政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長が「五輪をこういう状況のなかで何のためにやるのか」などと発言したことに関して、丸川珠代五輪相(*)は6月4日の閣議後記者会見の質問に対する回答のなかで「全く別の地平から見てきた言葉」という表現を使った。
(*)東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会担当大臣
これについて、尾身会長の発言を「全く別の地平から見てきた言葉」だと言ったと受け止めている人もいるようだけど、これは、丸川珠代五輪相が自分たちの視点や立場を述べたものだろう。
調べた中では、朝日新聞と日本テレビのニュース番組の報じ方が最もおかしかった。
朝日新聞の記事タイトルを見ただけの脊髄反射なコメントもあることだろう。
丸川氏、尾身氏発言に「全く別の地平から見てきた言葉」 - 東京オリンピック [新型コロナウイルス]:朝日新聞デジタル
政府インターネットテレビの記者会見の動画で確認をし、その部分を書き出した。
(後の方で、全文書き出しとメディアの伝え方をまとめている)
(前略)ということが非常に強く、尾身先生の中で大きな・・・課題でもあり、そしてそれに取り組んでこられた思いでもあるのだと思います。
そうした中でのご発言で・・・、なかなか・・・、他方われわれはスポーツの持つ力を信じて今までやってきた、まったく、あの、別の地平から見てきた言葉をそのまま言っても通じづらいというのは、その・・・私の実感でもありますが、われわれがこれまで1年以上コロナ感染対策にとりくんできて、社会・経済を動かすということにおいて、今の段階・・・、手をうってきながら・・・、難しさをもっているなかで、私たちもいまじいる対策を含めて、それから海外から来られる方の対策も含めて、懸命にその・・・、(後略)丸川大臣記者会見(令和3年6月4日)政府インターネットテレビ(公開日:令和3年(2021年)6月4日)
そういうとこだぞ。
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全文書き出しはこちら。(言い淀みや”間”は充分には反映できていない)
丸川大臣記者会見(令和3年6月4日)政府インターネットテレビ(公開日:令和3年(2021年)6月4日)
丸山大臣:
まず、尾身会長がこのところずっと発言されている中で、国民の理解と納得が必要だという言葉があります。
これは、これまで1年以上にわたってコロナ対策をしてくる中で、我が国の感染症に対処する枠組みというのは基本的には国民の皆様にお願いをする中で成立させてこなければならなかった、ということが非常に強く、尾身先生の中で大きな・・・課題でもあり、そしてそれに取り組んでこられた思いでもあるのだと思います。そうした中でのご発言で・・・、なかなか・・・、他方われわれはスポーツの持つ力を信じて今までやってきた、まったく、あの、別の地平から見てきた言葉をそのまま言っても通じづらいというのは、その・・・私の実感でもありますが、われわれがこれまで1年以上コロナ感染対策にとりくんできて、社会・経済を動かすということにおいて、今の段階、手をうってきながら・・・、難しさをもっているなかで、私たちもいまじいる対策を含めて、それから海外から来られる方の対策も含めて、懸命にその・・・、お願いベースでわれわれも実はやっていることですが、出来る対策はなにかということを懸命に取り組んでいる、このひとつひとつの積み重ねが、この後、本格的に社会を動かしていくときの様々な知見になる、ということを私たちは確信をしています。
それが、この先動かしていくうえでどのように適用されていくか、検査の頻度であったり、接触の度合いであったり、またワクチンがどのように効果をあわらしていくのか、ということであったり、そういうことを国民の皆様と共有しながら徹底した感染対策によってどのように社会を動かしていけるのか、ということを、支援できたら、それが安全安心につながって、次のステップへと社会がすすんでいけたらと、
もちろん、オリンピックがあってもなくても感染症対策を徹底しなければ、社会を動かしていくことは出来ませんので、いま尾身会長が取り組まれている対策というのはまさに、オリンピックがあってもなくてもどうやって私たちの社会経済活動をもとに戻していくのかというお取り組みであることは間違いありません。それをしっかり共有した上で、その中で私たちが開催に向けて動いていくことができるかどうかということを、日々、私たちの取り組みについて自身で向き合って、確認をしたいと思います。
次の質問は群馬県太田市でのソフトボール女子オーストラリア代表に関するもの。省略。
この記事の公開時点に、首相官邸から6月4日の”東京オリンピック・パラリンピック大臣記者会見及び会見録”は公開されていない。
