pelicanmemo

海外の話が多め。近頃は中国が多め(中国海警局・中国海監、深海潜水艇、感染症など)。

モーリシャス島、貨物船「WAKASHIO」が座礁、燃料油が大量に流出。何が起こっていたのか? まとめ (追記8/13)

 

--(追記:8/10)--------------------
モーリシャス島の地元NGO "Eco-Sud" から、クラウド・ファンドによる支援が求められています。内容その他、詳しくは次のページをご覧下さい。

”Mauritius Oil Spill Cleaning 2020 - MV WAKASHIO”

NGO "Eco-Sud"の公式サイトはこちら。

Eco-Sud Ile Maurice - azir zordi pou dime

--(追記ここまで)------------------

 

インド洋のアフリカに近い島国モーリシャスで、大型貨物船が7月25日夜(現地時間)にサンゴ裾礁で座礁した。8月6日に燃料の重油が大量に流出していることが確認された。

モーリシャス共和国は、大洋の孤島の生態系が壊滅的な被害を受けるとして、非常事態を宣言、旧宗主国のフランスやEUへ支援を要請した。

船主の長鋪汽船や運航を担っている商船三井も緊急に対応をしている。

商船三井運航の貨物船 モーリシャス沖で座礁 大量の油流出 | NHKニュース

日本の貨物船が重油漏れ モーリシャスが緊急事態宣言  :日本経済新聞

 

このニュースで注意をしてほしいのは、燃料の重油の大量流出が起きたのは、2週間前の座礁した時ではなく8月5日(現地時間)のことだ。 

ここをちゃんと書かずに日付を端折って伝えるような記事、メディア・団体・著名人が伝える”ニュース”は、あまり参考にしないことをお奨めしたい。 

モーリシャス環境局は、毎日、海水のサンプルを採取して汚染が無いか確認をしている。8月5日(現地時間)まで、燃料油の流出は確認されていなかった。

 

--(追記:8/13)-------------------- 

Pravind Jugnauth首相は12日の記者会見で、「MV Wakashio」の燃料タンクから3184トンの重油が汲み上げられたと発表した。座礁時、複数のタンクに約4180トンの燃料油があった。その大部分は取り除かれたが、約166トンが船倉など船内に残っている。

Pravind Jugnauth « 800 ton dans la mer « – Maurice Info

タンクから燃料油を回収 座礁の日本貨物船―モーリシャス:時事ドットコム

--(追記ここまで)------------------ 

 

モーリシャス島で座礁をしたのは、ばら積み貨物船「WAKASHIO(わかしお)」。所有は長鋪汽船(関連子会社のOKIYO MARITIME)で、運航は商船三井が担う。パナマ船籍。
全長約300m、全幅50mのケープサイズ・バルカーで、乗組員は20人。

モーリシャス沖を通ったのは、中国からシンガポール経由でブラジル方面に向かう途中。船には貨物は積まれていなかったが、燃料の重油3800トンとディーゼル油200トンが積まれていた。

商船三井のプレスリリースによると、日本時間7月26日(日)にモーリシャス島沖で座礁により船体が損傷し、救助作業中の8月6日(木)に燃料油が流出した。

当社運航船 座礁および油濁発生の件 | 商船三井

当社船 座礁及び油濁発生の件 - 長鋪汽船株式会社 (追記8/9)

 

 

座礁した場所は、モーリシャス島の南東地区、d’Esny岬(Pointe d’Esny)の沖900mのサンゴ裾礁。水深は約1.5m。(次のPravind Jugnauth首相のツイート画像に写っている小島はエグレット島)。(追記修正8/10:首相公式ではなく偽アカウントの可能性が出てきました(*3)

(*3)モーリシャス首相官邸のKen Arian顧問 がラジオ番組でそう述べた。(Wakashio – Faux appel à l’aide du PM au président français : « Ce n’est pas le profil officiel du Premier ministre », affirme Ken Arian | Defimedia

 

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ばら積み貨物船「WAKASHIO」が座礁したのは、現地時間7月25日午後8時すぎだった。

