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海外の話が多め。近頃は中国が多め(中国海警局・中国海監、深海潜水艇、感染症など)。

モーリシャス島、貨物船「WAKASHIO」 なぜ針路変更をしたのか?

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モーリシャス島、サンゴ礁で座礁したばら積み貨物船「Wakashio(わかしお)」。

2つに壊れた船体は、前半分(空っぽの船倉の部分)は島から約16km離れた海域に運ばれて水深2000mの海に沈められた。環境保護団体などの批判があったが、この対応はモーリシャス政府当局およびフランスから派遣された専門家ら(*)によって環境汚染のリスク等が検証された上での対応だ。その一方、船体の後半分は座礁した状態で安定しており、サルベージ会社によって残ったエンジン他の潤滑油の抜き取りが行われている。(記事公開日)

 

ばら積み貨物船「Wakashio」が、なぜモーリシャス島に近付くルートをとっていったのか、船舶自動識別装置(AIS (Automatic Identification System))等のデータ解析が行われて報道されている。

ただ、ロイター日本語版の8月21日付け記事は、そのタイトルと書き方はちょっと気になった。

「Wakashio」が座礁した地点から55海里(約102km)で通常航路を外れたと書いているけれども、誤解を招きそうだ。これは、モーリシャス島から100kmで”突然に”針路を変更したということではない。

わかしおはシンガポールを経由し、中国からブラジルに向かっていた。ウインドワードのデータと海運業界関係者への取材によると、わかしおはモーリシャスの近くを通る船の多くが使う航路を航行していたが、島から55カイリ(102キロ)離れた地点で航路を外れたとみられ、まっすぐモーリシャスに向かって進んだ。(赤字強調は管理人による)

モーリシャス座礁船、通常航路を逸脱 現場から100キロの地点で - ロイター (2020年8月21日)

地上の道路での交通事故に置き換えて考えてみよう。

これは、車道を逸脱して交通事故を起こした車が、車道(複数車線)をはずれて歩道に侵入した時点を示しているにすぎない。「Wakashio」はそれよりもずっと前から(約4日前から)、モーリシャス島に衝突するコースをとっていたと報道されている。

その航路(複数車線の車道)を、その”車”は車線を越えて斜めに走っていた、そして歩道へ行って事故を起こした、と説明する方が適切だろう。

モーリシャス島、貨物船「WAKASHIO」 座礁するまでの航路と、座礁した後【地図・海図】 - pelicanmemo (2020-08-19)

 

閑話休題、
この航跡の地図を見てみると、航路をはずれた後に針路が1回変わっていることに気付いた人も多いと思う。図示すると、あきらかに針路が変わっているのが分かる。

 

(*)フランスの汚染管理の専門家センター、CEPPOL(Centre d'Expertises Pratiques de
Lutte Antipollution)とCEDRE(Centre de documentation, de recherche et d'expérimentations sur les pollutions accidentelles des eaux)。(日本語での組織名は未確認)

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20200822185554ロイター の記事に赤字・赤矢印等で追記した)

データは、わかしおが座礁するまでの数時間の航跡を記録。モーリシャスの領海に入った後に小さく旋回した形跡もある。「非常に良くない軌道をたどっていた」と、ウィンワードのマーケティング責任者、オメル・プリモール氏は言う。(赤字強調は管理人による)

モーリシャス座礁船、通常航路を逸脱 現場から100キロの地点で - ロイター (2020年8月21日)

 

この針路変更をしたポイントは、モーリシャス共和国の領海(12海里(約22.2km))内で、座礁した地点から25~30キロメートルの距離(画像にモノサシをあてた程度の精度)となる。

「Wakashio」は座礁するまで約11ノット(約20.4km/h)で航行し、座礁するまで加減速は無かったことがForbes紙が報じている。(Forbes紙の記事は、このロイター紙の記事と同じ海洋データ・リスク解析企業Windwardの航跡データを元にしている)

 

領海内で、なぜ針路変更をしたのか?

 

モーリシャスの国家沿岸警備隊(NCG(La garde-côtière nationale, National Coast Guard))は、島に接近してくるばら積み貨物船「Wakashio」と連絡をとろうとしていた。

船との連絡は、座礁前の最後は7月25日18時15分頃(現地時間)であり、座礁した後は20時10分頃(現地時間)だったと、国家沿岸警備隊(NCG)から報告されている。

「Wakashio」船主の長鋪汽船による燃料重油の流出(8月6日(日本時間))後のプレスリリース(8月8日付(日本時間))(第一報)によると、座礁は7月25日19時25分(現地時間)だった。

当社船 座礁及び油濁発生の件 - 長鋪汽船株式会社 (2020年8月8日)

 

7月25日18時15分頃(現地時間)のモーリシャスの沿岸警備隊(NCG)との通信で、「Wakashio」の船長(インド人・58才)は、領海内の「無害通行だと回答したそうだ。

