（共同通信/Yahooより）
海上自衛隊の護衛艦「すずつき (DD-117)」が7月4日、中国の浙江省沖の領海を一時航行し、中国側から退去勧告を受けていたそうだ。中国政府は日本側に深刻な懸念を伝えた。
日本メディア各社が11日に一斉に伝えた。
共同通信の北京発の記事が詳しい。11日00時頃に配信された日本語版記事(Yahooなど)よりも、その後に配信された日本語版（有料記事（掲載メディアによる））や英語版記事（08時半頃配信）の方が詳しい。
【北京共同】海上自衛隊の護衛艦「すずつき」が今月4日、中国浙江省沖の中国領海を一時航行したことが10日分かった。自衛隊の艦船が中国領海を航行するのは極めて異例。中国側から退去勧告を受けていたという。周辺では中国軍の実弾射撃訓練が予告されていた。中国政府は日本側に深刻な懸念を伝達。日本政府は経緯を調べると外交・防衛ルートで伝えた。防衛省は艦長に聞き取りを実施するなど調査を始めた。外交筋が明らかにした。
海自護衛艦が中国領海を航行 日本に「深刻な懸念」伝達（共同通信） - Yahoo!ニュース (7/11(木) 0:05配信)
Japan destroyer sailed into China territorial waters despite warnings - KYODO NEWS (08:35配信)
独家：海自护卫舰本月曾在中国领海航行 - 共同社 (15:06配信)（英語版記事の一部を翻訳した記事のよう）
報道をまとめると、
現場付近は台湾周辺（読売新聞）。
周辺では、中国海軍の実弾射撃を含む軍事演習が予告されていた（共同通信）。
護衛艦「すずつき」は当時、中国軍の訓練の監視任務に当たっていた。中国側から退去勧告を受け領海の外に出た（NHK）。
護衛艦「すずつき」が浙江省沖の領海（12海里（約22km））に近づいたので、中国海軍の艦艇がその場を離れるよう繰り返し求めた（退去勧告）ところ、「すずつき」は速度を上げて中国領海内を約20分間航行した後、領海を出た（共同通信 英語版・中文版）。
（7月11日午後8時（日本時間）までに、当ブログ管理人が確認した記事をもとにした）
中国海軍の軍事演習とは、中国の海事局（中国海警局ではない）が7月2日に発表した「东海军事任务 浙航警 636/24」。軍事演習海域の範囲は15ヶ所の緯度経度で指定されている。
演習期間は7月3日0400時から5日1800時までとされているが、4日午後までに軍事演習の終了が発表された。
予定より早く終了したことと、海上自衛隊の護衛艦「すずつき」が中国の領海を航行したこと、それに対する中国側の対応が関係しているかどうかは分からない。関係していないと考える理由もない。
东海军事任务结束 浙航警 643 /24 - 中华人民共和国海事局 (2024-07-02 10:56)
东海军事任务 浙航警 636/24 - 中华人民共和国海事局 (2024-07-04 14:58)
X(Twitter)でDuan Dang @duandang さんが軍事演習の海域を地図上で図示してくれている。
浙江省の中部、台州市と温州市北中部の沖の海域だ。
China announces large-scale military exercises in the East China Sea from July 3-5, less than 100 nautical miles from Taiwan. pic.twitter.com/wjSSzPK3Mw
— Duan Dang (@duandang) 2024年7月2日
ここからは当ブログ管理人が考えた、根拠は多くない想像です。
軍事演習海域は南側が細くなっていて、少し変わった形をしている。
もしかしたら、海上自衛隊の護衛艦「すずつき (DD-117)」は、この中国領海と軍事演習海域との間の狭い海域へ入ったのではないだろうか？🤔
（小さな島嶼を分かりやすくするため、GoogleEarthの衛星画像と、Duan Dangさんの軍事演習海域の地図を重ね合わせた。ざっくりと海岸線ですり合わせた。）
（7月11日午後8時（日本時間）までに、当ブログ管理人が確認した記事をもとにした。続報や今後の発表によって、当ブログ記事の内容は間違いとなるかもしれない）
