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海外の話が多め。近頃は中国が多め(中国海警局・中国海監、深海潜水艇、感染症など)。

台湾、海巡署、最大の国産4000トン級巡視船「嘉義」、配備。 多連装ロケット砲を装備。

20210502203434(海巡署長室facebookより)

台湾、国産の4000トン「嘉義」級巡視船の1番船「嘉義 」が4月29日、海洋委員会海巡署に引き渡された。同時に2番船「新竹」の命名式も行われた。

海巡署最大の巡視船となった。全長126.3m、全幅16.5m。4000トン級は公称船型で、満載排水量は5044トン。(総重量6500トンという報道もあった)
これは、中国海警局の5000トン級「海警2501」「海警2502」(同型4隻)(全長128m、全幅16m、満載排水量6470トン(報道より))とほぼ同じ大きさだ。 

 

 

台湾の沿岸警備隊である海巡署では、「自主国防、自主建造(國防自主、國艦國造)」政策に基づいた巡視船艇発展計画(*1)(籌建海巡艦艇發展計畫)によって2018年から10年間で大小取り混ぜて6種類141隻の建造が進められている。内訳は、4000トン「嘉義」級4隻、1000トン級6隻、600トン「安平」級12隻、100トン級巡視艇17隻、35トン級巡視艇52隻、8トン級沿岸多機能艇50隻。(*1)海巡署では「巡防艦艇」と使われる。

 

日本メディアでは、中国の海警局の組織再編や海警法ばかり注目されているが、隣国の台湾でもグレイゾーン事態に対応して沿岸警備隊と”白い船”、巡視船の役割と存在感が大きく変わってきている。
2017~2018年から組織再編と巡視船艇建造計画、有事には海巡署(沿岸警備隊)の船艇を海軍指揮下で運用できるようにする「平戦転換(平戰轉換)」の法整備が進められてきた。分かりやすい例として、新型のカタマラン(双胴船)の600トン「安平」級巡防艦12隻は、有事には雄風II型・III型対艦ミサイル(SSM)4発・4基の装備と運用が可能だ。

 

台湾、行政院、海洋委員会が発足。|海岸巡防署は海巡署に、艦隊分署や偵防分署などを新設。 - pelicanmemo (2018-05-05)

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20210502203456(海巡署長室facebookより)

4000トン「嘉義」級巡視船は、全長126.3m、全幅16.5m、最大喫水4.7m。4000トン級は公称船型で、満載排水量5044トン(総重量6500トンという報道もあった)。風速10級の海況での活動が可能。最大航速24ノット、巡航15ノットで最大10000kmの航続能力をもつ。

医療設備が充実しており、外科手術室など緊急医療設備や、病室、新型コロナなど感染症対策の隔離室などをもっている。病院船として重大海難事故などの際の国際人道救援活動や、有事には”野戦病院”としての運用が想定されている。

20210502203452(海巡署長室facebookより)

 

2.75mm多連装ロケット砲システム(鎮海火箭弾系統)1基(7連装x6)、20mm短距離自動防衛システム(XTR-102)2基、射程120mの高圧放水銃3基、米軍艦と同クラスの夜間監視装置(SeaFLIR 280-HD)、UAVを装備する。ヘリ格納庫とヘリ甲板があり、海軍のS-70C型対潜哨戒機ヘリや内政部空中勤務総隊のヘリも運用可能と発表されている。

 

台湾は、新型の国産巡視船の主武装に機関砲ではなく多連装ロケット砲システムを採用した。
600トン級12隻と4000トン級4隻、そして1000トン級6隻の計22隻に装備される。(実射を含む試験運用が500トン級「台中」艦で行われた)

20210502203427(600トン級「安平」艦のもの。同型)(海巡署長室facebookより)

2.75mm多連装ロケット砲システム(鎮海火箭弾系統)は、国家中山科学研究院(NCSIST, 中科院)が研究開発した海岸防衛多連装ロケット砲システム(70火箭彈武器系統)を改良した艦載型で、有効射程5km、最大射程10km。(海保などの巡視船の30mm機関砲は射程約5km)

試験時は7連装x8だったので増設が可能だろう。架台から変更すればさらにパワーアップもできそうだ。

 

