(チェルノブイリ原子力発電所。銀色の大きな屋根が「石棺」(GoogleEarthより))
ロシア軍の侵攻によって、ウクライナのチェルノブイリ原子力発電所(Чорнобильська АЕС)(*1)への外部電力が喪失する事態が起こりました。原因は、高圧送電線3本のうち2本がロシア軍の侵攻初期に使えなくなり、残っていた1本もロシア軍の攻撃によって送電が出来なくなったと発表されています。
使用済み核燃料プールの冷却が出来なくなると心配されていましたが、非常用ディーゼル発電機で凌ぎ、現在はウクライナの電力会社による送電網の修復作業によって原発への外部電力の供給は行われています(記事投稿時点)。
(*1)ウクライナ語では「チョルノーブィリ」と発音します。ここでは見慣れている「チェルノブイリ原発」の表記を使います。
チェルノブイリ原発の電力遮断、データ送信は途絶える…IAEA「安全性への致命的影響ない」 : 読売新聞オンライン (2022/03/10)
この原発への外部電力の遮断の翌日に、ベラルーシからチェルノブイリ原発への電力の供給が再開されたというロシアのエネルギー省発のニュースが流れていました。
チェルノブイリ原発 ベラルーシが電力の供給再開か - 日本テレビ (2022年3月10日 23:49)
これを信じたり、信じたかった人もいたと思いますが・・・、それはロシア側のプロパガンダです。
ベラルーシのルカシェンコ大統領は、3月19日に放送されるTBS「報道特集」での単独インタビューでも、未だに「ベラルーシがチェルノブイリ原発に電力を供給をした」と言っています。自分の功績と正当性とをアピールしたいだけでしょう。
また、ルカシェンコ大統領はロシアが占拠したチェルノブイリ原発にベラルーシが電源を供給したとして、「プーチン大統領から『使用済み核燃料を冷却できないと、ヨーロッパが危機に晒される』と電話で要請された」などと述べました。
【独自】ベラルーシ大統領「提案に応じなければ“降伏文書”に署名することに」とウクライナ側けん制|TBS NEWS (2022/03/18)
ベラルーシのエネルギー省の公式発表では、チェルノブイリ原子力発電所へ繋がっている送電網に電力を供給するための準備作業までしか行っていません。「これにより、原発に電力を供給する可能性を提供できる」と発表しています。
あくまでも”可能性”の話なんですよね。
それをルカシェンコ大統領が「供給した!」と発表してしまった。
ウクライナ側は、ベラルーシからチェルノブイリ原発へ電力供給する提案を拒否しました。その後、ウクライナによる送電網の修復で原発へ電力供給が再開した後まで、ベラルーシのエネルギー省から関連した発表はありませんでした。
当ブログ管理人は、ロシア軍侵攻の直後からチェルノブイリ原発と立入禁止区域の状況や放射線量、関係する報道を日本や欧米メディアだけではなく、ウクライナ側だけでもなくロシアやベラルーシの公式発表や現地報道もチェックしていて、ほぼ毎日、最新情報をツイートをしてきました。この件についてのまとめを少し。
次のツイートは、3月9日の外部電源の喪失時のもの。
ウクライナの電力会社NPC Ukrenergoはfacebook で、「ロシア軍の軍事行動によって、チェルノブイリ原発は電力ネットワークから完全に切り離された」と伝えた。
— ぺりかんめも (@pelicanmemo) 2022年3月9日
軍事行動が続いているので、電線を修復する事が出来ない。
facebookhttps://t.co/xh4ISSyIK9 https://t.co/3nMEVyKer5
・チェルノブイリ原発の外部電力が喪失。(3月9日)
ウクライナの電力会社NPC Ukrenergoは「ロシア軍の軍事行動によって、チェルノブイリ原発は電力ネットワークから完全に切り離された」と発表しました。
⚡BECAUSE OF MILITARY ACTIONS OF RUSSIAN OCCUPIERS NUCLEAR POWER PLANT IN CHORNOBYL WAS FULLY DISCONNECTED FROM THE POWER GRID. NUCLEAR STATION HAS NO POWER SUPPLY. The military actions are in progress, so there is no possibility to restore the lines. Slavutych city is also out of power supply.
NPC Ukrenergo - Facebook
(*2)原文ママ。ウクライナの関連の発表では、ウクライナ語と英語の両方が使われる場合が多々あります。
世界中にチェルノブイリ原発の外部からの電力喪失のニュースがかけめぐりました。
(*)当ブログ記事の中で参照している"Telegram"はロシア発のソーシャル・ネットワーク・サービス(SNS)。ロシア版のツイッターやLINEのようなものです。
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