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その海域にある離島、南麂島（南ジ島）(*1)から今回の軍事演習海域までの距離は30数kmほど（領海基線が基準になるのでもう少し短い）。
海上自衛隊の護衛艦「すずつき (DD-117)」は、演習海域の線に沿って入っていって、Uターンして同じ航路を戻ってくれば中国の領海に入らずに監視任務を行えただろう。
しかし、中国海軍の軍艦（複数？）が護衛艦「すずつき」に接近して進路をふさいだことで、接触や衝突の危険を避けつつ中国の領海から離れるルートはとれなくなってしまい、領海へ押し込まれていった、という仮説はどうだろうか？
共同通信の英語版・中国語版の記事は、中国側の主張では、護衛艦「すずつき」が領海12海里に近づいたので中国海軍の艦艇から繰り返し退去勧告がなされたが、「すずつき」は速度を上げて中国領海内を約20分間航行した後、領海を出た、と伝えている。
護衛艦「すずつき」の速度は最大30ノット（時速55km）。20分で進めるのは最大でも約18.3kmほど。
ここで示した仮説と、中国側が主張する護衛艦「すずつき」の行動は、矛盾はしていない。
退去勧告を受けたあと、なぜ護衛艦「すずつき」が速度を上げ、なぜ、わざわざ中国の領海を20分も航行するようなルートをとることになったのか、なぜそのルートをとらなければならなかったのか、だ。
The Suzutsuki, which was on a mission to monitor the live-fire drill, was urged by the Chinese vessels to leave the area when it approached within 12 nautical miles (22 kilometers) off the coast of Zhejiang, but it sped up and navigated into the Chinese waters for some 20 minutes before leaving the territorial waters, the diplomatic sources said.
Japan destroyer sailed into China territorial waters despite warnings - KYODO NEWS
据悉，凉月号当时执行的是从公海对中方的军事训练进行警戒监视的任务。由于已靠近距离浙江省沿岸12海里（约22公里）的领海，中方舰船反复要求其驶离，但凉月号仍然在中国领海加速航行，约20分钟后驶出领海。
独家：海自护卫舰本月曾在中国领海航行 - 共同社
（記事を比較してみると、共同通信の中文版記事は英語版記事の一部翻訳記事だった）
もちろん現段階で、本当のところは分からない。
防衛省や海上自衛隊から、詳細が発表されるだろうか？（発表されないだろう）
林芳正官房長官は11日の記者会見で、「防衛省、自衛隊は平素からわが国周辺海域や空域で警戒監視活動をはじめとする活動を行っているが、詳細については自衛隊の運用に関する事柄であり、答えを差し控える」と述べた。
共同通信によると、”中国政府は、海自艦による「意図的な挑発」（中国筋）の可能性も否定できないとして内部で詳しく情報収集・分析を進めている”そうだ。
この情報は、海上自衛隊で起きていた数多くの不祥事と関連して、この時期に表沙汰になったのだと思うが、海自と防衛省がごたごたしている時に合わせた中国側からのリークの可能性も考えられる。
中国側は、中国海軍の軍艦の活動ばかりが非難されているが「日本の海上自衛隊の護衛艦も同じことをやっている」と反論をして、「中国ばかり非難されるのは公正ではない」と主張できる材料を積み上げる意図があるだろう。
ところで、日本メディアの記事や有識者のコメントでは、国連海洋法条約で、沿岸国の安全を害する活動を行わない限り領海を航行できる「無害通航権」が認められていると説明しているものが多い。
それはそうなんだけど、中国海軍の軍艦が日本の領海を航行したときに、中国側が「無害通航権」を言い出してきたら、その時はどうするのだろう。🙂