一般的にイメージされるだろう”ミサイル”を発射するだけでなく、弾頭は榴弾(高性能爆発物)、照明弾や煙幕弾、小径鉄球(ビーンバッグ?)弾などにも対応している。

威力がありすぎて(物理的にも法的にも)使えない機関砲よりも、平時の近海や沿岸での違法船舶の制圧や対テロ任務ではずっと現実的な装備だと感じられる。

 

ところで、軍隊ではない海上法執行組織の巡視船艇にロケット砲を装備するのは法的に問題ないのだろうか?🤔 (日本でいうと海上保安庁法に抵触していないだろうか?)

調べてみたところ、海洋委員会に昨年(2020年(民国歴109年))までに、「沿岸警備組織の機器種類の条例の改訂案」(海岸巡防機關配備器械種類規格表)が提出されていた。「ロケット弾(火箭彈)」はそれまでの「その他の機器(其他器械)」カテゴリーから、艦砲や機砲と同じ「砲」カテゴリーに変更されていた。主武装としての運用で問題とされにくい法整備を行ったのだろう。

三、考量「火箭彈」具一定射程並易造成一定範圍之傷害,其性質及使用時機與「砲」較為近似,爰將「火箭彈」之種類由「其他器械」改列為「砲」。

預告修正「海岸巡防機關配備器械種類規格表」

 

 

双管20mm短距離自動防衛システムは、中科院が自主研究開発した「XTR-102」が2基搭載されている。下の動画で見ると、けっこうパワフル。

また、600トン級「安平」艦の方の報道でスティンガー型携帯式防空ミサイルが装備されるとあったので4000トン級などにも装備される可能性が高い。

これら平時に装備されている武装は、戦争勃発時にはさらに強力な装備へと変更が出来るそうだ。

短程自動防禦系統 - 國家中山科學研究院官方頻道 - YouTube

 

 

高圧放水銃は3基で射程120m。・・・そう報道されているんだけど、ヘリ甲板の上の方の2基はなんか面白い構造をしている。長射程と短射程の2本のノズルがあって、目的に応じて切り替えられるのかもしれない。

(いろいろと面白いな、この船。😆)

20210502203443(海巡署長室facebookより)

 

20210503175940(搭載艇、最高35ノット)

 

「台湾国産の4000トン級巡視船」と書いてきた。船体の基本設計はVard Marine Inc.(カナダ)が行い、「VARD 7 125」OPVs(Offshore Patrol Vessels)がモデルとされている。

Vard Marineは米国沿岸警備隊でもヘリテージ級カッター(ひとまわり小さい「VARD 7 110」型)が採用されていたため、初期の報道では情報が錯綜していてUSCGレジェンド級のコピーだと勘違いされていたものだ。

Vard Marineは台湾の4000トン級に対して、米国沿岸警備隊(USCG)とアイスランド沿岸警備隊(LHG/ICG)向けOPVsを融合させた設計となっているそうだ。(ICG向けOPVsについては詳細不明)

 

「嘉義 (CG5001)」は中部地区機動海巡隊(台中市)に、「新竹 (CG5002)」は北部地区機動海巡隊(新竹市)に配備される。残り2隻は番号がCG5003とCG5005と発表されている。2025年に4隻全てが引き渡される予定だ。

 

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【有影】海巡添翼/4千噸級嘉義艦新竹艦交船 設負壓艙鎮海火劍彈 | 蕃新聞

海巡署長室 Coast Guard - facebook

本公司與 VARD MARINE INC.簽署海巡署 4000 噸級巡防艦設計合約 (pdf)

標題:海巡署 4000 噸級巡防艦 (pdf)

 

海巡署4000噸級巡防救難艦 - 维基百科,自由的百科全书

海巡署600噸級巡防艦 - 维基百科,自由的百科全书

海洋委員會海巡署 - 维基百科,自由的百科全书

 

VARD 7 125 - Vard Marine

VARD 7 110 - Vard Marine

Offshore Patrol Vessels (OPVs) - VARD 7 Series - Vard Marine Inc.

VARD 7 110 selected for USCG Offshore Patrol Cutter - Vard Marine

Armada de Chile | Astilleros ASMAR