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【新型コロナウイルス】 東京五輪、入国者の感染者を分析。閉会式の前後の国内感染が増加

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(東京2020組織委員会からの2021年8月20日付け発表をもとにして独自集計した)

新型コロナウイルスの感染拡大が拡がっている中、東京オリンピック2020が行われた(開会式:7月23日、閉会式:8月3日)。そしてパラリンピックの開会式が24日に行われる。

 

オリンピック組織委員会によると新型コロナウイルスの陽性確認は546人(8月20日付け発表)。このうち、日本国内の居住者ではない関係者(Non-Residents of Japan)は173人、国内居住者が373人(Residents of Japan)

この日本国内の居住者ではない関係者、つまり東京五輪組織委員会が管理していた入国者のなかの感染者についてざっくりと調べてみた。

五輪関係入国者のワクチン摂取率は8割ほどと報じられている。 

 

新型コロナの感染が報告日は「Under 14-day quarantine period(検疫隔離14日以内)」と「After 14-day quarantine period(検疫隔離14日以後(検疫隔離14日より後))」に分けられている。

検疫隔離の14日間に感染が確認されたのは103人(59.5%)で、14日が経過した後は70人(40.5%)。4割が日本国内で感染したと考えられる。

 

Under 14-day quarantine period」には、入国時の空港での検疫での検査と、その後の検疫ホテルの隔離滞在期間の検査、ホテルと会場やプレスセンターを往復するの検疫バブル内での行動が要請される14日間以内を示す。
多くが空港での入国での検査や検疫隔離ホテルでの検査結果だが、アスリート・チーム役員の場合は検疫ホテルでの隔離3日間のあとに晴海の選手村に入村した後に陽性が出る場合が3割ほどあった。

After 14-day quarantine period」は、その入国後14日が経った後に感染が確認された例。ほぼ全てが日本国内での感染例となる(ただし感染から14日以上経った後に陽性となる可能性はゼロではない)

大会関係者の新型コロナウイルス感染症の陽性者情報 - 東京2020大会のコロナ対策 - 東京2020組織委員会

COVID-19 Positive Case List

プレイブック(ルールブック)第3版公表 安全で安心な大会開催に向けて、ルールの強化・具体化・明確化

14日より長い滞在者は、14日以内の滞在者との食事や接触を避けるなど求められる。電車・バスなど公共交通機関の利用やレストラン・飲食店の利用などは、あくまでも緊急事態宣言下であり不要不急の外出を自粛するなど感染拡大防止の行動を充分にした上で(とされている)、とくに制限は付けずに認められている。

 

東京パラリンピックの方の感染者の発表では、最初から「After 14-day quarantine period(検疫隔離14日以後)」ばかりとなっている。五輪の時から滞在しているのだろう。新しく来日するオリパラ関係者・メディアとの接触をきちんと避けられるものか心配だ。

 

 

アスリート(Athletes)だけに限定するなら、日本国内での検疫バブル方式はうまくいったと考えられる。
しかし来日する際の航空機の機内での感染拡大が起こっていた。少なくとも3つの国(チェコ、オランダ、ギリシャ)の代表選手団・競技チームで4人以上の感染拡大が起こっている。パラリンピックでの大きな課題となるだろう。

その他のアスリートの感染者は、空港検疫や隔離ホテルで確認された孤発例がほとんどだった。

競技で別の国の選手へ感染拡大が起きたとは確認されていない。今のところ、帰国したアスリートで陽性確認されたという発表と報道は無いようだ。

【新型コロナウイルス】 東京五輪、選手の感染者の人数、国・競技など。 来日の飛行機で集団感染か? - pelicanmemo

  

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(東京2020組織委員会からの2021年8月20日付け発表をもとにして独自集計した)

アスリート(Athletes)五輪関係者(Games-concerned personnel)、メディア関係者(Media)等を、検疫隔離14日以前と同・以後に分けて、開会式の7月23日を基準として1週間ごとの感染者数をグラフとした。7月上旬は1つにまとめた。

棒グラフの”縞模様”の部分と折れ線グラフの青い点線が検疫隔離14日以後(After 14-day quarantine period)に陽性結果となった例。(ここでは発表日ではなく報告日(検査日または翌日)を採用した)

アスリート(Athletes)を除くと、1週間あたりの新規感染者数は閉会式の後も減っていないことが分かる。



 

五輪関係者(Games-concerned personnel(IOC/IPC関係者、NOC/NPC関係者、IF、オリパラファミリー、パートナー、OBS等)(*1))では、入国者の新型コロナ陽性173人中105人と最大となった。関係者の範囲が広くて人数が多いからだろう、あまりうまくいっていない。感染者数は減ることなく推移し続けている。

後半になって新たな入国者が減ったので、検疫隔離14日以後の感染者の割合が徐々に増えている。競技を終えてすぐに帰国した選手たちだけでなく、滞在を続ける”選手村に入らない”各国のオリパラ関係者などたくさんいるので、緊急事態宣言下の都内にくり出して食事や買い物、観光その他の機会に感染したのかもしれない。

