pelicanmemo

海外の話が多め。近頃は中国が多め(中国海警局・中国海監、深海潜水艇、感染症など)。

【アフリカ豚熱】イタリア、北西部で野生イノシシから確認 本土でのASF発生は初めて【ASF, アフリカ豚コレラ】

20220203194957

2022年1月7日、イタリア北西部に位置するピエモンテ州のアレッサンドリア県 オヴァーダで見つかったイノシシの死骸からアフリカ豚熱(ASF、旧称:アフリカ豚コレラ)ウイルスが確認された。国際獣疫事務局(OIE)へ報告された。

イタリア本土でアフリカ豚熱(ASF)の発生が確認されたのは初めて。

 

イタリアでは1960年代に、地中海のサルディーニャ島ではじめてアフリカ豚熱(ASF)が発生した。ウイルス撲滅を試みたが野生のイノシシと飼育された豚での流行が続き、80年代からはサルディーニャ島の風土病と化している。それでもイタリア本土では発生していなかったので、イタリア産の豚肉・豚加工品(生ハム、プロシュートなど)の日本への輸入は「サルデーニャ島は除く」という輸入条件付きで認められていた。今回、本土でアフリカ豚熱(ASF)の発生が公式に報告されたことで、農林水産省は1月8日付けでイタリアからの豚肉等の一時輸入停止措置を講じた。

イタリアからの豚肉等の一時輸入停止措置について:農林水産省 (令和4年1月11日)

(注:アフリカ豚熱(ASF)は、イタリア語では"PSA(Peste Suina Africana)" (直訳:アフリカ豚ペスト)と書く。ここでは英語の略語の"ASF(African Swine Fever)"を使用する。)

 

いつ、イタリア産の生ハムやプロシュートの輸入を再開できるのだろうか?

それは、イタリア政府やピエモンテ州政府など発生地域でのアフリカ豚熱(ASF)対策次第だ。
ベルギーでの成功例が参考になるだろう。

 

2018年9月にベルギー南部 ワロン地域の、ルクセンブルグ大公国やフランスと国境を接する地区で野生のイノシシからアフリカ豚熱(ASF)が確認された。これをうけて農林水産省は、同じように一時輸入停止措置を講じていた。

3年後、農林水産省は、ベルギーにおけるアフリカ豚熱(ASF)の清浄性を確認したとして、2021年8月30日付けで豚肉等の一時輸入停止措置は解除された

ベルギー政府やワロン地域自治政府の緊急対応は、迅速で厳しいものだった。ASF感染で死んだイノシシが発見された地域を隔離、地域内で飼育されている豚を全て早期出荷や殺処分を行った(養豚場だけでなく、動物園やペットも含む)。汚染地域と周辺をゾーニングして管理をし、金属製の柵で囲ってイノシシの移動を防ぐとともに、林業やレジャー(地域住民の散策や、屋外レジャー活動等)での立ち入りを厳しく制限してウイルスの漏出を防ぐなど対応をしてきた。そして封鎖された地域の中で死んだイノシシの死骸を撤去して、消毒をし、ウイルスに汚染された土地の無害化を続けている。

ベルギーからの豚肉等の一時輸入停止措置の解除について:農林水産省 (令和3年8月30日)

 

もしもイタリアで、ベルギーと同じくらい厳しいアフリカ豚熱(ASF)対策が講じられるようなら、3年たてば、イタリア産の生ハムやプロシュートの輸入も再開されるかもしれない。

 

【アフリカ豚コレラ】 ベルギー南部、規制・監視ゾーンを設定 森林の管理とウイルス拡大の防止へ - pelicanmemo (2018-10-20)

【アフリカ豚熱】 ドイツ、3ヶ月で野生イノシシから250例 | 発生地域の管理とウイルス拡大の防止 【ASF, アフリカ豚コレラ】 - pelicanmemo (2020-12-08)

アフリカ豚熱(アフリカ豚コレラ)のカテゴリーの記事一覧 - pelicanmemo

 

Ads by Google

 


 

 

イタリアの、サルディーニャ(Sardegna)島で発生してきたのはアフリカ豚熱(ASF)の遺伝子I型で、ピエモンテ(Piemonte)州で確認されたのは遺伝子II型だった。ASF遺伝子II型は東欧やロシア、ドイツ東部で流行しているASFと同じ型だ。

アフリカ豚熱(ASF)のウイルスは、ときどき「ジャンプ」して、それまで影も形もなかったところでいきなり発見されることがある。例えば欧州では、2018年9月にベルギー南部でいきなりASFウイルスが確認された。その時、最も近いASF発生地域はポーランド東部で、1000km以上も「ジャンプ」した。今回、イタリア北西部へは800km「ジャンプ」した。

ASFウイルスは豚やイノシシの移動だけではなく、豚やイノシシの肉や加工品で長く感染性を残したまま存在するため感染源となりうる。ベルギーで発生した時は「ポーランドの(トラック運転手が持ち込んだ)サンドイッチ(の食べ残しのせいで拡大した)」と揶揄されていたものだ。

また、ウイルス汚染された土壌が、養豚業者や関連業者、報道関係者など立ち入った人の靴や道具、車やトラックなどに付着して運ばれて感染源にもなったケースもある。

 

20220203195000

 

もしもイタリアで、ベルギーと同じくらい厳しいアフリカ豚熱(ASF)対策が講じられるようなら、3年たてば、イタリア産の生ハムやプロシュートの輸入も再開されるかもしれない。」と書いてはみたけれど・・・、すこし悲観的に見ている。

 

まず、すでにASF感染したイノシシが確認された範囲が広く、封鎖してイノシシを全滅させるための地域もそれだけ広く設定されている。

ベルギー南部ワロン地域でゾーニングされたASF封鎖地域(コアゾーン)は南北10数kmほどだったけれども、今回のイタリア北西部のピエモンテ州とリグーリア州ではすでに約50km近い。

