後には省の衛生当局による最初の検査結果が出るだろう。そこから5月下旬になって〆切り日が近くなったので検体が中国CDCへ送られ、さらに詳しく検査されて5月28日に「実はH10N3鳥インフルエンザだった」と分かった。そこで発表。
こういうことじゃない?🙄、と想像している。(あくまでも当アカ中のヒトの想像です)
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もちろん、まったく逆の想像も可能だ。😎
たとえば、国家衛健委は早い頃からH10N3鳥フルのヒト感染例が発生したことを知っていたが、隔離と地域封鎖と箝口令をしきつつ、接触者への感染拡大や近隣地域で類似の発症例が無いかどうかの確認に1ヶ月未満を要した。結局、感染拡大は起こっていないし低病原性のウイルスだと分かったので、1ヶ月期限間近の5月末に記録に残すための再検査をしてH10N3鳥インフルエンザ・ウイルス陽性と確認されたと発表をしたという空想、まったく根拠がない陰謀論ですが(苦笑)🤪
どちらかというと国家レベルで考えるよりも、新型コロナでの武漢市や湖北省のような省レベルの怠慢や隠蔽の方がイメージしやすい。
江蘇省の衛生当局は、鎮江市在住の41才男性の発熱症状から「新型コロナウイルス感染症(COVID-19、新型冠状病毒肺炎)」(乙類伝染病)の可能性を考えて新型コロナのPCR検査が行う。これは間違いない。そこでは陰性となった(はず)ので、ひと安心しただろう。
初期症状が似ているデング熱(登革热)やマラリア(疟疾)などほかの伝染病の検査も行ったかもしれない。
患者の職業や生活環境が分からないけど、他の類似例から、仮に家禽農家だと考えてみよう。
この場合、乙類伝染病に指定されている「H7N9鳥インフルエンザ(人感染H7N9禽流感)」や「高病原性鳥インフルエンザ(人感染高致病性禽流感 )」(H5N1型など)の検査を行うはずだ。
省の衛生当局の検査でコレラやペスト(甲類伝染病)や新型コロナやH7N9鳥フルなどの結果が出たら、すぐに感染者は隔離されて、密接接触者の検査と住居の消毒など拡大防止策へと移行する。中央と対応を協議して指示を受け、さらに広域の省レベルの移動制限や封鎖にまで発展する場合もある。
感染者の検体はさらに詳しい検査のため中国CDC(中国疾控预防控制中心)に送られ遺伝子検査が行われてウイルスが確定される。
しかし、H7N9や高病原性のH5亜型やH7亜型ではない場合は、省の衛生当局による検査から1ヶ月以内に中国CDCへサンプル送付となるようだ。
H7N9のときでも、発症から確定までやけに動きがおそい省があった。(江蘇省だったかは憶えていない)
鳥インフルエンザ・ウイルスのうちこれまでにヒト感染例があるのは10数種類(H5N1, H5N2, H5N6, H5N8, H7N1, H7N2, H7N3, H7N7, H7N9, H9N2, H10N3, H10N8など(*1))だそうだ。
近年は中国ではじめてヒト感染例が発見される例が増えている。
中国では特にヒトの人口が多く、豚や鶏・家禽の飼育数が多く住居近くで飼う例も多いので人獣共通感染症が拡がりやすい、また検査体制が整っている事が影響していると考えられる。東南アジアの国々でも鳥インフルエンザのヒト感染例がときどき発表されるが、検査体制が充分に整っていない国が多いだろう。
H5N1やH7N9のように感染者が多く死者も出ていて限定的なヒトーヒト感染事例も起こる鳥インフルエンザ・ウイルスがある一方で、H7N7のように感染者数は多めでも症状が軽い場合もある(死者1人)。H9N2やH10N8のように1~数人しか確認されていない偶発的な感染事例と考えられる場合もある。
今回のH10N3もあまり心配はしていない。
【H7N9鳥インフル】 中国のH7N9鳥インフルエンザ、どこいった?(1年ぶり・3回目) | 高病原性H7N9で新たな変異か - pelicanmemo (2019-12-29)
H10N3 鳥インフルエンザ・ウイルスは低病原性で、家禽にとってもそれほど危険なウイルスではない。1981年にドイツ東部の野鳥ではじめて確認され、100羽以上の野生の鴨からウイルスが分離された。2009年から2010年にかけてタイの生きた家禽を扱う市場での鳥インフルエンザ調査でH10N3亜型ウイルスが検出されている。中国では、江西省の養殖場や広西チワン自治区の活禽市場から見つかり、主に飼育のカモでウイルスが検出されている。
(*1)新華社通信の記事の説明に少し補足した。
ウイルスとの戦いに終わりは見えない。
米国の疾病予防管理センター(CDC)による、インフルエンザ危険度評価ツール (Influenza Risk Assessment Tool (IRAT))。
Summary of Influenza Risk Assessment Tool (IRAT) Results | Pandemic Influenza (Flu) | CDC(赤字・赤丸等は管理人による)
江苏省发现一例人感染H10N3禽流感病例 - 中华人民共和国国家卫生健康委员会 (2021-06-01)
中国の保健当局は1日、鳥インフルエンザウイルス「H10N3型」のヒトへの感染を確認したと発表しました。この型のヒトへの感染は世界で初めてとみられていますが、保健当局は「感染は偶発的なもので、大規模に流行するリスクは極めて低い」としています。
中国で「H10N3型」鳥インフルエンザウイルス ヒトへの感染確認 | 鳥インフルエンザ | NHKニュース (2021年6月1日)
中国、鳥インフルH10N3型のヒト感染確認 世界初:AFPBB News
中国でヒトへの感染初確認、鳥インフル「H10N3」 感染源不明 | ロイター
China reports human case of H10N3 bird flu, a possible first
江苏省发现一例人感染H10N3禽流感病例 - 人民网-江苏频道