(共同通信より)
共同通信は4月5日付けの記事で、昨年(2020年)12月15日に米国海軍第7艦隊が対馬海峡の日本の領海内で「航行の自由」作戦(Freedom of Navigation Operation(FONOP))を行っていたと伝えた。
実は日本だけでなく、先週(2021年3月31日)、韓国の領海内で「航行の自由」作戦を行っている。米国海軍第7艦隊は、大韓民国(韓国)の過度な直線基線の主張に異議をとなえることにより、国際法で認められている海洋の権利と自由、合法的な使用を擁護すると表明した。
「航行の自由」作戦がどのあたりで行われたのか調べてみた。
ところで米海軍第7艦隊は、日韓どちらのケースでも「航行の自由」作戦を実施した日に公式ウェブサイトで発表をしている。
しかし、なぜか共同通信(2021/04/05)の記事では、昨年末(2020/12/15)の日本の領海内での「航行の自由」作戦の実施が新たに分かったかのように報じつつ、韓国の領海内での先週(2021/03/31)の作戦実施については触れてはいない。
On March 31 (local time) USNS Charles Drew (T-AKE 10) asserted navigational rights and freedoms in the vicinity of the Kuk-To Island, consistent with international law. This freedom of navigation operation ("FONOP") upheld the rights, freedoms, and lawful uses of the sea recognized in international law by challenging the Republic of Korea's excessive straight baseline claim.
7th Fleet conducts Freedom of Navigation Operation > Commander, U.S. 7th Fleet (March 31, 2021)
共同通信の表現を借りるなら、米国海軍第7艦隊は”「(韓国の)過剰な海洋主権への異議申し立て」が目的”で、”同盟国の韓国にも等しく異議を唱えることで、国際秩序を守る姿勢を強調し、東・南シナ海で覇権主義的な動きを強める中国をけん制する狙いもある”・・・とでも言うのだろう。
米海軍第7艦隊(神奈川県横須賀市)が昨年末、日本政府による対馬海峡での領海設定の基準を問題視し、周辺で艦艇や航空機を活動させる「航行の自由」作戦を実施していたことが5日分かった。第7艦隊は「過剰な海洋主権への異議申し立て」が目的だったと説明。日本政府は、国際条約に基づく適切な領海設定だと反論している。
米海軍、対馬海峡で作戦実施 日本の領海設定基準を問題視 | 共同通信 (2021/4/5)
TSUSHIMA STRAIT – On Dec. 15, USNS Alan Shepard (T-AKE 3) asserted navigational rights and freedoms in the vicinity of Tsushima Strait near Japan. The ship conducted normal operations within claimed territorial seas to challenge excessive maritime claims and preserve access to the waterways as governed by international law.
USNS Alan Shepard conducts Freedom of Navigation Operation > Commander, U.S. 7th Fleet (Dec. 15, 2020)
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7th Fleet conducts Freedom of Navigation Operation > Commander, U.S. 7th Fleet (March 31, 2021)
韓国の政府や軍、海洋警察庁からこの件に関する発表やコメントはいまのところ無いようだ(4月7日お昼時点)。
3月31日のFONOP実施の発表で"Philippine Sea(フィリピン海)"となっているのは”ご愛嬌”。😊
4月3日のスリランカ沖でのFONOP実施の発表でも"Philippine Sea"になっている。