モーリシャスの現地メディア lexpress の7月26日付け記事によると、警察隊(MPF)や国家沿岸警備隊(NCG)は、「WAKASHIO」が島に接近しているのをレーダーで把握しており、船と連絡をとろうとしていた。しかし、連絡がとれたのは座礁直前だったようだ。

いずれ船長や船員の話や、ブラックボックスの解析結果が発表され、座礁の原因が分かるるだろう。

 

これは、あくまでも当ブログ管理人による想像だが、機関に異常があり海流に流されて漂流していたのかもしれない。あれだけ大きな島を見落とす理由が思いつかない。

(追記8/11)衛星による船舶位置データによると、航路は他の船舶よりも北側であり、速度11ノットで航行していて、衝突まで減速は見られなかったそうだ。

 

座礁した翌日に撮影された空撮画像から、「WAKASHIO」はサンゴ裾礁へ船首からまっすぐ突っ込んだことが分かる。

 

もし、そのままサンゴ裾礁に対して垂直の状態で船体を維持できていれば、燃料タンクのある船体後部を損傷することは無く、燃料油の流出も無かっただろう。しかし、悪天候とうねりの影響で、サルベージ業者によるその試みは失敗し、船尾付近がサンゴ裾礁に接触して船体が損傷した。

現地の天気概況によると、8月2日から5日は、洋上の悪天候のため大きいうねりの注意報が出ていた。さらに5日から6日にかけてさらに海が荒れていた。

恐らく、船底近くの船殻に穴が開いて浸水し、船尾が沈んだことによって、さらに舷側を甲板に近いあたりまで損傷が拡がったと考えられる。

空荷で軽かったことで、船体の揺動の振幅が大きかったのかもしれない。

船尾が沈み、船体前半分が浮かんでいることで、船体に歪みが生じて破損したと考えられる。(追記修正8/10)

--(追記:8/10)--------------------

モーリシャス島、重油流出した貨物船「WAKASHIO」の亀裂拡大 船体が2つに分断される可能性も - pelicanmemo

--(追記ここまで)------------------

 


モーリシャス共和国のPravind Jugnauth首相のツイートによると、燃料油の4分の1がすでに船外に流出した。調査中。(追記修正8/10:首相公式ではなく偽アカウントの可能性が出てきました(*3)


「WAKASHIO(わかしお)」には燃料タンク3つ(または5つ)があり、そのうち容量約1180トンのタンクが船体の損傷とともに破れて燃料油が流出したそうだ。残り2つはいまのところ無事。(修正8/9:共同通信によると燃料タンクは5つ)

しかし、さらに船体が損傷をすることで、他の燃料タンクからの重油の流出の可能性が危険視されている。

 

船の周囲に設置したオイルフェンスでは流出油を防ぎきることは出来ず、強い海流によってサンゴ裾礁の内側へ流れ、島の南東海岸へと漂着した。

 

 


ばら積み貨物船「WAKASHIO(わかしお)」の船員20人は、当局によって救助された。検疫のため隔離されている。
モーリシャス共和国は、新型コロナウイルスを防ぐため、空港・港の入国を禁止し国境封鎖をしている。
(在モーリシャス日本国大使館から、国境封鎖が解除されたという発表は無い)

もしかしたら、これによって対応が遅れているのかもしれない。

モーリシャスにおける対策 | 在モーリシャス日本国大使館

 


座礁後の、モーリシャス当局等の対応が遅かったわけではない。(追記:足りなかった)

座礁事故が起きた日の夜に国家緊急事態対策センター(NEOC (National Emergency Operations Command Centre))を設置。環境省、国家沿岸警備隊、警察隊、警察飛行隊などを含む関係各所に連絡をして緊急対応を始めた。重油の流出に対する国家計画もはじめている。

(追記8/13:国会で、座礁した後の燃料重油の流出リスクに対する政府・大臣の認識が甘かったため被害を拡がったと野党からの批判が高まっている。船長らへの、中央犯罪捜査局(CCID)による聞き取り調査が始まった。)

 

しかし、モーリシャス共和国には、座礁したケープサイズ貨物船をサルベージする船や機材が充分では無かった。

ばら積み貨物船「WAKASHIO」の船主のOKIYO MARITIME(長鋪汽船の関連子会社)は、座礁した直後に、外国企業に対して船舶の曳航を要請している。

サルベージは、オランダの大手サルベージ会社「SMIT Salbage」が請け負った。現地報道によると、日本サルヴェージ株式会社からも5人が現地入りして、協力して対応しているそうだ。(WAZAA)


