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海外の話が多め。近頃は中国が多め(中国海警局・中国海監、深海潜水艇、感染症など)。

シリア沖、イランのタンカー炎上? ドローン攻撃? → 火災は別の船で、勘違いでした。【画像】

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シリア沖で起きたタンカー火災の事件?事故?について情報が錯綜していた。

イランのタンカーというのは間違いで、ドローン(無人機)による攻撃の可能性があるという情報もシリア当局者の勘違いがもとの誤報のようだ。

そこからさらに、イランや中東情勢をからめたデマ情報やプロパガンダに発展している。

”地中海でイランのタンカーに対してドローン攻撃”…、もし、これが事実なら超ド級のニュースなのに、原油市場はまったくと言っていいほど反応しておらず違和感を感じていた。

 

場所はシリアの北西部、タルトゥース県北部の港湾都市バニヤス(バニヤース(Baniyas, بانياس))市の沖。街の北には石油精製施設がある。

火災を起こしたタンカーの船名は「WISDOM」 (IMO: 9182069)。TankerTrackers.comによると、タンカー「WISDOM」はベイルート籍で、イラン籍の大型タンカー「ARMAN 114」が水深制限のため入港できなかったため、軽くするために抜き取り移送の作業を行っていた。

 

ロシアの RUSVESNAが火災があったタンカー「WISDOM」の、消火後の空撮画像を公開した。

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沿岸から撮影された画像だけを見ると、イランのタンカー「ARMAN 114」に似た船から煙が上がっているように見える。しかし火災を起こしていたのはその向こう側に隠れていたタンカー「WISDOM」だった。

さらにシリア石油鉱物資源省が、”ドローン攻撃の可能性”といったことを発表したため、そのニュースが世界を飛び回ってしまった。

 

空撮を行ったロシアのRUSVESNA (Русская весна)紙によると、現地の軍事特派員からの情報として、火災は船内で発生した事故だと伝えている。溶接か電気系統のショートが原因らしい。

そして、シリア支援に派遣されているロシア軍の司令官は、船舶火災に対してVSU-5空中消火用バケットを装備したMI-8大型ヘリの派遣を迅速に決定し、総量30m3(海水5トンを6回分)の放水を行って消火活動を支援したそうだ。

火災は船内で発生したため、ドローン(UAV)による攻撃は完全に除外されています。(Google訳)

Атака БПЛА полностью исключена, так как возгорание произошло внутри судна.

Взрыв танкера у берегов Сирии: при чём тут удар БПЛА и операция армии России? (ФОТО, ВИДЕО) | Русская весна (シリア沖のタンカーの爆発:UAV攻撃とロシア軍の作戦は何か関係があるのか​​? (写真、ビデオ)) 

 

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沿岸から撮影された船の画像では、煙があがっているのは船首近くとブリッジ近くの2つがある。ここで短絡的に、船体の複数個所で火災が発生と勘違いをしたのだろう。

20210426192231 20210426192226(Syrian Arab News Agency(SENA))

国営シリア・アラブ通信(SANA)の記事の、消火後の船の画像をよく見てみると、イランの「ARMAN 114」と似た大型タンカー(TankerTrackers.comの衛星画像から、「SAM 121」(IMO:9173745)だろう)の向こう側にもう1隻いることが分かる。ブリッジと煙突の様子からタンカー「WISDOM」だろう。

手前の大型タンカーが徐々に動いたため位置関係が変わって、「WISDOM」の船舶火災の煙の見た目の位置が動いただけだと考えられる。

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シリア沖で石油タンカー炎上、3人死亡か…ドローン攻撃の可能性 : 読売新聞オンライン (2021/04/25 23:38) 

【ベイルート共同】シリア石油鉱物資源省は24日、北西部バニヤス沖で石油タンカー1隻が無人機によるとみられる攻撃を受け、一時的に火災が発生したと発表した。国営通信が伝えた。シリア人権監視団(英国)は、タンカーはイランから航行してきたとし、シリア人乗組員ら3人が死亡したと明らかにした。

タンカー攻撃3人死亡、シリア沖 イランから航行 | 共同通信 (2021/4/25 09:27 (JST)4/25 11:30 (JST)updated)

 

共同通信の記事で触れられている国営シリア・アラブ通信(SANA (Syrian Arab News Agency))の記事はこちら。

シリア石油鉱物資源省からの発表として、タンクが破損し火災と書かれているが、消火後の空撮映像からオイル漏れと火災は見あたらない。「ドローン攻撃」云々はあくまでも、この当局者の”感想”にすぎない。いまのところ、ドローンを写した画像や映像、衝突後の破片などは出てきていないようだ。

Fire erupted in one of tanks of oil tanker near oil downstream in Banias fully extinguished – Syrian Arab News Agency

Tartous, SANA- Firefighting teams on Saturday managed to put out fire that erupted in one of tanks of oil tanker near oil downstream in Banias in Tartous.

The Ministry of Petroleum and Mineral Resources said in a statement that a fire that erupted in one of tanks of oil tanker is believed to be an attack by a drone coming from the direction of Lebanese territorial waters.

The Ministry noted that the Firefighting teams were able to extinguish the fire fully.

 

イランのアラビア語ニュース・チャンネルのアーラムは、複数の消息筋の話として、攻撃を受けたのが、バーニヤース市の給油港に寄港していたイランの石油タンカー3隻のうちの1隻だった伝えた。
タンカーは船首部分と甲板に2発被弾し、物的被害が出たという。SANAが公開した写真からは、甲板への被弾によって火災が発生したことが確認できる。
タンカーは攻撃を受けた時、パナマ国旗を掲揚していたが、シリアに輸送した石油はイラン産だったという。

イラン産石油をシリアに輸送したタンカーがドローンの攻撃を受けて火災に、容疑者の筆頭はイスラエル(青山弘之) - 個人 - Yahoo!ニュース

こちらの記事は、速報のニュースとして、イラン・メディアの誤報やプロパガンダを検証なしに、そのまま紹介してしまったようだ。

タンカー「WISDOM」の空撮画像から、火災被害は中央部分に一ヶ所であり船首部分と甲板に2カ所ではない。前述したように、沿岸から撮影された画像の煙をみて勘違いをしたのだろう。

 

シリア沖でイランのタンカーに攻撃、3人死亡 :AFPBB News

バニヤース - Wikipedia

Baniyas - Wikipedia