韓国の"Kuk-To Island"付近の領海内で「航行の自由」作戦を実施したのは、米国海軍のルイス・アンド・クラーク級貨物弾薬補給艦「USNS チャールズ・ドリュー (T-AKE-10)」。昨年12月に対馬海峡の日本の領海内で同作戦を実施した「USNS アラン・シェパード(T-AKE-3)」の同型艦。
韓国の方は"Kuk-To Island"の沖で、日本の方は対馬海峡で実施したと発表された。
韓国メディア News1の4月7日付け記事によると、韓国には"Kuk-To Island"(국도)という名前の島は2つあるそうだ。
対馬海峡(대한해협(大韓海峡))(*)の慶尚南道統営市の欲知面ドンハンリ(경상남도 통영시 욕지면 동항리)と、済州島の北側に位置する全羅南道新安郡の黑山面晩才島里(전라남도 신안군 흑산면 만재도리)の2カ所。
英文の島名でググって気付いた人もいるだろう。北朝鮮の日本海側にも1カ所ある。しかしこれは沿岸2kmにある小島なので無関係だし、万景峰号の母港でもある元山市の軍港に近い。もしもコレだったなら世界的な大ニュースだ。🤗
[단독]미군, 우리 영해서도 '항행의 자유 작전' 펼쳤다 ([単独]米軍は、私たちの領海でも「航行の自由作戦」を実施した)(2021-04-07)
(*)こまかく書くと、対馬海峡西水道や朝鮮海峡、釜山海峡(부산해협)と複数の名称の併記が必要となる。ごちゃごちゃするので簡略に書いた。
全羅南道の方の島は近くにいくつも島があるので違うだろう。米国海軍が「航行の自由」作戦を実施したのは慶尚南道の統営市の沖の海域で、対馬海峡だったと考えられる。
対馬の西北西〜西の海域で、国際航行に使用されるいわゆる国際海峡なので領海が狭く設定されるあたりだ。
もしかすると日本の領海内で「USNS アラン・シェパード(T-AKE-3)」が「航行の自由」作戦を行ったのも、対馬海峡の反対側あたりではないだろうか?🤔
そこで、海上保安庁海洋情報部の直線基線と領海の図と、韓国の国土交通部の直線基線領海図とを重ね合わせてみた。韓国側は陸地に近い青色の線が基線、赤色の線までが領海。日本側は色の濃さで基線と領海が分かる。
推測した2つのFONOPのルートを赤い点線で書き込んだ。
重ね合わせた地図画像はこちら。(地図の若干のズレは気にしないでほしい😅)
管轄海域情報~日本の領海~ > 特定海域 - 海洋情報部 - 海上保安庁
今年(2021年)3月31日の韓国領海内での「航行の自由」作戦(FONOP)は、慶尚南道統営市の"Kuk-To Island"(국도)の沖の出っ張った部分の可能性が高い。
一方、昨年(2020年)12月15日の対馬海峡と発表された日本領海内でのFONOPは、長崎県五島列島の北にある白瀬や福岡県の沖ノ島のあたりだったのかもしれない。
米国の軍艦というと「灯台ジョーク」をご存知の方も多いと思う。
案外、日本と韓国に対する米海軍第7艦隊の本音は、対馬海峡で「領海をそんなに出っ張らせるんじゃねえ❗まっすぐ自由に航行させろ💢」だったりしてー😆
--(追記:4/8)--------------------
米国海軍第7艦隊から、"Kuk-To Island"は対馬海峡の方の島という説明がツイッターであった。
Ryan,
— 7th Fleet (@US7thFleet) 2021年4月7日
Attached are images of the Kuk-To Island we referenced in our original statement after our freedom of navigation operation Mar. 31. pic.twitter.com/YVghFMEyf5
--(追記ここまで)------------------
FONOPの航路について関係する国からの公式発表はいまのところ見かけない。蓋然性が高いと思うがあくまでも当ブログの中の人の推測です。
米海軍、対馬海峡で作戦実施 日本の領海設定基準を問題視 | 共同通信
米国、日本の直線基線・領海拡大問題視…「航行の自由」作戦実施(中央日報日本語版) - Yahoo!ニュース
美, 日 직선기선·영해 확대 문제삼아…‘항행의 자유’ 작전 실시 - 중앙일보
[단독]미군, 우리 영해서도 '항행의 자유 작전' 펼쳤다
管轄海域情報~日本の領海~ > 直線基線一覧 > 九州:都井岬~鳥屋鼻 - 海洋情報部 - 海上保安庁
管轄海域情報~日本の領海~ > 特定海域 - 海洋情報部 - 海上保安庁
ルイス・アンド・クラーク級貨物弾薬補給艦 - Wikipedia