(*1) 南麂島（南ジ島）(*)は「尖閣諸島まで300キロの場所に新たな軍事拠点を整備中」と報じられた島で、日本人がスパイ容疑で拘束された事件もあった（その後の報道で、スパイ罪などで懲役12年の実刑判決が言い渡された）。(*)”南●（＝鹿の下に机のつくり）島”と書かれることもある。
このブログ記事の本筋から外れるので触れなかった、「日中防衛当局間ホットライン」は利用されなくて、東京と北京の通常の外交・防衛ルートで連絡を取り合ったそうだ。
米ソ冷戦の頃から語られているホットラインジョークのように、「電話のベルは鳴った。しかし、誰も出なかった」のかもしれない😅
日中、ホットライン利用せず 海自護衛艦の中国領海航行で|47NEWS（よんななニュース）
中国外交部の林剣副報道局長は11日の定例記者会見で、海上自衛隊の艦艇だったかは明確にしなかったが、「日本の艦船の違法で不当な行動について厳正な申し入れを行った」とした。と述べた。
「関係する部門に聞いてください」と言わなかっただけマシかと。🙂
中国の外交部には、国防部からの重要な情報はろくにまわってこないそうだし。🙃
海自艦船が中国領海を航行か 中国外務省が日本側に徹底調査申し入れ：朝日新聞デジタル (2024年7月11日 19時45分)
－－（追記:7/12）－－－－－－－－－－－－－－－－－－ー
外交部の公式サイトで、7月11日の定例記者会見のテキストが公開された。海上自衛隊の護衛艦が中国領海を航行した質疑の部分は掲載されていない。
（質疑があってもテキストでは公開しないという対応は、ときどき見かける）
2024年7月11日外交部发言人林剑主持例行记者会_中华人民共和国外交部
－－（追記ここまで）－－－－－－－－－－－－－－－－－－
「答え差し控える」 林官房長官、海自護衛艦「すずつき」の中国領海航行巡り - 産経ニュース (2024/7/11)
海自護衛艦が中国領海を航行 日本に「深刻な懸念」伝達（共同通信） - Yahoo!ニュース (2024年7月11日)
Japan destroyer sailed into China territorial waters despite warnings
海自の護衛艦 一時 中国領海を航行 防衛省がいきさつを調査 | NHK (2024年7月11日)
海自艦艇が中国領海内に進入、中国が訓練海域に指定している台湾周辺 : 読売新聞 (2024年7月11日)
海自護衛艦、中国領海を一時航行 中国「深刻な懸念」伝達 政府関係者「法的問題ない」 - 産経ニュース (2024/7/11)
中国の大手メディアはいまのところ報じていないよう。香港メディアと台湾メディアが、共同通信の記事をもとにして伝えている。
共同社：日本驱逐舰驶入浙江附近领海 曾被要求离开惟未听从 | 星岛日报
东海军事任务 浙航警 636/24 - 中华人民共和国海事局 (2024-07-02 10:56)
来源：浙江海事局 文号：浙航警 636/24 发布时间：2024-07-02 10:56
浙航警 636/24 东海， 7月3日0400时至5日1800时，在（1）29-03.50N 122-02.50E, （2）29-14.00N 122-24.00E, （3）29-14.00N 123-00.00E, （4）28-12.00N 123-00.00E, （5）27-36.00N 122-37.00E, （6）27-36.00N 122-03.50E, （7）27-25.00N 121-53.00E, （8）26-40.00N 121-25.00E, （9）26-49.00N 121-05.00E, （10）27-37.50N 121-35.00E, （11）27-45.00N 121-11.00E, （12）27-52.50N 121-08.50E, （13）28-07.00N 121-42.50E, （14）28-17.50N 121-52.50E, （15）28-36.50N 122-02.00E十五点连线水域范围内执行军事任务，禁止驶入。
东海军事任务结束 浙航警 643 /24 - 中华人民共和国海事局 (2024-07-04 14:58)
来源：浙江海事局 文号：浙航警 643 /24 发布时间：2024-07-04 14:58
浙航警 643 /24 东海，军事任务结束，撤销浙航警 636 /24,希各航船注意。
