(朝鮮日報より)
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)。
換気の悪い飲食店で起きた、感染者の会話による飛沫やエアロゾルがエアコンの空気の流れによって店員やほかの客へと感染拡大した例を紹介しています。公式発表と論文としてまとめられたものなど。めも。
(注)「空気感染」という表現は「飛沫核感染」「塵芥感染」も含んでいて範囲が広く誤解されがちです(*1)。ここでは「空気感染(エアロゾル)」あるいは「エアロゾル感染」とすこし詳しく書いています。(麻疹(はしか)ウイルスのような「空気感染」例は新型コロナウイルスでは起きてはいないと考えています)
「空調クラスター」とは、特に内気循環型のエアコンなど空調装置による空気の流れによって、換気の悪い店内・室内で発生する集団感染・クラスターを示しています。
いずれも昨年(2020年)に中国と韓国、日本で発生した飲食店の店内の集団感染例で、いわゆる”従来株”での感染拡大例です。
感染しやすいN501Y変異を有する英国型変異株やインド型などでは、こういった換気の悪い店内・室内での「空気感染(エアロゾル)」によって感染拡大するケースはさらに増えているでしょう。
詳しい調査は難しいので、発表や報道はまったくと言っていいほどありません。
1人対多数の感染拡大以上に、こういう環境での1〜2人への感染拡大は感染経路不明となるでしょう。
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まず、韓国の全羅北道全州(チョンジュ)市のレストランで発生した感染拡大例。
この例が非常に興味深いのは、聞き取り調査や防犯カメラ映像、スマホ位置情報などから、感染源の客とそこから感染拡大してしまった客(会食グループ)の滞在時間を分単位で時系列で調べているところ。
ここで感染して陽性となった1人が入店してから、感染源の客がマスク無しで会話・会食をしていて店を出るまで、重複していた時間はわずか5分でした。
(JKMS)
感染源の客(感染者B)は2人で入店し、マスク無しで会話・会食をしていました。感染者A~Dの番号は論文表記と合わせています。
(1)感染者Cは感染源の客(感染者B)から距離4.8メートルの席にいて、3人で会食。店内で感染者Bと重複した滞在時間はわずか5分でした。
会食グループ3人のうち感染したのは1人(感染者C)だけ。
(2)もう1人の感染者Aは感染源の客(感染者B)から距離6.4メートルの席にいて、2人で会食。感染者Bと重複した滞在時間は21分でした。
こちらも感染したのは1人(感染者A)だけ。
陽性の結果となったこの2人だけが、エアコンから出た風の流れのまっすぐ下流の席に座っていました。エアコンからの風速はそれぞれ1.2m/sと1.0m/sとされています。
たまたま上流にいた感染者がCt値が高く口から排出するウイルス量が多くて、会話をして出ていた飛沫・エアロゾルを浴び続けていたのでしょう。
スーパー・コンピュータ「富岳」によるシミュレーションで明らかにされたように、会話のときに口から出た飛沫やエアロゾル(マイクロ飛沫とも呼ばれる)は、空気の流れにのって遠くまで移動します。
この換気の悪いレストランの店内での感染拡大例での店員・客の陽性率は15.4%。
6階建てビルの1階にある、窓や換気装置が無い(キッチンには換気扇はあっただろう)、テーブル13卓・席数約50人分、店舗面積96.6m(9.2×10.5 m)の店。
韓国の医学雑誌の大韓医学会誌(JKMS)で2020年11月23日に公開。フォーブス紙日本語版が記事にしていたのでご存知の方も多いことでしょう。
飲食店でのコロナ感染、わずか5分で発生も 韓国の事例研究 | Forbes JAPAN(フォーブス ジャパン) (2020/12/22)
Evidence of Long-Distance Droplet Transmission of SARS-CoV-2 by Direct Air Flow in a Restaurant in Korea:: JKMS :: Journal of Korean Medical Science
日本では、こういう調査はまったくといっていいほど報道されることはありません。
レストランやカフェなど飲食店(接待を伴わない飲食店)での感染拡大の例が報道されるのは、スタッフで陽性がわかった場合か、都道府県や厚生労働省によって「クラスター」と認定されたり保健所の積極的疫学調査によって判明した場合です。
店名を出すことで心ない中傷を受けたお店もあるそうです。少数ですが、お店の側が「注意喚起の役にたてば」と公表に同意してくださる例もあります。情報を有益に使いたく思います。
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