東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会推進本部
朝日新聞は、丸川五輪相が尾身氏の発言に対して「全く別の地平から見てきた言葉」だと言ったようにうけとれるタイトルをつけている。朝日新聞編集部らしいタイトル付けと感じた。
丸川氏、尾身氏発言に「全く別の地平から見てきた言葉」 - 東京オリンピック [新型コロナウイルス]:朝日新聞デジタル
しかし記事冒頭で、
東京五輪をめぐり、政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長が「五輪をこういう状況のなかで何のためにやるのか」などと発言したことについて、丸川珠代五輪相は4日の閣議後会見で「全く別の地平から見てきた言葉」との見方を示した。
と書いているが、その後の部分では丸山五輪相の言葉として書いている。
この尾身氏の発言について問われた丸川氏は、「我々はスポーツの持つ力を信じて今までやってきた。全く別の地平から見てきた言葉をそのまま言ってもなかなか通じづらいというのは私の実感」と、五輪開催の意義を強調した。「できる対策は何かということに懸命に取り組んでいる。ひとつひとつの積み重ねが、本格的に社会を動かしていく時の知見になる」とも話した。
朝日新聞はタイトルの書き方などミスリーディングを誘うような書き方をしている。
日本テレビの番組は、尾身会長の言葉に対して丸川五輪相が受け止めたものとして紹介している。
4日の衆院厚労委員会で、政府分科会の尾身会長は「一般医療にも支障をきたしている時にオリンピックをやれば、さらに負荷がかかるというリスクはあるということは、当然申し上げます」と述べました。
政府などが観客の上限について決定する前に、独自に専門家による提言を発表する考えを示しました。
一方、丸川五輪相は「まったく別の地平から見てきた言葉をそのまま言っても、なかなか通じづらいというのは私の実感」、田村厚労相は「自主的なご研究のご成果の発表ということだ」とそれぞれ受け止めを語りました。
一方、東京新聞は、丸川珠代五輪相の側の言葉として紹介。”立場の違い”という説明は分かりやすい。
尾身会長の警告は「自主的な発表」 五輪開催リスク、政府は聞く耳持たず:東京新聞
丸川珠代五輪相も会見で「われわれはスポーツの持つ力を信じて今までやってきた。全く別の地平から見てきた言葉をそのまま言ってもなかなか通じづらいと実感する」と、尾身氏との立場の違いを強調した。
そのほかは、その部分だけ抜き出して注釈は無いものが多い。
「何のために五輪開催?」丸川大臣、橋本会長は…|テレ朝news
政府の分科会の尾身会長は、「パンデミックのなかでやるのは、普通はない」など、連日、オリンピック開催への懸念を示しています。
それを受け、丸川大臣に、こんな質問がされました。
丸川五輪担当大臣:「(Q.何のために大会を開催すると考えているのか)スポーツの持つ力ということを信じて今までやってきた。全く別の地平から見てきた言葉をそのまま言っても、なかなか通じづらいというのは、私の実感でもあるが」大会組織委員会の橋本会長にも、同じ質問がされました。(以下略)
尾身会長の発言に政府から“反発”の声 観客入れる方向 - FNN
尾身会長の発言を受けて、開催への疑問の声が再び広がる中、政府関係者は、「大会を中止するという選択肢はない」と明言していて、丸川オリンピック・パラリンピック担当相は、発言への違和感を示した。
丸川五輪相「われわれはスポーツの持つ力を信じて、今までやってきた。まったく別の地平から見てきた言葉をそのまま言っても、なかなか通じづらいというのが、私の実感でもある」
また、自民党幹部は(以下略)
時事通信は、その表現をスルーした。
共同通信は、記者会見のその部分全体をスルーしたようだ。(その次の質問の、オーストラリアの女子ソフト代表の質疑についての記事はあった)
時事通信と共同通信がスルーしたので、地方メディアのほとんどが記事にしていない。
読んだ中では、芸能人の松本人志氏のコメントがしっくりくる。
松本人志、丸川珠代五輪相&橋本聖子会長の発言に疑問「国民を分断…平和の祭典から、かけ離れていく」(スポーツ報知) - Yahoo!ニュース
松本は、丸川氏の発言に「丸川さんのああいう、スポーツの力を私たちは信じている、とか。(組織委員会の)橋本(聖子)会長の、我々は何としてでも選手の命を守る、みたいなああいう発言ね。いやいや、だからそういうことじゃなくてって。あれを言うからみんな気持ちが変になっていくわけです」と指摘した。
(中略)
あのやり方は、どんどん国民を分断させていくから、全然、平和の祭典から、かけ離れていく発言だと思うんです」と疑問を投げかけた。
松本人志、丸川珠代五輪相&橋本聖子会長の発言に疑問「どんどん国民を分断させていく」
ホント、そういうとこだと思う。