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【新型コロナウイルス】飲食店・カフェでのエアロゾル感染、空調クラスターの例|韓国のスタバ、中国のレストラン、日本の飲食店など

20201125051440(朝鮮日報より)

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)。

換気の悪い飲食店で起きた、感染者の会話による飛沫やエアロゾルがエアコンの空気の流れによって店員やほかの客へと感染拡大した例を紹介しています。公式発表と論文としてまとめられたものなど。めも。

(注)「空気感染」という表現は「飛沫核感染」「塵芥感染」も含んでいて範囲が広く誤解されがちです(*1)。ここでは「空気感染(エアロゾル)」あるいは「エアロゾル感染」とすこし詳しく書いています。(麻疹(はしか)ウイルスのような「空気感染」例は新型コロナウイルスでは起きてはいないと考えています)
「空調クラスター」とは、特に内気循環型のエアコンなど空調装置による空気の流れによって、換気の悪い店内・室内で発生する集団感染・クラスターを示しています。

 

いずれも昨年(2020年)に中国と韓国、日本で発生した飲食店の店内の集団感染例で、いわゆる”従来株”での感染拡大例です。
感染しやすいN501Y変異を有する英国型変異株やインド型などでは、こういった換気の悪い店内・室内での「空気感染(エアロゾル)」によって感染拡大するケースはさらに増えているでしょう。

詳しい調査は難しいので、発表や報道はまったくと言っていいほどありません。

 

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まず、韓国の全羅北道全州(チョンジュ)市のレストランで発生した感染拡大例。

この例が非常に興味深いのは、聞き取り調査や防犯カメラ映像、スマホ位置情報などから、感染源の客とそこから感染拡大してしまった客(会食グループ)の滞在時間を分単位で時系列で調べているところ。

ここで感染して陽性となった1人が入店してから、感染源の客がマスク無しで会話・会食をしていて店を出るまで、重複していた時間はわずか5分でした。

20201228205249 (JKMS)

感染源の客(感染者B)は2人で入店し、マスク無しで会話・会食をしていました。感染者A~Dの番号は論文表記と合わせています。

 

(1)感染者Cは感染源の客(感染者B)から距離4.8メートルの席にいて、3人で会食。店内で感染者Aと重複した滞在時間はわずか5分でした。
会食グループ3人のうち感染したのは1人(感染者C)だけ。

(2)もう1人の感染者Aは感染源の客(感染者B)から距離6.4メートルの席にいて、2人で会食。感染者Aと重複した滞在時間は21分でした。
こちらも感染したのは1人(感染者A)だけ。

陽性の結果となったこの2人だけが、エアコンから出た風の流れのまっすぐ下流の席に座っていました。エアコンからの風速はそれぞれ1.2m/sと1.0m/sとされています。

たまたま上流にいた感染者がCt値が高く口から排出するウイルス量が多くて、会話をして出ていた飛沫・エアロゾルを浴び続けていたのでしょう。

スーパー・コンピュータ「富岳」によるシミュレーションで明らかにされたように、会話のときに口から出た飛沫やエアロゾル(マイクロ飛沫とも呼ばれる)は、空気の流れにのって遠くまで移動します。

 

この換気の悪いレストランの店内での感染拡大例での店員・客の陽性率は15.4%。

6階建てビルの1階にある、窓や換気装置が無い(キッチンには換気扇はあっただろう)、テーブル13卓・席数約50人分、店舗面積96.6m(9.2×10.5 m)の店。

韓国の医学雑誌の大韓医学会誌(JKMS)で2020年11月23日に公開。フォーブス紙日本語版が記事にしていたのでご存知の方も多いことでしょう。

飲食店でのコロナ感染、わずか5分で発生も 韓国の事例研究 | Forbes JAPAN(フォーブス ジャパン) (2020/12/22)

Evidence of Long-Distance Droplet Transmission of SARS-CoV-2 by Direct Air Flow in a Restaurant in Korea:: JKMS :: Journal of Korean Medical Science

 

 

日本では、こういう調査はまったくといっていいほど報道されることはありません。
レストランやカフェなど飲食店(接待を伴わない飲食店)での感染拡大の例が報道されるのは、スタッフで陽性がわかった場合か、都道府県や厚生労働省によって「クラスター」と認定されたり保健所の積極的疫学調査によって判明した場合です。

店名を出すことで心ない中傷を受けたお店もあるそうです。少数ですが、お店の側が「注意喚起の役にたてば」と公表に同意してくださる例もあります。情報を有益に使いたく思います。

 

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20201125051415조선일보より)

次に、韓国、京畿道の坡州(パジュ)市のカフェ「スター・バックス」で、昨年(2020年)8月に起きた集団感染例。隣の国で、日本でもよく目にする大手チェーン店で起きた有名なクラスター発生例です。

店内での感染者28人、二次感染者38人が確認された大規模な”クラスター”。従業員4人はKF94マスク(*2)を付けていて陰性の結果だったので、そこだけとくに報道されていました。(*2)N95マスクと同等規格のフィルタを使用した立体型マスク。サージカルマスクよりも顔との隙間が少ない。

