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海外の話が多め。近頃は中国が多め(中国海警局・中国海監、深海潜水艇、感染症など)。

観客5000人のコンサート実験、コロナ陽性は6人 何が目的でどのように実験が行われたのか? スペイン、バルセロナ

20210429110128(YouTube -  Love of Lesbian - Concierto Palau Sant Jordi (Making Of))

スペイン、バルセロナで3月下旬に行われた屋内の大規模コンサート実験で、チケット購入者のうち当日の抗原検査で陰性だった観客約5000人のうち、講演後に陽性結果と分かったのは6人だけだったと発表された。

マスメディアの日本語記事は端折っていたり説明不足があって、読む側の先入観もあってか、いろいろ勘違いもあるようだ。これについて少し。

 

この実験は「大規模イベントで集団感染が起こるかどうか?」を調べる目的ではもちろんない。

 

これは大規模なイベント参加者で「検疫バブル」集団を作った場合に、集団感染を起こさずに無事にすませられるかどうかを調べた実験と言えるだろう。

「検疫バブル」は、日本ではあまり使われていない表現だ。簡単に書くと、感染していない可能性が高いと信頼できる家族や親族、友達などのグループを作って、そうでない人との接触機会を避けて感染リスクを減らす事を求めるもの。日本での「会食は家族だけで」「不特定多数の人との接触や、会食は避けましょう」などが検疫バブルを作るうえでの初歩的な行動にあたる。

 

昨年12月には500人規模で実験を行い、この夏には3000人規模の実験も検討されている。バルセロナは赤字覚悟で市の文化的イベント、事業の再生を目標にしている。

  

 

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20210429110105 (抗原検査の会場の様子)

今回のバルセロナの観客約5000人のコンサート実験では、3月27日の公演当日に市内の3ヶ所の劇場を検査会場として、チケット購入者に対して抗原検査(prueba de antígenos)が行われた。医師と看護師によって鼻腔奥の検体が採取され、迅速抗原検査キットで検査が行われた。

もちろん結果が陰性の人だけが入場できる。

今回の実験のために作られたスマホ・アプリに検査結果が通知され、入場ゲートでチケットとその「陰性証明書」の提示が求められる。代金に含まれるFFP2マスクが渡されて、入場後はずっと着用しなければならない。

観客は全員バルセロナ市民。チケット購入の年齢制限は18才〜65才だった(実際の観客の年齢層は未発表)

 

コンサート会場は屋内競技場「パラウ・サン・ジョルディ(Palau Sant Jordi)」。1万7000人収容できる空間があり、今回の実験の観客5000人はほとんど全員がアリーナ席で、ソーシャル・ディスタンス(物理的距離)をとることは厳しくは求められなかった。

すぐ下に貼ったコンサートの動画をみれば分かるように、観客は普通に声を出している。

もちろん、観客5000人はFFP2マスクを付けている。

観客の集団を3つに分けて出入り口とトイレを別々にしたり、換気と空調を最大限にきかせて、接触感染対策として手すりやドアノブを抗原検査で陰性結果の清掃員によって消毒され、開演前と公演中に紫外線照射ロボで施設内のウイルスを不活性化させるなど、何重にも感染防止対策が行われていた。換気と空調に最も予算を使ったそうだ。

20210429110115(YouTube -  Love of Lesbian - Concierto Palau Sant Jordi (Making Of)) 

 

 

コンサートはスペインの人気インディーズ・ロック・バンド「Love of Lesbian(ラブ・オブ・レズビアン)」のもの。午後7時29分開演で2時間行われた(開演が約30分遅れた)(この終演時間はかなり危うくて、バルセロナ市では夜間外出禁止令(夜10時から朝6時まで)が出ている。 これについては後述)

バンド「Love of Lesbian」が公式YouTubeチャンネルで、コンサートのメイキング動画を公開している。(4月27日付け公開なので、実験が成功と分かったので公開したのだろう)

こんなバンドで楽曲で、こんなコンサートで、観客たちの行動も分かりやすい。

Love of Lesbian - Concierto Palau Sant Jordi (Making Of)(2021/04/27)

 

観客全員がマスクを付けている以外は、普通のコンサートのよう。

とても有意義な実験で、うらやましいと思うけれども、日本社会ではこれを「エビデンスだ」と言ってイベント開催へと突っ走ってはいけない。

ドラッグストアや安売り雑貨・酒販売店などの店頭にある、”なんちゃって”抗原検査キットを使って自分で調べて陰性の結果だったら入場OKとゆるくなりそうで怖い。

参加者に対する新型コロナウイルス検査の精度と管理がとても重要だ。

「検疫バブル」集団をつくるため観客と関係者の検疫をここまでやらなければならず、必ず出てくる批判やイチャモンを浴びながら赤字覚悟でもイベントを行うのか、主催者や関係者、観客、そして自治体の覚悟が求められそうだ。

 