まず、南アフリカからタグボート(オーシャンタグ)1隻が派遣され、次いで、近くのレユニオン島から1隻が到着した。さらに8月4日にペルシャ湾(アラブ首長国連邦(UAE)またはオマーン)から1隻が到着した。
8月11日に、インドのムンバイからのタグ1隻が到着する予定だ。

それら2〜3隻で、「WAKASHIO」の船体の姿勢制御と離岸を試みてきたが、海上のうねりが大きく失敗だった。二次災害のリスクは侵せなかったのだろう。

サルベージ関係者の報告によると、舵が損傷し、プロペラも損傷した可能性が高い。

 

とりあえず、8月8日(日本時間)の朝までに見かけたニュースをまとめてみた。

 

--(追記:8/10)------------------ーー
この後、フランスのエマニュエル・マクロン大統領は全面的な支援を表明。モーリシャス島から約200kmにあるフランスの海外県のレユニオン島から、流出重油の回収用機材などを軍用機Casa CN-235で運搬した。さらに海軍の他用途巡視船「Champlain」が派遣された。支援物資は20㌧。専門家10人が派遣された。

インド洋委員会(IOC(Indian Ocean Comission))理事会もモーリシャスとの連帯を表明。

”POLMAR (POLlution MARitime)”の枠組みや、2019年にマダガスカルでの演習が役に立っているようだ。(POLMAR

日本政府は、緊急援助隊の派遣を9日に発表、10日午前に羽田空港を出発した。

日本語の報道も増えているので、そちらもお調べください。 

 

現地メディアの報道などを、ツイートして、スレッドにしています。

最初は、7月28日の座礁直後のツイート。

 

次のブログ記事(8月10日公開)。

モーリシャス島、重油流出した貨物船「WAKASHIO」の亀裂拡大 船体が2つに分断される可能性も - pelicanmemo

--(追記ここまで)------------------

 

 

 

www.mol.co.jp

 

Republic of Mauritius- Government is taking necessary actions to contain oil spill from MV Wakashio

在モーリシャス日本国大使館

 

記事リンクなど、追加します。

 

座礁直後、空撮映像


Vue aérienne du Vraquier Wakashio échoué à Pointe d’Esny - YouTube

Navire échoué: «Le radar a vu le navire s’approcher» dit Khemraj Servansingh | lexpress.mu(26 JUL 2020)

Wakashio la chronologie des évènements – Maurice Info 時系列 (08 août 2020) 

 

MV Wakashio : une équipe japonaise attendue ce mercredi (MV WAKASHIO:今週の水曜日に予想される日本のチーム) (05 août 2020) 

Échouement du navire Wakashio : Un premier rapport préliminaire est attendu dans deux mois - MauriceActu (05 août 2020) 

Fuite d’huile: le propriétaire du Wakashio affirme qu’il mettra tout en oeuvre pour protéger l’environnement marin | lexpress.mu (重油流出:「WAKASHIO」オーナーは海洋環境を守るために全力を尽くすと語る)(07 août 2020)

 

La ‘fissure’ du MV Wakashio vue de prés | Radio One (08 août 2020) 左舷の亀裂、近接撮影。

[Diapo] Naufrage du Wakashio: du mazout, du courage en images | lexpress.mu(08 août 2020)  原油回収作業(スライドショー)

事故は現地時間の7月25日夜に発生した。五つのタンクに燃料の重油計約3800トンを積んでおり、うち約1180トンが入ったタンク一つが破損、8月6日に流出し始めたという。

千トン超の燃料タンク破損 モーリシャス沖の重油流出 | 共同通信 (2020/8/9)

Descente policière à bord du Wakashio ce dimanche | lexpress.mu

Déversement d’hydrocarbures : la ‘Team Europe’ se mobilise pour Maurice (08 août 2020) 

Naufrage du Wakashio: un avion militaire français attendu en ce samedi | lexpress.mu

 

 

我が名は海師(1)

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