同じスケールで日本地図と重ねてみた。

20220131193552

アフリカ豚熱(ASF)に感染したイノシシが発見されたのが、たとえば神戸市だとすると、六甲山のイノシシを全て駆除して無害化し、丹波篠山から姫路までの山間部で立ち入り制限をするようなものだ。あるいは、ASF発生が湘南地域だとすると丹沢山地のイノシシを全て駆除して無害化し、神奈川県西部の山間部への立ち入りを制限するようなものだろう。😓

ジェネヴァ市のごく近くでも発見されている。イタリアの地中海沿岸の”リヴィエラ”と呼ばれる観光地・保養地であり、自然保護区もある。いったいどこまで地域封鎖や立ち入り制限を徹底出来るものだろうか。

 

過去1ヶ月間(2021/12/27~2022/01/27))に、ピエモンテ州とリグーリア州での狩猟活動によって得られたイノシシのサンプル147件を分析した結果、すでに27件でアフリカ豚熱(ASF)陽性と判明した。

いまのところASF感染のイノシシが確認されているのは主にピエモント州の約20km〜25kmの範囲だが、これまでに狩猟で捕獲されてきたイノシシ密度は地中海沿岸のリグーリア州で高く、特に同州東部ではさらに比較的に高い。さらに広い地域の野生イノシシへ感染拡大が起こっている可能性もあるだろう。

 

 

現在、日本の本州島で感染拡大が続いている豚熱(CSF (Classical Swine Fever)、旧称:豚コレラ)にはワクチンがあるので「ワクチン・ベルト」という”妥協案”も使えている。アフリカ豚熱(ASF)に実用段階のワクチンはまだ無い。

もし日本上陸した時に迅速で厳しい対策が出来なければ、イタリアのサルディーニャ島のように、本州や九州や四国の島々でもアフリカ豚熱(ASF)が風土病化しうるだろう。

 

 

イタリアの保健省は1月13日に、アフリカ豚熱(ASF)に感染したイノシシが報告された後、蔓延を抑制するための緊急措置を発表した。次いで18日に蔓延の防止措置を発表した。アフリカ豚熱(ASF)発生が確認された時の、隔離など初期対応は欧州連合(EU)によって定められている。

アフリカ豚熱(ASF)の監視と予防の特別管理措置を施行し、アフリカ豚熱(ASF)ウイルスが確認された地域をゾーニングし「感染地域(Area Infecta)」と「緩衝地帯(Buffer)」を設定した。

Peste suina africana - Ministero della Salute

20220204063249
(izsplv 動物予防研究所の資料をもとに日本語の補足等を書き加えた)

ピエモンテ州とリグーリア州に「感染地域(Area Infecta)」が設定された。
野生イノシシと直接的あるいは間接的な接触をする可能性がある、あらゆる種類の狩猟活動と全ての野外活動(きのこやトリュフの採取、トレッキング、マウンテンバイク、釣り、等々)を禁止した。接触機会が比較的に少ない林業や飼育動物の世話などの活動は、文書による申請が許可されれば認められるようだ。

「緩衝地帯(Buffer)」は東隣のロンバルディア州の一部も含まれている。状況次第でエミリア=ロマーニャ州へも拡大されるだろう。

「感染地域(Area Infecta)」と「緩衝地帯(Buffer)」では、野生のイノシシの監視と検査を行ってASFウイルスの拡大を防止するとともに、養豚場の防疫対応を強化して飼育豚への感染拡大を徹底して防ぐ。

 

省令には具体的には書かれていないが、野生のイノシシの移動をさせないための柵の設置も検討されている。

ベルギー南部のワロン地域で使われたような金属製の柵を使用した”ハード”なものとなるのか?、それともドイツ東部のポーランド国境近くで使われているイノシシ忌避剤も用いた”ソフト”なものとなるのか?続報を待ちたい。

欧州連合(EU)へ90日以内の具体的な対応策を報告することが義務づけられている。

 

Notizie istituzionali - izsplv (Istituto Zooprofilattico Sperimentale del Piemonte Liguria e Valle d'Aosta)(動物予防研究所)

CONTROLLI PER LA PESTE SUINA AFRICANA IN PIEMONTE E LIGURIA - izsplv (27 GENNAIO 2022)

Peste suina africana, evitare il “salto” dai cinghiali ai suini allevati - izsplv (18 Gennaio 2022)

Peste suina africana - Ministero della Salute (イタリア保健省)

Trova Norme & Concorsi - Normativa Sanitaria

 

Peste suina africana in Piemonte, Icardi: "Attivate le procedure di emergenza" | Regione Piemonte

Peste suina: incontro a Roma con il Governo | Regione Piemonte | Piemonteinforma | Regione Piemonte

Suinocultores recebem material de orientação sobre Peste Suína Africana - Notícias Agrícolas

 

A Ovada il primo focolaio di peste suina del Piemonte - La Stampa

Caso di peste suina in un cinghiale ad Ovada, l’assessore regionale Icardi: “Stiamo agendo con la massima tempestività” - La Stampa

Peste suina africana: le prime misure della Regione Piemonte in attesa del Ministero - Quotidiano Piemontese

Controlli per la Peste Suina Africana in Piemonte e Liguria - www.ideawebtv.it - Quotidiano on line della provincia di Cuneo

 

【アフリカ豚熱】 ドイツ、ブランデンブルク州で、イノシシの死骸から初めて確認 ポーランドから越境か?【ASF, アフリカ豚コレラ】 - pelicanmemo (2020-09-12)

アフリカ豚熱(アフリカ豚コレラ)のカテゴリーの記事一覧 - pelicanmemo