茂木外務大臣によるモーリシャスにおける油流出被害状況の視察
— 外務省 (@MofaJapan_jp) 2020年12月13日
茂木敏充外務大臣は、現地時間13日、モーリシャス島南東部の「WAKASHIO」の座礁地点を望むポワント・デスニーから油流出被害状況を視察しました。
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インド洋のアフリカに近い島国モーリシャスで、ばら積み貨物船「MV WAKASHIO」が座礁してからもうじき5ヶ月となる。7月25日夜(現地時間)に座礁をし、8月6日に燃料の重油が大量に流出していることが確認された。
当ブログ管理人、モーリシャスの現地ニュースや関連報道をずっと追いかけているんだけど、流出油のその後の除去の情況はあまり報道されない。かなり進展していても、心配な点もまだある。
11月13日(現地時間)、茂木敏充外務大臣がモーリシャス共和国を公式訪問し、ジャグナット首相やボダ外相とそれぞれ会談をした。またボダ外相とともに、島の南東部での燃料油漂着の被害があったマングローブ林や、サンゴ堡礁に残っている「MV WAKASHIO」の船体後部を岸から視察した。
茂木外相はオンライン会見で、記者団に対して「着実に海岸がきれいになっている」との認識を示した。
…と言われると、「そりゃ、立場的にそう言うだろう。そういう場所を視察してるんじゃないの?」とイヤミの一つも言いたくなってくる。🙄
モーリシャスの現地メディアが、視察と流出油の関連ニュースを伝えている。
流出油の除去などクリーニングを担当しているPolyeco社によると、4ヶ所で流出油が残っているが、12月末までには除去が完了する予定だそうだ。
着実に海岸はきれいになっているようでした。😅
船体後部の撤去は中国企業が受注し、1月から作業が開始される予定。
モーリシャス島、貨物船「WAKASHIO」座礁 船の電子海図が間違っていた? パナマ海事庁 - pelicanmemo
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ESAが発表した、合成開口レーダー(SAR)を搭載する衛星”センチネル1号による、モーリシャス島での燃料重油の流出の様子。
Emergency Response Coordination Centre (ERCC) – DG ECHO Daily Map | 19/08/2020
Mauritius | Oil Spill
茂木外相らが13日午後に視察したのは、クレオール川(Rivière-des-Créoles) と記事に書かれているので、日本の外務省の広報写真はその河口のマングローブ林だろう。
ここは、緊急援助隊や、JICAなど調査団による現地調査で、油の除去がとくに難しいとされていたところだ。
隊員らによると、船周辺の沖合では油の塊はあまり見られない一方、沿岸部には油がこびりつき、現場から約10キロ北の海岸にも漂着していた。油は海面でキラキラと光り、きつい臭いを放っているという。海岸ではボランティアも加わって油の回収作業が行われているが、外から入るのが難しいマングローブ林では作業ができておらず、大きな課題になっている。
(赤字強調は管理人による)マングローブ林にも油 モーリシャス緊急援助隊が会見 - 毎日新聞 (2020年8月15日)
それでも、燃料油の流出の直後に最も心配されていた、事故現場近くの2カ所のラムサール条約登録地(国際的な湿地保護区)への影響は無いか軽微だったと報告されている。
座礁した地点に最も近い、エグレット島での一般向けツアーも再開し、新たに、「MV WAKASHIO」の座礁して残っている船体後部と流出油と環境への影響などをテーマにしたエコツアーも計画されているそうだ。
モーリシャス、ばら積み貨物船「Wakashio」の燃料油の流出現場に最も近いエグレット島、その自然保護区の一般向け公開が再開する。モーリシャス野生生物財団(MWF)。
— ぺりかんめも (@pelicanmemo) December 11, 2020
Réserve naturelle: l’île-aux-Aigrettes de nouveau ouverte au public https://t.co/sHDnhAbSTk #Mauritius
ブルーベイ・ラグーン海洋公園での遊泳やダイビング、サーフィン、ボートなどの活動の制限は12月5日に解除された。
モーリシャス、
— ぺりかんめも (@pelicanmemo) 2020年12月5日
12月5日から、ブルーベイ・ラグーンでの遊泳・ダイビング・サーフィン・ボート活動の制限が解除される。