領海は12海里(約22.2km)。

すべての国の船舶は、沿岸国であるか内陸国であるかを問わず、この条約(補足:国連海洋法条約)に従うことを条件として、領海において無害通航権を有する。通航は、沿岸国の平和、秩序又は安全を害しない限り、無害とされる。国土交通省(pdf)

 

Windwardの航跡データから推測すると、このNCGとの通信の時に「Wakashio」は針路を変更したのかもしれない。

モーリシャスの国家沿岸警備隊(NCG)は、モーリシャス共和国の領海に入るコースをとっているばら積み「Wakashio(わかしお)」に対して、注意あるいは警告を与えた。

「Wakashio(わかしお)」の船長は、領海内を航行するのは「無害通航」であると回答しつつも、少しだけ左に舵をきって、モーリシャス当局からの連絡に対して、”対応をしてみせた”のではないだろうか。後で文句が出ても言い訳が出来るように…

 

 

もしかしたら「Wakashio」船長は、島のごく間近を通ることになっても、そのまま通過できると思ったのかもしれない。

もしかしたら「Wakashio」船長は経験不足で、サンゴ礁の事を考えておらず、座礁するリスクを非常に軽くみていたのかもしれない。

もしかしたら「Wakashio」一等航海士(副船長)は、ブリッジにいなかったのかもしれない。

もしかしたら、…

 

この時に・・・、あとコンマ数度でいいから大きく舵をきっていたら、座礁はせずにギリギリで通り抜けられたのかもしれない。残念で仕方がない。

なぜ、ばら積み貨物船「Wakashio」がモーリシャス島に衝突するようなルートをとっていたのか? 詳細はモーリシャス共和国の司法による捜査で明らかになるだろう。

 

 

ところで・・・、

ばら積み貨物船「Wakashio(わかしお)」がモーリシャス島に接近し座礁した理由について、現地メディアではこれまでにさまざまな推測、”噂”が報道されてきている。

 

長鋪汽船と商船三井による共同記者会見での発表のように、荒天の影響で航路が徐々に北にずれたのかもしれない。確かに座礁した7月25日の気象情報によると、インド洋のはるか南の海上が荒れておりその影響でうねりは大きかった、…だとしても、「Wakashio」だけが島に衝突するような異常なルートをとっていた理由はどう説明するのだろうか?

モーリシャス島周辺は浅瀬で、当初は島から20マイル以上離れて運航する予定だったが、計画航路は波が高く徐々に北にずれたとみられる。

WAKASHIO、航跡と環境汚染を追う モーリシャス沖重油流出:日本経済新聞

 

その他にも、いろいろな”噂”が流れていた。

密輸や密入国のために島に接近していた説、現地メディアで座礁後の現場の警察官の発言として「船員の数が足りない」というニュースがあった。デマあるいは情報不足の拙速な報道だった。これには新型コロナへの不安も重なったのだろう。

船内で反乱があった説もあった。これは、海岸に緊急脱出艇が漂着していた目撃情報が流れて、そこから生まれたようだ。その後否定された。

GPSやAISのデータが狂っていた説があった。もし、これが正しいのなら国際物流の壊滅的な危機につながるだろう。

「Wakashio」のエンジンや舵などに故障など問題があった可能性は、その後の調査で、座礁するまでに問題が無かったことが分かった。

「Wakashio」船長は、中央刑事捜査局(CCID)の取り調べに対して、、国家沿岸警備隊(NCG)と連絡がとれなかった理由として、通信装置の技術的なトラブルを上げていた。(個人的な感想だけど、この”言い訳”を誰も信じていないと思う)

「Wakashio」が、座礁の数日前に自動操舵に切り替えた(だろう)ときに、入力した数値を間違えた可能性が指摘されており、これは複数の報道でのAIS航跡データからも補強される。

フリーWi-Fi、あるいは4G携帯の電波を受信するためという説は、日本メディアが好んで流している。これは、8月10日の乗組員4人の取り調べの後の警察発表のニュースで話題になったものだが、その後に現地メディアに追加報道はほとんど無く、むしろ否定的な報道を多く目にする。

 

・・・もしもの話として、Wi-Fi説が正しいとするなら、「Wakashio」は何日も前から、モーリシャス島に”接近する”コースではない、島と”衝突する”コースを選んで真っ直ぐに進んでいたことになってしまう。

地上での交通事故に置き換えて考えてみると、それはつまり、コンビニのフリーWi-Fiを受信しようとして、駐車場でブレーキをかけずにコンビニ店内に突っ込んでいった、こんな感じなのだろう。

 

続報を待ちたい。

 

モーリシャス島、貨物船「WAKASHIO」 座礁するまでの航路と、座礁した後【地図・海図】 - pelicanmemo (2020-08-19)

モーリシャス島、貨物船「WAKASHIO」の燃料の重油流出 漂着した海岸(地図) - pelicanmemo (2020-08-16)

モーリシャス島、貨物船「WAKASHIO」が座礁、燃料油が大量に流出。何が起こっていたのか? まとめ (追記8/13) - pelicanmemo

無害通航 - Wikipedia