バッハIOC会長が率先して銀ブラしてJOCや五輪担当相が咎めないあたり、他の各国の五輪関係者の意識と対応もお察し。😕

 

晴海の選手村では、14日間以後の陽性確認例はアスリート1人と五輪関係者(Games-concerned personnel)1人だけだった。選手村の中で広く感染拡大は発生していない。前述した代表選手団の内側で起きた例だけだろう。

(*1)国際オリンピック委員会(IOC)・国際パラリンピック委員会(IPC)関係者、各国のオリパラ委員会(NOC/NPC)関係者、国際競技連盟(IF)、オリパラファミリー、パートナー、オリンピック放送機構(OBS)等

 

 

 

メディア関係者(Media)(RHB(ライツホルダー:放送権者)、プレス)では、14日間経過後の感染例が感染者の半分以上を占めている。滞在期間が長いので感染機会が増えたためと考えられる。帰国後の検査で陽性だった例も3例が報告されている。

どこかのロイターの記者(当時)のように会食をしたり、報道されていたメディア関係者のように繁華街にくり出したのかもしれない。またそれらダメな行動をする一部のメディア感染者から同僚へと感染拡大したケースもあるのではないだろうか。

せめて入国後14日間の検疫隔離期間は、行動制限をちゃんとやっていた事を祈るしかない。

 

メディア関係者の入国者は1万6000人余りで、発表された感染者数は計30人(さらに帰国後に3名の陽性が確認)となった。このうち、検疫隔離14日以後の感染者は閉会式(8月3日)の前後(7月31日〜8月13日)に16人いる。さらに8月15日発表によると帰国後にメディア関係者3人の陽性が確認された。単純計算で人口10万人あたり118.75人となる(2週間の新規感染者19人(1週間あたり9.5人)で、滞在するメディア関係者は半減していたと想定)

実はこの数字は、7月30日~8月5日の神奈川県の人口10万人当たり新規感染者数とほぼ同じ。🙂 

当然、神奈川県民と五輪メディア関係者(入国者)とではワクチン2回摂取率は大きく違う。

検疫バブルから出た後のメディア関係者(入国者)の中には、ワクチン接種を受けていないか、有効性低いワクチンを接種していた人や中和抗体が減少(ブレークスルー感染)していた人がいたのだろう。にも関わらず、感染予防の行動がいいかげんだったため市中感染をしたと考えられる。

大会組織委員会によりますと、およそ200の国と地域から2000社ほどが来日し、メディア関係者の人数は先月21日の時点で1万6000人余りに上る見通しとなっています。

また、国内外のメディア関係者の70%から80%が大会までにワクチンの接種を受ける見通しだということです。

五輪メディア関係者 来日は1万6000人余 取材と感染対策 両立は | オリンピック・パラリンピック 大会運営 | NHKニュース (2021年7月17日)

 

東京2020の業務委託先事業者等に従事する者(Tokyo 2020 Contractor)は、日本側の関係者との接触も多いだろうし会話等の行動もあるだろう。その割に感染者は週あたり2~4人と多くはない。総数が不明なので評価は難しい。

あちこちで指摘されているように、日本在住の業務委託先事業者等の感染者数が最も多い。東京はじめ首都圏での新型コロナ・デルタ株の感染拡大にともなって増加した可能性が高いだろう。

この東京2020組織委員会からの発表には、全国の警察署からの警備応援の感染者は含まれていないようだ。

 

どう評価するかは、どこに注目するかだと思うので人それぞれだろう。

イベント開催地域の陽性率と比較されているが、入国者のワクチン摂取率が8割ならもっと陽性確認は少なくなって当然だったと思う。接種ワクチンがファイザーやモデルナなら特にそう。

東京五輪の検疫バブルの崩壊は、早い時期から報道されていた通りだったようだ。全ての検査数や入国者数を分母にして計算すると陽性率は低くなるが、区切って見てみると「ダメなところはやはりダメ」な結果が出たように思う。

 

東京パラリンピックの方も毎日の感染者のデータが発表されている。こちらはオリンピックからすでに来日していた人が多いのだろう。最初から「After 14-day quarantine period(検疫隔離14日以後)」ばかりになっている。新しく来日するオリパラ関係者・メディアとの接触をきちんと避けられるものか心配だ。

 

 

東京オリンピックの開催期間からずっと、新型コロナウイルスの第5波の急激な感染拡大が起きている。

よくなかったのはJOCや五輪関係者、政府関係者のメッセージの出し方のダメさであり、マスメディアによる旧態然としたオリンピック報道と伝え方。日本社会の「空気」をオリンピックのお祭り騒ぎに盛り上げていったことで、その雰囲気で夏休みからお盆休みに入ってしまった。水は低きに流れ、人は易きに流れる。

その一方で、感染拡大を予防するための自粛の要請という相反するメッセージを繰り返している。リスク・コミュニケーションに失敗している。

これで感染拡大を抑えられるわけがない。