釣りは含まれない。
Lever d’interdiction concernant activites recreatives dans lagon Blue Bay et visite lor l’ile aux Aigrettes https://t.co/A2twlP2vK6
漁業活動やレジャー・フィッシングにはまだ制限がかけられている。
モーリシャス政府は、サンゴ堡礁での「MV WAKASHIO」座礁後のさまざまな環境への影響に対処するための統合型環境モニタリングプログラム(Programme Intégré de Surveillance de l’Environnement(PISE))を実施する。PISEには、燃料油流出の環境への影響について科学的に正しい評価を実施し、短期・中期的に地域の生態系の回復の様子を監視する。そして、長期的な生態系の回復の監視をかの宇土市、継続的かつ統合された海洋環境監視の枠組みを確立する。
また、評議会(MRIC)が立ち上げた燃料油の流出後の回復プログラムに対して、民間企業、NGOや学術機関が応募した18のプロジェクトを承認した。総額は4200万ルピー(約1.1億円)。
Cabinet: la Stratégie de Développement national prolongée jusqu’en 2022 – inside news :
特に、生態系への長期的な影響について心配しているのが、ばら積み貨物船「MV Wakashio」から流出した燃料油が、普通の燃料の重油ではない低硫黄燃料油 (VLSFO(Very Low Sulfur Fuel Oil))というところだ。
これは、近年の船舶燃料のSOx規制に対応して新たに開発された低硫黄燃料油で、端的に書くと、重油の硫黄分を減らす代わりに添加物を増やして、燃費や性能を落とさないようにした燃料油だ。新しく開発されたものなので、自然環境に大量に流出した場合の中長期的な影響が充分に研究されていない。
新しく建造されたり、まだ新型の大型の外航貨物船では、新しい硫黄除去の設備を設置したりして船舶燃料のSOx規制に対応している。しかし、ばら積み貨物船「MV Wakashio」は船齢13年の古い船なので、設備投資ではなく低硫黄燃料油 (VLSFO)を使うことでクリアしたのだろう。
「MV Wakashio」の船体後部がまだサンゴ堡礁に残っている。
長鋪汽船のプレスリリースによると、中国の「LIANYUNGANG DALI UNDERWATER ENGINEERING CO., LTD(本社:中国)」と処理の契約を締結した。処理作業の開始は12月下旬と発表されているが、来年(2021年)1月にずれ込んだ。完了は来春を予定している。撤去した船骸及び残存物の処理については、モーリシャス当局と協議・確認を行いながら進める計画だそうだ。
当社支配船WAKASHIO 座礁および油濁発生の件 第10報 - 長鋪汽船株式会社 (2020年11月5日)
・・・最初、「海が荒れる11月~12月まで」に撤去が期待され、次は「12月25日までに撤去を」とされていたけれども、やはり無理だったな。🙄
また伸びたということは、海の様子とか何かあってさらに伸びるかもしれない。
中国の会社だからと言うわけじゃないけど、中国のアフリカでの開発案件でときどき耳にする話だ。
LIANYUNGANGは連雲港(连云港)(市)だろうから、受注したのは「连云港市大力水下工程有限公司(Lianyungang Dali Underwater Engineering Co., Ltd.)」だろう。
ほとんど知らないから評価は出来ないけど…、
— ぺりかんめも (@pelicanmemo) 2020年11月5日
能力や採算を度外視してとりにいったんじゃないかという不安感はぬぐいきれない。
モーリシャスの油流出事故から2カ月 |WWFジャパン(2020/10/15)
MV Wakashio : le nettoyage devrait être complété d’ici fin décembre – inside news
Cabinet: la Stratégie de Développement national prolongée jusqu’en 2022 – inside news :
茂木外相 貨物船重油流出モーリシャスへの継続支援伝達 | 環境 | NHKニュース
モーリシャスに300億円の円借款 茂木外相が検討表明: 日本経済新聞
災害対策でモーリシャス支援 茂木外相、重油流出状況視察:時事ドットコム