【アニメ作家 高畑勲さん死去】宮崎駿監督と並ぶ日本アニメーション界の巨匠で、「アルプスの少女ハイジ」や「火垂るの墓」などの作品で知られる、アニメーション作家で監督の高畑勲さんが,5日、都内の病院で亡くなりました。82歳でした。https://t.co/jkXS4U0UEz
— NHK科学文化部 (@nhk_kabun) 2018年4月6日
4月5日、アニメ監督の高畑勲さんが亡くなられました。ご冥福をお祈りします。
アニメ『アルプスの少女ハイジ』といえば、原作についての昔の話を思い出しました。
8年前の2010年4月、『アルプスの少女ハイジ』の原作(ヨハンナ・スピリ著)が、「実は盗作だった!?」という話題が世界中を賑わせていました。
マスコミの論調が少し気になったので、少し調べて、その後は特に気にしていなかった。
海外メディアの高畑勲さん死去のニュースと合わせて、今回改めて、その後日談はあるか調べ、その説を発表したペーター・ビュトナー氏について調べてみたところ、2011年に解説本『Das Ur-Heidi Eine Enthüllungsgeschichte』を出していたことを知りました。2013年には日本語で『ハイジの原点 ― アルプスの少女アデライーデ』が出版されていた。気付かなかった。😊
さっそく読んでみました。
- 作者: ペーター・ビュトナー,川島隆
- 出版社/メーカー: 郁文堂
- 発売日: 2013/03/16
- メディア: 単行本
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--(追記202012)------------------
スイスとドイツ合作の実写映画『ハイジ アルプスの物語』が、日本のアニメ『アルプスの少女ハイジ』の正しい実写版だった
--(追記ここまで)------------------
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親愛なる日本の読者のみなさまへ
2009年、私は十九世紀前半ビーダーマイヤー時代の児童書のイラストについて調べ物をしていました。そのとき、とある文学作品に出くわしたのです。一八二八年に出版された、今日忘れられた短編小説です。『アルプスの少女アデライーデ』。ざっと一読しただけで、もう一つ別の、世界的に有名な物語とあまりにも似ていることに気づき、愕然としました。約五十年後の一八七九年に出された、ヨハンナ・シュピーリの『ハイジ』のことです。
(以下略)『ハイジの原点 ― アルプスの少女アデライーデ ―』郁文堂、2013年。(前文i)より、書き出し引用。
当時の「盗作!?」の話題のおさらいをしておきましょう。
ヨハンナ・スピリ(Johanna Spyri)作 の「ハイジ」(アニメ『アルプスの少女ハイジ』の原作)が、
その50年前に出版されていた、ドイツの作家・詩人のヘルマン・アダム・フォン・カンプ(Hermann Adam von Kamp)作「Adelaide - das Mädchen vom Alpengebirge」(直訳:「アデライーデ - アルプスの山から来た少女」)とストーリー展開やモチーフがよく似ている事が新たに分かり、
マスメディアが「盗作だったのではないか?」とややセンセーショナルに報道していました。
日本語ニュースは、「アルプスの少女ハイジ」原作に盗作?疑惑(読売新聞)(http://www.yomiuri.co.jp/national/culture/news/20100413-OYT1T00477.htm)、ほか。
スイス人女性作家ヨハンナ・シュピリが1880年に書いた小説「ハイジ」が、その50年前にドイツ人作家が書いた別の作品によく似ていると若手文学研究者が指摘、スイスメディアは、「ハイジの“父親”はドイツ人だった」などと大きく報じている。
(Webキャッシュより一部転載)「アルプスの少女ハイジ」原作に盗作?疑惑 - 読売新聞(2010年4月13日 )http://www.yomiuri.co.jp/national/culture/news/20100413-OYT1T00477.htm
本書には、そのヘルマン・アダム・フォン・カンプ著『アルプスの少女アデライーデ』と、ペーター・ビュトナー著の解説『ハイジの原点 ー 暴露された秘密』、日本語に訳された川島隆氏(専門はドイツ文学、メディア論)の解説が載っています。
やっと、フォン・カンプ著『アルプスの少女アデライーデ (Adelaide - das Mädchen vom Alpengebirge)』を、通して読む事ができた。😊
著者(ビュトナー氏)の分析と解説を読むと、ヨハンナ・スピリ著の「ハイジ」は、この作品からインスピレーションを得て、書き上げられていたのだとしても、まったく不思議はないと感じます。盗作と呼ぶのは厳しすぎるとしても、まったく関係ないと言うほうが無理があります。
びっくりしたのが、「ハイジ」や「アデライーデ」という名前について。
「ハイジ」という愛称は小説以前からある、一般的な呼び名だと思い込んでいました。違いました。
ヨハンナ・シュピーリの故郷スイスでは、彼女の小説の出版以前に「ハイジ」(Heidi)という名前が使われていたという文献上の記録はない。
『ハイジの原点 ― アルプスの少女アデライーデ 』(P.77)より
訳者によると、「アーデルハイト (Adelheid)」(愛称は、現代では「ハイジ (Heidi)」)をフランス語化した「アデレード (Adelaide」、それを再びドイツ語の発音で読むと「アデライーデ (Adelaide)」となるそうです。確かに相関関係はあります。
18世紀19世紀の文献では、至るところで「アデライーデ (Adelaide)」という名前があり、地域的に流行していた名前だった。
著者(ビュトナー氏)は「シュピーリ氏(管理人注:スピリ氏)が自作の中で自分がモデルにしたものについてヒントを出している、と言っても言い過ぎではないだろう。(p.83)」と書いています。
アデライーデというオリジナルの名前から主人公の少女の愛称を作るのではなく、わざわざ少し捻って、フランス語の名前の綴りを使い、それをドイツ語化した「アーデルハイド」を主人公の名前として愛称「ハイジ」を創作したことになりそうです。
ビーダーマイヤー時代のフォン・カンプの物語は、シュピーリにストーリー構想と文学的な叩き台を与え、それを彼女は洗練させ、長編小説に拡張したのだ。(p.98)
ビュトナー氏の分析はちょっと堅苦しく感じます。そこに川島氏の解説が、補完して余りあるものとなっています。
都市文明の発達と自然回帰の風潮で、スイスへの観光旅行がブームとなったことと、アメリカへの移民の急増を背景にしたアメリカ小説が流行していた。
フォン・カンプ著『アルプスの少女アデライーデ』では、少女は、北アメリカ大陸の東海岸に移り住みます。
少女と紳士との出会い、当時の小説ストーリーでは、アルプスの美しい自然を背景にした男女の出会いは定番中の定番だった。
これ、ハイジ(少女)とおじいさん(紳士)ではありません。意外なところに"伏兵"がいました。😧
これ以上はネタバレになるでしょう。本作を読んでみてください。130ページ足らずの読みやすい本です。
スピリ作の「ハイジ」の原題は、『Heidis Lehr und Wanderjahre』(ハイジの修行時代と遍歴時代)及び『Heidi kann brauchen, was es gelernt hat』(ハイジは習ったことを使うことができる)。(アルプスの少女ハイジ - Wikipedia)
スピリ作・英語版 Heidi by Johanna Spyri - Project Gutenberg
スピリ作・独語版 Heidis Lehr- und Wanderjahre by Johanna Spyri - Project Gutenberg
Heidi-Zeichner Isao Takahata ist tot: Wo kommt Heidi her? | HNA (2018-04-06)
UZH - ISEK - Institut für Sozialanthropologie und Empirische Kulturwissenschaft - Peter Büttner (ペーター・ビュトナー(Peter O. Büttner)氏、経歴)(ここで日本語版があることを知った。😊)