台湾、行政院、海洋委員会が発足。｜海岸巡防署は海巡署に、艦隊分署や偵防分署などを新設。

20180505191637 （海洋委員會海巡署より）

4月28日、台湾の海洋政策の統合を目指す、行政院の海洋委員会が正式に発足した。高雄市で行われた式典には、蔡英文総統、賴清德行政院院長、陳菊総統府秘書長らが出席した。

海洋委員会（海洋委員會 (Ocean Affairs Council)）は、台湾の総合的な海洋政策、海域の安全、沿岸管理、海洋保全や持続可能な資源開発、海洋技術研究と海洋関連の教育を担当する行政組織。
海洋権益の保護、海洋科学・教育の推進、海洋産業の発展、外交など海洋に関わる人材の育成、国民の海洋文化意識を高めることを目標とする。

海洋委員会には、行政院海岸巡防署から組織改編された「海巡署 (Coast Guard Administration)」（沿岸警備隊に相当する）、新たに、海洋生態環境の保全（保育）と海洋資源の持続的利用を担当する「海洋保育署」と、「国家海洋研究院」が設立された。（高雄市の、高雄ソフトウェアパーク内に海洋保育署と国家海洋研究院が設置された。）

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今後、海巡署の業務のほか、農業委員会の海洋野生生物保護、経済部の海洋深層海水資源の技術開発と産業化推進、海洋の非生物資源の研究と探査、科学技術部の排他的経済水域（EEZ）や大陸棚など海洋科学研究、環境保護署の海洋汚染防止等、の権限にもとづく業務を行うよう調整が進められる。

海洋委員會海巡署全球資訊網

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海洋委員会海巡署は、北部、中部、南部、東部の４つの地区分署、金馬澎地区分署、東南沙地区分署、艦隊分署、偵防分署、教育訓練測考中心の、９つの組織構成となった。

行政院海岸巡防署の時は、その成り立ちと組織再編の歴史から、沿岸海域の海岸巡防総局と、海洋巡防総局との２つの総局があり、加えて分局４つからなる組織だった。
「岸海合一」を目指して統合再編を進めている。

海岸巡防総局の時の地区巡防局４つは、そのまま海巡署の地区分署４つとなった。
新設された、金馬澎地区分署は大陸近くの金門島、馬祖島の海域と台湾海峡に位置する澎湖群島の海域を管轄し、東南沙地区分署は南シナ海の台湾が実効支配する東沙諸島や南沙諸島の太平島などの海域を管轄する。
日本からの観光客が、台湾本島での海のレジャーでお世話になるのは、このあたりだろう（事故など起こらなくても、お世話になっている）。

海洋巡防総局は、艦隊分署となった。総数3000名。
日本のニュースで目にすることもある、大型巡視船によるパトロール活動などはこの艦隊分署となる。

艦隊分署全球資訊網 - 海洋委員會海巡署

艦隊分署（Fleet Branch）には、第一海巡隊〜第十六海巡隊の１５の部隊がある。
第十一（特勤）海巡隊、海巡特勤隊は、偵防分署に編入されたようだ。

海域治安、維護漁權、救生救難、海洋事務、海洋保育為本署五大核心工作，其中海域治安為確保國家安全之重要工作，為有效遏止海域、海岸犯罪，於107年4月28日配合組織調整，於海洋委員會海巡署下設置四級機關「偵防分署」，專責海域、海岸及跨境之犯罪偵查、特勤、空勤吊掛任務與科技鑑識等相關事項，以統籌及強化海巡署犯罪偵防能量。

海洋委員會海巡署偵防分署

偵防分署全球資訊網 - 海洋委員會海巡署

偵防分署（Investigation Branch）は、海洋から海岸、河口、非貿易港での、密輸捜査・取締、不法入国者の防止、その他の犯罪の調査、監督、執行のために設立された。
職務一覧を見ると、海洋・海岸での対テロ活動、対誘拐、救難、災害救助から、公海上での臨検なども含まれている。

一、海域至海岸、河口、非通商口岸查緝走私、防止非法入出國與其他犯
罪調查之規劃、督導及執行。
二、公海上對中華民國船舶或依國際協定得登檢之外國船舶犯罪調查之規
劃、督導及執行。
三、防制滲透與安全情報蒐集之督導、調查及處理。
四、國際、兩岸、跨轄區偵防業務與重大案件之協調、調查及處理。
五、刑事鑑識、科技研發、資訊業務之規劃、督導、協調與相關裝備之建
置、運用及管理。
六、偵防案件之紀錄、蒐集、處理、分析、運用與相關業務工作之規劃、
督導、考核及執行。
七、海域與海岸反恐怖活動、反劫持、救難、災害救助與空勤吊掛相關業
務之規劃、督導、考核及執行。
八、其他有關偵防事項。

海洋委員會海巡署偵防分署組織規程

どうやら、行政院海岸巡防署の頃は法律や管轄地域の関係で、法務部調查局や国家安全局（國家安全局）と連携した、国家の安全に関わる内外の情報の収集や分析、報告は十分に行われていなかったようだ。
（日本はどうだろう？）

行政院海岸巡防署の時の李仲威署長が、引き続き、海巡署の署長となり、海洋委員会の副主任も務める。

近年、中国による軍事進攻・台湾有事や、そこまでは到らないグレイゾーン事態を見据えて、海岸巡防署と海軍との間での協力体制の強化が続いている。昨年、台湾の国会で「海岸巡防署は第二海軍を目指しているのか？」という質問もあった。それに対して、海軍出身の李仲威署長はそれを否定する回答をした。

それでも、2017年8月に海岸巡防署が行政院に提出した、今後10年の巡視船艇の建造計画では、有事には戦闘艦艇として運用できるようにする「平戦転換（平戰轉換）」が計画されている。4000トン級巡視船４隻と600トン級巡視船12隻は、海軍造船発展センターによる基本設計が求められている。
600トン級巡視船は、海軍も調達をすすめている双胴船の沱江級コルベットであり、海巡署が計画している調達分は、有事にはミサイル発射装置と火器管制システムを搭載するのだろう。

あってほしくないが、台湾有事やグレイゾーン事態の可能性はさらに高まっていると見做さざるをえない。
当面、中共がいきなり全面的な軍事進攻をするとは思えない。それでもプーチン政権のロシアによるクリミア半島やウクライナ東部という前例がある。

2020年や、2020年代後半、2030年までという分析も見かける。

日本メディアの台湾関係の報道は、経済と旅行と観光とグルメと民間交流ばかりで、政治の話題には極力ふれようとしていない・・・、もし、いざ何か起こったら、いったいどういう報道になって、どういう方向へ日本国内の世論を誘導しようとするだろう？

台湾を見捨てるようなことを、"また"、しなければよいのだが・・・😕