韓国スタバで発生のクラスター、マスク着用の店員は感染せず - Bloomberg (2020年8月26日)

 

換気の悪い飲食店での感染拡大についてと、飛沫感染とは違う「空気を介した感染」はこれまでに何度も報道や発表がされています。理解している人は自己防衛をしているでしょう。軽く考えているお店や人は、お客や自分や家族の健康と生死を”運任せ”にしています。

 

韓国中央防疫対策本部疾病管理本部による調査の結果、感染源とされた30代女性(感染者A)は友達と一緒にこのスターバックス坡州ヤダン駅店を訪れ、2階の階段近くのテーブルでマスク無しで会話・会食をしていました。とても暑い日で、滞在時間は約2時間。

入店した日(2020/11/08)に目立った症状はなかったけれども、翌日に新型コロナ疑い症状が出て検査で陽性と確認。PCR検査の結果からCT値=10~15で、会話のときに口から出ていたウイルスの量が非常に多く他の人へ感染させやすい状態だったと発表されています。
(CT値:PCR検査で遺伝子増幅させるサイクル数。数が少ないほどウイルスが多い。CT値=40くらいまでが陽性の結果が出たとされるそう)

同じ時間帯にこのスタバに入店した客のうち、2階フロアを利用した約120人中26人が陽性と判明しました。陽性率は21.7%。換気の悪い2階に上がったひとは5人に1人が感染。

その一方で1階フロアだけ利用した約60人では陽性確定はありませんでした。

 

そのカフェは、大手チェーンの店でよく見かける感じの広い店内、高い天井、テーブルの間も開いています(撮影は新型コロナ禍前。2019年7月)。

まさかこんな雰囲気の飲食店で感染してしまうとは、なかなか思いつきませんよね?

20210510065546(Googleマップより(2019年7月撮影)(스타벅스 야당역점(StarBucks坡州ヤダン駅店)で検索)

店内2階フロアには、天井に6台のシーリング・エアコン(内気循環型)が分散配置されていて、感染源の30台女性(感染者A)は吹き出し口の真下の階段近くの席に座っていました。換気窓はあったけれども小さく、感染者が滞在した時間帯には開けられていませんでした。

換気の悪いカフェ店内で、空気中のエアロゾルのウイルス汚染度が非常に高かった。

 

防犯カメラ分析の結果、このカフェの利用客のほとんどは店に出入りする時はマスクを正しく着用していたけれども、座席では多くの人々がマスクをはずしたり正しく着用していない状態で会話をしていたことが確認されています。

 

 

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染者は、発症する1~2日前にウイルス排出量が最大になるとされています。

これから入ろうとしている換気が悪い飲食店・カフェに、すでに感染者(無症状)が居るかどうか?あなたの後から入ってくるかどうか?は、ひと言で書くと「運次第」です。

 

最初の、韓国の全州市のレストランの例で、わずか5分で感染した人は本当に運が悪かったと思います。

それでも、お店の側はとにかく換気を良くすることを心掛けたり、客の方は換気が悪い店を選ばないなど、事故を避けるために出来ることはあります。

 

韓国スタバで発生のクラスター、マスク着用の店員は感染せず - Bloomberg (2020年8月26日)

손님 27명 감염, 직원은 멀쩡… 파주 스타벅스 미스터리 - 조선일보

파주 스타벅스 집단감염 원인은?···에어컨 가동하며 환기 소홀·마스크 미착용 - 경향신문

 

 

長くなったので、記事を2つに分けました。

次は、中国と日本の飲食店での空調クラスターの例。

(追記:書きました。)

【新型コロナウイルス】飲食店・カフェでのエアロゾル感染、空調クラスターの例|韓国のスタバ、中国のレストラン、日本の飲食店など (2/2) - pelicanmemo

 

 

個人的には今さらな半年遅いネタだと感じています。やっとWHOや米国CDCが注目とニュースになり、 エアロゾルと空気の流れによってウイルスが遠くまで届くことをはじめて知ったようなコメントも見かけるので、有名どころをまとめてみました。

 

 

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(*1)「飛沫感染」は5ミクロンよりも大きい飛沫により発生し、飛沫は短距離(1~2m以内)しか拡散しないとされていました。
スパコン”富岳”でのシミュレーションも、風速0mという初期設定によるものではないでしょうか?

「飛沫核感染」(エアロゾル感染)は大きさが5ミクロン未満のエアロゾルなどによって発生するもので、飛沫よりもさらに長い距離をウイルスが移動することができます。

「塵芥感染」は麻疹(はしか)ウイルスのように、飛沫等が壁や床や家具に付着して乾燥した後も感染性を残したまま空中を移動したり接触して発生するものです。
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)で発生していたら、日本でも世界でも、この程度の感染者数では済まないでしょう。(「空気感染」というとコレも含むので、注釈無しではあまり使いたくない)