(宜蘭艦(左)と高雄艦(右)|wikimedia commons(RudolphChen - 自己的作品))
沖ノ鳥島の周辺海域で、日本の海上保安庁と台湾の海岸巡防署(海巡署、沿岸警備隊に相当)の巡視船が対峙していた。
日本語でのその後の報道は、台湾の中央社日本語版(フォーカス台湾)の記事しか無いようだ。日本メディアは、G7サミットと米国オバマ大統領の広島訪問で忙しかったのだろうか?
これについて少し。
沖ノ鳥島 台湾が巡視船の“引き上げ開始”は誤報か 任務は予定通り5月31日まで - pelicanmemo
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巡視船などの派遣は5月31日で終了と報道されていたが、その後、海巡署の李仲威署長は25日、6月以降も巡視船を派遣して"護漁"任務を継続すると公式に発言した。
(台北 25日 中央社)海岸巡防署(海巡署、海上保安庁に相当)の李仲威署長は25日、同署が1日から沖ノ鳥(日本名:沖ノ鳥島)近海に派遣している巡視船について、当初予定していた期限が切れる31日以降も、同海域での漁船保護を継続する姿勢を示した。
現在(5月29日午前)、海巡署の巡視船「巡護九号(巡護九號)」と「CG-129 高雄艦」、漁業署の漁業訓練船「漁訓二号(漁訓貳號)」が派遣されている。
5月末に「巡護九号」と「漁訓二号」は帰港する。「巡護九号」は整備と補給を行い、6月上旬にふたたび出港し、「CG-129 高雄艦」と交代して第2次公海巡護任務に就く。終了時期は未定のようだ。
轉向!海巡宣布高雄艦續留沖之鳥海域 - 聯合新聞網
「沖之鳥」聯合巡護結束 海巡署將以公海巡護持續護漁 - 自由時報
その後も、年に何度かの沖ノ鳥島の周辺海域への巡視船の派遣を行うそうだ。
台湾国防部は「海巡は漁民を護り、海軍は海巡の力になる(海巡護漁民、海軍挺海巡)」の原則は変わらないと発表した。台湾海軍の艦船も引き続き、台湾の東部海域で、海巡署と綿密な連絡をとりつつ"長期航行訓練"が行われる。
日本の海上保安庁の巡視船は、沖ノ鳥島の周辺海域から引き上げたそうだ。
海巡署の李仲威署長によると、海保の巡視船は24日に次々と北上していき、海巡署の巡視船のレーダーの探知範囲を抜けていった。
海巡署の巡視船も、沖ノ鳥島の200海里の海域内にはいない。ただし"護漁"の必要がある場合は随時、海域に侵入すると話している。
海巡署進一步説,本月23日,海巡署巡護艦船於沖之鳥北方165浬處巡護;日本巡視船仍在我巡護艦船3至5浬處隨行。
但海巡署表示,24日該署巡護艦船於沖之鳥200浬海域巡護時,日本巡視船陸續向北駛離現場海域,並脫離我艦船雷達監控範圍。
海巡署説,目前我艦也已不在200浬範圍內,但可視護漁需要隨時進入。
沖ノ鳥近海の日本巡視船 「引き揚げ開始」=海巡署トップ/台湾 | 中央社フォーカス台湾
沖ノ鳥島が「礁(岩)」という馬英九前総統による公式見解は、蔡英文新政権になって修正され、国連大陸棚限界委員会(CLCS)による判断を尊重し、決定が下るまでは「法律上の特定の立場をとらない」と表明した。ただし「南側は結論が先送りされている」ので日台海洋協議の時の争点となるだろう。
台湾、沖ノ鳥の大陸棚「南側は未承認」 争議の存在強調 | 中央社フォーカス台湾
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比較的頻繁に、関連報道を追いかけていたつもりなんだけど・・・、
どうも、日本メディアが23日に「沖ノ鳥島沖の台湾の巡視船が、すでに引き上げを始めている」と誤って報じたことが、蔡英文新政権を批判する声を後押ししてしまい、台湾国内の雰囲気を悪くさせてしまったように感じられる。
日本メディアの"誤報"をうけて、台湾では「蔡英文新政権は、"護漁"政策を捨てるのか?」「漁業を守れ、漁師の生活を護れ」「弱腰」といった報道と世論が盛り上がり、与野党から批判が出ていた(もっと酷い表現もあった)。
特に、野党となった国民党にとって政権批判の大きな材料となる。(拿捕された漁船「東聖吉16號」の船長も、"護漁"政策を新政権が続けるようにと国民党に陳情している。)
矢面に立った海岸巡防署は、記者会見で、日本メディアの報道は間違いだと反論し、"護漁"任務は5月31日まで継続する事を発表した。当然、「5月で終わりなのか?」という批判が出てくる。
立法院(内閣に相当)でも質問され、海巡署の署長が6月以降も継続すると答弁した。
海岸巡防署の新しい署長、李仲威署長はもと台湾海軍の副司令官で、海岸巡防署にとって初めての"軍人"署長だ。海軍と海巡署の連携は密になるだろうし、対応も強硬になっていくのかもしれない。
首次軍方背景出任 李仲威接掌海巡署 - 中央社
署長專欄 - 行政院海岸巡防署全球資訊網
蔡英文総統と新政権について、「親日」「親日台湾」という無邪気な記事やコメントをよく見かける。見聞きして悪い気はしないから、そういう"空気"の方がマーケティング的に良いのだろう。(一方、日本社会は「親台」と言えるだろうか?)
確かに馬英九前総統と比べれば、蔡英文総統は日本に対して共感を持っているようだ。政策や人事でも配慮をしている。それは、台湾の政治・経済・社会状況から都合が良いからにほかならない。別に、日本にばかり都合良い政策を、わざわざ台湾が率先して行っているわけではない。
では、蔡英文総統が政治的にバランスをとって、台湾と共に日本にとっても良い政策をとりやすくなるように、台湾社会や台湾人の感情に配慮して、報道や発言には注意をするべきだろう。
軽んじた対応ばかりしていると、悪化した世論に押されて、政権後半には強硬な政策を推し進めてしまうかもしれない。馬英九前総統も、着任当時は「知日派」と呼ばれていた。
対日窓口トップに蔡総統側近 「日本重視」の姿勢鮮明に/台湾 | 中央社フォーカス台湾