・・・日本での小規模イベントでも同じような対応は行われている。主催者以上に、参加する観客たちが自分たちで開演当日の1~2週間前かかなり前から新型コロナに感染しないための行動を徹底しているものもあると聞く。
昨年のクラブハウスなどでのクラスター発生と各地へと拡大した時のように、もし万が一にも感染拡大が起こってしまうと、好きなアーティストやジャンルが徹底的に叩かれてしまいかねない。それだけの覚悟をもって参加しているのだろう。

 

そういうイベントなら制限解除できれば良いと思うけれども、日本ではそうもいかないのだろう。

20210429110124(YouTube -  Love of Lesbian - Concierto Palau Sant Jordi (Making Of))

 

この大規模コンサート実験にかかった費用は約20万ユーロ(約2600万円)で、チケット収入は約9万ユーロ(約1150万円)だった。とEl Pais紙は伝えている。換気と空調にかなりの予算をかけたそうだ。

 

 

今回のバルセロナのコンサート実験で、気になった点が2つあった。

 

1つめは、観客5000人に対する抗原検査とその後の対応。

チケット購入者への抗原検査は、市内の3つの劇場(Luz de Gas, Razzmatazz, Apolo)を使って、コンサート当日の午前8時から午後4時までに実施された。検査後はどこかに隔離されるわけではなく、検査会場から出てスマホアプリに検査結果が届くのを待つ。

コンサート開始までにどこかで感染したらどうするのだろう?と思ったけど、ウイルス暴露の直後だったら他者へと伝播するリスクは低いと判断されたと考えられる。

 

事前の抗原検査で6人が陽性と確認された(チケット代金は払い戻された)

コンサートに参加した観客4994人のうち、実験情報の共有に同意したのは4592人。

コンサート後の調査で6人の感染が確認されたので、その数字はバルセロナ市における「一般の感染率の約半分だ」と発表され、成功した理由のひとつのように報道されているんだけど・・・、実のところ、実験参加者のサンプル数5000人で考えるならバルセロナの感染率と同じだったわけだ。

 

20210429110120(YouTube -  Love of Lesbian - Concierto Palau Sant Jordi (Making Of)) 

 

2つめは、大規模イベントの公演前と後の、周辺のお店での感染拡大リスク。

こういう大規模なイベントにたくさんの観客が集まることで、公演前と後とに、周辺の飲食店やバーや公園などに集まって会食や騒ぐのではないか?そこでの感染拡大リスクはどう考えられていたのだろう?と気になった。イベント会場の周辺の住人や飲食店は特に気になるだろう。

 

バルセロナ市では、ロックダウンほどではないけれども、夜間外出禁止令を含む厳しい感染拡大予防策がとられている。ただ厳しいだけではない硬軟の対応をしている。

正当な理由なく夜間外出禁止(20:00~06:00)、ショッピング・センターや飲食店は時短営業(07:30~17:00)、小売り店は日曜は閉店などの制限が行われている。その一方で、スポーツ施設では入場者50%に制限して開業可能としたり、”検疫バブル”集団だけでの州内移動は制限なしと硬軟の対応をしている。

Measures against Covid-19 | Barcelona City Council

 

コンサート実験が行われたのは2021年3月27日、土曜日。コンサートのスケジュールは午後7時開演・午後9時終演だったが、約30分遅れて午後7時29分開演となった。

コンサートが終わった後は、市内の飲食店はどこも開いていない。😆

すぐに夜間外出禁止令の時間になってしまう。会場を出た時にはもう午後10時を過ぎていたかもしれない。観客5000人は自宅やホテルに帰ったり、友達の家に集まるしかなく、「検疫バブル」ではない不特定多数の人と接触する機会と感染リスクは極限まで減っていただろう。

 

日本で、コンサートや展覧会など楽しいイベントが制限されているのはとても残念でしかたない。

しかし日本の社会では、バルセロナと同じことは到底無理だ。

それは近頃の、飲食店の時短営業や酒類の提供禁止に対して、酒類持ち込みOKとする店とか、路上飲みなど、近頃のニュースを見ていればよく分かるんじゃないかと思う。

 

 

20210429110133(YouTube -  Love of Lesbian - Concierto Palau Sant Jordi (Making Of)) 

[バルセロナ 27日 ロイター] - スペインのバルセロナで、新型コロナウイルスの簡易検査で陰性だった5000人が社会的距離(ソーシャルディスタンス)を取らずにライブコンサートに参加するという実験が行われ、主催者によると、2週間後も感染者の急増は見られなかったという。

ライブ会場でコロナ急拡大せず、スペインで陰性者5000人の実験 | ロイター (2021年4月28日)

観客5千人のコンサート実験、コロナ陽性は6人 スペイン 写真7枚 国際ニュース:AFPBB News (2021年4月28日)

観客5千人のコンサート実験、コロナ陽性は6人 スペイン:時事ドットコム (2021年4月28日)

Rock on: no rise in infections after concert for 5,000 in Barcelona | Reuters

 

Pilot test in Palau Sant Jordi concludes "mass concerts are safe activities" 

No evidence of Covid-19 transmissions at 5,000-strong concert one month on, say organizers

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Love of Lesbian - Wikipedia

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